動物愛護管理法について正しく知ろう!改正された法律や罰則などを簡単に解説

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まとめ
  • 動物愛護管理法の正式名称は『動物の愛護及び管理に関する法律
  • 動物愛護と適切な管理(危険や迷惑の防止など)が、動物愛護管理法の大きな目的
  • 悪質な動物虐待事件が増えている状況を踏まえ、動物愛護管理法違反の罰則が大幅に強化された
  • 動物虐待を発見した場合は、各自治体の動物愛護相談センターか警察へ相談

愛護動物を虐待・遺棄した人は、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科される可能性があることを知っていますか?

毎年9月20日〜26日は『動物愛護週間』です。この期間は、国民の間に動物の愛護と適正な飼養についての関心と理解を深めるため、国や地方公共団体はその趣旨にふさわしい行事を実施しています。

動物と人間が共存して幸せに暮らしていくために必要な法律が、動物愛護管理法です。動物愛護管理法を正しく理解して、より良い動物との関係を築いていきましょう。

目次

動物愛護管理法とは?簡単に解説

ここからは、動物愛護管理法を簡単に解説します。日本の法律である動物愛護管理法は『動物愛護法』の名前で広く知られています。

動物愛護管理法の正式名称と目的

動物愛護管理法の正式名称は『動物の愛護及び管理に関する法律』です。

昭和48年(1973年)に議員立法により制定されました。法律制定の背景には、高度経済成長期における動物の扱いに関する社会問題の増加がありました。動物愛護と適切な管理(危険や迷惑の防止など)が、動物愛護管理法の大きな目的になっています。

動物愛護法の基本原則として、すべての人が『動物は命あるもの』であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにすることが定められています。

また、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適切に取り扱うことも基本原則です。

これは動物のためだけの法律ではなく、実は動物と人間が共存するための法律です。動物の福祉向上と同時に、人間の安全確保も視野に入れた総合的な法律になっています。

動物愛護管理法の対象になる動物は?

動物愛護管理法の対象となる動物は、家庭動物・展示動物・産業(畜産)動物・実験動物など、人の飼養に関わる動物です。具体的には、犬・猫・ウシ・ウマ・ブタ・メンヨウ・ヤギ・イエウサギなどです。

また、人が占有している哺乳類・鳥類・爬虫類も対象となります。ペットとして飼われる動物だけではなく、さまざまな形で人間と関わりをもつ動物たちが、法的保護の対象になっています。

これまでの法改正と主要な改正内容

動物愛護管理法は、社会の変化に応じて以下のような改正が行われてきました。

  • 平成11年(1999年):動物取扱業や飼主責任の徹底、虐待や遺棄に関わる適用動物の拡大や罰則の強化など
  • 平成17年(2005年):動物取扱業に対する規制強化、特定動物の飼育規制の一律化、実験動物への配慮や罰則の強化など
  • 平成24年(2012年):動物取扱業や多頭飼育の適正化、罰則の強化などに加え、災害時の動物飼育・保管や協力、終生飼育について初めて明記
  • 令和元年(2019年):適正飼育が困難な場合の繁殖防止の義務化、特定(危険)動物に関する規制の強化、動物虐待についての罰則の引き上げ、マイクロチップの装着義務化など

特に平成24年(2012年)は、前年の東日本大震災の経験を踏まえ、災害時のペット対策が法律に組み込まれた画期的な改正でした。

令和2年最新の改正内容

令和2年6月1日に動物愛護管理法が改正され、現在も段階的に施行されています。主な改正内容は、罰則の大幅強化や獣医師による通報義務の新設、特定動物の愛玩飼育禁止です。

特筆すべきは、虐待の定義が明確化されたことです。積極的(意図的)虐待だけではなく、ネグレクト(飼育放棄による動物の健康悪化)も虐待に含まれることが明確になりました。これにより、動物への直接的な暴力だけではなく、適切な世話を怠ることも違反対象になります。

動物愛護管理法違反の罰則を事例を交えて解説

ここからは、動物愛護管理法違反の罰則を事例を交えて解説します。悪質な動物虐待事件が増えている状況を踏まえ、動物愛護管理法違反の罰則が大幅に強化されました。

虐待・遺棄に関する罰則

愛護動物をみだりに虐待・遺棄した者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

具体的な事例としては

河川敷で無防備な小型犬を足で蹴り、その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、みだりに虐待したことで起訴され、刑事裁判になりました。犬は結果的に亡くなり、罰金20万円の判決が下されました。(さいたま地裁 令和3年8月27日の判決)

ここで重要なのは、暴行だけではなく、ネグレクト(飼育放棄)や劣悪な飼育環境の放置なども虐待に含まれることです。適切な食事や水の提供を怠ったり、病気になっても治療を受けさせないことも処罰の対象となります。

参考:浜松町アウルス法律事務所『動物虐待の刑事事件

殺傷に関する罰則

愛護動物をみだりに殺す・傷付けた者は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科せられます。殺傷に関する罰則は、これまでの罰金200万円以下から500万円以下に、懲役2年以下から5年以下に大幅に罰則が強化されました。

具体的な事例としては

『空気銃を猫に向けて発射し、猫2匹を殺し、猫4匹を傷つけた動物愛護法違反及び銃刀法違反の事案です。被告は、狩猟用に所持していた殺傷能力の高い強力な空気銃を使用して、猫を虐げる行為を繰り返していました。猫6匹のうち2匹が死亡し、懲役1年6ヶ月、執行猶予3年の判決が下されました。(千葉地裁 令和3年11月8日の判決)』

このように殺傷に対する罰則は、虐待・遺棄よりもさらに重い罰則が科せられることになり、動物の命に対する法的保護が強化されています。

参考:浜松町アウルス法律事務所『動物虐待の刑事事件

飼主が知っておきたい動物愛護管理法の義務

動物を飼うときは、飼主としてさまざまな法的義務が科せられています。動物の種類や習性等に応じて、動物の健康と安全を確保するように努め、動物が人の生命等に害を加えたり、迷惑を及ぼすことのないように努めなければなりません。具体的には以下のとおりです。

  • 適正飼育の努力義務:動物の種類や習性に応じた適切な飼い方をして、健康・安全に気をつける
  • 繁殖制限の努力義務:適正な飼育が困難になる場合には、管理できる数を超えないように避妊や去勢などの繁殖防止の措置をする
  • 感染症を予防する義務:動物・人と動物の共通感染症についての正しい知識をもち、感染を防ぐ
  • マイクロチップ装着義務(犬・猫):盗難や迷子を防ぐため、所有者を明らかにする

例えば犬の場合は、住んでいる市町村に登録の義務があり、引っ越し後は30日以内に登録先を変える義務や、毎年1回狂犬病の予防接種の義務もあります。

特定(危険)動物(クマ・ワニ・ドクヘビなど)やその交雑種の飼育には、許可や届出が必要でしたが、令和2年6月1日からは愛玩目的等での飼養が禁止されています。

このように、動物の種類に応じてさまざまな法的義務が存在するため、新しく動物を飼う前には必ず情報収集が必要です。

虐待発見時の通報・相談窓口は?

動物虐待を発見した場合は、動物の命を守るために迅速な通報が必要です。まずは各自治体の動物愛護相談センターに相談してみましょう。専門知識をもった職員が対応し、現地調査などを行い、適切な指導や警察と連携して対応します。

緊急性が高い場合や明らかな犯罪行為が疑われる場合は、警察への通報も必要です。動物愛護管理法違反は刑事罰の対象となるため、警察による捜査が行われます。

令和元年の改正により、獣医師にも通報義務が科せられました。動物病院で虐待の疑いのある動物を診察した場合、獣医師は適切な機関への通報を行う義務があります。虐待の早期発見につながることを期待されています。

虐待の発見には、地域住民の協力も不可欠です。異常な鳴き声が続く、動物が放置され明らかに衰弱している状況などを発見した場合は、ためらわず適切な窓口に相談しましょう。

動物愛護管理法の今後と私たちにできること

動物愛護管理法は、悪質な動物虐待事件が増えている状況も踏まえ、今後もさらに罰則強化の可能性があります。

現在ペットの法的な立ち位置は『物』です。家族の一員として愛される動物たちが、法的にもっとふさわしい扱いを受けられるようになる未来が期待されています。

私たちにできることは、まず正しい知識の取得です。動物愛護管理法の内容を理解し、適正飼育の実践や、虐待の早期発見ができるように地域住民で見守りあうことも大切です。

動物愛護管理法を学び、動物をもっと大切にして、お互いに気持ち良く共生できる社会を目指していきましょう。

うきのアバター

うき

うき

水族館と動物園大好きライター。幼少期は犬・ニワトリ・牛と、自然豊かなところでのびのびと暮らしていました。
動物たちともっと心を通わせたい。動物の不思議な生態や学びが深まるコラムをお届けします。

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