- 犬のペースに合わせることが大切!穏やかな声かけと優しいタッチを心がけよう
- 体調変化は楽観視しないこと。小さなサインを見逃さずに動物病院を受診しよう
- 犬種の傾向はあくまで参考。その子自身の性格や特性と向き合おう

初めての犬の飼育は、誰しも不安が大きいものです。今回は、飼育初心者さんが覚えておきたい『犬への基本的な接し方』や、お世話のポイントについて紹介します。
愛犬と信頼関係で結ばれるためにも、犬がうれしいことや嫌がることを学び、少しずつ絆を深めていきましょう。

愛犬と仲良くなろう!犬への正しい接し方

ここでは、愛犬が喜ぶ接し方について紹介します。犬に安心してもらうコミュニケーションには、いくつかのコツがあります。お互いの気持ちが伝わり合うような接し方を学んでいきましょう。
触る前に臭いを嗅がせる
犬を触る前には、相手の鼻の前に手の甲をゆっくり差し出し、臭いを嗅がせます。『今から誰が触ろうとしているのか』を臭いで伝えることで、警戒心が薄れ、安心感を抱いた状態でスキンシップにつながります。
「この臭いは安心だ」と覚えてもらうことが大切です。とくに家に来たばかりの子犬は、新しい環境の臭いに緊張や不安を感じています。犬が臭いを感知したのを確認してから、ゆっくりと撫でてあげてください。
ベタベタ触るのではなく、自然な距離感を保つ
たとえ親しい人でも、体中をベタベタ触られるのは不快に感じますよね。犬も同様に、慣れない相手からの過剰なスキンシップはストレスの原因になります。
関係性が築かれるまでは、自分から無理に触りに行かず、相手から近づいてきてくれるのを待ちましょう。
とくに犬の扱いに慣れていない人が無理に抱っこしようとすると、犬は落ちないように体に力を入れてしまいます。心身ともに緊張してストレスが溜まり、不必要な体力消耗につながってしまいます。その結果、免疫力が下がり病気に感染しやすくなってしまうことも。
人間の子どもを抱っこするような『縦抱き』は、犬の体の大きな負担になります。地面に平行な角度で、真横から密着して抱き上げるように意識しましょう。最初は座った状態で、膝の上で抱っこして練習するのがおすすめです。
驚かせないようにゆっくり近づいて撫でる
犬にふれるときは、驚かせないようにゆっくりと近づくように心がけましょう。家に来たばかりの頃は、飼主が信用できる存在だと犬に理解してもらうための大切な時期です。
「この人は驚かしてくる」「自分を不安にさせる存在だ」と認識されてしまうと、信頼回復に時間がかかってしまうだけではなく、愛犬が安心できる環境構築も難しくなってしまいます。
前提として、走って追いかけるのはNG。小さな声で優しく名前を呼びながら、ゆっくりと撫でてあげましょう。ワシャワシャと激しく撫でるのは、より慣れてくれてから。犬の視界や行動の自由を確保した状態のスキンシップを大切にしてください。
叱るときは名前以外の言葉を使う
好奇心旺盛な子犬時代は、毎日がイタズラの連続です。いけないことをしたら「子犬だから…」と見過ごすのではなく、しっかりと叱って学んでもらう必要があります。
犬を叱るときのポイントは、名前以外の言葉を使うこと。たとえば「ダメ!」「コラ」「いけないよ」など、叱るとき専用のワードを使いましょう。
「〇〇!ダメでしょう!」のように名前を使って叱ると、犬は自分の名前を「叱られるときに言われる、嫌な言葉」として認識してしまいます。名前にネガティブなイメージを与えないように、言葉選びには慎重になりましょう。
毛並みに沿って面でタッチするように撫でる
犬に触るときは、毛並みに沿って『手の面』でタッチするように撫でてください。指先のような『点』で触るよりも、リラックスしてもらいやすくなります。
人間の髪の毛も、毛並みに逆らって触ろうとすると、なんだかモヤモヤした感覚になりますよね。犬の場合も同様に、毛の流れに沿った自然な動きで触ったほうが、より安心してもらえます。
初心者さんは要注意!犬が嫌がる接し方

ここでは、犬が嫌がってしまう接し方について紹介します。とくに「犬とすぐに仲良くなりたい!」「いっぱいスキンシップを取りたい!」と思っている人は要注意。犬を愛する気持ちはそのままに、相手のペースを尊重したコミュニケーションを心がけましょう。
食事中や排泄中に触る
食事中や排泄中の無防備は、愛犬に触ってはいけません。食事中のスキンシップは「ご飯を奪われるのではないか」という不安につながります。
排泄中は、生き物として完全な無防備になっている状態です。普段は触らせてくれる子でも、排泄中のタッチは緊張や不安を煽られ、不信感につながってしまう可能性があります。
おもちゃに夢中になっているときに触る
興奮状態になっている犬は、冷静な判断や力加減ができない場合があります。おもちゃに夢中になって興奮している最中は、ボディタッチは避けましょう。
普段は大人しい子でも、遊びに夢中になっているときに触られるとつい噛みついてしまうことも。おもちゃ遊びが終わり、一息ついて愛犬が平静を取り戻した後に、ゆっくりと触ってあげてください。
睡眠中に触る
睡眠中は、排泄中以上に無防備な瞬間です。かわいい寝顔を見ているとつい撫でたくなってしまいますが、寝ている状態の愛犬を触るのは控えましょう。
寝ている最中に起こされると、犬によっては大きな不安を感じ、飼主の前で眠れなくなってしまうかもしれません。
睡眠の質の低下は、ストレスや免疫力の低下にもつながります。犬が自然と目覚めるまで、静かに穏やかに見守ってあげましょう。
ちなみに、犬の睡眠時間は1日10〜15時間と、人間よりもかなり長いです。「こんなに眠っていて大丈夫?」と思うかもしれませんが、眠っている分には心配ありません。
起きているのに動かない・ぐったりしているなどの様子が見られたら動物病院の受診を検討しましょう。
犬が触られてうれしい場所・嫌がる場所は?

犬は「どこを撫でられてもうれしい!」というわけではありません。場所によっては嫌がる子も多く、苦手な場所を触られると信頼関係に亀裂が入ってしまうことも。以下に犬が触られてうれしい場所・嫌な場所を記載します。
【うれしい場所】
- 首の下
- 胸元
- 耳のうしろ
【嫌がる場所】
- 頭
- マズル(鼻先)
- 足
- 尻尾
初めて犬を飼育するヒトは、頭と耳の後ろの区別が難しいかもしれません。基本的には『顔を手で覆うような触り方』は避けましょう。
耳の後ろを触る場合、顎を下から撫でつつ輪郭を上がっていくように手を移動させるとスムーズです。
触られるのが苦手な部分も、子犬時代から慣れさせよう

触られるのが苦手な部分でも、子犬時代から無理のない範囲で慣れさせることで、病気の早期発見やデイリーケアにつながります。たとえばお尻・爪・歯ぐき・耳・目などは、病気チェックやケアのために触る必要がある部分です。
「嫌がって可哀相だから」「咬もうとするから」と触らないまま成犬になった場合、病気の発見が遅れたり、必要なケア(爪切り・歯磨き・ブラッシングなど)も疎かになったりするリスクがあります。
ある程度環境に慣れてきてからで構わないので、子犬時代から全身を触られること自体には慣れさせておきましょう。

犬にフードをあげるときのポイント・注意点

ここでは、犬にフードをあげるときのポイントについて紹介します。栄養豊富かつ十分な量の給餌は、健康や免疫に直結します。犬がストレスなく食べてくれるように、飼主にできる工夫を取り入れていきましょう。

最初やウェットフード(ふやかしフード)から
子犬は消化機能が未成熟であるため、ドライフードをそのまま与えるのは推奨されません。体重に応じた量のフードにお湯(平面のお皿に入れたフードがすべて浸かる程度)を入れ、30分程度ふやかしてから与えましょう。
ふやかしたとしても栄養量は変わりません。ふやかしたフードの食いつきが弱い場合は、子犬用のウェットフード(缶詰めやパウチ)を活用しましょう。
生後3ヶ月を目途にドライフードに移行する
犬は生後3ヶ月程度で乳歯が生えそろい、消化機能も比較的安定してきます。この時期を目途にウェットフードの水分量を少しずつ減らしながら、1~2週間かけて段階的にドライフードに移行しましょう。
途中で食いつきが悪くなったり、便が緩かったり(もしくは消化されていない状態のフードが混じっている)する場合は、一段階前の水分量に戻します。愛犬の体のペースに合わせ、無理なくゆっくりと変えていきましょう。
フードの適正量はどのくらい?
フードの適正量は、犬種・体重・フードによって異なります。基本的にはフードのパッケージに記載された『体重ごとの1日分の給餌量』に従って与えましょう。
また子犬の時期はワクチンや健康診断で動物病院に赴く機会も多いため、体重や肉付きの程度を相談しつつ調整していくのも良いでしょう。
食べ残しは30分以内に捨てる
一度にフードを食べてくれないときでも、20~30分程度を目途に捨ててください。余ったフードを放置すると細菌の温床になるだけではなく、愛犬が「ごはんはいつでも好きなタイミングで食べられるもの」と学習してしまいます。
「すぐに食べきらないとごはんが無くなる」と覚えてもらえれば、食べムラを予防できます。一度下げたフードは、2~3時間後に同じ量を与え、栄養やエネルギー補給をケアしてあげてください。
おやつは与えすぎ厳禁!
どれほど愛犬が可愛くてもおやつの与えすぎは厳禁です。とくに「吠えるのに困り、おやつで静かにさせる」のような与え方だと、犬は「吠えればおやつが貰える」と学習してしまいます。
おやつを与えるタイミングや量は飼主が主導権を握り、甘えられても毅然とした対応を心がけましょう。またおやつはカロリーが高く、与えすぎは肥満の原因に。肥満で苦しむのは飼主ではなく愛犬自身だということを忘れないでください。
食事は、しつけやコミュニケーションの絶好の機会
愛犬の食事タイムは、しつけやコミュニケーションの絶好の機会です。食事前の「待て」や「お座り」などを通して、犬は基本的なコマンドを学習します。犬にとって食事が魅力的な報酬であることを活用し、しつけの導入にすると良いでしょう。
飼ったばかりの時期は気をつけたい!こんなときは病院に行こう

ここでは、動物病院を受診する目安となるサインを紹介します。
とくに生後8週~4ヶ月の子犬は、母犬からもらった免疫が切れ、体調が不安定になりやすい傾向にあります。ちょっとしたことでも重症化しやすい時期だからこそ、小さなサインも見逃さずに受診につなげていきましょう。

人間の食べ物を食べてしまった
犬には、基本的に人間の食べ物は一切与えてはいけません。
一部食品は適量を守れば与えて良いともされますが、食事量が少ない子犬時代では、総合栄養食を中心とした専用フードの給餌が求められます。またアレルギーの可能性もあるため、獣医師への相談なく与えるのはNGです。
人間の食べ物は犬が中毒症状を起こすものも多いため、誤食が発覚次第病院に連れていきましょう。すぐに症状が現れない場合でも、腸閉塞のリスクがあります。とくに下記の食品の誤食は命にかかわる可能性があるため、早急な対応を心がけてください。
- 玉ねぎ・ネギ
- ニンニク
- ニラ
- チョコレート
- ぶどう・レーズン
- カフェイン類
- アルコール類 など
また、子犬のころから味のついた人間の食べ物に慣れてしまうと、ドッグフードを食べなくなってしまうケースも少なくありません。味のついた人間の食べ物は犬の体に負担をかけることも忘れないでください。
中毒の心配のない食べ物でも、人間の食べ物は犬の体にとっては危険があることを忘れず、愛犬が欲しがっても与えないという習慣をつけましょう。子犬のころから習慣づけることで、犬にも「これは自分の食べ物ではない」と認識させることが可能になります。
下痢や嘔吐
下痢や嘔吐の症状が現れた際も、早めに動物病院を受診しましょう。とくに体内水分量が少ない子犬の場合、軽度の脱水であっても重症化しやすい傾向にあります。
下痢や嘔吐の原因は、誤飲・誤食・ウイルス感染・ストレスなどさまざまです。自己判断せずに獣医師の診断を仰ぐことが大切です。病院では診断や脱水ケアのほか、体調回復や健康維持に適した補水液も購入できます。
明らかに食欲がない
犬にとって、食欲は健康のバロメーターです。たとえ元気いっぱいに見えても、明らかに食欲がない場合は、念のため動物病院を受診することをおすすめします。
嘔吐や下痢の症状が見られない場合でも、1日中食欲がなければ病院へ。何も症状が見つからないとしても、メンタルケアや性格に合った給餌などの具体的な改善方法につなげられます。

愛犬の性格と向き合い、少しずつ信頼関係を築こう

今回は飼育初心者さんに向けて、犬への接し方やお世話の基本などを紹介しました。
人間の育児と同じように、犬の飼育でも『基本のルールや安全管理は守りつつ、個体の個性に合わせた接し方』が大切です。犬種や性格によって、うれしいことや嫌がることも違います。
犬種の特徴に関する説明は、あくまで参考程度に活用しましょう。本人の個性やライフスタイルに寄り添い、ベストな環境や接し方を模索してください。




