- 漢字の意味を調べると、動物の生態をもっと学べる!
- アイヌ語や中国語などをルーツに持つ動物も多い
- 蝙蝠(コウモリ)はなぜ虫偏?そんな疑問も解決!

突然ですが、この漢字の読み方は何でしょう?
- 河馬
- 土竜
- 海驢
正解は……
- カバ
- モグラ
- アシカ
でした!
このように、動物の名前は『どうしてその字になったの?!』という漢字も多いもの。今回は、動物の変わった漢字の名前や由来を紹介していきます!
【陸の動物編】漢字の名前の由来6選!
まずは、陸に生きる動物たちの漢字の由来を紹介します!馬・牛・羊……陸地に生きる動物たちは、人間の使役動物であることも多いですよね。漢字の理由を紐解くと、人間との関わり方も見えてきますよ。
鼬(イタチ)|鼠を食べる小動物

鼬(イタチ)は、オコジョやニホンイタチなどを含むイタチ族の総称。鼠(ネズミ)を食べてくれる習性から、名前に鼠が含まれています。鼬の漢字は2000年ほど前から存在していることが分かっており、弥生時代から人間と鼬の共生関係があることが推察されます。
家守(ヤモリ)|害虫から家を守る

トカゲの一種である家守(ヤモリ)の由来は、漢字の通り『家を守ってくれる生き物』。家守は、おもに虫を主食とする肉食性の動物です。蚊・ハエ・ゴキブリなどの害虫を食べてくれるだけではなく、人間に被害を与えることはほぼありません。

麒麟(キリン)|伝説の生き物の名前に由来

麒麟(キリン)は、もともと中国の伝説の生き物です。明の時代、アフリカに遠征した武将によって、首の長い動物が中国に持ち込まれました。武将がこの動物を『伝説上の麒麟』として皇帝に献上した結果、今でも麒麟の名前が定着しています。
日本の麒麟も、中国から伝わった漢字の読み方です。そのため漢字の由来を紐解くには、首の長い麒麟ではなく、伝説上の麒麟を参考にする必要があります。
麒麟の『麒』はオス、『麟』はメスを表す漢字。つまり麒麟は雌雄同体の動物です。そして顔は龍・尾は牛・脚は馬など、さまざまな生き物の特徴を持っています。麒麟は獣の長とされる生き物であり、性別を含む『すべての動物の要素』を持つとされます。
土竜(モグラ)|ミミズの読み方が誤用で定着

土竜(モグラ)は、地中で生活する哺乳類。漢字である土竜は中国から伝わりましたが、実は中国では『ミミズ』の名称として使われていました。ミミズの細長い体を竜に見立てていたのです。
しかし日本に言葉が輸入された際、土竜がミミズを食べる姿から対象が誤解され、モグラを土竜と称するようになりました。実際に土竜が地面を移動した跡が竜のように見えることからも、誤用は無理もないといえるでしょう。

駱駝(ラクダ)|荷物を運ぶ『異国の馬』

駱駝(ラクダ)も中国から伝わった名称。『駱』は『異類・外来の馬』、『駝』は『家畜に荷物を背負わせること』を表します。確かに昔の人からすると、駱駝は『馬のようで馬ではない動物』に見えますよね。200kg以上の荷物を運べる駱駝は、古来より重要な使役動物だったことがうかがえます。
人鳥(ペンギン)|人間のように歩く鳥

実は、ペンギンにも漢字表現があるんです。その字体はズバリ『人鳥』。飛べない鳥の代表格である人鳥は、二足歩行で歩く様子から『人間のような鳥』と称されて命名されました。ほかにも当て字の読み方として『片吟』という漢字も存在しています。

【海の動物編】漢字の名前の由来6選!
ここでは、海に生きる動物の漢字の由来を紹介します。海豹・海豚・海栗など、やはり『海』の漢字から始まる動物がたくさん!一見するとかわいい動物でも、漢字になると途端にワイルドになるのも面白いポイントです。
海豹(アザラシ)|豹のような斑点模様に由来

海豹(アザラシ)は海棲哺乳類(海獣)の一種。名称に使われる『豹』は、陸上の静物である『豹(ヒョウ)』のことです。海豹の体にも、豹と同じような斑点模様がありますよね。豹が陸を駆けるように、軽やかに海を泳ぐ海豹にピッタリの名前といえるでしょう。

海豚(イルカ)|豚に似ている姿から命名

かわいらしい顔を持つ海豚(イルカ)の名前は、中国に由来します。16世紀の中国の百科事典では『海豚は海中に住んでおり、形は豚に似ている』と記載されていたそうです。『そんなに豚に似ている?』と思うかもしれませんが、国や時代が異なれば動物の見方も変わるもの。当時の中国の人々の感覚が、現在も漢字として受け継がれているのです。

海栗(ウニ)|栗のようにトゲトゲの見た目

高級食材として有名な海栗(ウニ)。名前の由来は文字通り『海に生息する栗のような生き物』です。実はウニは状態によって漢字表記も異なります。生物としてのウニは『海栗』、殻から取り出した中身は『海胆』、食用加工された海胆は『雲丹』と表記します。
膃肭臍(オットセイ)|アイヌ民族の薬文化

数ある海の生き物のなかでも、難解な漢字の代表格といえる膃肭臍(オットセイ)。この名称は、オットセイを狩猟していたアイヌ民族の言語に由来します。
『膃肭』は中国語で『丸々と太った』という意味。そして膃肭臍の『臍(ヘソ。当時の陰茎)』は、アイヌ民族によって漢方として用いられていました。
海月(クラゲ)|海に浮かぶ月のような姿

海月(クラゲ)は名前の通り、海に漂う月のような見た目から命名されました。なんともロマンチックな名前ですよね。透明なゼラチンで構成された海月は、体の約95%が水でできています。海上から見ると、空の月が水面に反射しているような幻想的な姿が楽しめます。

猟虎(ラッコ)|アイヌ語の呼び方がルーツに

猟虎(ラッコ)も膃肭臍と同様に、アイヌ語をルーツとする漢字です。アイヌ語の時点ですでに猟虎は『rakko』の名称で呼ばれており、同音を漢字表記したのが由来とされています。そのため『虎』に強い意味はなく、ほかにも『海獺(獺:カワウソ)』や『獺虎』と表記されることもあります。

【川の動物編】漢字の名前の由来3選!
川にも、珍しい漢字を持つ名前がいっぱい!ここでは、川に住む動物たちの漢字の由来を紹介します。名前に与えられた漢字から、動物たちの生態を学んでみましょう。
井守(イモリ)|水場を守る生き物

井守(イモリ)は『井戸などの水場を守る生き物』に由来しています。家守が陸の害虫を食べるように、井守は井戸や田んぼの害虫を食べてくれるのです。混同されやすい2種ですが、家守はヘビと同じ爬虫類、井守はカエルと同じ両生類であり、生態は大きく異なります。
河馬(カバ)|オランダ語をストレートに翻訳

河馬(カバ)の漢字は、オランダに由来するといわれます。オランダ語でカバは『revierpaard』。直訳すると『川の馬』と、漢字そのままの意味なのです。河馬の鳴き声や形態が馬に似ていることから名づけられた説が有力です。
家鴨(アヒル)|鴨を家禽化した品種

家鴨(アヒル)は、カモ科のマガモを家禽化した生き物。野生の鴨を飼いならして使役した背景から名づけられました。家禽とは、品種改良によって肉・卵・羽毛などを得るために飼育されている品種。そのため野生の家鴨は本来存在しません。現在公園や川で生息している家鴨は、すべて遺棄や脱走によって繁殖した個体です。
【空の動物編】漢字の名前の由来4選!
ここでは、空で生活する動物の漢字の由来を紹介します。空は海と同様に、人間にとって未知の部分が多い領域。空を自由に羽ばたく生き物たちの名前のルーツを探ってみましょう。
蝙蝠(コウモリ)|見た目や生態の特徴が含まれている

蝙蝠(コウモリ)はれっきとした哺乳類の一種。ですが名前には虫偏が付いていますよね。蝙蝠は中国で名づけられた名称なのですが、当時の中国では『虫偏=虫類』という意識は低く、動物そのものを指す傾向にありました(例:蛇、蛙など)。
蝙蝠の『扁』には『平たい動物』、『畐』には『へばり付く』という意味が含まれています。つまり蝙蝠の名前には『飛ぶ姿は平べったく、止まるときは壁や物にへばり付く』という生態が含まれているのです。

金糸雀(カナリア)|金色の体を持つ美しい小鳥

金糸雀(カナリア)は、美しい鳴き声が特徴的な鳥です。『金糸』とは、金箔を貼って切った和紙のこと。金糸雀は金色の羽を持つことから、見た目の華やかさを表した名前が付けられました。また『雀』は鳥類のスズメだけではなく、小鳥全般を表す漢字です。
雲雀(ヒバリ)|雲に届きそうなほど高く飛ぶ

雲雀(ヒバリ)の『雀』も、小鳥の意味から付けられています。『雲』は、雲に届くほど天高く飛ぶ姿から名づけられました。実際に、雲雀は飛行能力が高い鳥。空高く舞いながらさえずることで、求愛や縄張りを宣言する『空鳴き』という能力を持ちます。
時鳥(ホトトギス)|田植えの『時』を告げる鳥

時鳥(ホトトギス)の名前の由来は『時間を告げる鳥』。時鳥は毎年初夏になると到来する性質を持ち、昔の人は時鳥の鳴き声を農耕のサインにしていました。田植えを始める『時』を教えてくれることから、時の名が冠されたのです。
漢字の意味を調べると、動物たちの生態や歴史も学べる!

今回は、動物たちの漢字の由来を紹介しました。
漢字の意味を調べると、動物たちの生態や、人間との関係性を学べます。今回ここで紹介した名前以外にも、難しい漢字や意外な漢字を持つ動物は多く存在しています。
ぜひこの機会に身近な生き物の名前を調べ、漢字の意味をリサーチしてみましょう。普段はカタカナで呼んでいる動物にも、面白い日本語表記が秘められているかもしれませんよ。




