- ウニはヒトデやナマコと同じ棘皮動物の仲間
- 管足と棘を使って移動する
- アリストテレスの提灯という独特な口で餌を食べる

高級食材として知られるウニ。お寿司やウニ丼で味わう機会はあっても、海の中でどんな暮らしをしているのかは意外と知られていません。ウニは棘だらけの体で岩にしがみつき、海藻を食べながら生きている面白い生き物なのです。
日本の海にはさまざまな種類のウニが生息しており、見た目や生態も多種多様。中には毒を持つものや、一見ウニに見えない平べったい姿のものまでいます。この記事では、ウニの基本的な体のつくりや生態、そして日本近海で出会える個性的なウニの仲間を紹介します。ウニのことを知れば、海辺での観察や水族館巡りがもっと楽しくなるでしょう。
ウニってどんな生き物?棘だらけの体や生息環境など基本情報

ウニは身近な海の生き物ですが、詳しい生態を知らない人も多いのではないでしょうか。まずはウニがどんな生き物なのか、体のつくりや生息環境など基本情報を見ていきましょう。
ウニは棘皮動物の仲間
ウニはヒトデやナマコと同じ『棘皮動物(きょくひどうぶつ)』に分類される生き物です。棘皮動物の特徴は、体の表面に石灰質の骨片を持ち、五放射相称という独特の形を持つことです。見た目は丸いですが、体を観察すると5つの区画に分かれた構造になっています。
日本近海だけでも100種類以上のウニが確認されており、浅い磯から水深数百mの深海まで、幅広い環境に生息しています。種類によって棘の長さや色、形状が大きく異なるため、観察してみると「こんなウニもいるのか!」と驚かされるでしょう。
棘と殻でできた不思議な体のつくり
ウニの体は石灰質の殻と、その表面を覆う無数の棘で構成されています。殻は『殻板』と呼ばれる小さな板が組み合わさってできており、その隙間から棘や管足が生えているのです。
棘は捕食者から身を守るだけでなく、移動を補助したり岩の隙間に挟まって体を固定したりする役割も果たします。種類によって棘の太さや長さは異なり、短く密集しているものもあれば、細く長い棘を持つ種類などさまざまです。
殻の中には内臓が詰まっており、私たちが食べている部分は生殖巣にあたります。口は体の下側中央にあり、肛門は上側にあるという上下が明確な構造です。
ウニの生息地や生息環境はどんなところ?
ウニは主に岩礁域や藻場に生息し、岩や海藻に付着して生活しています。波が穏やかな浅瀬から、潮の流れが速い外洋、さらには深海まで、種類によって好む環境は異なるのです。
多くのウニは昼間は岩陰に隠れ、夜になると活発に動き出して餌を探します。岩に開いた穴や割れ目に体を押し込み、外敵から身を守りながら暮らしているものも少なくありません。
食性や繁殖方法などウニの生態を解説

ウニは棘だらけの体でどうやって移動し、何を食べているのでしょうか。ここではウニの移動方法や独特な口のしくみ、そして繁殖の流れまで、知られざる生態について詳しく見ていきます。
ウニの移動方法 管足の働き
ウニは棘だけでなく『管足(かんそく)』という小さな吸盤のような器官を使って移動します。管足は体表から伸びる細長い管状の突起で、先端に吸盤がついており、岩にしっかりと吸い付くことができるのです。
体内には水管系という独特の器官があり、海水を取り込んで管足に送り込むことで伸び縮みさせています。複数の管足を協調的に動かすことで、ゆっくりと這うように移動するのです。
棘も移動を補助する役割を果たします。棘を支点にして体を傾けたり、岩の凹凸に引っかけたりしながら前進するため、見た目以上に器用に動き回ることができます。
ウニはどうやって餌を食べる?『アリストテレスの提灯』のしくみ
ウニの口には『アリストテレスの提灯』と呼ばれる複雑な咀嚼器官があります。古代ギリシャの哲学者アリストテレスが、その形を提灯に例えたことからこの名前がつきました。この器官は5枚の歯と、それを支える骨格、そして歯を動かす筋肉から構成されています。
多くの種類はこの口で、岩に付着した海藻やこびりついたデトリタス(有機物の残骸)を削り取るようにして食べます。この口は強力で、1ヶ所で食べ続けると、岩に穴が開いてしまうほどです。
ウニはどうやって殖える?体外受精から幼生期・成長まで
ウニの繁殖は体外受精で行われます。春から夏にかけて、オスは精子を、メスは卵を海中に放出するのです。この放卵・放精は月の満ち欠けや水温の変化に影響を受け、多くの個体が同時に行うことで受精の確率を高めています。
受精卵は海中で発生し、その後プルテウス幼生という浮遊生活をする幼生になります。この幼生は腕のような突起を持ち、プランクトンとして海を漂いながら成長するのです。
数週間から数ヶ月かけて変態し、海底に着底すると稚ウニになります。この時点ではまだ1ミリにも満たない小さな体ですが、すでに棘や管足を備えており、岩に付着して生活を始めます。その後、数年かけて成体へと成長するのです。
個性豊かなウニの仲間5選

ウニは世界に約900種類いるとされています。棘の形や色、生息環境もさまざまです。ここでは日本近海で見られる特徴的なウニを5種類紹介します。
広い範囲に生息するムラサキウニ

ムラサキウニは日本各地の浅い岩礁域に広く分布するウニです。名前の通り、紫がかった黒色の棘を持ち、殻の直径は5〜6cmになります。浅い磯でも観察しやすく、岩の隙間や海藻の茂みに潜んでいる姿をよく見かけるでしょう。コンブやワカメなどの大型海藻を好んで食べ、時には海藻の根元をかじって流してしまうこともあります。
食用としても流通しており、身はオレンジ色で濃厚な味わいがあります。漁獲量が多く比較的手頃な価格で入手できるため、ウニ丼や軍艦巻きなどに使われることが多いです。
高級ウニとして知られるアカウニ

アカウニは赤みがかった棘を持つウニで、殻が扁平な形をしていることからヒラタウニとも呼ばれます。九州南端から本州北端まで広く分布し、大きさは直径7cm程度です。岩礁地帯の岩陰や岩の下など、比較的浅い海域に生息しています。
身は黄色で甘みが強く、独特の風味と心地よい口溶け感が特徴で、特に山陰以西では重要な食用ウニとして利用されています。それほど漁獲量が多くないため高級食材として扱われています。食材としては『赤ウニ』と呼ばれるものもありますが、そちらはバフンウニを指すことが多く、アカウニとは別ものです。
パイプのように太いトゲをもつパイプウニ

パイプウニは名前の通り、パイプ状の太く短い棘を持つ変わったウニです。棘の色は赤褐色や緑褐色で、個体によって濃淡があります。棘は中空になっており、風鈴など工芸品に利用されることも多いです。殻の直径は3〜4cmと小型ですが、棘が目立つため実際よりも大きく見えるでしょう。
主に南日本の暖かい海に生息し、サンゴ礁や岩礁の隙間に潜んでいることが多いです。太い棘を岩の割れ目に引っかけて体を固定し、波に流されないようにしています。
長い毒棘を持つガンガゼ

ガンガゼは細く長い棘を放射状に伸ばすウニです。棘の長さは20cmを超えることもあり、日本近海のウニの中では最も長い棘を持つ種類です。
この棘には毒があり、刺されると激しい痛みや腫れを引き起こします。棘は非常にもろく、刺さると折れて皮膚に残ることが多いです。むやみに触らないようにしましょう。
比較的暖かい海を好み、関東以南の岩礁域やサンゴ礁に生息しています。夜行性で、昼間は岩陰に隠れ、夜になると活発に動き出します。
ウニの仲間には見えない!タコノマクラ

タコノマクラは一見するとウニには見えない平べったい姿をしています。棘は非常に短く密生しており、ビロードのような手触りです。直径は10cmほどになり、色は茶褐色や灰色の個体が多いです。
東北から九州までの沿岸部に生息し、砂地で生活しています。砂に潜りやすいよう棘が短くなったと考えられます。砂の中の有機物を食べ、一般的なウニとは生活様式が異なるウニです。
実は奥が深いウニを観察してみよう

ウニは食材としてのイメージが強いですが、その生態を知ると実に興味深い生き物だということが分かります。
日本の海にはさまざまな種類のウニが暮らしており、それぞれに適応した環境で独自の生き方をしています。磯遊びや海水浴の際に岩場を観察すれば、ムラサキウニやアカウニに出会えるかもしれません。水族館に行けば、普段見られない深海性のウニや、変わった形のウニを観察することもできるでしょう。
ウニを見かけたら、ぜひ棘の形や色、動き方に注目してみてください。じっくり観察すると、管足を伸ばして岩を這う様子や、口を動かして餌を食べる姿が見られます。ウニの世界を知れば、海の見方がきっと変わるはずです。




