- カンガルーの袋は、メスだけが持つ『育児嚢』
- カンガルーの赤ちゃんはわずか2cm!袋の中で1歳まで育つ
- キック力だけじゃない!社会性やコミュニケーション能力も高い動物

カンガルーは、オーストラリアやタスマニアなどの生息する哺乳類。群れで生活する社会性が高い動物であり、日本でも『多摩動物公園』や『よこはま動物園ズーラシア』など全国各地の動物園で観察できます。
日本で出会えるカンガルーは11種類ですが、世界には約70種類ものカンガルーが存在しているんです。今回は、そんなカンガルーの特徴である『お腹の袋』の正体や、カンガルーの知られざる能力について紹介します。
カンガルーのお腹の袋の仕組み・秘密

まずは、皆さんが恐らく1番気になるところから。カンガルーの袋について紹介します!
カンガルーの代名詞でもある特徴的なお腹の袋は、知っての通り『子どもを育てるポケット』です。ここでは、袋の役割や秘密を詳しく解説していきます。
袋の正体はメスにだけある『育児嚢』
そもそもあの袋の正体は何かというと、『育児嚢(いくじのう)』と呼ばれる器官です。育児嚢はメスしか持たず、オスのカンガルーは育児に参加しません。
人間を含む多くの哺乳類は、妊娠中に子宮内の胎盤を通し、お腹の子どもに栄養を与えます。しかしカンガルーをはじめとする『有袋類』の生き物は、胎盤がありません(もしくはあったとしても、子どもに十分な栄養を与えられません)。
そのためカンガルーの赤ちゃんは、未熟児の状態で生まれます。親カンガルーは出産後、育児嚢のなかで『未熟児が十分に成長するまで守りつつ育てる』のです。
つまり育児嚢は『子宮の引継ぎ役』のような器官。『生まれた子どもを育てる袋』というよりは『未熟な子どもを成熟させるための袋』といえるでしょう。
袋の中には『母乳が出る乳首』がある
未熟児で生まれた赤ちゃんの飼育では、十分な栄養補給が欠かせません。育児嚢の中は安全なだけではなく、栄養満点の母乳が出る乳首が4つ付いています。
カンガルーの母乳に含まれる栄養素は、人の母乳と同じように赤ちゃんの発育段階に応じて変化するのだとか。人の場合も赤ちゃんはすぐには一人で生きていけない、いわば未熟な状態で産まれます。
人の場合は胎盤を通してある程度育ちますが、カンガルーには胎盤がありません。人よりももっと未熟な状態で赤ちゃんが産まれてくるわけです。母乳の変化は、未熟な赤ちゃんを安全に大きく育てるために、哺乳類の生存戦略が成し得た神秘的な生態ですよね。
カンガルーはジャンプにキックにと動きが激しい生き物ですが、育児嚢の赤ちゃんは乳首にぶら下がっていれば、潰されずに安全が保たれます。
生後の体長は約2cm!育児嚢で少しずつ成長

生まれたばかりの赤ちゃんの大きさは、なんと約2cm!体重も1g程度しかありません。成体の体長が約1.6m程度と考えると、あまりにも小さすぎます。
カンガルーの妊娠期間は最大でも40日程度なので、未熟児を出産するのも頷けますよね。これだけ小さければ、育児嚢にもまったく問題なく収まります。
赤ちゃんが袋から出るのは生後半年頃
約2cmで生まれた赤ちゃんは、自力で親の表皮をよじ登り、育児嚢に入ります。赤ちゃんが袋から顔をのぞかせるのは、毛並みが生えそろいはじめる生後半年頃。
日本で見かけやすい『アカカンガルー』の場合、生後半年の体重は約1.2kgです。まだまだ小さいですが、半年で1gから1200gになると考えると、あまりにも早い成長スピードですよね!
しばらくは袋から時々顔を出しながら、外の様子を伺います。たまに外に出ては袋に戻る時期を繰り返しながら、生後1年頃を目安にようやく独り立ちするのです。
参考:BOWLAND MATHS「GROWTH CHART」
袋のお掃除はお母さんの役目
赤ちゃんは育児嚢で母乳を飲んで成長するため、もちろん排泄もします。うんちやおしっこをどこにするかというと、もちろん育児嚢の中。
親カンガルーは時々育児嚢に顔を入れ、排泄物を舐めとって『お掃除』をします。その光景は、まるで人間のお母さんが赤ちゃんのおしめを変えてあげるが如し。まさに母の愛が成せる業ですよね。
とはいえ赤ちゃんは母乳しか口にしないため、排泄物の臭いは強烈というわけではないようです。反対に、子どもが入っていないときはお掃除をしないため、汚れや湿度で臭いも強くなるといわれています。
袋の中の様子は…イメージとは違う?!
育児嚢の中身の色は、実は内臓の色に近いんです。表皮と同じ色のイメージを持っている人には、少しショッキングな見た目かもしれません。
毛は生えておらず、血管が通っているのが透けて見えます。赤ちゃんにとっては、お母さんの体温を直接感じられる環境なのです。
カンガルーだけじゃない!袋で子どもを育てる『有袋類』

お腹の袋で子どもを育てる有袋類は、カンガルーだけではありません。ここでは、カンガルー以外の有袋類の仲間たちを一部ご紹介します。
コアラ|筋肉で開閉できる育児嚢

カンガルーの袋は上向きですが、コアラの育児嚢は下向きに付いています。袋の口は筋肉で閉じられるため、落下の心配はありません。またコアラの赤ちゃんはお母さんの糞を離乳食にするため、下向きに付いていれば食事も簡単になります。
ウォンバット|子どもを土から守る形状

ウォンバットの育児嚢は、後ろ向きに付いています。つまり正面から見たときに、お尻側に出入口があるということ。ウォンバットは巣穴を作るために土を掘る習性を持ちますが、育児嚢が後ろに付いていれば子どもに土がかかる不安もありません。

フクロモモンガ|乳首が膨らみ赤ちゃんをガード

フクロモモンガも、名前の通り育児嚢を持つ動物。カンガルーと同様に袋の中には乳首があります。赤ちゃんは育児嚢に入るとすぐに乳首に吸いつくのですが、この際に乳首が膨らみ、赤ちゃんの顎が外れないようになるのです。
【番外編】タツノオトシゴ|オスが育児嚢で子育てをする

タツノオトシゴは、自然界でも珍しい『オスが育児嚢を持つ生き物』です。メスはオスの育児嚢の中に産卵管を差し込み産卵します。受精は育児嚢の中でおこなわれ、胚(卵のなかで発生する幼生)はオスから栄養をもらって大きくなります。
パンチにキックにジャンプも!カンガルーの知られざるパワー

ここでは、カンガルーに秘められた能力について紹介します。
カンガルーの武器といえば、圧倒的なキック力!実は脚の力だけではなく、強力な尻尾や高い社会性などさまざまな特徴を持つ生き物です。
強靭な後ろ足!1回のジャンプで8mも跳ぶ

カンガルーの移動は、歩きではなくジャンプ。つねに飛び跳ね続けるカンガルーの脚力はとても強く、1回のジャンプで8mも跳ぶことができます。
ただしジャンプの方向は前方のみ。カンガルーは後ろや横には進めない生き物なのです。『つねに前進する』というポジティブな性質から、カンガルーはオーストラリアの国章にも登場しています。
最高時速は50km!ウサインボルトより早い
カンガルーは走る際も『ジャンプによる前進』です。ジャンプだけとはいえ、その最高時速は約50km!ウサインボルトの最大速度よりも早いんです。
普段は尻尾を地面につけているカンガルーですが、本気で走るときは尻尾を上に上げ、地面との摩擦を減らします。場所によっては、時速70km近い猛スピードも出せるとされています。
超絶なキック力の秘密は『第5の足』である尻尾!

カンガルーの尻尾はただの飾りではありません。ジャンプをするときに体のバランスを整えたり、方向転換をしたりする際に役立つ器官です。
カンガルーの尻尾は非常に太く、筋肉隆々。戦うときは尻尾のみで全体重を支え、ドロップキックのように両足で相手を蹴り飛ばします。そのキック力は、人間が食らうと内蔵が破裂するほどの強さです。
実はパンチも得意!キックを決めるための補助的役割
カンガルーは、実はパンチも得意であることを知っていますか?キックほどの強い力はありませんが、相手を突き飛ばしたりバランスを崩したりなどで活躍します。
またカンガルーの爪はとても鋭く、パンチの当たり所次第では相手に大けがさせることもあります。
コミュニケーション能力に長けた生き物
群れで暮らすカンガルーはコミュニケーション能力が高く、多様な伝達手段を持っています。たとえば危険を感じると、後ろ足を踏み鳴らして仲間に伝えます。
また『袋から出ている子どもを呼び戻す』ための鳴き声も。ほかにも鼻を触ったり咳をしたりなど、言葉以外のジェスチャーコミュニケーションも多い動物です。
パワフルなのに子煩悩!カンガルーは愛情深い生き物

今回は、カンガルーの袋の秘密や、隠された能力などを紹介しました!
子煩悩なのにパワーも抜群!と、優しさと強さを兼ね備えた動物であるカンガルー。動物園でもカンガルーは人気者で、子どもが生まれると多くの来場者で賑わいます。
ぜひこの機会に最寄りの動物園をチェックして、本物のカンガルーに会いに行ってください!




