- ミノムシの中身はミノガの幼虫
- 実は絶滅危惧種にも選定されている
- 成虫の姿はオスとメスでかなり違う!
冬になると、木の枝にぶら下がっているミノムシを見かけたことがあるでしょう。ミノに入って寒さをしのぐ姿が可愛らしいですよね。
そんなミノムシを見て「中には何が入っているの?」「ミノは何でできているの?」などの疑問を抱いている人も多いはず!
記事ではミノムシの中身や成虫になった姿、生態について詳しく解説します。冬の風物詩でもあるミノムシについて知りたい人は、ぜひ記事の内容を確認してください。
ミノムシの中身は「蛾の幼虫」

ミノムシは『ミノガ』という蛾の幼虫です。ずっとミノに入って木にぶら下がっているわけではなく、餌を食べるときなどにはミノの上から上半身を出して移動します。
ミノに入りながら動く姿は、なんとも可愛らしい。鳥や人間などの天敵が近づくと、スッと頭をミノに引っ込めて隠れます。
成虫の姿はメスとオスで異なる!
ミノムシが成虫になると、ミノガという蛾になります。ミノガは口が退化し餌を取れないため、幼虫のときに蓄えた栄養がなくなると死んでしまうのが特徴です。
また、成虫になったオスとメスの姿が大きく異なるのも、ミノガが持つ個性のひとつ。
オスが成虫になると翅(はね)が生えて、ほかの蛾と同じように飛べるようになります。しかし、メスの場合は卵を産むためだけに成虫になるため、翅だけでなく手足や目などもない、ソーセージのような見た目をしています。
ミノムシの寿命は約1年
ミノムシの寿命は約1年といわれています。初夏になったタイミングで卵から孵(かえ)った幼虫は、母親が作ったミノから出て、糸を垂らして風に乗って移動します。移動した先で今度は自分たちでミノを作るのです。
そして秋になるまで木の葉を食べて成長し、冬になるとミノを木に固定して冬眠。
春になってサナギになり羽化して成虫になると、交尾をしてオスは死にます。メスもミノの中に卵を産んで一生を終えるのです。
ミノムシは絶滅危惧種のひとつ

「最近、ミノムシを見ていないな…」という人もいるでしょう。実は、ミノムシは絶滅危惧種に選定されています。
なぜ絶滅危惧種になったのかというと、1990年代に日本に入ってきた「オオミノガヤドリバエ」という寄生バエが原因です。
オオミノガヤドリバエという名前のとおり、ミノガの一種である『オオミノガ』が棲む場所の近くの葉っぱに卵を産み、オオミノガの幼虫が葉っぱとハエの卵を一緒に食べることで、寄生します。
オオミノガの幼虫の体内で孵化したハエは、栄養を奪いながら成長し、しまいには幼虫の体内を突き破って出てきます。オオミノガはこの寄生バエに対抗する手段を持っていないため、一方的に寄生されて数が減っているといわれているのです。
ミノムシの種類は50種類
日本には、約50種類のミノムシが生息しているといわれています。特に、サイズが大きくて目立つ種類としては『オオミノガ』と『チャミノガ』があげられるでしょう。
オオミノガのミノムシは木にだらりとぶら下がっていて、紡錘形(ぼうすいがた)をしているのが特徴です。チャミノガのミノムシは木にしっかりついており、円筒形をしています。
木にぶら下がっている姿を見かけたときは、どのミノガのミノムシなのか観察してみるのも楽しそうですね。
ミノの中身はどうなっているの?

ミノムシを見ると「中身はどうなっているの?」という疑問を抱く人も多いでしょう。ここでは、ミノについての気になる疑問にお答えします。
糸でミノをつくる
ミノムシは口から糸を出して、枯葉や小枝をつなぎ合わせてミノを作ります。ミノムシが出す糸はクモが出す糸よりも強く、ナイロンの4倍の強度があるともいわれています。
枯葉や小枝以外にも、毛糸やちぎった折り紙などの素材でもミノを作ることが可能です。
ミノの着せ替え実験は慎重に
毛糸や紙などでミノの着せ替えを観察したい場合はまず、ミノムシを傷つけないようにミノの両端を切って中から出します。無理やりミノをはがすと幼虫を傷つけてしまう可能性があるので、慎重に出しましょう。
そして、出てきた幼虫を手頃な容器に入れて、幼虫よりも小さく切った毛糸や折り紙を上からかけてあげます。2〜3日経つと、入れた材料で新しいミノを作った姿が見られるでしょう。
ただし、着せ替え実験はミノムシの負担になることがあるので、遊び目的だけで行わないようにしてください。
ミノの中身はフワフワとしている
ミノの内側は、ミノムシの糸で作ったフワフワとした構造になっています。この部分があることで空気の層ができて、冬の寒さに対応できるようになっているのです。
ミノを作ってぶら下がるのは身を守るため
ミノを作ってぶら下がるのには理由があります。枯葉や小枝で作ったミノをまとってぶら下がることで、周囲に溶け込み、外敵から見つからないようにしています。
いつ?ミノムシが見られる季節

ミノを作ってぶら下がる姿が見られるのは、秋から冬にかけての期間です。秋までに木の葉っぱを食べて大きくなったミノムシは、冬の寒さをしのぐためにミノの中に入り冬眠します。
寒くなると見られるミノムシは、秋の季語としても知られていますね。松尾芭蕉や正岡子規の俳句、清少納言の「枕草子」にも登場しており、秋や冬の風物詩として長く愛されている生き物です。
ミノムシを見つけたらそっと観察してみよう

木にぶらぶらとぶら下がる姿が可愛らしいミノムシ。寒い冬を越すために、ミノガの幼虫が木や葉っぱを集めてミノを作っています。
見つけたら木から離したりミノをはがしたりせず、そっと観察してみてくださいね。