- グッピーは南米北部が原産地の熱帯魚
- 美しい色彩・卵胎生で繁殖が容易なことから観賞魚として人気が高い
- 環境適応力が高く、世界各地で野生化が問題となっている

水槽の中でひときわ目を引く、色とりどりの尾びれをなびかせて泳ぐ小さな魚、それが『グッピー』です。アクアリウム初心者から上級者まで、多くの人を魅了し続けるこの魚は、熱帯魚の定番として知られています。
「きれいな魚を飼ってみたい」「小型水槽でも飼えるって本当?」と興味を持つ人も多いのではないでしょうか。今回は、そんなグッピーの基本情報から種類の違い、そして飼育の注意点まで、初心者にもわかりやすく解説します。
生息地や大きさなどグッピーの基本情報

グッピーの生息地や大きさ、特徴などを紹介します。まずはグッピーがどんな魚なのかを見ていきましょう。
グッピーはどんな魚?生息地や生息環境は?
グッピーはカダヤシ科グッピー属の淡水魚です。カリブ海に浮かぶ小アンティル諸島南部にあるトリニダード・トバゴや南アメリカ北部が原産魚です。もともとは淡水に生息していますが、弱い汽水域に侵入することもあり、比較的水質の変化に強い魚として知られています。
水質の変化に強いことに加え、観賞魚として人気があること、繁殖力が旺盛なことから、逃げ出したグッピーが世界各地で野生化しています。
グッピーの大きさや食性は?
グッピーの成魚の体長は3~5cmほどです。特にオスは色鮮やかな体色と大きな尾びれを持つ個体が多く、実際のサイズ以上にボリュームがあるように見えます。それゆえに、観賞魚として高い人気を誇ります。
寿命は1~2年と短いです。環境が整った飼育下では、3年程度生きる個体もいます。寿命が短いため、繁殖サイクルも短いです。
自然下では小さな昆虫や藻類・デトリタス(※1)も食べる雑食性です。人工飼料にもよく慣れるため、飼育は比較的しやすいといえるでしょう。
※1:生き物の排泄物や死骸などが、分解されることによってできる細かい有機物の粒。またその粒に付着するバクテリアなどの微生物のこと
オスとメスで見た目が違う魚
グッピーの特徴のひとつが『性差がはっきりしている』ことです。オスは体が細くて尾びれが大きく、赤・青・黄色といったカラフルな模様をまとっています。一方のメスはやや丸みを帯びた体型で、体色も地味な傾向にあります。
この見た目の違いから、ペアをそろえて飼育しやすいのがメリットです。ペアで飼育し、繁殖を楽しみやすいことが観賞魚として人気の理由の1つです。
子どもを産む卵胎生
グッピーは『卵胎生』と呼ばれる繁殖方法を持っています。これは体内で卵を孵化させてから、直接稚魚を産むという方法です。1回の出産で30匹以上が産まれます。産み落とされた稚魚はすでに7mmほどあり、遊泳力もあるので生存率が高くなるのです。
寿命が短いグッピーは、生まれて3~4ヶ月で繁殖可能になります。繁殖サイクルが早く、稚魚の生存率が高いことから、気づいたら何十匹もの稚魚が泳いでいた、ということも少なくありません。
国内での定着が警戒されている
グッピーは丈夫で繁殖力も強いため、自然界に逃がされてしまうと生態系に影響を与える可能性があります。実際に、日本国内でも一部地域では野生化したグッピーが確認されており、環境省によって『定着が懸念される外来種』に指定されています。
もともと暖かい地方の魚ですが、関東以南の地域では越冬する可能性が高いです。近年の温暖化による暖冬の影響や、温泉の近く、温排水が流れる川などで冬を越す個体が少なくないのです。
『飼いきれなくなったから池や川に放す』といった行為は絶対にやめましょう。飼育が難しくなった場合は、責任を持って引き取り手を探すか、専門の相談窓口に相談してください。
グッピーの種類にはどんなものがいる?

グッピーには大きく分けて『原種グッピー』『外国産グッピー』『国産グッピー』の3種類がいます。それぞれどんな種類なのか見ていきましょう。
控えめな体色が魅力【原種グッピー】

原種グッピーは品種改良されていない、自然界に生息するグッピーです。『ワイルドグッピー』とも呼ばれます。
グッピーというと、華やかな尾びれと鮮やかな体色をイメージする人が多いでしょう。原種グッピーは体色は控えめで、オスの尾びれもそれほど大きくありません。改良された個体とはまた違った、自然の美しさを楽しめるのが魅力です。
観賞用に品種改良されたグッピーと比べて、やや神経質な面があります。飼育の際は、水質や水温の管理は丁寧に行う必要があります。
カラフルな体色が美しい【外国産グッピー】

外国産グッピーは、主に東南アジアなどで大量に繁殖・輸出されているグッピーです。アクアショップやホームセンターででよく見かけるのはこちらのタイプです。
比較的安価で手に入りやすく、カラーバリエーションも豊富なのが魅力といえるでしょう。ほとんどのお店では、さまざまな体色の個体がミックスで販売されています。「たくさん水槽に泳がせたい」「まずはグッピーを飼育してみたい」という人におすすめです。
ただし輸送のストレスや、現地との水質の違いにより体調を崩しやすい一面もあります。最初は中性~アルカリ性で飼育をはじめる必要があります。徐々に慣らしていけば、弱酸性でも飼育できるようになるでしょう。
日本で生まれ育った【国産グッピー】

国内のブリーダーによって繁殖され、流通しているグッピーが『国産グッピー』です。もともと日本で育てられているので、水質や環境にもなじんでおり、外国産グッピーと比べて飼育しやすいです。
価格はやや高めですが、個体の発色の美しさやヒレのバランスなどには定評があり、こだわりのあるアクアリストに人気があります。外国産グッピーと違い、品種ごとにペアもしくはトリオで販売されていることが多いです。
代表的な品種には『ドイツイエロータキシード』や『ブルーグラス』などがあり、見ているだけで楽しくなるほど美しい魚です。飼育したい品種が決まっている人、自分で品種改良をしてみたい人におすすめします。
グッピーの飼育は難しい?

グッピーの飼育について解説します。基本的には丈夫な魚で飼育しやすいですが、大切なポイントを押さえておきましょう。
グッピーに始まりグッピーに終わると言われる
アクアリウムの世界には『グッピーに始まりグッピーに終わる』という言葉があります。
グッピーは丈夫で飼育しやすいことから、初心者が最初に飼育する魚として選ばれることが少なくありません。比較的安価で、華やかな外見から人気が高いです。
その一方でその美しい体色と繁殖サイクルの短さから、交配をしてオリジナル品種を作出しようとするベテランアクアリストも多いです。遺伝の勉強をし、交配して生まれた子どもがどのような体色になるのか予想を立てながら交配を楽しみます。
グッピーは熱帯魚の入門種としての存在でありながら、ベテランアクアリストをも魅了するほど奥深い魚なのです。
小型の水槽でも飼育可能
グッピーは体が小さく、比較的少ない水量でも飼育が可能です。たとえば、30cmほどの小型水槽でも数匹のグッピーであれば飼うことができます。グッピーは群れで泳ぐ習性があるため、最低でもペア以上で飼育することで、落ち着きやすいでしょう。
飼育をする際は、しっかりと飼育環境を整えることが大切です。フィルター・ヒーター・ライトを用意し、グッピーが好む環境を用意しましょう。小型水槽は水質の変化も早いので、小まめな水換えも必要となります。
繁殖しやすいので注意が必要
前述の通り、グッピーは卵胎生で繁殖しやすい魚です。オスとメスを一緒に飼っていると、数ヶ月のうちに稚魚が増え、あっという間に水槽が過密になってしまうこともあります。過密状態は水質悪化や病気の原因になるため、適度な数を保たなくてはいけません。
トラブルを防ぐためには、事前に計画を立てて飼育をすることが大切です。稚魚が増えたときのことを考え、最初から余裕のある水槽で飼育する、大きな水槽を用意しておく、オスだけで飼育するなど対策をしておきましょう。増えた稚魚を引き取ってくれるショップを探しておくのも1つの方法です。
鮮やかなグッピーの魅力に迫ろう

グッピーはその鮮やかな見た目や繁殖の面白さから、長年多くのアクアリストを魅了してきた魚です。小さな水槽でも飼育ができる手軽さと、深く追求できる奥深さを併せ持つ存在として、初心者からベテランまで幅広く支持されています。ただし、繁殖力が高いため計画的な飼育が必要であり、自然への放流は絶対に避けなければなりません。
「美しい魚を育ててみたい」「水槽に彩りがほしい」と考えている人にとって、グッピーはぴったりの存在です。ぜひ、あなたもグッピーの魅力を感じてみてください。