- ニワトリはキジの仲間で起源は赤色野鶏(セキショクヤケイ)という野鳥が起源
- 人をよく覚え、ペットとしても魅力的な動物
- 飼育を開始したら『家畜保健衛生所』に届出しよう
- ペットには、チャボ・ウコッケイ・コシャモがおすすめ

監修者

ttm 医師
岩手大学で動物の病態診断学を学び、獣医師として7年の実績があり、動物園獣医師として活躍中。動物の病態に精通し、対応可能動物は多岐にわたる。
ニワトリと聞くと、思い浮かぶのは卵やチキンといった食べ物ですね。ニワトリは私たちの食生活を支えてくれる大切な産業動物です。
一方で、あまり知られていませんが、ペットとしても独特の存在感を持つ動物です。
今回は、動物園獣医師としてニワトリの診療や飼育に関わる筆者が、ニワトリについて解説し、ペットという側面からニワトリの魅力をお伝えします。
ニワトリの起源は赤色野鶏(セキショクヤケイ)。品種は数百にも!

ニワトリが実はキジの仲間だというのを知っていますか?ここではニワトリの起源や品種について解説します。
ニワトリの起源
ニワトリは、分類学上はキジ目キジ科に属するキジの仲間です。キジといえば、長い尾の美しい姿が思い浮かびますね。ニワトリとは似ても似つかないように思えるでしょう。
しかし、ニワトリの起源である赤色野鶏(セキショクヤケイ)という野鳥を見れば納得するかもしれません。
赤色野鶏は、インドから中国南部にかけて生息する鳥で、東南アジアを中心に盛んに飼育されてきました。この鳥を品種改良し、家禽化したものがニワトリです。
赤色野鶏のオスは、光沢のある赤や褐色といった鮮やかな色彩で、長い尾を持ちます。光の加減で複雑に輝く様子はキジの美しさにひけをとりません。
ニワトリの品種は世界で数百種類
ニワトリは、東南アジアから世界中に広まり、それぞれの地域で多種多様な品種が誕生しました。
世界中で何種類の品種が存在するのか、正確な情報はありません。例えばイギリスでは93種、オーストラリアでは60種の品種が認定されています。
日本にも50種以上の品種が存在するため、少なくても全世界では数百種類の品種がいると言えるでしょう。
時々「チャボとニワトリは違う種類なのですか?」と聞かれることがあります。「チャボもニワトリの一種ですよ」とお答えしています。チャボやウコッケイ・シャモなどはすべてニワトリの品種名です。
ニワトリと聞いてみなさんが思い浮かべる、白くてトサカの赤い鳥にも、白色レグホンという正式な品種名があります。
人を覚えることと社会性の高さがペットとしても魅力的

ニワトリをペットとして飼っている人も少なくありません。ニワトリはなつくのでしょうか?
『3歩歩くと忘れる』はウソ。ニワトリは記憶力が良い動物
意外かもしれませんが、ニワトリは記憶力の良い動物です。
特に、人のことをとてもよく覚えます。普段お世話をしてくれる人や、一緒にいて心地よいと感じる人を見つけると、犬と同じように一目散に駆け寄ります。
一緒に暮らしていると、自分から膝に乗ってきてお昼寝したり、何か欲しい時はクチバシで軽く突いて要求をアピールしたり、そばを離れずついて歩くなどパートナーとしての魅力も十分です。
こうした様子をなつくと表現するかどうかはわかりませんが、ニワトリはしっかり飼主の顔を覚え、愛情を受け止めてくれる動物だと言えます。
ニワトリの社会性が高さも見ていて飽きない
もし複数のニワトリを飼う余裕があれば、ニワトリの社会を覗かせてもらうのも面白いものです。
ニワトリは仲間を認識し、利益を守ります。たとえば、鳩がやってきて、ニワトリのエサを横取りしようとすると、ほとんどの場合みんなで一斉に鳩を追い払います。
オスはメスを守る習性があり、飼主であってもオスの目の前でメスを抱きあげると、心配そうに周囲をウロウロしたり、あとを追ってきたり、場合によってはつつくこともあります。
複数のオスとメスが混在している環境だと、オス同士が喧嘩になることがあります。
しかし、不思議なことに、一定の年齢になると、メスに対して無関心になるのか、オス同士の闘争がなくなるばかりか、オス同士で寄り添いはじめることもあり、なんとも微笑ましいものです。
ニワトリを入手する方法と届出について

ニワトリを飼う場合、法律で届出が義務づけられています。ここではニワトリの入手法や届出について解説します。
ペットショップや孵化場など代表的な入手場所を紹介
1.ペットショップから購入
一部の大型ペットショップや、鑑賞鳥専門店ではニワトリの扱いがあります。チャボなどペット向けのニワトリを入手することが可能ですが、犬や猫のように常に店頭販売しているケースは多くありません。
インターネットなどで店舗を検索し、入荷状況を問合せると良いでしょう。
ペットショップからの入手の場合、1羽からの購入ができるのがメリットですが、入荷を待たなくてはならないことが多いため、すぐに入手できない点は注意が必要です。
2.孵化場(孵卵場)から購入
孵化場は、受精卵を集めて人工的にヒナを孵す場です。地域の養鶏組合や農協に問合せて紹介してもらうか、インターネットで『孵化場』や『孵卵場』と検索してみましょう。
孵化場からの購入のメリットは、すでにワクチン接種を受けているニワトリを購入できる可能性が高いことです。
しかし、複数のまとめ買いにしか対応してくれないことも多いため、1羽のみをペットとして飼いたい場合は難しいこともあります。
3.里親募集サイトを利用する
他のペットと同様に、ニワトリもインターネット上で里親を募集していることが少なくありません。ほとんどの場合が成鳥なので、ヒナから飼いたい場合は難しいですが、すでに人慣れしたニワトリを入手できることも多いのがメリットです。
里親になる際は、他のペットの場合と同様、個人間でのやり取りとなる場合が一般的なので、トラブル回避のために、譲ってもらう条件などを事前にしっかり確認すると良いでしょう。
飼いはじめたら『家畜保健衛生所』に届出を
ニワトリを飼育する時は『家畜伝染病予防法』という法律に基づき、1羽であっても『家畜保健衛生所』に届出をする必要があります。
ただし難しいやり取りは一切なく、1年に1回書類を1枚~2枚提出するだけです。地域によって内容は多少異なりますが、多くの場合、飼っている場所や連絡先等を記入するだけでOKです。
ペットとしておすすめできるニワトリの品種3つ

ニワトリにはたくさんの品種がいますが、なかでもペットとしておすすめできる品種を3つ紹介します。
おとなしくて愛らしいチャボ

多種多様な見た目と、おとなしい性格で、愛好家が多いのがチャボです。ニワトリはちょっと怖い、と思っている人でも抱き上げるとつい「かわいい!」と口にします。
中でも白と黒の碁石模様の『碁石チャボ』は筆者も大好きなニワトリの一種です。
真っ白でふわふわなウコッケイ

真っ白な綿毛をまとったような見た目がなんとも魅力的なのがウコッケイ。黒い瞳もキュートで「もふもふ」や「ふわふわ」な生き物を飼いたい人におすすめです。
見た目に反して、抱っこしてみると体にはしっかりと筋肉がついていて、存在感があるのも魅力です。
小さいけれどワイルドなコシャモ

闘鶏で有名なシャモを愛玩用に小型化したのがコシャモです。シャモのワイルドさをそのままぎゅっと小型化した姿は、カッコいいとかわいいの両方を兼ねそなえています。
小さな姿ですが、体重は同じくらいのサイズのチャボと比べると1.5倍以上あり、さすがシャモ!と思わせてくれます。
ニワトリをペットにする際注意すること

家禽としての歴史が長いニワトリを、飼育するのはそれほど難しいことではありません。しかし、いくつか注意点があります。
マンションでの飼育は難しめ
ニワトリの飼育には、自由に走り回ったり、ジャンプできるスペースが不可欠です。一般的なマンションでの飼育は難しいでしょう。
庭さえあれば、日中は庭に放し、夜間は家で眠るスタイルで飼育できます。もちろん庭にニワトリ用の小屋を建ててもいいですね。
エサは簡単で、市販のニワトリ用の『チキンフード』と水のみで大丈夫です。その他、野菜やお米・虫なども大好きです。
近所にニワトリを診察する動物病院があるか
他のエキゾチックペットと同様、ニワトリを診察する動物病院はそれほど多くありません。ニワトリは感染症予防のためにワクチンを打つことが望ましいため、通える距離にニワトリを診察できる動物病院があるかどうかを調べておきましょう。
ニワトリは寿命が長い動物
品種にもよりますが、ニワトリの寿命は10年前後と長いです。ペットとしてお迎えする際は、この先の長い時間を一緒に生活できるかどうかの検討が必要です。
オスは鳴き声が大きい
どのような品種であっても、ニワトリのオスの鳴き声は大きいです。オスのニワトリは見た目が美しいことも多いですが、ご近所トラブル防止のために慎重に検討しましょう。
卵目当ての飼育は少し考えて
ニワトリをペットにすれば、毎日卵が食べられることがメリットだと考える人がほとんどです。
しかし、ニワトリは産卵にまつわる病気が大変多いため、長生きをさせたいと考えるなら、獣医師としてはできる限り産卵をさせない飼い方をおすすめします。
エサや日照時間などに気をつければ、産卵を避けられるため、詳しい獣医師に相談すると良いでしょう。
ニワトリを知りたい人は動物園などを訪れよう

今回は、読んでくれた人が、少しでもニワトリという動物に興味を持ってもらえることを目指して記事を執筆しました。
もしニワトリを見てみたくなったら、数は多くありませんが、ニワトリにふれたり近くで見ることができる動物園などを訪れるのもおすすめです。
