- セミの成虫は1週間以上生きることが多く『短命』は誤解!?
- セミの幼虫は数年を地中で過ごし、真菌などの脅威とも戦っている
- セミの鳴き声はオスがメスに求愛するための大切な手段

「セミって、地上に出てきたら一週間で死んじゃうんでしょ?」「地面の中に7年もいるって、どんだけ引きこもり…?」
そんな『セミあるある』聞いたことありませんか?でも実はその『セミあるある』ちょっと間違っているんです。
毎年夏になると耳にするあの鳴き声。その主であるセミには、実は知られざる奥深い生態が。
この記事では、セミにまつわる素朴な疑問に答えながら、セミのリアルな一生を紹介。今年の夏は、ちょっとセミを見る目が変わるはず!
セミは1週間どころか、2週間〜1ヶ月くらい生きることもある!?

セミ=短命。そんなイメージ、ありますよね。でも実はセミって、地上に出てから1週間以上生きるって知ってましたか?
たしかに「セミは成虫になってから1週間しか生きられない」という話は有名ですが、これにはちょっと誤解があるんです。実際は環境さえ整っていれば、2〜3週間、長ければ1ヶ月近く生きることもあるそうです!
じゃあ、なぜ『1週間』説が広まったのか?その理由は、セミの命がけの『恋愛』にあります。
セミの恋愛は、オスのセミが、地上に出たその瞬間からメスを求めて鳴き続けるところから始まります。オスのセミは、自らのエネルギーを消耗しながら、命を削るように鳴き続ける姿が『短命で儚い』というイメージにつながったのかもしれません。
さらに、セミは天敵が多く、カラス・人間・他の昆虫にも狙われてしまうため、実際に1週間ほどで死んでしまう個体も多いのも事実です。でもそれは『生きられる期間』ではなく、『生き残れる確率』が低いという話なんです。
『地中で7年』はウソ?ホント?

『地中に7年埋まってる』という話もよく聞きますが、これも少し誤解があります。
日本でよく見かけるセミ(アブラゼミ・ミンミンゼミ・クマゼミなど)の多くは、地中生活が3〜5年程度と言われています。もちろん環境や個体差はありますが、種類によっては地中に埋まっている期間は7年よりも短いのです。
ただし、アメリカには『周期ゼミ』という、17年に一度しか地上に出てこないセミが実在します。これはもう、生きた化石レベルのインパクトがありますよね。
彼らは17年間を土の中で過ごし、ある年になると一斉に地上に現れて交尾・産卵して去っていきます。
日本のセミたちも、そんな周期的な生活をしているのかというと、そこまではっきりしたリズムはありません。しかし『ある年にドッと数が増える』ような年はあり、ちょっと周期ゼミっぽさも垣間見えたりします。
土の中でも大忙し!?知られざるセミの地下生活
じゃあ、セミは地中で何してるの?と思いませんか?
地下で数年。ただじっとしているわけではなく、樹液を吸って成長しながら、土の中でひっそりと暮らしています。また地中で暮らしている間のセミは実は、移動したり、環境を選んだりと、実はけっこうアクティブなんです。
しかし、地下が安全とは限りません。実はセミの幼虫は『冬虫夏草(トウチュウカソウ)』という真菌(カビの一種)に狙われることがあります。
冬虫夏草は虫の体に寄生し、やがてその命を奪いながら幼虫の体の栄養を使ってキノコを生やします。地下のセミ幼虫はこうした真菌の標的になるのです。
ところが驚くのは、一部のセミの幼虫がこの『敵』をただの害虫としてではなく、共生のパートナーにしてしまう進化を遂げているケースがあること。
真菌を味方につけることで、体内のバランスを保ったり、外敵から守ってもらったり。まるで『敵を味方に変える』ような不思議な関係ができあがっているんです。
地中の生活は静かに見えて、じつは生存のための熾烈な戦いの舞台でもあるのです。セミ幼虫がそんな環境の中で、自然の力を巧みに利用しながら生き延びているのはまさに自然の生命力を感じます。
「うるさい!」なんて言わないで。セミが鳴く切実な理由

夏になると、朝から晩まで「ミーンミーン」「ジジジジジ…」。
「うるさい!」って思ってしまう人もいるかもしれません。
でもあれ、すべてオスの恋の歌なんです。
『恋の歌』とは、オスのセミがメスにアピールするために、オスは自分の身体を震わせて必死に鳴くことで紡がれます。種類ごとに鳴き声が違うのも「僕は○○ゼミだよ!」とアピールしており、間違って別の種と交尾しないための大事な合図なのです。
ちなみに、セミの成虫は「何も食べない」で恋の歌を奏でているとよく言われますが、少しだけ樹液を吸っているとも言われています。とはいえ、地下時代に蓄えたエネルギーがメインで、地上ではほとんど『生き急ぐ』ような生活をしているのは事実のようです。
セミは『はかない命』のイメージ!?文化から見るセミのこと
日本人の目に映る『セミ』は『はかない命』の生き物。それは日本の風土や文化を背景に、形作られたイメージなのかもしれません。ここでは、日本で見られる『セミ』と、海外での『セミ』についてみてみましょう。
俳句にも詠まれた『セミの声』
これまで、セミの生態について見てきましたが、日本では『セミ=はかない命』というイメージが強く、俳句や短歌にもよく登場しますよね。
たとえば俳句や短歌の世界では、セミは『もののあはれ』や『無常』を象徴する存在として度々詠まれてきました。松尾芭蕉の有名な句にも『閑さや 岩にしみ入る 蝉の声』という作品があります。
これは、山奥の静けさの中に響くセミの声が、むしろ『静けさ』を際立たせ、そこに人生の儚さを感じさせる一句。つまり、セミの鳴き声は日本人の感受性の中で『夏』『終わり』『命の燃焼』といった情景と深く結びついているのです。
また、夏休みの終わりとともに静かになっていくセミの声に、どこか切なさを覚えるという感覚も、多くの人に共通しているのではないでしょうか。アニメや小説でも、セミの声は『夏の終わり』や『別れの予感』を演出する効果音としてよく使われています。
アメリカでは『生命の驚異』として受け止められる
世界に目を向けると、セミに対するイメージは意外と違います。
アメリカでは、周期ゼミが何年も地中でじっと過ごし、ある年になると大群で一斉に地上に現れ、1ヶ月ほどで一生を終えます。その神秘的なライフサイクルは『自然の不思議』や『生命の驚異』として興味の対象になることも。
日本のように『かわいそう』とか『はかない』とは少し違った見方がされているんです。
つまり、文化の違いがセミに与えるイメージは大きく、実際の寿命とのギャップが生まれているのかもしれません。こうして見てみると、セミの寿命や行動自体は同じなのに、それをどう受け止めるかは文化によって全然違うことがわかります。
この違いは、単にセミの観察の仕方というよりも、人間が『命』や『時間』にどう向き合っているか、という人生観の反映でもあるのかもしれません。
セミは『短命』じゃない。むしろ、めっちゃ頑張ってる!

ここまでの話、どうでしたか?セミについて少し詳しくなったのではないでしょうか。
セミは『1週間だけの命』どころか、何年も地下で戦い、地上に出てからも全力で生きている生き物。その鳴き声は、ただの騒音じゃなく『生きてる証』そのものです。
次にセミの鳴き声を聞いたとき「うるさいなあ」ではなく 「今年も無事に出てきたんだなあ」って、ちょっとだけ思ってみてください。きっと、セミとの夏が少し違って見えてくるはずです!