- ヤドカリは丈夫で小型の飼育設備でも飼育しやすい生き物
- 水棲ヤドカリとオカヤドカリで適した環境が異なる
- 餌は動物質・植物質をバランスよく与えるのが大切

海辺で貝殻を背負ってチョコチョコと歩くヤドカリ。その可愛らしい姿に、自宅で飼育してみたいと考える人も多いのではないでしょうか。実はヤドカリは観賞用としても人気があり、自宅でも比較的飼育しやすい生き物です。
この記事では、ヤドカリの基本情報から飼育のポイント、注意点までを初心者にもわかりやすく解説します。ヤドカリの魅力にふれながら、自宅に小さな海の世界をつくってみませんか?
ヤドカリとは?特徴や生態など基本情報

ヤドカリがどんな生き物なのか、基本情報を紹介します。飼育を始める前にヤドカリがどんな生き物なのかをみていきましょう。
ヤドカリはどんな生き物?大きさや寿命は?
ヤドカリは甲殻類の一種で、エビやカニの仲間です。特徴的なのは柔らかい腹部を持ち、それを守るために貝殻に入って生活していることです。種類によって大きさは異なりますが、小型のものでは1cmほど、大きな種類では10cmを超えることもあります。
寿命は10年~20年で、中には30年以上生きた記録もあります。飼育環境が整えば、長期間飼育を楽しめる生き物です。
ヤドカリは雑食性
ヤドカリは非常に食性が広く、植物質・動物質問わずさまざまなものを食べます。自然下では海藻・死んだ生き物・水中の有機物などを食べています。水槽では人工飼料や一緒に飼育している生き物が残した餌なども食べるため、餌やりに困ることも少ないでしょう。
ヤドカリは危険?人に馴れる?
ヤドカリは基本的におとなしい性格で、人に対して攻撃的になることはほとんどありません。ただし、無理に手で触ると驚いてハサミを使うこともあるので注意しましょう。馴れると手から餌を受け取るようになる個体もおり、その愛らしさは格別です。
飼いやすいヤドカリ5選

ヤドカリは世界中で1,000種類以上が確認されています。その中で、入手しやすく、飼育もしやすい種類を5種紹介します。
丈夫で育てやすいイソヨコバサミ

イソヨコバサミは潮だまりでよく見られる小型のヤドカリで、飼育が非常に簡単なことから初心者におすすめの種類です。性格もおとなしく、水質の急激な変化にも比較的強いため、小型水槽でも安心して飼えます。残り餌をよく食べるため、水槽の掃除役としても重宝されます。
白い爪先が可愛いツマジロサンゴヤドカリ
鮮やかな青色の脚と、爪の先が白くなっているのが特徴のツマジロサンゴヤドカリは、観賞性の高さから人気の高い種類です。昼間でもよく活動するため、水槽内での存在感も抜群です。小型で水質への適応力も高く、複数飼育もしやすいため初心者にもおすすめできます。
派手な体色のベニワモンヤドカリ

赤とオレンジの美しい縞模様が特徴のベニワモンヤドカリは、水槽に華やかさを加えてくれる存在です。温和で他のヤドカリや魚とのトラブルも少なく、混泳にも向いています。環境に慣れるとよく動き回り、観察していてとても楽しいです。
まるで宝石のようなユビワサンゴヤドカリ

ユビワサンゴヤドカリは脚に鮮やかな青いリング模様が入るのが特徴で、水槽内でも非常に目立つ存在です。岩の上を軽快に歩き周り、水槽のどこにいても発見しやすい鮮やかさが魅力のひとつです。藻類を好んで食べる性質もあるため、掃除役としても活躍してくれます。
陸のヤドカリの代表ムラサキオカヤドカリ

ムラサキオカヤドカリは、陸生のヤドカリの定番種です。湿度の保たれたテラリウム環境で飼育することができます。紫がかった美しい体色が特徴で、愛嬌のある見た目と動きで人気があります。
湿度と温度の管理をすれば大掛かりな設備は必要なく、人工飼料や果物などをよく食べるため、手軽に飼育が始められます。夜行性ですが、活発に動き回る姿を観察するのはとても楽しいです。
ヤドカリの飼い方・管理方法

ヤドカリの飼い方や管理方法について解説します。ヤドカリを受け入れる前に、しっかりと準備を整えておきましょう。
ヤドカリの入手方法
ヤドカリを飼育したいと思ったら、健康な個体を入手することがポイントです。入手方法はお店で購入するか、海で採集するかの2つの選択肢があります。飼育したい種類によっても選択肢が変わりますので、まずは種類を決めましょう。
アクアショップで購入する
もっとも安心で確実な方法がアクアショップやペットショップでの購入です。お店では体の色や動き、殻の状態を自分の目でじっくりと確認できるため、自分で気に入った個体を選ぶことができます。店員さんに飼育方法を直接聞けるのも、初心者にとっては大きなメリットです。
アクアショップの場合、暖かい地域のカラフルな種類も販売されているので、それらの種類を飼育したい場合は、お店に足を運びましょう。価格は種類やサイズによって異なりますが、確実に入手でき、気軽に飼育を始められるのも魅力のひとつです。
潮だまりや砂浜などで採集する
海辺や潮だまりでヤドカリを自分で採集する方法もあります。水深数センチの浅い場所にもヤドカリは生息しているため、比較的容易に採集できます。
ただし、地域や採集する環境によって生息するヤドカリの種類が異なるので、飼いたい種類が決まっている場合は、生息地に行かなくてはいけません。もちろん、その時に採集できたものを飼育するのも1つの方法です。実際に自分で捕まえた個体を飼育するのは、購入したものを飼育するのとは違った楽しさがあります。
採集する場合は、持ち帰る数は最小限にとどめ、自然への影響を避けるよう配慮してください。持ちかえる際の容器やエアーポンプ、そして自宅での受け入れ準備を整えてから採集することが大切です。
ヤドカリの飼育に必要なものは?
ヤドカリの飼育環境は、水棲ヤドカリとオカヤドカリで異なります。それぞれに合わせた環境を用意しましょう。
30cm水槽でもOK!【水槽】
水棲ヤドカリを飼う場合は、30〜60cm程度の水槽が一般的です。小型の丈夫な種類なら30cm水槽でも飼育可能です。レイアウトや複数飼育を考慮すると、少し余裕のあるサイズを選ぶのがよいでしょう。
オカヤドカリの場合は水槽でも構いませんが、プラケースでも大丈夫です。オカヤドカリは立体活動が得意なので、しっかりと蓋ができ、隙間ができない構造のものでないと、脱走の可能性が高くなります。
自然な見た目がおすすめ【サンゴ砂】
水棲ヤドカリ、オカヤドカリ共にサンゴ砂がおすすめです。サンゴ砂はバクテリアの定着により水をきれいにし、それ以外にもpHを安定させ、見た目も美しく、自然なレイアウトが可能です。
オカヤドカリは脱皮の際に砂に潜る習性があるため、ある程度の深さがないとストレスの原因になります。湿り気を保つため、定期的に霧吹きで加湿してあげることも大切です。
手軽に用意できる【人工海水】
水棲ヤドカリの飼育水には、人工海水が手軽でおすすめです。人工海水の素を、カルキ抜きした水道水と混ぜて海水を作ります。比重は1.020〜1.025の範囲を保てるよう、比重計で測りましょう。
オカヤドカリの飼育では、必ず必要ではありませんが、海水を用意することでミネラル分の摂取に役立ちます。水入れを用意し、海水を入れておくと、時折海水に浸かる姿が観察できます。
水をきれいに保つ【フィルター】
水棲ヤドカリの水槽では、水質を維持するためにフィルターの設置が必須です。外掛け式フィルターやスポンジフィルター、底面式フィルターがおすすめです。フィルターを設置することで、水中のアンモニアや汚れを分解し、ヤドカリにとって快適な環境を保つことができます。
オカヤドカリには基本的に水を張らないためフィルターは不要ですが、水容器の水が汚れたら、こまめに交換をしてください。
落ち着ける環境を作る【シェルターやレイアウト素材】
ヤドカリは警戒心が強く、落ち着ける隠れ家があることでストレスを減らすことができます。水棲ヤドカリには、ライブロックやサンゴ片がおすすめです。立体的なレイアウトを組むと、登ったり隠れたりする行動が見られるようになり、観察の楽しみも増します。
オカヤドカリには、流木やココナッツの殻など海辺をイメージした素材がおすすめです。登ることが好きな生き物なので、高さのあるレイアウトにしてあげると活動量も増え、見ていて飽きません。
種類にあった水位・水温に調整しよう
水棲ヤドカリの場合、水温は24〜27℃が理想です。寒い時期はヒーター、暑い時期はエアコンで温度管理を行いましょう。
水位は種類によって異なり、タイドプール(潮だまり)に生息する種類であれば、5〜10cm程度で大丈夫です。水位が低いと水量も減るため、水質が変化しやすいので注意しましょう。そのほかの種類は、水槽の高さに合わせて水位を調整してください。
オカヤドカリは乾燥に弱いため、湿度を60%以上に保つことが大切です。乾燥しすぎていると水入れに入りっぱなしになる傾向があるので、しっかりと観察しましょう。
餌は何を与える?
ヤドカリは雑食性で、さまざまなものを食べて生きています。飼育下でもこの性質は変わらず、基本的には、餌選びにそれほど神経質になる必要はありません。
水棲ヤドカリの場合、市販の沈下性の甲殻類用フードや底棲魚用の人工飼料が使いやすいでしょう。植物質のエサも好きなので、茹でた葉物野菜やワカメなどもおすすめです。与える餌にバリエーションを持たせることで健康を保ちやすくなります。
オカヤドカリも同様にさまざまな餌を与えるのがよいでしょう。メインには市販のザリガニ用のエサがおすすめです。そのほかにも果物や野菜・サツマイモ・煮干しなども好んで食べます。生の野菜や果物は腐りやすいため、一晩経ったら必ず取り除くようにしてください。
ヤドカリ飼育のポイントと注意点

丈夫で飼育しやすいヤドカリといえど、管理方法を誤ると弱らせてしまいます。注意点やポイントをしっかりとチェックしておきましょう。
小まめに水換えをしよう
きれいな水質を保つため1週間に1回、1/3程度を目安に水換えを行うのが理想です。特に小型の水槽は水質の変化も大きいので、定期的な水換えは欠かせません。水換えの際は、ショックを与えないよう人工海水の比重を合わせるのがポイントです。
オカヤドカリの水容器も汚れやすいため、こまめな交換を心がけましょう。
引っ越し用の貝殻を用意しよう
ヤドカリは成長にあわせて新しい殻に移る習性があります。小さな貝殻のままではストレスになるので、サイズ違いの貝殻を数個、常に水槽内に入れておくと安心です。引っ越しをする姿を観察するのも楽しみの1つです。
魚との混泳は要注意
ヤドカリは温和な性格とはいえ、弱った魚のヒレをかじったり、逆に攻撃されたりすることもあります。相手が肉食性の魚の場合、食べられてしまうことがあるので注意が必要です。混泳を検討する場合は、お互いにストレスを与えない組み合わせを選びましょう。
飼育環境を整えてヤドカリ飼育を楽しもう

ヤドカリは見た目の可愛らしさはもちろん、観察すると多様な姿を見せてくれる魅力的な生き物です。水棲ヤドカリとオカヤドカリでは飼育方法が異なるため、それぞれにあった環境を整えてあげることがポイントです。
適切な設備と愛情を注げば、寿命は10〜20年と長期飼育が可能で、よきパートナーにもなってくれるでしょう。まずはお気に入りの種類を見つけ、ヤドカリとの暮らしをスタートしてみてください。