- すべての猫は、元野良猫を含め『完全室内飼育』が大前提
- 事故・誘拐・感染・近隣住民への迷惑行為……室外飼育に潜むさまざまなリスクを学ぼう
- ベランダに出す際も、将来的な完全室内飼育への移行を念頭に置くこと

猫にとって、外の世界は危険がいっぱい。室外飼育は、事故や誤飲・誤食などの危険だけではなく、近隣住民とのトラブルの原因になってしまいます。
今回は、猫を外に出してはいけない理由や、室外飼育を室内飼育に移行する際のポイントを紹介します。
ショップやブリーダーから購入した猫はもちろん、もともと外で生活していた猫を飼育している場合でも、完全室内飼育は徹底するべきといえます。その理由を学びつつ、猫にとっての『本当の安全』『本当の幸福』について考えていきましょう。
猫を外で飼育してはいけない10の理由

ここでは、猫を外に出してはいけない理由10個を紹介します。
猫の外飼いは、百害あって一利なし。「狭い家に閉じ込めるのは可哀相」という考えは、人間側の思い込みです。
ぜひこの機会に、室外飼育の危険性やリスクを学び、猫にとって本当に幸せな環境づくりにつなげていきましょう。
【1】盗難や虐待被害に遭う可能性
猫を外に出してはいけない理由として、盗難や虐待被害の可能性があげられます。とくに人によく懐いている猫は、悪意を持つ人にでも疑わずに触られてしまうこともあるでしょう。
この世は動物が好きな人ばかりではありません。残念ながら、動物虐待の犯罪行為をする人も存在しています。『猫 虐待』で調べてみると、いかに過去にショッキングな事件があったのかがわかるでしょう。
猫の室外飼育では、家族のように大切な愛猫を、言葉に出すのもはばかられるほど残酷な目に遭わせるリスクをはらんでいるのです。
【2】交通事故に遭う可能性
猫の室外飼育では、交通事故に遭う可能性も捨てきれません。たとえば目の前を蝶が飛んでいっただけでも、猫は我を忘れて道路に飛び込んでしまうことがあります。
「愛猫が少し外にお出かけした」と軽い気持ちで見送ったら、もう二度と出会えなくなってしまう……。そんなリスクはいつでも存在しているのです。
マイクロチップや迷子札を装着していない子の場合、遺体になっても飼主の身元がわからず、まさに悲劇的な別れとなってしまいます。
【3】ノミやダニなどの虫の害に遭う可能性
愛猫が無事に帰宅できた場合でも、ノミやダニなどの虫害のリスクがあります。とくに草むらや公園でお散歩をしている猫の場合、知らず知らずのうちに虫を連れて帰ってくることも。
害虫は猫だけではなく、人間にも被害を及ぼします。猫の体に付着したノミの卵は、いつしか寝床やカーペットなどに落ちて孵化。13℃程度の室温さえあれば繁殖して、あっという間に増えてしまうんです。
【4】感染症を患う可能性
猫の室外飼育では、大小にかかわらず感染症を患ってしまう可能性があります。感染経路の例としては、ほかの猫との喧嘩や、仲良しの猫とのグルーミング、唾液や糞尿との接触などがあげられます。
外でごはんをもらった場合は、食器の共有などでも感染リスクが。とくに猫免疫不全ウイルス感染症や、猫白血病ウイルス感染症などは、外で感染しやすいうえに完治の難しい病気です。
【5】脱走や迷子により会えなくなる可能性
猫の帰巣本能は犬ほど強くありません。普段は近場のみを散歩している子が、少し縄張りから離れた場所に足をのばすだけで、迷子になって戻ってこれない可能性があります。
たとえば車の音にビックリして、少し遠くまで走った。もしくは、縄張りを主張する猫に長時間追いかけられた。たったそれだけのことで、猫は自分の居場所がわからなくなってしまうかもしれません。
「いつも夕方までには帰ってくるから」「数時間程度で戻ってくるから」。そんな楽観的な考えが、愛猫と永遠に別れる原因になってしまうのです。
【6】誤飲や誤食による事故の可能性

猫の室外飼育は、誤飲や誤食のリスクも招きます。たとえば犬や猫にとって、ネギ類の食品は毒物です。
たとえばお腹を空かせた愛猫が、ゴミ捨て場に辿り着いたとします。そこには、廃棄されたお弁当があったとします。もしその中に、玉ねぎの含まれたハンバーグが入っていたら。そしてもし、パックが少し空いていたら……。
野良猫の死因の一つに、毒物の誤飲誤食があります。外にお出かけしただけの愛猫にも、同じリスクがあることを認識しましょう。
【7】近隣トラブルを招く可能性
猫を外に出すと、近隣トラブルを招く可能性もあります。たとえば飼い猫の排泄物は、大きなトラブルの原因になります。ほかにも植木鉢を倒されたり、庭の土を掘られたりなど、例をあげればきりがありません。
トラブルのなかには、他所の家に侵入してしまうケースも。もしそこの住民が猫アレルギーを持っていたら、重篤な場合は救急車を呼ぶような事態となってしまいます。
もし隣人の家の畳で爪を研いだら、もしくは思い出のある品を壊してしまったら、責任を取れますか?飼主がわからない猫の被害を受けた側は、泣き寝入りするしかありません。
【8】野生動物を捕食する可能性
猫の室外飼育では、野生動物を捕食する可能性もあります。代表的な例が、スズメです。放し飼いにされた猫にとって、小柄でピョンピョン跳ねるスズメは、恰好のおもちゃです。
当人は『狩り遊び』のつもりで、無意味にスズメを殺してしまうリスクがあります。もちろんスズメ以外にも、ヤモリやカエル、虫やネズミなど、猫の狩猟対象となる生き物は多いものです。
猫の放し飼いによって生態系のバランスが崩れ、新たな環境問題が発生してしまうのです。
【9】迷子中のペットを捕食する可能性
猫の狩猟対象のなかでも、危惧すべきなのが『迷子のペット』です。
たとえば脱走してしまったハムスターや小鳥などは、猫の興味を引きつけます。円滑に保護されれば助かったかもしれない命が、猫の放し飼いによって奪われてしまいかねません。
とくに愛玩用として繁殖されたエキゾチックアニマルは、警戒心も運動能力も低い傾向にあります。もちろん、脱走させない環境づくりは第一に肝心。そのうえで、猫による二次被害を発生させない姿勢が大切です。
【10】望まない妊娠の可能性
飼い猫の避妊や去勢をしていない場合、望まない妊娠をしてしまう(させてしまう)可能性があります。猫は1年に2~3回の出産が可能な生き物であり、1回の出産で1~8匹ほどの子猫を生みます。
つまり1匹の猫が妊娠するだけで、1年に20匹以上に増えてしまうことも。無責任な室外飼育は、不幸な命を増やすことに直結します。
【完全室内飼育に向けて】段階的なベランダ飼育のポイント

ここでは『完全室内飼育』を実現するためのステップとして、室外飼育の猫を段階的に室内で飼育する際のポイントを紹介します。
今まで室外飼育だった猫は、突然完全室内飼育にするとストレスを溜めてしまう可能性があります。将来的な完全室内飼育を前提としたうえで、まずは『家+ベランダ』の範囲から始めるのも一つの手段です。
室内で過ごす時間を増やした後、最終的にはベランダにも出さずに飼育するライフスタイルを目指しましょう。
隙間を完全にネットで覆う
猫をベランダに出す際は、隙間を完全にネットで覆ってください。くれぐれも、柵ではなくネットを使うのがポイントです。
一見すると登れないような高さの柵でも、猫はスルスルと見事に登り脱走してしまう可能性があります。また驚くほど狭い隙間から脱走しようとしたり、首や体が挟まってしまうリスクもあります。
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出入りの度に足や体を拭く
猫のベランダ散歩では、確実性の高い衛生対策が求められます。ダニやノミの予防薬を定期的に投与することはもちろん、出入りの度に足や体を拭いてあげましょう。
とくに鳥が止まりやすいベランダや、草木が多い立地の場合は要注意です。ベランダ自体は清潔なつもりでも、鳥や虫によって細菌が運ばれてしまう可能性があります。防虫ネットを導入するのも猫の健康を守るための手段です。
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猫から目を離さない。リードは胴輪タイプを使う
猫をベランダに出す際に、1番気をつけたいのが『目を離さない』こと。猫がパニックを起こしたときの危険回避のために、胴輪とリードを装着した状態で見守りましょう。
「飛び出した際にリードはむしろ危険だ」という意見もありますが、リードと胴輪さえしっかり装着していれば、脱走のリスクを下げられます(もちろん、ネットでの脱走防止が大前提です)。
ただし胴輪は、安全を保証するグッズではありません。あくまで『安全性を高めるグッズ』であることを理解したうえで、早期に完全室内飼育に切り替えましょう。
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猫は『完全室内飼育』が鉄則。半室外飼育もNG

今回は、猫を外に出してはいけない理由や、完全室内飼育に向けたステップを紹介しました。
記事内ではベランダに出すポイントを記載したものの、猫の健康被害を考えた場合、本来はベランダに出すことすらもNGです。
ベランダではダニ・ノミ被害や細菌被害を完全に防げるわけではありません。また鳥の糞や虫を介した感染や、近隣トラブルのリスクもあります。
繰り返しになりますが、ベランダは「完全室内飼育へ移行するための一時的な『つなぎ』」です。飼主が外の危険を学び、猫が室内だけでも満足できる環境を構築することが大切です。
上下運動できるスペースや、安全に日向ぼっこできるスペースなどを作りつつ、『ベランダゼロ』でも猫が幸せになれる室内環境をつくりましょう。それが猫の健康と命を守る、何よりの愛情の形なのです。