リュウグウノツカイとは?人魚伝説との関連も!?幻の深海魚に迫る

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まとめ
  • リュウグウノツカイは世界最長クラスの深海魚!神秘的な姿が特徴
  • 古くから各地でさまざまな言い伝えが伝承されている
  • 生きた姿を観察するのは難しいが、標本の観察は可能

まるで竜のような特徴的な姿をしたリュウグウノツカイ。その姿も名前も、一度見聞きしたら、忘れられないほどインパクトのある存在です。普段は深海にひっそりと生息し、めったに人の目にふれないことから『幻の魚』とも呼ばれています。

そんなリュウグウノツカイには、驚きの生態や言い伝え、そして神秘に満ちた特徴がたくさんあります。今回は、リュウグウノツカイの魅力をわかりやすく解説していきます。

目次

リュウグウノツカイとは?基本情報と特徴を紹介

まずはリュウグウノツカイがどんな生き物なのかを解説していきます。生息地や食性など、基本的な情報をみていきましょう。

リュウグウノツカイはどんな生き物?大きさは?

リュウグウノツカイ(Regalecus glesne)は、アカマンボウ目リュウグウノツカイ科に属する深海魚です。世界最長の硬骨魚類としても知られており、最大全長11mを超える個体も報告されています。平均的な個体でも3〜5mとされます。

体は銀白色で平たく、リボンのように長く細長い形状をしているのが特徴です。頭部から背びれにかけては赤く染まり、トサカ状の突起が生えているようにも見えます。その特徴的な姿から『竜宮の使い』と名付けられました。

生息地や生息環境は?

リュウグウノツカイは、世界中の温帯から熱帯の深海に広く分布しています。通常は水深200〜1000m付近に生息しています。水深1000m付近の水温は一般的に2〜4℃と考えられており、低い水温の深海で生息している魚です。

タチウオのように身体を縦にし、ゆったりと漂うように泳ぎます。日本近海でも発見例があり、とくに冬から春にかけての時期に目撃されることが多いです。

リュウグウノツカイの餌は?外敵はいる?

リュウグウノツカイの主な餌は、オキアミやクラゲを中心に、イカなどの小型生物です。大きな体に似合わず、意外にも小型の生物を捕食します。

外敵については不明な点も多いですが、幼魚のうちは大型肉食魚に襲われる可能性があると考えられています。成魚になれば体が大きいので、天敵は少ないとされますが、動きがゆっくりとしているので、狙われる可能性もあるでしょう。

尻尾を自切する珍しい魚

リュウグウノツカイには、自ら尾部を切り離す『自切(じせつ)』という行動が確認されています。ヒトデやナマコなど一部の無脊椎動物や陸上生物のトカゲに見られる防御反応ですが、魚類では非常に珍しい現象です。

自切の理由はまだ解明されていませんが、外敵に襲われた際やストレスへの反応ではないかと考えられています。一度自切した尾部は再生されないため、観察される個体の多くは尾が短くなっているものが少なくありません。

リュウグウノツカイは幻の魚なの?

『幻の魚』と呼ばれることもあるリュウグウノツカイ。実際のところはどうなのかを紹介します。

実は魚網でよく捕獲されている

『幻の魚』と呼ばれながら、実は底引き網漁など深海生物を捕獲する漁法でしばしば捕獲されています。漁業関係者の間ではそれほど珍しい魚ではないという声もあるのです。

リュウグウノツカイは食用にならないので放流されて水揚げされません。私たちの目にふれる機会が少ないので『幻』というイメージが定着しているのでしょう。

砂浜に漂着する個体も多い

冬から春にかけて、波に打たれて砂浜に打ち上げられるリュウグウノツカイがまれに見られます。この時期は表層付近と深海の水温差が少なくなります。すると深海魚は浅瀬にやってくることがあるのです。

しかし水圧の変化によって浮袋が膨張し、正常に泳げなくなります。その結果、泳ぐ力を失って浜に流れ着いてしまうのです。時折港の中でもフラフラと漂う個体が見られることもあります。

リュウグウノツカイにまつわる言い伝えや伝説

古くから、リュウグウノツカイにはさまざまな言い伝えが語りつがれてきました。ここでは、神秘的な魚ならではのさまざまな伝承や迷信を紹介します。

リュウグウノツカイが現れると大地震が起きる

日本では古くから「リュウグウノツカイが現れると大地震が起きる」と言われてきました。実際、2011年の東日本大震災の前にも複数の目撃例が報告されており、この言い伝えは再注目されました。

SNSなどを通じて情報が瞬時に拡散される現代では、リュウグウノツカイが見つかったというニュースとともに「地震の前兆では?」と心配する声も多く見られます。

地震との因果関係は科学的に否定されている

この言い伝えについては科学的な根拠がないと専門家の多くが否定しています。リュウグウノツカイの出現は、気象や海流・水温の変化、さらには個体の体調不良など、自然な要因によって引き起こされるものです。

見た目にインパクトがある魚のため、目撃されると話題になりやすいです。しかし地震との因果関係を示すデータはありません。したがって、偶然が重なった結果に過ぎないと考えられています。

リュウグウノツカイを食べると不老不死になる

一部の地域では、リュウグウノツカイを食べると『不老不死になる』との言い伝えが語られています。有名なのが、八百比丘尼(やおびくに)の伝説です。

ある日、人魚の肉を食べてしまった娘が年を取らなくなり、800年もの長寿を得たという話があります。この『人魚の肉』とされるものが、実はリュウグウノツカイだったのではないかと考えられています。

その細長い体と赤いヒレ、銀白色の神秘的な姿が、人魚のビジュアルと重なる部分もあり、伝説と結びつけられやすかったのでしょう。

リュウグウノツカイが網に入ると豊漁になる

一部の地域の漁師の間では縁起物とされ『リュウグウノツカイが網に入るとその年は豊漁になる』との言い伝えもあります。リュウグウノツカイは神の使いであるという考え方から来ており、漁の安全や大漁祈願のシンボルとして扱われることもあります。

リュウグウノツカイを観察するには?

リュウグウノツカイを実際に見たい!と思っても、そのチャンスは限られています。どのように観察できるか紹介します。

水族館で活きたリュウグウノツカイを見られる可能性はかなり低い

前述の通り、深海という特殊な環境に生息するリュウグウノツカイは、捕獲できたとしてもすでに弱っていることがほとんどです。そのため、水族館に健康な状態で搬入される機会は極めて限られています。そのため、活きたリュウグウノツカイを展示することはほぼ不可能です。

ただし、過去には数時間だけ展示されたこともあります。こればかりは、運に任せるしかないでしょう。

標本であれば展示されている水族館がある

活きたリュウグウノツカイは難しいですが、冷凍保存された標本や剥製を展示している水族館はあります。たとえ標本であっても、実物の大きさや形を間近で見られる貴重な機会です。特に深海に特化した展示を行っている水族館では、詳細な解説とともに展示されていることもあります。

2025年8月現在、標本やはく製を展示している水族館の一部を紹介します。

展示内容が変更されることもあるので、確実に観察したい場合は事前に問合せるとよいでしょう。

ごく稀にダイビングで遭遇することも

非常に珍しいですが、ときおりスキューバダイビングでリュウグウノツカイに遭遇することも報告されています。前述したように、冬から春にかけて、弱った深海生物が浅瀬を漂うことがあります。その中でリュウグウノツカイも目撃されることがあるのです。

水中で赤いヒレをなびかせるその姿は、まさに幻想的です。ただし、見ようと思って見られるものではありません。出会える確率は極めて低く、まさに『奇跡』と言えるでしょう。

リュウグウノツカイを見られたらラッキー!チャンスがあれば観察してみよう

リュウグウノツカイは、神秘的な姿と数々の伝説を持つ、魅力あふれる深海魚です。その姿を目にするチャンスは滅多にありませんが、だからこそ出会えたときの感動はひとしおです。

水族館での標本展示をはじめ、ニュースやSNSで話題になったときには、ぜひその姿に注目してみてください。もし浜辺やダイビング中にその姿を見かけたなら、ぜひじっくりと観察してみましょう。

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のべじ

のべじ

元水族館職員の生き物好きライター。ダイビングガイド、農家などの経験を活かし生き物・自然・家庭菜園・料理など、さまざまな分野でライティングしています。

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