- イルカは『ハクジラ類』の4メートル以下の種類のことを指す
- 超音波を発し、周囲の環境や餌を把握できる
- イルカは社会性のある生き物で、個体を呼び分けたり、協力して狩りをしたりする

水族館の人気者といえば、真っ先に思い浮かぶのがイルカではないでしょうか?華麗なジャンプや人懐っこい性格、知的な表情に心を奪われた経験がある人も多いはず。とくにイルカショーでは、トレーナーと息の合ったパフォーマンスに驚かされ、思わず笑顔になってしまいます。
そんなイルカについてどれくらい知っていますか?実はイルカはとても奥が深く、不思議な能力やユニークな習性をたくさん持っています。今回は、そんな『知っているようで知らない』イルカの基本情報から驚きの生態まで、魅力をたっぷり紹介します。
イルカの基本情報 クジラとの違いは?

まずはイルカがどんな生き物なのかを紹介します。イルカは何の仲間なのか、どこに分布しているのか、基本情報を確認していきましょう。
イルカは海で暮らすほ乳類
イルカは水の中で生活し、ヒレをもつことから魚の仲間にも見えますが、私たち人間と同じ『ほ乳類』です。赤ちゃんをお腹の中で育て、ミルクで育てる点は私たちとまったく同じです。同じく肺で呼吸をするため、水中に潜っていても定期的に海面に上がって呼吸をする必要があります。
イルカは『ハクジラ類』に分類され、同じグループにはマッコウクジラやシャチなども含まれています。実はイルカとクジラに明確な生物学的な違いはなく『体の大きさ』で便宜的に呼び分けられているのです。一般的に体長が4メートル未満のものを『イルカ』それ以上のものを『クジラ』と呼んでいます。
魚とどう違う?イルカの泳ぎ方や呼吸の仕組み
魚はエラで水中の酸素を取り込みますが、イルカは空気を吸って生きています。頭の上にある『噴気孔(ふんきこう)』から一気に息を吐き出し、素早く新しい空気を取り込むのが特徴です。
泳ぎ方にも違いがあります。一般的な魚は体を左右にくねらせて泳ぎますが、イルカは背骨を上下に動かすことで推進力を生み出します。この動きは同じほ乳類のクジラやアシカにも共通する特徴です。
イルカは非常に高いスピードで泳ぐことができ、種類によっては時速50km以上を出すこともあります。この俊敏さは、外敵から逃げたり、素早い魚を追いかけたりする際に欠かせない能力です。
どこに生息してる?イルカの分布
イルカは世界中の海に広く分布しており、赤道付近の温暖な海から極地に近い寒冷な海域まで、多種多様な種類が暮らしています。ハンドウイルカのように温帯の沿岸部に多く見られる種類もあれば、イロワケイルカのように冷たい南極周辺の海に生息する種もいます。
さらに、アマゾン川やインドのガンジス川などの淡水域に暮らす淡水性のイルカも存在します。これらの淡水性イルカは視力が弱く、その代わりにエコーロケーションを高度に発達させて濁った川の中で生活できるのです。
イルカは何を食べている?天敵はいるの?
イルカの主なエサは魚・イカ・甲殻類などです。種類によって食べるものや狩りのスタイルはさまざまです。イルカはとても賢く、状況に応じて狩りの方法を変えるなどの柔軟性も持っています。
一方でイルカにも天敵がいます。とくに大型のサメやシャチは、若いイルカや小型種にとって脅威です。天敵に襲われた際も強力して追い払ったり、注意を促したりと、高度な行動が観察されています。
イルカの生態と不思議な能力

イルカたちは私たち人間も驚くような不思議な生態を持っています。超音波で周囲を探る、仲間と複雑な会話を交わす高い社会性、さらには道具を使う知性まで。イルカたちの驚きの生態をのぞいてみましょう。
イルカのエコーロケーションとは?
イルカは『エコーロケーション(反響定位)』という特殊な能力を持っています。これは超音波を口や頭部から発し、その反射音をキャッチして、周囲の情報を把握するという仕組みです。
この能力によって、障害物や獲物の位置・大きさ・動きまで瞬時に認識することができます。たとえ濁った環境でも、まるでレーダーのように周囲を探知できるのです。
研究によれば、イルカは金属とプラスチックのボールを識別したり、内部にある物体の違いを見分けることもできるとされています。人間に例えると視覚と聴覚を同時に使って空間を感じるようなイメージです。
イルカの社会性とコミュニケーション
イルカは非常に社会的な動物で、群れで生活するのが一般的です。数頭から数十頭規模の群れをつくり、仲間同士で複雑なコミュニケーションを行っています。クリック音・ホイッスル音・ボディランゲージなど、さまざまな手段で感情や情報を伝え合っており、まるで『言葉』のような役割を果たしているともいわれています。
特に興味深いのが『シグネチャーホイッスル』です。これは一頭一頭が持っている名前のような音で、仲間がその音を発することで個体を呼び分けているという説があります。人間と同じように、お互いを認識し合いながら強い絆を育んでいるのです。
道具を使うイルカも!驚きの狩りテクニック
オーストラリアのシャーク湾では、ハンドウイルカが『海綿(スポンジ)』をくちばしに装着し、海底を探るという行動が観察されています。これは、鋭い岩やトゲのある生き物からくちばしを守るための工夫と考えられます。
道具使用はチンパンジーやカラスなど、限られた知能の高い動物にしか見られない行動であり、イルカの高度な知性を示しています。
獲物を捕獲する際も、魚を追い込むために砂煙を使ったり、水中で泡の輪をつくって罠のように使ったりすることもあります。こうした狩りのテクニックからも、イルカの賢さがうかがえます。
代表的なイルカ5選

ハクジラの仲間は世界に約90種類います。その中でいわゆるイルカの仲間とされるのは40種類ほどです。その中で水族館でも見られる代表的な5種類を紹介します。
人懐っこくてショーでも人気|ハンドウイルカ

ハンドウイルカは日本の水族館で最もよく見られる種類で、知能が高く学習能力にも優れています。体長は2〜4メートルで、灰色の体に愛嬌のある顔立ちが特徴です。
ジャンプやボールキャッチなどのショーにも多く登場し、人とコミュニケーションを取るのが得意なイルカです。ふれあいイベントに登場することも多いので、触ったことのある人も多いのではないでしょうか。
最小のイルカ|スナメリ

スナメリは日本の瀬戸内海や有明海にも生息する、体長1.5メートルほどの小型のイルカです。背びれがなく、ころんとした丸い体がとてもかわいらしい印象を与えます。
声を出すことは少なく、静かに泳ぐ姿が特徴的です。国内では鳥羽水族館、宮島水族館などで観察できます。
白い体が幻想的|シロイルカ(ベルーガ)

北極海周辺に生息するシロイルカは、純白の体が特徴です。頭部のふくらみ『メロン』は柔らかく、表情豊かな動きができるのが特徴です。
『海のカナリア』とも呼ばれ、美しい鳴き声や多彩な音を出すことで知られています。名古屋港水族館や、鴨川シーワールドなどで展示されています。
イロワケイルカ

パンダのような白黒模様が特徴のイロワケイルカは、南半球の冷たい海に生息しています。体長は約1.5メートルで、小柄ながらとても活発な動きを見せてくれます。
泳ぐスピードが速く、波に乗るサーフィンのような行動をするなど活発です。日本では鳥羽水族館と仙台うみの杜水族館だけで展示されている貴重なイルカです。
スピードとジャンプが得意│カマイルカ

背びれが鎌のようにカーブしていることから名前が付いたカマイルカは世界中に分布しています。ジャンプ力とスピードに優れ、群れで波間を飛び跳ねながら泳ぐ姿は圧巻です。
活発で遊び好きなため、イルカショーでアグレッシブな動きで楽しませてくれます。多くの水族館で展示されており、見る人を元気にしてくれる存在です。
魅力あふれるイルカたちに会いに行こう

イルカはただの『かわいい海の動物』ではなく、高度な知性と社会性・不思議な能力を兼ね備えた魅力的な生き物です。世界中にさまざまな種類が生息しており、私たち人間のように仲間と支え合いながら生活している姿は、感動すら覚えるものがあります。
水族館では、そんなイルカたちの姿を間近で観察することができます。もしイルカにすこしでも興味を持ってもらえたなら、水族館にぜひ足を運んでみてください。
彼らのジャンプやコミュニケーションの様子を見れば、きっとさらにイルカの世界に引き込まれてしまうことでしょう。知れば知るほど奥が深い、そんなイルカたちの魅力を、ぜひ体感してみてください。