タコの腕が再生するって本当?驚きの再生能力と賢さを解説

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まとめ
  • タコは自ら腕を切って逃げたり、飢えをしのぐために腕を食べたりする!?
  • 腕に神経が集中し、視覚・味覚・触覚を駆使するタコは『体全体で考える』知性体
  • 日本国内でもタコを間近で観察でき、その魅力を体感できる!

水中を漂っているとき、ふと目に入ったのは岩陰からひょっこり顔を出す一匹のタコ。

よく見ると、腕が一本足りません。あれ?タコって8本じゃなかった?
私がダイビング中に出会ったその個体は、まるで何事もなかったかのように周囲を観察し、器用に岩場を移動していました。

この驚きの体験をきっかけに「タコの腕は本当に再生するのか?」「なぜこんなに器用で賢いのか?」という疑問が生まれました。

本記事では、タコの驚異的な再生能力と知能に迫りながら、水族館や海中で観察された実例を通して『海の知性体』とも呼べるタコの魅力を解き明かしていきます。

目次

タコってどんな生き物?

タコは、世界中の海に広く分布する軟体動物で、イカや貝と同じ、頭から直接足(腕)が生えている特徴を持つ『頭足類(とうそくるい)』に分類されます。日本近海でもよく見られ、浅瀬の岩場やサンゴ礁・海底の砂地など、さまざまな環境に適応して暮らしています。

タコの最大の特徴は、やわらかい体と8本の腕。それぞれの腕には吸盤がついていて、獲物を捕まえたり移動したり、周囲の環境を調べたりするのに使われます。

食べ物は、カニ・エビ・貝類・小魚など。待ち伏せやカモフラージュを駆使した『狩り』が得意で、岩陰や海底の穴に潜んで獲物を襲うこともあります。

さらに、タコは非常に賢く、環境に応じて道具を使ったり、体の色や形を変えたりすることができる、海の中でもトップクラスに知能が高い生き物です。

切っても大丈夫!?タコの『自切(じせつ)』とは

タコは、敵に襲われたときに自ら腕を切り離す『自切(じせつ)』という能力を持っています。これは、生存のための自己防衛術のひとつで、カニやウツボなどに捕まりそうになると、さっと腕を切り捨てて逃げるのです。

驚くべきは、この切り離した腕が再び元通りに再生するということ。タコの腕再生は、生き延びるための重要な進化の産物なのです。

体の細胞が『何にでもなれる』?タコの腕のふしぎな再生力

タコの体の中には『何にでもなれる細胞』があるのだそうです。タコが腕を失ってしまうと、まずその切り口(断面)はかさぶたのように閉じて傷をふさぐところから始まります。

するとその下で『何にでもなれる細胞』が働きはじめ、組織が少しずつ盛り上がっていき、やがて『子どもの腕』のような小さな突起が生えてきます。

これは、まるで切り株から新しい芽が出てくるようなイメージです。

そこから数週間から数ヶ月かけて、新しい腕はゆっくりと本来の長さに近づいていきます。すごいのは、再生された腕には吸盤も筋肉もちゃんとそろっていることです。

通常は失った分だけ再生して、元の8本に戻りますが、まれに9本以上になる『過剰再生』が起きるケースも確認されています。

つまり、タコが再生できるのは『何にでもなれる細胞たち』が、タコの体の中にいるおかげなんですね。

飢えしのぎに自分の腕を食べることも!?

タコは飢餓状態に陥ると、自分の腕を食べることがあるという観察報告もあります。これは『自己捕食(オートカニバリズム)』と呼ばれ、極限状態の生存戦略と考えられています。

極限状態とは、餌が極端に不足した場合など、体内の栄養を確保するために、自分の足を食べることがあるそうです。

普通なら致命的な行動ですが、タコには腕を再生する能力があるため、食べた後も足の根本から再生し、元通りに戻すことができるのです。まさに『自給自足』の驚異的なサバイバル術と言えるでしょう。

タコはなぜそんなに賢いのか?

ある水族館では、瓶の中に入れたエビを、フタを回して開けて取り出すタコが観察されました。このような問題解決能力は、哺乳類や鳥類以外では極めて珍しい行動なのです。

実際、迷路を解く・道順を記憶する・学習により行動を変えるなどの実験でも、高い知能を証明しているタコの賢さについて紹介します!

タコの脳は『体全体』にある!?

タコは無脊椎動物でありながら、非常に高い知能を持つ生き物として知られています。

その秘密のひとつが、神経系の構造にあります。タコは全身に約5億個の神経細胞を持ち、そのうち約3分の2が腕に集中しているのです。つまり、タコの腕は『考える腕』とも言え、それぞれが独立して感覚を受け取り、動きを判断する能力を持っています。

これは人間などの脊椎動物とは全く異なる進化を遂げた知性の形であり、脳だけでなく、体全体で判断し行動する生き物と言えるでしょう。

視覚・触覚・味覚をフル活用する海のハンター

タコの狩りは、五感のフル活用によって支えられています。

タコの腕には吸盤がびっしりと並んでおり、それぞれに『味覚』と『触覚』の受容体がついています。つまり、獲物にふれた瞬間に『味』を感じ取ることができるのです。

さらに、夜間にはライトなしでも活動し、岩場や砂の中に隠れた獲物を見つけることができる発達した目を持ち、昼夜問わずに行動できる高い視覚能力を持っています。

この複合的な感覚の使い分けによって、タコは非常に効率よく獲物を見つけ、的確に捕らえることができるのです。どのくらい発達しているかと言うと、色の濃淡や形を敏感に見分け、カムフラージュした獲物も見逃しません。

まさに『海の凄腕ハンター』ですよね!

タコを間近で観察できる!おすすめ水族館3選

タコの不思議な再生能力や高い知性を知ったら、実際に見てみたくなりませんか?

ここでは、タコの生態を間近で観察できるおすすめの水族館を3つ紹介します。

京都水族館(京都府)

京都府にある京都水族館では、日本産のマダコなどを展示しています。タコの再生途中の腕を観察できることもあり、スタッフによる解説も充実しています。都市型ながら展示内容は本格派の水族館です!

 新江ノ島水族館(神奈川県)

新江ノ島水族館は、相模湾の深海生物に力を入れており、タコ類の展示も定期的に行われています。タコの狩りの様子や、吸盤の動きを観察できるコーナーもあるので訪れてみてください!

運が良ければ世界最大級のタコ『ミズダコ』に出会えるかもしれません。

越前松島水族館(福井県)

北陸エリアの人気水族館である越前松島水族館は以前から、見て・ふれて・楽しく学べるをテーマにした水族館でしたが、ミズダコに日本で唯一特化した『みずだこ館』がオープンしました!

園内には、岩場を再現したタッチプールや展示水槽があり、タコの姿をじっくり観察できます。タイミングが合えば、飼育員による給餌の様子も見学可能です。

脳でもなく心臓でもない『腕』が語るタコの進化論

タコは、ただ奇妙な見た目をした海の生き物ではありません。

その柔らかい体に秘められた高い知性と、驚異的な再生能力は、私たちの想像を超える生命の可能性を感じさせます。

自ら腕を切り離し、再び元通りに再生する力。そして課題を解決し、環境に適応していく頭の良さ……これらは『人類とは異なる進化の形』を示しています。

タコの存在は、知能とは脳の大きさだけではなく『どう環境に対応し、生き抜くか』という観点から向き合うことで、私たちは自然の奥深さと神秘に気づき、同時にその環境を守ることの大切さを再認識できるのではないでしょうか。

タコという生き物の不思議にふれることで、海の豊かさと、それを守ることの大切さを改めて実感してもらえたら嬉しいです!

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miwa

生粋の猫派ライター。アメショの猫に飼われながら、他にもカメ・インコ・ウサギ・金魚と幼き頃から過ごしていました。また、水族館大好き。特にサメ類への関心が強く、実は、シロワニの生態研究者になることを夢見ていました。趣味のダイビングでは、海中での生物観察も楽しんでいます。実際のダイビング経験と水族館での観察、両方の視点から海の生き物たちの魅力を伝えていきたいです。

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