- ウミガメは世界に7種類が生息し、日本では3種類がよく見られる
- 海洋プラスチックごみの影響で、7種のうち6種が絶滅危惧種に指定されている
- 使い捨てプラスチックを減らすなど、身近な行動がウミガメの未来を守ることにつながる

青い海をゆったりと泳ぐウミガメの姿は、多くの人にとって癒しの象徴です。水族館やダイビングで目にする機会もあり、その愛らしい姿に魅了された人も多いのではないでしょうか。
しかし今、ウミガメたちは深刻な危機に直面しています。海洋プラスチックごみの増加により、餌と間違えてビニール袋を飲み込んでしまったり、産卵のために上陸する砂浜がごみで汚染されていたりと、人間の生活が彼らの命を脅かしているのが現状です。
この記事では、ウミガメの基本的な生態から、彼らが直面している環境問題、そして私たちにできる具体的なアクションまでを詳しく解説していきます。ウミガメと海の未来を守るために、まずは知ることから始めてみませんか?
海で暮らすウミガメたち まずは基本を知ろう

ウミガメは、約1億年以上前から地球の海で暮らしてきた爬虫類の仲間です。恐竜が絶滅した後も生き延び、現在まで命をつないできました。まずは、そんなウミガメの基本的な特徴や生態について見ていきましょう。
ウミガメとは?世界に生息する種類と特徴
ウミガメは、一生のほとんどを海の中で過ごす爬虫類です。陸で暮らすリクガメや淡水性のカメとは異なり、メスが産卵のために砂浜へ上陸する以外は、基本的に海から出ることがありません。前脚はオールのような形に進化しており、長距離を回遊する能力を持っています。
世界には現在7種類のウミガメが確認されており、それぞれ甲羅の形や色、食性などに違いがあります。アカウミガメは貝や甲殻類を好み、アオウミガメは主に海藻を食べるなど、種によって生態も異なるのです。
寿命は種によって差がありますが、野生下では50年から80年ほど生きるとされています。成熟するまでに20〜30年かかる種もあり、繁殖のサイクルが非常に長い生き物といえるでしょう。

日本の海にもやってくる!ウミガメの産卵と生態
日本近海ではアカウミガメ・アオウミガメ・タイマイの3種が比較的よく見られます。このうちアカウミガメは、日本の砂浜で産卵する代表的な種です。
アカウミガメの産卵地は、本州から九州にかけての太平洋沿岸に点在しています。特に屋久島や宮崎県・静岡県などは有名な産卵地として知られており、毎年多くのメスが上陸します。アオウミガメは沖縄や小笠原諸島など、より温暖な地域が産卵地です。
産卵時期は5月から8月頃が中心で、メスは夜間に砂浜へ上陸して卵を産みます。一度に100個前後の卵を産み、砂の中で約2ヶ月かけて孵化するのが一般的です。生まれた子ガメは自力で砂から這い出し、海へと向かっていきます。
興味深いのは、ウミガメが生まれた浜辺に戻ってくる習性を持っていることでしょう。数千kmもの距離を移動しながら、産卵のために故郷の砂浜へ帰ってくる姿は、多くの人の心を惹きつけています。
ウミガメが直面している危機とは?

ウミガメにとって近年、人間の活動による環境変化が深刻な脅威となっています。特に海洋プラスチックごみの問題は年々悪化しており、産卵場所の汚染や誤食など、さまざまな形でウミガメの命を脅かしているのが現状です。
砂浜がゴミだらけに?産卵場所を脅かすプラスチックごみ
ウミガメのメスは、産卵のために生まれた砂浜へ戻ってきます。しかし、その砂浜が大量のプラスチックごみで覆われているケースが世界中で報告されているのを知っていますか?
ペットボトルやビニール袋、漁具などが漂着した砂浜では、ウミガメが産卵場所を見つけられず、海に戻ってしまうことがあります。運よく産卵できたとしても、ごみが砂の温度や通気性に影響を与え、卵の孵化率が低下する可能性も指摘されています。
さらに深刻なのは、孵化した子ガメへの影響です。生まれたばかりの子ガメは、砂浜から海へ向かって懸命に歩きますが、ごみが障害物となって海にたどり着けないケースも少なくありません。プラスチックごみに絡まって命を落とす個体もおり、砂浜の環境悪化は次世代のウミガメに直接的なダメージを与えています。
クラゲと間違えて…レジ袋を食べてしまうウミガメたち
海を漂うレジ袋やビニール片は、水中ではクラゲによく似た見た目になります。クラゲを主食とするオサガメをはじめ、多くのウミガメがこれを餌と勘違いして飲み込んでしまうのです。
プラスチックは消化されないため、胃や腸に蓄積していきます。その結果、満腹感が続いて本来の餌を食べられなくなり、栄養失調に陥る個体が後を絶ちません。腸閉塞を起こして死亡するケースも報告されており、プラスチックの誤食は世界中のウミガメに共通する問題となっています。
オーストラリアの研究では、調査対象となったウミガメのほぼすべての個体からプラスチックが検出されたというデータもあるほどです。1個のプラスチック片を飲み込んだだけでも死亡リスクが上昇するとされ、海洋ごみの削減が急務であることを物語っています。
目に見えない脅威 マイクロプラスチックが体内に蓄積する問題
大きなプラスチックごみだけが問題ではありません。紫外線や波の力で細かく砕かれた5mm以下の破片は『マイクロプラスチック』と呼ばれ、目に見えない脅威として海洋生物に影響を及ぼしています。
マイクロプラスチックは非常に小さいため、プランクトンや小魚が取り込み、それを食べた生物の体内に蓄積されていく仕組みです。食物連鎖の上位にいるウミガメも例外ではなく、餌を通じて知らず知らずのうちにマイクロプラスチックを摂取していると考えられています。
体内に蓄積したマイクロプラスチックが長期的にどのような影響を与えるかは、まだ研究途上の部分も多いのが実情です。しかし、有害な物質であることには変わりないため、それらが体内に取り込まれることで健康被害が生じる可能性が懸念されています。
絶滅の危機に瀕するウミガメたち

海洋ごみの問題に加え、乱獲や生息地の破壊など、複数の要因が重なり、ウミガメは世界的に個体数を減らしてきました。現在、多くの種が絶滅危惧種に指定されており、国際的な保護活動が進められています。ここでは、世界と日本におけるウミガメの現状を見ていきましょう。
世界のウミガメ7種のうち6種が絶滅危惧種
世界に生息するウミガメは全部で7種類ですが、そのうち6種がIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されています。この数字だけでも、ウミガメがいかに危機的な状況にあるかがわかるでしょう。
特に深刻なのはタイマイとケンプヒメウミガメで、どちらも『近絶滅種(CR)』に分類されています。タイマイは美しい甲羅が装飾品として珍重されてきた歴史があり、乱獲によって個体数が激減しました。ケンプヒメウミガメはメキシコ湾周辺にしか生息しておらず、限られた生息域が保全をさらに難しくしているのです。
アカウミガメ・アオウミガメ・オサガメなども絶滅の危険性が高いとされており、世界各地で保護プログラムが実施されています。産卵地のパトロールや卵の保護、混獲防止のための漁具改良など、さまざまな取り組みが行われていますが、個体数の回復には長い時間がかかるのが現実です。
日本でよく見られる3種の現状
日本近海で観察できるのは、主にアカウミガメ・アオウミガメ・タイマイの3種です。このうちアカウミガメは、本州の砂浜で産卵する唯一の種として知られています。
アカウミガメの産卵地は、本州から九州にかけての太平洋沿岸に点在しており、毎年夏になると多くのメスが上陸します。しかし、砂浜の減少や人工照明による子ガメの方向感覚の乱れなど、産卵環境の悪化が問題視されてきました。各地で保護活動が行われた結果、近年は産卵数が回復傾向にあるものの、油断できない状況が続いています。
アオウミガメは沖縄や小笠原諸島で産卵が確認されており、比較的温暖な海域を好む種です。タイマイも同様に南西諸島周辺で見られますが、個体数は非常に少なく、目撃例は限られています。日本で見られる3種すべてが保護の対象となっており、私たちの海を守ることがそのままウミガメの保全につながるのです。

私たちにできることは?身近なアクションから始めよう

ウミガメを取り巻く状況は深刻ですが、私たち一人ひとりの行動が彼らの未来を変える力を持っています。特別な知識や技術がなくても、日常生活の中で実践できることはたくさんあるのです。ここでは、今日から始められる具体的なアクションを紹介します。
使い捨てプラスチックを減らそう
海洋プラスチックごみの多くは、私たちが日常的に使っている製品から発生しています。レジ袋やペットボトル・ストロー・食品トレーなど何気なく手に取っているものが、やがて海へ流れ出てウミガメを苦しめる原因となります。
まず取り組みやすいのは、マイバッグやマイボトルを持ち歩く習慣でしょう。買い物のたびにレジ袋をもらわない、外出先でペットボトル飲料を買わないといった小さな選択の積み重ねが、プラスチック消費量の削減につながります。
ストローを断る、テイクアウト時に使い捨て容器を避けるなど、意識すればできることは意外と多いものです。最近はプラスチック製品の代替品も増えており、紙製など環境に配慮した商品を選ぶのもひとつの方法といえます。
ビーチクリーン活動に参加してみよう
砂浜のごみ拾いは、ウミガメの産卵環境を守るための直接的なアクションになります。全国各地でビーチクリーン活動が定期的に開催されており、誰でも気軽に参加できるのが魅力です。
活動に参加すると、実際にどれほどのごみが砂浜に漂着しているかを目の当たりにすることになります。ペットボトルやプラスチック片、漁具など種類はさまざまで、海洋ごみ問題の深刻さを肌で感じる機会となるでしょう。
一人で黙々とごみを拾うのも良いですが、イベント形式の活動なら仲間と一緒に取り組めるため、楽しみながら続けられます。家族連れで参加する人も多く、子どもたちへの環境教育としても効果的です。
もちろん、普段の散歩やレジャーのついでに浜辺のごみを拾うだけでも十分意味があります。『来たときよりも美しく』という意識を持つことが、ウミガメの産卵地を守る第一歩となるのです。
水族館でウミガメを身近に感じてみよう
実際にウミガメを観察することは、保全への関心を高めるきっかけになります。国内の水族館にはウミガメを飼育展示している施設が多く、その姿を間近で見られる貴重な機会を提供しているのです。
水族館では、ウミガメの生態や直面している問題についての解説パネルが設置されていることも珍しくありません。泳ぐ姿をただ眺めるだけでなく、そうした情報にふれることで理解が深まるでしょう。飼育員によるガイドツアーや餌やり体験を実施している施設もあり、より深い学びを得ることも可能です。
私たちの行動がウミガメの未来をつくる

ウミガメの祖先は恐竜の絶滅や氷河期など、数々の環境変化を乗り越えてきました。しかし今、人間活動による危機に直面しています。
海洋プラスチックごみは年々増加しており、このままでは2050年には海中のプラスチック量が魚の量を上回るという予測もあるほどです。ウミガメだけでなく、海に暮らすあらゆる生き物にとって深刻な脅威となっています。
しかし、世界各地で保護活動が進められ、産卵数が回復傾向にある地域も出てきました。プラスチック削減に向けた取り組みも広がりを見せています。私たち一人ひとりの選択は、小さなものに思えるかもしれません。それでも、その積み重ねが、確実に海の環境を変えていく力になります。
ウミガメが安心して産卵できる砂浜、ごみのない美しい海を次の世代に残すために、今日からできることを始めてみてください。その行動が、ウミガメの未来をつくる一歩となるはずです。




