泳ぐ貝がいるって本当?ホタテとヒオウギ貝の不思議な生態とは

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まとめ
  • ホタテ貝やヒオウギ貝は、閉殻筋を使って水を噴き出し『泳ぐ』ことができる珍しい二枚貝
  • 外敵を視覚で察知し、ジェット推進のような動きで逃げる進化した生態を持つ
  • 泳ぐことは捕食回避や移動のための防御戦略であり、自然界の巧妙な生存術のひとつ

『貝』と聞くと、海の底でじっとして動かない存在を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。ところが、実は泳ぐことができる貝が存在するのを知っていますか?

そしてその貝とは、私たちの食卓にも登場するホタテ貝や、カラフルな見た目が人気のヒオウギ貝といった、身近な種類なのです。

彼らは外敵から身を守るために、驚くような方法で移動します。

本記事では、そんな『泳ぐ貝たち』のユニークな生態や、どのようにして水中を移動するのか、そのメカニズムを詳しく解説していきます。

思わず誰かに話したくなる『自然のふしぎ』を、ぜひ一緒にのぞいてみましょう。

目次

ホタテやヒオウギ貝は泳ぐ!?貝の驚きの生態

『貝は動かない』と思っている人は多いでしょう。確かに、アサリやシジミなどは砂の中に潜ったまま、ほとんど移動しない印象があります。

しかし、実は泳ぐことができる貝がいるのを知っていますか?それも、私たちの食卓にも並ぶホタテ貝や、色とりどりのヒオウギ貝といった、非常に身近な二枚貝たちなのです。

この2種の貝は、どちらも『イタヤガイ科』に属する仲間で、見た目も構造もよく似ています。そして何より、外敵から逃れるために『泳ぐ』という驚きの能力を備えているのです。

一般的な二枚貝の体は、左右対称の殻に包まれており、その内部には足・内臓、そして『閉殻筋(へいかくきん)』と呼ばれる強力な筋肉があります。この筋肉を使って殻を勢いよく閉じると、水を押し出すことができ、それが推進力となって移動を可能にするのです。

泳ぐ貝ではこの閉殻筋が非常に発達しており、まるでジェット機のように水を噴き出して後方へ跳ねるように進みます。ホタテやヒオウギ貝は、この動きを連続して行うことで、短距離ながらも俊敏に移動することができます。

見た目の優雅さとは裏腹に、その動きは実にダイナミックなのです!

貝が泳ぐ理由とは?ホタテ貝とヒオウギ貝の進化と生き残り戦略

そもそも、なぜ貝が『泳ぐ』という行動を身につけたのでしょうか?

最大の理由は、捕食者から身を守るためです。

二枚貝の天敵として知られるヒトデやタコは、ゆっくりと忍び寄りながらも確実に獲物を捕らえます。そんな中で、少しでも距離を稼ぎ、敵の攻撃から逃げるためには『動く』ことが有効でした。

また、泳ぐことによって、より安全で栄養が豊富な場所へ移動できるという利点もあります。特に海底の環境は常に変化しており、餌が枯渇したり、水質が悪化することもあります。移動できる能力は、そうした環境変化への適応手段としても役立ちます。

さらに、こうした『泳ぐ』行動は、定着している貝よりも生存率を高める進化戦略であり、他の海洋生物との競争においても有利になるのです。

ホタテ貝はジャンプで逃げる!?驚きの『ジェット推進』移動法

ホタテ貝は、北海道・青森・三陸沖といった冷たい海域に広く分布しています。普段は海底の砂の中で静かに過ごしていますが、彼らは意外にも俊敏な行動をとる生き物です。

外敵であるヒトデやタコが近づくと、ホタテは一瞬のうちに体を縮め、貝殻を勢いよく閉じることで、強い水流を噴射し、まるで跳ねるように移動します。この動きが何度も繰り返されることで、敵から遠ざかることができるのです。

この移動方法は『ジェット推進』に似ており、通常の貝には見られない運動能力と言えるでしょう。中には、数十センチ単位で一気に跳ね上がるホタテも確認されています。

ホタテには目がある!?視覚で敵をキャッチ

ホタテの生存戦略の鍵を握るのが、その『目』のような器官です。

実はホタテの貝殻の縁には、青く光る点のような視細胞が60個以上、多いと120個も存在していることが知られています。この視細胞は、光や動きを感じ取ることができるため、ヒトデなどの捕食者が近づくと、反応して逃げる行動を取ります。

この『目』はカメラのようにものを見るわけではありませんが『影が動いた』『光が遮られた』などの変化を敏感に察知する役割を持っています。その情報をもとに、ホタテは瞬時に貝殻を閉じ、水を噴き出して移動するのです。

逃げるときには、殻を「バチン!」と閉じると同時に「ピュッ」と跳ねるように進みます。この動きは、海中で観察すると非常にユニークで、まるで空中を滑空しているかのようです。ホタテの見た目からは想像できない、この意外な一面ですよね。

ヒオウギ貝は『海の宝石』!?カラフルすぎる貝の秘密

このカラフルな貝を知っていますか?

これは『ヒオウギ貝』と呼ばれる貝で、西日本から沖縄にかけての温暖な海域に生息しています。特に愛媛県や鹿児島県などでは、食用や観賞用として養殖されることもあります。

ヒオウギ貝の最大の特徴は、何と言ってもそのカラフルな殻。

赤・橙・黄色・紫・茶色、ときには虹色の貝もいるのだとか。自然とは思えないほど鮮やかな色彩を持ち、まるで海の中の宝石のようです。色の違いは貝殻に含まれる色素成分や遺伝的要素によるもので、個体によってさまざまなバリエーションが。

このカラフルな色を持つ理由として、暖かい珊瑚礁に生息するためには、このカラフルな色が保護色になるためだという説もあります。

この美しさから、ヒオウギ貝は水産物としてだけでなく、貝殻を加工してアクセサリーやインテリアに利用されることも多く、近年ではダイバーや観光客にも人気の貝です。

ヒオウギ貝も泳ぐ!?ホタテに似た逃げ方とは

ヒオウギ貝も、ホタテと同じように泳いで逃げる能力を持っています。構造も似ており、閉殻筋を使って貝殻をパチパチと閉じ、水を噴き出すことで推進力を生み出します。

このような動きは、海中でヒトデやタコといった捕食者に襲われた際に見られます。ヒオウギ貝は普段は岩場などにじっとしていますが、敵を察知すると一気に跳ねるように泳ぎ、安全な場所へ移動します。

また、泳ぐことで餌場を移動したり、繁殖期により良い場所を求めて動くといった行動も確認されています。ヒオウギ貝はプランクトンを濾し取って栄養を得るため、流れの良い場所への移動も、生存には重要な意味を持ちます。

『貝=動かない』という固定観念が変わる!

私たちが普段あまり意識しない『貝』にも、驚くほどダイナミックで巧妙な生態があります。ホタテ貝やヒオウギ貝が見せる『泳ぐ』という行動は、命を守るための進化の証なのです。

ホタテ貝やヒオウギ貝のような『泳ぐ貝』たちは、意外性に満ちた生態と進化の工夫を見せてくれます。美しく静かな姿の裏に、俊敏に泳ぐ能力や鋭い視覚を備えたサバイバルの達人たち。

じっとしているイメージを覆す彼らの姿からは、自然界の奥深さと知恵を感じずにはいられません。

次に海を訪れたときには、そんな小さな生き物たちにも目を向けてみませんか?きっと、海の見え方が少し変わってくるはずです。

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miwa

miwa

生粋の猫派ライター。アメショの猫に飼われながら、他にもカメ・インコ・ウサギ・金魚と幼き頃から過ごしていました。また、水族館大好き。特にサメ類への関心が強く、実は、シロワニの生態研究者になることを夢見ていました。趣味のダイビングでは、海中での生物観察も楽しんでいます。実際のダイビング経験と水族館での観察、両方の視点から海の生き物たちの魅力を伝えていきたいです。

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