シジュウカラは『言語』を話す鳥?鳴き声の秘密と飼育できるのかを解説

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まとめ
  • シジュウカラは『言語力』を持つ小鳥
  • 日本の法律では、ペットとして飼育できない
  • 観察で楽しむのが最良の関わり方

「ピーツピ」「ヂヂヂ」――
公園や庭先で耳にするシジュウカラの鳴き声に『言葉』のようなルールがあることを知っていますか?

シジュウカラは日本各地で見られる身近な野鳥ですが、近年の研究で『言葉』に似たルールを持つ鳴き声を使い分けていることが分かりました。鳴き声の順番によって意味が変わるという高度なコミュニケーション能力の持主です。

そんな賢いシジュウカラは、ペットとして飼えるのか。今回はその生態と飼育についてと、野生のシジュウカラの観察を楽しむ方法を紹介します。

目次

言葉を操る小さな野鳥・シジュウカラとは?

日本の森や公園でよく見かけるシジュウカラ。実はこの小鳥、たださえずっているだけではなく、仲間と『言葉』のような鳴き声でやり取りしていることが分かっています。

ここでは、身近な野鳥シジュウカラの特徴と鳴き声の秘密を紹介します。

身近な公園でも会える!シジュウカラの特徴と暮らし

シジュウカラは、全長約14cmほどのスズメ目の小鳥で、黒いネクタイのような模様と白いほほが特徴です。日本全国に分布し、山林だけでなく住宅街の庭や都市公園でもよく見られる、非常に身近な野鳥です。

一年を通して観察できる留鳥(りゅうちょう ※1)で、冬には群れをつくり、春にはさえずりで縄張りを主張します。雑食性で、昆虫やクモを捕食するほか、木の実や草の種子も食べるため、四季ごとに違った採食行動を見せます。

※1:季節によって住む場所を変えることなく、一年中ほぼ同じ地域に生息する鳥のこと

実は意味がある!シジュウカラの鳴き声の秘密

シジュウカラは多彩な鳴き声を持ち、その一つひとつに役割があります。代表的なのが天敵を追い払うときや警戒を伝える声と仲間を呼び寄せる声です。これらの声は群れの仲間全員が理解しており、状況に応じて適切に使い分けられます。

とくに注目すべきは、こうした鳴き声が単なる音ではなく、意味を持った『シグナル』として機能している点。仲間を呼びたいとき、危険を知らせたいときなど、シジュウカラは声を選び、群れ全体の行動をコントロールしています。

研究で判明した、シジュウカラの『言語力』とは?

シジュウカラは、ただ鳴いているだけではなく、鳴き声を『組み合わせ』て意味を作ることを可能とします。

生態学研究センター研究員らの研究グループが発表した実験では、その驚くべき『言語力』が科学的に裏付けられました。

京都大学が発表したシジュウカラの鳴き声研究

京都大学白眉センターの特定助教らの研究グループは、シジュウカラの鳴き声に『構文的なルール』が存在することを報告しました。

代表的な鳴き声のひとつ「ピーツピ」は仲間を呼び寄せる声、もうひとつの「ヂヂヂ」は捕食者への警戒を示す声です。この2つを順に「ピーツピ・ヂヂヂ」と組み合わせると、仲間は『警戒しながら近づく』という複合的な行動を取りました。

語順で意味が変わる?人間の言語との驚きの共通点

順序を逆にした「ピーツピ・ヂヂヂ」では意味が伝わらず、仲間が適切に反応しないことが確認されました。つまり、鳴き声の順序が意味を左右するという点が実験で明らかになったのです。

この発見を『合成構文』と呼びました。人間の言語においても語順が変われば意味が変わるのと同じように、シジュウカラも順序によって仲間の行動を変化させていたのです。

動物のコミュニケーション研究のなかでも画期的で、単なる鳴き声の合図を超え『文』を作る能力がある可能性を示しました。国際的な科学誌にも掲載され、シジュウカラは『言語を操る鳥』として世界的に注目される存在になりました。

シジュウカラはペットにできる?法律と注意点

かわいくて賢いシジュウカラを「飼ってみたい!」と思う人もいるかもしれません。しかし、日本の法律ではシジュウカラを含む野生の鳥をペットにすることは原則禁止されています。

鳥獣保護管理法で守られる野鳥と飼育禁止のルール

日本に生息する野生の鳥は『鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(通称:鳥獣保護管理法)』によって守られています。

この法律の第8条では『鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は殺傷等をしてはならない』と定められており、野鳥を勝手に捕まえたり飼育したりすることは法律違反になります。さらに、第83条では違反した場合の罰則として『1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金』が規定されています。

そのため、シジュウカラをはじめとする野鳥をペットとして飼うことはできません。善意であっても、落ちていたヒナを持ち帰って育てると処罰対象となる可能性があります。

例外としては、人為的な原因によりケガをした個体を一時的に保護するなど正当な理由がある場合で、都道府県知事などの許可が必要です。「かわいいから」「飼いたいから」といった理由で飼うことはできません。

外国産のシジュウカラなら飼育できる?

一部では、ヨーロッパシジュウカラなど外国産のシジュウカラがペットとして飼育されている事例も報告されています。しかし、それは海外での話であり、日本国内での流通はほとんどありません。

仮に外国産個体を飼育する場合でも、絶対に外に逃がさないための対策を徹底することが必要です。不注意で逃す人がいると、日本にいる在来のシジュウカラとの交雑や生態系への深刻な影響を招きかねません。

最悪の場合、外来個体の影響で日本のシジュウカラの種が保存できなくなる恐れもあります。

さらに、外来生物法や動物検疫の規制もあり、輸入・飼育には環境省の許可や厳格な手続きがあります。こうした理由から、外国産シジュウカラを国内で飼育するのは非常に難しく、一般の愛好家が手に入れることはほぼ不可能といえるでしょう。

飼えなくても楽しい!シジュウカラ観察のすすめ

シジュウカラはペットとして飼えませんが、身近な自然で観察することでその魅力を十分に楽しめます。ここでは、出会いやすい場所や時期、観察をもっと面白くするコツを紹介します。

出会いやすい時期と観察スポット

シジュウカラは留鳥として一年中見られますが、観察に適しているのは春と秋です。春は繁殖期で、オスが「ツツピー」とさえずって縄張りを主張する姿が観察できます。秋には群れをつくるため、数羽が一緒に行動する様子を見られることが多くなります。

観察スポットとしては、都市部の公園や神社の林・河川敷の樹木など。住宅街の庭先にも現れるため、意外と身近な存在です。自宅の庭に餌台や水場を設置すると、訪れてくれる可能性もあります。

鳴き声を聞き分けて楽しむ観察のコツ

シジュウカラの観察で特に面白いのが鳴き声の聞き分けです。先述したように、鳴き声にはそれぞれ意味があります。状況に応じて声を使い分けているため、ただのさえずりではなく『会話』をしているように聞こえるのです。

観察の際は、双眼鏡で姿を追いながら鳴き声に耳を傾けましょう。録音アプリを使って記録し、後から聞き比べるとより理解が深まります。また、繁殖期にはオスが複雑なさえずりを披露するため、メスへのアピールや縄張りの主張といった行動背景を想像しながら観察すると面白さが増します。

野鳥観察のマナーとして、巣に近づきすぎたり、大きな音を立てたりするのは禁物です。静かに見守ることで、シジュウカラ本来の生態をじっくり楽しめます。

言葉を操るシジュウカラを知って、野鳥観察を楽しもう!

シジュウカラは、鳴き声を順序よく組合せることで仲間に複合的な情報を伝えるという、驚くべき『言語力』を持つ小鳥です。

科学的な研究でもその能力が証明され、世界的にも注目を集めています。しかし、日本の法律では野鳥を飼うことは原則禁止されており、シジュウカラをペットにすることはできません

だからこそ、身近な自然で観察し、野生ならではの行動や鳴き声を楽しむことで丁度良い距離感を保った関わり方を心がけましょう。

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ゆかりーぬ

ゆかりーぬ

レオパとニシアフを飼っている爬虫類好きライター。実家ではチワワ2匹と生活していた。
動物や神社仏閣などニッチなジャンルの記事執筆から、インタビューや飲食店取材も行う。好奇心くすぐる記事をお届けします。

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