- ハトは日本だけではなく、世界各国に生息する身近な野鳥
- 伝書鳩や鳩レースなど、人類との接点も多い鳥
- 騒音や糞などの被害は深刻。生体を理解したうえで適切な処置を取ろう

『人類にもっとも身近な鳥』というと、何を想像しますか?
カラスやスズメなど、私たちの生活に近い鳥は多いもの。しかしやはり外せないのは、平和の象徴でもある『ハト』ではないでしょうか。
今回は、人類の隣人ともいえる鳥『ハト』について徹底解説!ハトの特徴からハトを用いた文化まで、幅広く紹介します。
ハトとはどんな動物?実は意外に長生き!

ここでは、ハトの基本的な特徴を紹介します。
あまりにも身近な生き物だからこそ、詳しく学ぶ機会の少ないハト。ぜひこの機会に、食べ物や寿命を含むハトの生態を知ってみましょう。

世界各国に生息する身近な鳥
ハトは日本だけではなく、世界中に生息している身近な鳥です。種類は多岐にわたり、世界では約42属290種、日本では5属13種が生息しています。
体格も多種多様で、世界最小のハト(ウスユキバト)は全長約20cm、世界最大のハト(オウギバト)は全長70cmにもなります。
野生のハトの食べ物は穀物が中心
ハトの食性は雑食性。穀物を中心に食べて生活しており、木の実や小さな虫なども捕食します。
カラスのように動物質の食べ物は好まないため、ゴミを漁ることはほぼありません。街中で生活しているハトは、人間の食べかすを食べることもあります。
ハトの寿命は、最大20年程度!
ハトの平均寿命は10年程度です。しかし健康的で安全な生活をしていれば、最大20年程度生きるケースもあります。
しかし野生のハトが20年も生きることは非常に稀です。ほぼすべての個体は、事故に遭ったりほかの生き物に襲われたりなどの理由で、寿命よりも前に死んでしまうといわれています。
日本で見かけるハトはおもに2種類!
ここでは、日本でおもに見かけるハトについて紹介します。
日本に生息する13種のハトのうち、とくに私たちに身近な種類は『ドバト』と『キジバト』。それぞれの特徴や違いを学ぶと、普段見かけているハトにも違う印象を抱けるかもしれませんよ。
ドバト|白と灰色で街でよく見かけるハト

ドバトは、住宅地や河原などで見かけるハトの一種。白と灰色の体が特徴的で、首は光沢のある緑色です。もともと日本の自然種ではなく、原種である『カワラバト』を改良して作られた種類です。
キジバト|赤茶色で自然に多く生息するハト

キジバトは、赤茶色の体が特徴的なハト。ウロコ模様の背中を持ち、首に青・白・黒のマフラーを巻いたような柄をしています。ドバトは「クー、クー」、キジバトは「デデッポポー」と、鳴き声にも違いがあります。
強い帰巣本能で、伝書鳩・レース鳩としても活躍

ハトは帰巣本能が強い生き物です。ハトの特性を生かした代表的な文化が『伝書鳩』。伝書鳩の歴史は非常に古く、紀元前5,000~3,000年前には活用の痕跡が残されています。
日本では江戸時代に活用された記録があり、明治時代に入ると軍事用としても飼育されていました。ハトの強い帰巣本能は『鳩レース』の娯楽としても親しまれており、現在も文化が引き継がれています。
ハトが雛に与える『ピジョンミルク』とは

ハトの不思議な特徴としてあげられるのが、雛に与える『ピジョンミルク』です。
ここでは、ピジョンミルクの役割や成分について紹介します。実はピジョンミルクは、人間も頂戴したくなるほど栄養豊富な液体なんです。
消化管から分泌される、母乳のような役割の液体
ピジョンミルクとは、ハトの消化管から分泌される液体です。食べたものを一時的に貯蔵する『素嚢(そのう)』という器官から分泌され、親鳥から雛の口の中に与えられます。
ピジョンミルクは『母乳』と誤認されることがありますが、お乳から分泌されているわけではないので、厳密には母乳ではありません。
とはいえピジョンミルクは『雛が健康的に育つために分泌される、栄養豊富な液体』ですから、母乳のような役割といっても差支えないでしょう。
プロテインにそっくりな成分!栄養満点ミルク
ピジョンミルクの主成分は、おもにたんぱく質。栄養価が高く、炭水化物はほぼ含まれていません。成分概要は、人間用のプロテインによく似ています。
つまりピジョンミルクは、人間の赤ん坊にもあげたくなるような高栄養価な液体なのです。ちなみに素嚢はオスとメスの両方に存在しているため、母鳥だけではなく父鳥も雛にピジョンミルクを与えられます。
ハトが『平和の象徴』といわれる理由は?

ハトが『平和の象徴』といわれる理由はさまざまです。とくに有名な説が、旧約聖書に登場する『ノアの箱舟』の物語です。
神様の怒りによって、地上は大洪水に見舞われました。箱舟に乗って洪水を逃れたノアは、地上の様子を見るためにカラスを放ちます。しかしまだ水が乾く前だったため、カラスはすぐに戻ってきてしまいました。
数日後、ノアは再び鳥を放ちます。この時に選ばれたのが『ハト』です。オリーブの枝をくわえて戻ってきたハトのおかげで、ノアは地上の水が引いたことを理解しました。
ノアの箱舟の物語により『ハトとオリーブの枝は平和の象徴=人間と神様の和解の象徴』として扱われた、という説が有力です。
ハトは『害獣」』になることも…ハトが与える被害とは?

ここでは、ハトが人間に与える影響や被害について紹介します。
平和の象徴として親しまれつつも、時には人間の頭を悩ませるハト。ハトの生態にも留意しつつ、人間とハトとの適切な距離感について考えてみましょう。
鳴き声や飛び立つ音などの『騒音被害』
ハトは、鳴き声や飛び立つ音などで騒音被害を発生させる場合があります。明け方の4時や5時に「ポッポー」というハトの鳴き声で起こされた経験がある人もいるのではないでしょうか。
とくに防音性が低い物件や、ベランダ・窓にハトが留まりやすい物件などでは、睡眠障害につながる大きな被害を受けるケースもあります。
糞による『衛生被害』
ハトの糞による衛生被害は、人間やペットへの健康被害にもつながります。
悪臭や汚れだけではなく、害虫の発生源になったり、アレルギーを発生させたり……。とくに免疫力が低い小さなお子さんがいる家庭では、不安も大きくなってしまいます。
寄生虫による『感染被害』
ハトは、人間に被害のある寄生虫を連れてくる場合があります。ワクモ・ウモウダニ・トリサシダニなどが代表的です。
寄生虫を連れているハトを見た目で判別することは困難です。ハトに直接ふれなくても、洗濯物やベランダの手すりなどに寄生虫が付着する場合があり、人間がふれることで家の中に連れ帰ってしまいます。
ハトは帰巣本能が強い生き物…餌場にされると追い出しにくい
伝書鳩でもふれたように、ハトは帰巣本能が強い生き物です。ベランダや庭先に定着すると、何度追い出しても帰ってきてしまうケースが後を絶ちません。
とくに一度でも餌を貰ったハトは場所を覚え、さらなる被害につながってしまいます。
被害を減らすためには『食べ物を与えない』が鉄則!
ハトによる被害を最小限にするためには『食べ物を与えない』が鉄則です。
人間の小さな食べかすでも、ハトにとっては貴重な食べ物。ハトが立ち寄りそうな場所はこまめに掃除し、綺麗な状態を維持しましょう。
野生のハトは捕獲禁止!飼育する際はペットショップでの購入を

ハトやカラスを含む野鳥は、鳥獣保護法によって守られています。そのため野生のハトを無許可に捕獲・飼育・駆除することはできません。
もしハトを飼育したい場合は、ペットショップから購入しましょう。ショップからの正規購入であれば、もちろん違法行為にはなりません。街中でケガをしたハトを見つけても勝手に保護せず、まず各都道府県の野生鳥獣担当機関に相談しましょう。
人もハトも平和な生活のために…ベストな距離感を考えてみよう

今回は、ハトの生態や文化、人間とハトとの関係性などを紹介しました。
ハト自体は人間に攻撃性を抱いていないものの、ハトによる騒音や糞による被害は無視できませんよね。ハトの特性やライフスタイルを学んだうえで、お互いにストレスのない対策を考えることが大切です。
ハトは身近な鳥であると同時に、さまざまな創作物にも登場してきました。ハトについて深く学ぶことで、世界や歴史の見方も少しずつ変わってくるかもしれませんね。