- リビアヤマネコは、すべてのイエネコのルーツとなった『ご先祖様』
- ネズミ狩り要員として人間と共生したのが、イエネコの始まり
- 見た目は『キジトラ猫』にそっくり!性質はイエネコよりもワイルド

私たちの生活において、もっとも身近な動物の1つである『猫』。
描種や個体ごとにさまざまな個性を持つ猫たちですが、彼らのルーツはたった1種の動物に集約されることを知っていますか?
今回は、すべてのイエネコの祖先であるリビアヤマネコについて紹介します。

リビアヤマネコとはどんな動物?愛玩用猫のすべてのルーツ

まずは、リビアヤマネコの基本的な情報を紹介します。
現存するすべての愛玩猫のルーツとなったリビアヤマネコ。現在も絶滅はしておらず、地球の一部の地域に生息しています。
リビアヤマネコの生態や特徴を知り、イエネコとの共通点や違いについて学んでみましょう。
すべての猫のご先祖様!愛玩種の起源となる猫
リビアヤマネコは、イエネコの起源と考えられている猫の種類です。
体長は45~80cm、体重は3~8kg。イエネコの平均体重が4~5kgとされているため、家庭で飼育されている猫と比べるとやや大きめといえるでしょう。
リビアヤマネコとイエネコのDNAは、繁殖が可能であるほど極めて近いことがわかっています。リビアヤマネコは、あらゆるイエネコにとって『生きるご先祖様』のような存在なのです。
イエネコとの違いは?薄い縞模様も特徴的
そもそもイエネコとは、人間によって家畜化された猫を指します。ペットとして飼育されている愛玩猫はもちろん、ネズミを狩るために飼育されている猫も含まれます。
リビアヤマネコはイエネコと比べて脚が長く、体格も大柄な傾向に。毛色は灰色がかった茶色で、薄い縞模様があります。一見すると『キジトラ猫』にそっくりです。
リビアヤマネコの明確な寿命は判明していません。しかしイエネコと酷似したDNAを持つことから、イエネコと同等の『飼育下では13~20年・野生では3~5年』と考えて差支え無いでしょう。
熱帯雨林以外の幅広い環境で生活
イエネコは、基本的に寒い場所や濡れる場所が苦手です。その理由は、種のルーツであるリビアヤマネコの生息環境に由来すると考えられています。
リビアヤマネコが住んでいるのは、北アフリカを中心とする砂漠地帯。別名で『Desert cat(砂漠の猫)』と呼ばれるほど、湿度の低い場所で暮らす動物です。
砂漠は雨も少なく、水にふれる機会が少ないことから、現在のイエネコにも『水嫌い』が受け継がれたという説が有力です。
またリビアヤマネコはイエネコと同じ薄明薄暮性(明け方と夕暮れの時間帯に活発になる性質)であり、木登りも上手。狩りはおもに地上でおこないます。
もちろん肉食!小動物・爬虫類・魚、なんでも食べる
リビアヤマネコの食性は、イエネコと同じで肉食です。
ネズミやウサギなどの小動物から、爬虫類・魚・昆虫と、なんでも捕食します。時には人里の近くを訪れ、大人しい小型の家畜を襲うこともあるほどです。
過去には自分よりも大きいアンテロープ(ウシ科の大部分が含まれるグループ)を襲った記録もあり、狩猟に関してはかなりワイルドであることが伺えます。
日本で見られる場所・施設は無い
日本でリビアヤマネコが見られる場所は、残念ながらありません。
リビアヤマネコは、ワシントン条約の附属書II(輸入のためには輸出国政府が発行する輸出許可書が必要)に含まれています。しかし環境省の定める特定動物ではないため、個人輸入が可能な生き物です。
その気になれば、自分で飼育するために海外から購入することも可能です。非常に稀ではありますが、ペットショップで取り扱っている場合もあります。
イエネコになった経緯は?リビアヤマネコが現在に至るまで

ここでは、リビアヤマネコが現在のイエネコに至るまでのルーツを紐解いていきます。
犬とは異なり、人間と主従関係を築くことは難しいとされる猫科。野生種であったリビアヤマネコが人間と暮らすまでには、どのような歴史が存在しているのでしょうか?
ネズミ対策のために家畜化されたのが始まり
リビアヤマネコが人間と暮らし始めたのは、約9500年前といわれています。なぜなら当時の墓に、リビアヤマネコが人間と一緒に埋葬されていた記録が残っているからです。
墓はヨーロッパのキプロス島にあり、このリビアヤマネコが世界最古の飼猫だと考えられています。
さらに約5000年前には、古代エジプトで多くのリビアヤマネコの骨が出土されています。
当時は小麦や大麦などの栽培が盛んだったことから、この頃に『穀物を食べるネズミ狩り要員』として家畜化が進んだという説が有力です。
船乗りや旅商人とともに全世界に移動
エジプトを中心に使役されたリビアヤマネコは、船乗りや旅商人とともに全世界に移動したと考えられています。
暑い地域では短毛に、寒い地域では体が大きく長毛に。さらに時代が進むと、猫の繁殖活動をおこなうブリーダーが登場します。
19世紀末にはキャットショーが開催されるようになり、血統を守るための計画的な繁殖が広まりました。
土地の風土に合った進化と、ブリーダーによる種の保持や拡大により、現代における愛玩猫が普及したのです。
リビアヤマネコは、性質的にもイエネコの素質があった
リビアヤマネコは、数いるヤマネコの一種でしかありません。リビアヤマネコがイエネコのルーツとなった由来には、リビアヤマネコ特有の素質が関連しています。
一般的なヤマネコは、リビアヤマネコ以上に警戒心や攻撃性が強く、人間に使役されにくい傾向にあります。たとえ子猫時代から育てても、なかなか人間に慣れません。
しかしリビアヤマネコは、育て方によっては人間と暮らしを共にできるほど懐いてくれる素質を持っています。
現在はDNA鑑定により『イエネコの祖先はリビアヤマネコ』が確定的となっています。しかしDNAの酷似を除いたとしても、性質面においても可能性が高いといえるでしょう。
人間と暮らすなかで、遺伝子レベルの変化が発生
リビアヤマネコは、人間と暮らすなかで遺伝子レベルの変化が発生したと考えられています。
- 脳の変化……人間と共存するなかで、攻撃性に関連する領域が縮小した
- 外見の多様性……野生では『目立たなさ』が重要だったが、イエネコになるにつれて個性や美しさが引き出された
- 社会性の変化……野生では単独行動が基本だが、イエネコになるにつれて限定的ながらも社会性が発達した(人間やほかの猫との共存)
とくに外見の多様性は、人間による選択育種類の影響が大きいとされます。
現在の愛玩猫たちの個性豊かな被毛・カラー・目の色・模様・体型などは、イエネコとリビアヤマネコの違いを決定づける要素です。
リビアヤマネコのさらなる祖先『ミアキス』とは
愛玩猫たちの先祖は、リビアヤマネコ。それでは「リビアヤマネコの先祖は?」というと、『ミアキス』という肉食目の動物だと考えられています。
ミアキスは、6500万年前~4800万年前に生息した、小型の捕食動物。猫だけではなく、犬やアシカ・イタチ・ヒョウなどさまざまな動物のご先祖様です。
ミアキスから分かれたグループの1つが『ネコ科』。ネコ科は、さらにヒョウ属・サーバル属・チーター属……と細分化されます。
ネコ科の1つが、リビアヤマネコが属する『ネコ属』。愛玩猫であるイエネコたちも、このネコ属に含まれます。
リビアヤマネコの飼育は難しい?

前項でもふれたように、リビアヤマネコは個人輸入ができる生き物です。特別な許可も要らず、飼育環境さえあれば今からでも家族として迎えられます。
しかし野生で暮らす猫であるリビアヤマネコは、一般的な愛玩猫以上に『運動できる環境の整備』が必須です。野生の食性に基づくためには、餌に生肉を用いる必要もあります。
また警戒心が強いため、ほかのペットとの共生は難しいでしょう。さらに野生種であるため、生物多様性を保全するために絶対に脱走させてはいけません。
流通自体はゼロではないものの、診察可能な獣医師を確保する難易度も含め、決して飼いやすい動物とはいえないでしょう。
価格の相場は、約50万円です。とはいえ市場に出回るのは珍しいため、個体ごとに大幅に価格が上下する可能性もあります。
猫好きにとって、足を向けては寝られないリビアヤマネコ!

今回は、すべての猫のご先祖様であるリビアヤマネコについて紹介しました。
マンチカン・スコティッシュフォールド・ペルシャ・アメリカンショートヘア……現存する100種類以上の猫たちは、リビアヤマネコがいなければ存在していないと考えられています。
愛猫家にとって、足を向けて寝られない動物であるリビアヤマネコ。ぜひこの機会に、猫と人間の関わり方や歴史について、さらに詳しく調べてみてください!




