- 腎臓病になりやすいのは「砂漠生まれ」だったから説!?
- 猫は夜行性でも昼行性でもない「薄明薄暮性」だった!
- 猫の習性の多くは、過酷な環境での生存を賭けた進化の証

現在、世界中で愛されている猫。その愛らしい姿からは想像もつきませんが、実は祖先は砂漠地帯で生まれた野生動物だったことを知っていますか?
本記事では、猫の進化の歴史を紐解きながら、人間との深い絆が育まれてきた過程を詳しく解説します。
私たちの暮らしに溶け込んでいる猫。祖先はどこから来たの?
私たちの身近な存在である猫。
その愛らしい仕草や不思議な習性の裏には、実は数万年もの進化の歴史が隠されていることを知っていますか?今回は、現代の猫たちの祖先をたどりながら、その謎に迫ってみましょう。
現代の猫の祖先「リビアヤマネコ」って?

約10万年以上前、中近東の広大な砂漠地帯に生息していた「リビアヤマネコ」が、現在の家猫の直接の祖先という事実が明らかになったのは、つい最近のことです。
最新の遺伝子解析によると、現代の家猫とリビアヤマネコのDNAが最も近いという研究結果が報告されています。この発見により、私たちが飼っている猫たちの行動や習性の多くが、砂漠での生活に適応した結果だということが分かってきました。
このリビアヤマネコが家畜化され、「イエネコ」として進化したのは約9000年前のこと。
古代エジプトの農耕文明の発展とともに、人間の集落に住み着いたリビアヤマネコは、徐々に人間との関係を深めていきました。例えば、穀物を狙うネズミを捕食するリビアヤマネコの存在は、農民たちにとって都合の良いものだったのでしょう。
この相利共生的な関係から、リビアヤマネコは次第に人間に馴染んでいき、イエネコとして進化を遂げていった歴史なのです。
腎臓病になりやすいのは「砂漠生まれ」だったから!?
猫が腎臓病になりやすい動物ということを知っていますか?
その理由は、実ははっきりと解明されていません。しかし、一説によると、猫の祖先であるリビアヤマネコの能力が影響していると言われています。
リビアヤマネコは砂漠という極限環境で生き抜くため、少ない飲水量で濃い尿を排泄する体の適応能力を獲得し、その結果、腎臓に負担がかかって腎臓病になりやすいという説があるようです。
どこまで知ってる?農耕生活と猫の出会いから猫崇拝の歴史
歴史を振り返ってみると、人類が農耕生活を始めたことで、猫と人間の関係は大きく変化しました。
農耕生活において、食料の穀物はとても重要なものです。その穀物の貯蔵に伴い、増加したネズミの駆除者として、猫は次第に人間社会に溶け込んでいったのです。
その過程で、猫は単なる害獣駆除の助っ人から、神として崇拝される存在へと変貌を遂げていったと言われています。
猫を傷つけると死罪!?古代エジプトに見る、猫=神の歴史

諸説ありますが、一説によると古代エジプトでは、猫は豊穣と家庭の守護神である女神「バステト」として崇拝されていた歴史があります。
その当時、猫を傷つけることは死罪に値する重大な罪とされ、死亡した猫は神聖な儀式とともにミイラとして丁重に埋葬されていたそうです。
考古学的な調査では、エジプト各地から数十万体もの猫のミイラが発見されており、猫専用の墓に埋葬していたという話もあるとのこと。
これらの事実は、当時の人々がいかに猫を特別な存在として扱っていたかを物語っています。
ネズミを捕るために重宝された猫

14世紀になると、ヨーロッパを襲ったペスト(黒死病)が大流行します。
この歴史的感染症の拡大は、人類に猫の重要性を再認識させるきっかけとなったのです。
病気を媒介するネズミを効果的に駆除できる猫は、まさに救世主的な存在となり、この時代以降、猫は都市部でも積極的に飼育されるようになりました。
その結果、人間との共生関係はさらに深まっていきました。港町や倉庫では特に重宝され、船舶にも必ず猫が乗り込んでいたと言われています。
猫は夜行性ではなかった!?「薄明薄暮性」の猫の習性

「猫は夜行性」という一般的な認識は、実は大きな誤解だったのです!
猫は実際には「薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)」の生き物で、主に夜明けと日暮れ時に活発に活動します。これは、砂漠地帯で暮らしていた祖先の生態が受け継がれているためと考えられています。
日差しが強い日中の時間を避けることで体力を温存し、比較的涼しい朝夕に狩りを行うという生活リズムが、現代の猫にも残っているからと言われています。
また、この時間帯は猫の獲物となるネズミなどの小動物も活発に活動する時間帯であり、狩りに適しているという理由もあります。
忙しい現代人に最適!現代社会で猫が人気の秘密
これまで猫の習性を歴史から紐解いてきました。現代社会において、猫は人気のあるペットとして不動の地位を確立しています。
その理由として、まずあげられるのが比較的手軽な飼育環境です。犬のような定期的な散歩も必要なく、トイレのしつけも容易です。また、生まれながらの清潔好きで、自分で毛づくろいをするという習性も、現代人のライフスタイルに合っています。
さらに、独立心が強く留守番が得意という特性は、共働き家庭でも飼育しやすい利点ですよね!
また近年では、猫とのふれあいがストレス解消の効果をもたらすことも科学的に証明され、メンタルヘルスケアの観点からも注目されています。
「猫らしさ」の謎を解く。神から家族の一員へ

砂漠の野生動物だった猫は、長い歴史の中で人間社会と深く結びつき、時には神として崇拝され、時には迫害を受けながらも、現代では最も身近なペットとして世界中で愛されるようになりました。
水を飲みたがらない傾向や、夜明けと日暮れ時に活発になる習性など、普段何気なく接している猫の習性の多くは、実は過酷な環境での生存を賭けた進化の証なのかもしれません。
私たちが「猫らしさ」として知っている特徴の多くが、その裏には数万年にも及ぶ壮大な進化の歴史が隠されていたのです。