【猫ひっかき病とは?】原因・症状・治療・予防を徹底解説

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まとめ
  • 猫ひっかき病は、主にバルトネラ・ヘンセレという細菌が原因で起こる人獣共通感染症
  • 健康な成人は軽症で自然治癒しやすい一方、免疫力が下がっている人は注意が必要
  • 予防策としては、ノミ対策・爪のケア・傷口の消毒などが有効
  • 心配な症状や感染を疑うような経緯があった場合は、すぐに医師や獣医師に相談

「猫ひっかき病(Cat Scratch Disease)」という病名を聞いたことはありますか? 愛猫との生活の中で、ひっかきや咬み傷はつきものですが、その小さな傷が原因で深刻な病気に発展することもあります。特に免疫力が下がっている人や子ども・高齢者・基礎疾患を持っている人などは注意が必要です。


本記事では、猫ひっかき病の原因や症状・治療法・予防策について詳しく解説します。愛猫との暮らしをより安心・安全なものにするため、ぜひ最後まで目を通してください。

◆取材・監修:日本橋動物病院

監修者

園田 開(そのだ かい)医師

日本橋動物病院の院長を務め、年間10,000匹以上の犬猫やその他の動物を診療している。動物病院での臨床経験は25年以上で、現在は皇居の警察犬担当獣医師としても活躍中。

目次

猫ひっかき病とは?

猫ひっかき病とは、主に猫の爪や歯による傷(ひっかき傷や咬み傷)を通してバルトネラ・ヘンセレ(Bartonella henselae)という細菌に感染して起こる人獣共通感染症です。英語では"Cat Scratch Disease (CSD)"と呼ばれています。

  • 世界中で広く報告されている人獣共通感染症の一種
  • 猫から人への感染がほとんどで、犬など他の動物からの感染は極めてまれ
  • 健康な成人が感染しても多くは軽症で終わることが多い一方、免疫力が低い人にとっては症状が重くなるリスクがある

症状は主に感染部位の腫れ・痛み・発熱・倦怠感などで、受傷から3〜4週間後に約50%の人に咬み傷に近いところのリンパ節が腫れる症状が見られます。稀に深刻な症状や合併症を引き起こすことがあるため、注意が必要です。

原因と感染経路

原因:バルトネラ・ヘンセレ (Bartonella henselae)

猫ひっかき病の原因となる細菌『バルトネラ・ヘンセレ』は、ノミが媒介して猫に感染すると考えられています。具体的には、以下のようなメカニズムが考えられてています。

  1. ノミを介して感染
    • 猫がノミに咬まれて血液を吸われる際、ノミが保有しているバルトネラ菌が猫の血液内に侵入する。
  2. 猫の爪に細菌が付着
    • 猫が自身の体(被毛など)をかいたり、ノミを噛んで取り除いたりした際、爪や歯に菌が付着する。
  3. ひっかき・咬み傷による感染
    • 菌が付着状態のまま人の肌をひっかく・咬むなどすると、傷口から菌が人の体内に侵入し感染する。

感染リスクが高い環境・状況

  • 多頭飼育や野良猫との接触が多い家庭
  • ノミ対策が不十分な猫を飼育している環境
  • 子猫や若齢猫は成猫よりもノミ感染やひっかきの頻度が多いため、感染リスクが高いと考えられている

猫ひっかき病の主な症状と治療方法

猫ひっかき病に感染した際の主な症状

猫ひっかき病に感染すると、人の体には以下のような症状が現れることがあります。症状は多くの場合、感染してから1~2週間ほどの潜伏期間を経て出始めます

感染部位の腫れや痛み

ひっかき傷や咬み傷の周囲が赤く腫れ上がった里、化膿(かのう)したりする場合もあります。

発熱・倦怠感(けんたいかん)

微熱や38~39℃程度の発熱。全身のだるさや倦怠感。

リンパ節の腫脹

特に感染部位に近いリンパ節が腫れて痛んだり、膿が出るたりすることも。腋下や頸部のリンパ節が腫れるケースもあります。

頭痛・関節痛

発熱や免疫反応に伴って頭痛や関節痛が起こることがあります。

大多数は数週間~数ヶ月で自然治癒しますが、まれに肝臓や脾臓(ひぞう)の膿瘍・脳炎・網膜炎などの合併症を引き起こすことがあります。

特にエイズ患者や免疫抑制剤を使用中の人など、免疫力が低い状態の人は、重症化するリスクが高くなるため注意が必要です。

自己判断は禁物!医師の診察を受けた上での治療方法

経過観察(自然治癒)

健康な成人の場合、軽症であれば特別な治療を行わずとも数週間~数ヶ月で自然治癒することが多いです。

症状が軽度の場合は感染した部位を温め、安静・水分補給・傷口の清潔保持を徹底することで、回復を促すことが一般的です。

抗生物質の投与

症状が重い長引く場合や、免疫力が低い人(基礎疾患を持つ人・幼児・高齢者など)の場合は、医師の判断で抗生物質が処方されることがあります。

主にアジスロマイシンなどマクロライド系抗生物質が用いられ、重度の場合は、リファンピシンやドキシサイクリンなどを使用することもあります。

痛みや発熱への対処

リンパ節の腫れや痛みに対しては、鎮痛解熱剤(アセトアミノフェンなど)が処方される場合があります。ただし、自己判断で市販薬を使用するのは避けるようにし、必ず医師の指示を仰ぎましょう。

猫ひっかき病は人から人へ感染する?

猫ひっかき病は、基本的に人から人へ感染しないとされています。人が感染の元となるのは、あくまでもバルトネラ菌を保持している猫の爪・歯・体液が原因です。

ただし、同じ猫から複数の人が連続してひっかかれたり咬まれたりした場合、結果的に複数人が同時期に感染する(集団感染)ケースはあり得ます。そのため、1人が猫ひっかき病と診断された場合は、同居家族も注意深く観察することが望ましいでしょう。

日々のケアが重要!猫ひっかき病の予防策

猫ひっかき病の予防には、愛猫の健康管理と飼主の適切な対策が大切です。

  1. ノミ対策
    • 定期的なノミ予防薬の投与や、ノミ取り首輪を活用
    • 被毛ケアや掃除を徹底して、猫の生活空間を常に清潔に保つ
  2. 爪のお手入れ
    • 猫の爪はこまめに爪切りを行い、過度に尖らせない
    • 爪とぎグッズを設置して、爪が伸び過ぎるのを防ぐ
  3. 咬まれたりひっかかれたりしないよう対策
    • 猫と遊ぶときは、手や足をおもちゃ代わりにしない
    • 遊びが激しくなりそうなときは、猫用おもちゃを活用
  4. 傷口の適切なケア
    • 万が一ひっかかれたら、すぐに水や石鹸でよく洗う
    • アルコール消毒液などで患部を消毒して、早めに医師の診察を受ける
  5. 定期健康診断
    • 猫の体調変化を見逃さないために、動物病院での定期健診を受ける
    • ノミやダニの寄生チェック・ワクチン接種などを適切に行う

こうした予防策を徹底したり過度な接触を避けたりすることで、猫ひっかき病だけでなく、ほかの病気やトラブルのリスクを大幅に減らせます。

愛猫との生活を快適に送るために

  • 正しい接し方を学ぶ
    • 子どもやペットに慣れていない家族にも、猫に近づくときの注意点を教える
  • ストレスを与えない
    • 急に大きな声で呼ばない・驚かせないなど、愛猫がリラックスできる環境を整える
  • 清潔な住環境
    • 毛が散らばるのを防ぐための掃除や、猫用トイレの清潔維持を心がける
  • 健康管理とコミュニケーション
    • 猫の体調変化をいち早く察知するには、日常的なスキンシップやブラッシングが効果的

愛猫との関係を良好に保ちつつ、安全で快適な暮らしを送るには、飼主のちょっとした心配りが欠かせません

猫ひっかき病に関するよくある質問(Q&A)

Q1. 猫が感染源の場合、猫自身はどんな症状が出るの?
A. 通常、猫ひっかき病の原因菌に感染しても、猫自身にはほとんど症状が出ません。まれに発熱や食欲不振などが見られる場合がありますが、基本的には無症状であることが多いです。

Q2. ワクチンはありますか?
A. 残念ながら、猫ひっかき病(バルトネラ・ヘンセレ)に対するワクチンはありません。予防の基本はノミ対策と傷口のケア、そして爪のお手入れです。

Q3. 家族が感染したら猫を手放すべき?
A. 猫ひっかき病は、人から人へ感染しないとされています。また、猫のケア(ノミ予防など)を徹底すれば再感染リスクを減らすことができます。猫を手放す必要はありませんが、家族の健康状況や猫の状態を考慮し、必要に応じて猫の場合は獣医師に、人間の傷の場合は医師に相談しましょう。

Q4. 症状が軽くても病院に行く必要はある?
A. 発熱やリンパ節の腫れ・痛みなどがある場合は、早めに医師の診断を受けてください。万一の合併症予防や早期治療のためにも専門医への相談が必要です。

適切な対応で猫ひっかき病を予防し、重症化を防ごう!

愛猫との暮らしは、人生を豊かにしてくれるもの。少しの配慮と正しい知識を身につけておくことで、猫ひっかき病をはじめとするリスクを減らし、愛猫と快適に過ごすことができるでしょう。

もしも心配な症状や感染を疑うような経緯があった場合は、すぐに医師や獣医師に相談してください。適切な対応をとれば、猫ひっかき病を重症化させずにすみます

猫との生活を安全に楽しむためにも、ぜひ本記事の内容を参考に、日々のケアや健康管理に役立てていただければ幸いです。

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