- レッサーパンダは2種類いる
- シセンレッサーパンダの飼育頭数は日本が7割を占めている
- レッサーパンダの指は6本ある
- 竹を主食にしているけれど、食肉目の動物
立ち上がる姿のかわいらしさでテレビを賑わせたレッサーパンダ。実は絶滅危惧種だということを知っていましたか?レッサーパンダは、生息地でもその数を減らしているのです。
現在は地球上に2,500〜10,000頭しかいないといわれており、数十年のうちに絶滅してしまう危険があると考えられているのだそうです。
そんなレッサーパンダの意外な生態や、絶滅の危機に瀕している理由について、江戸川区自然動物園レッサーパンダの飼育担当スタッフ松丸さんにお話を聞きました。
◆取材・監修:江戸川区自然動物園 レッサーパンダ担当 飼育スタッフ
ニホンリス・ペンギンの飼育を経て、2024年4月からレッサーパンダの担当に。それまでもレッサーパンダの飼育の代番(担当者がお休みのときに、代わりに飼育を担当すること)に入ることはしばしばあったのだそうで、当時いたレッサーパンダは老齢だったため、現在いる3歳の若いレッサーパンダの動きの速さに最初は戸惑ったのだとか。レッサーパンダのかわいい姿に、日々癒されているのだそう。
レッサーパンダは2種類いる!?
レッサーパンダには2つの種類がいることを知っていますか?日本にいるレッサーパンダのほとんどは『シセンレッサーパンダ』です。実は世界で飼育されているシセンレッサーパンダの7割が日本にいます。
もう1種類は『ネパールレッサーパンダ』。ヨーロッパなどの動物園で見るレッサーパンダはほぼネパールレッサーパンダです。ヨーロッパではシセンレッサーパンダはほとんど見かけません。
レッサーパンダの生息地はネパールや中国の山岳地帯。標高1,500〜4,000mの高いところに生息しているため、寒さには強くても暑さには弱い動物です。
日本の夏は暑いため、獣舎内にエアコンをかけて暑さをしのげるようにしてあるのだそうです。
世界で飼育されているうちの7割が日本にいる|シセンレッサーパンダ
シセンレッサーパンダは、中国の四川省・雲南省などに生息しています。ネパールレッサーパンダに比べると少し体が大きく、顔の色はやや濃く赤みが強いのが特徴です。尻尾の縞模様もはっきりしている傾向があります。
シセンレッサーパンダの体重はおよそ4〜7kg程度です。飼育下での寿命はだいたい15年ほどです。
ただサクユリの前にいた夫婦は23歳と20歳まで生きてくれて、長寿でした。
現在園にいるのは2021年生まれのシセンレッサーパンダのサクユリ(メス)3歳です。
日本に10頭しかいない|ネパールレッサーパンダ
ネパールレッサーパンダはその名の通りネパールに生息しているレッサーパンダです。日本では唯一、熱川バナナワニ園で飼育されています。シセンレッサーパンダよりも色がやや薄く、体が小柄なのだそうです。
欧米の動物園でレッサーパンダといえばネパールレッサーパンダですね。シセンレッサーパンダはほとんどいません。
レッサーパンダはどうして絶滅危惧種になってしまったの?
日本のおよそ60園もの動物園で飼育されているレッサーパンダ。
日本にいるとその希少性を忘れてしまうほど親しみのある動物ですが、世界的にみると絶滅が危惧されている動物です。レッサーパンダはどうして絶滅危惧種に選定されているのでしょうか?
一番大きいのは生息地の減少だと思います。本来はネパールや中国の山岳地帯、1,500〜4,000mという高地の森林に生息する動物ですが、開発によって森林が伐採されたり、ダムを作るために開墾されたりということが続き、生息地が奪われているのが現状です。
やはり野生動物の敵は人間ということなのでしょうか?
そうなりますね。そのほかにも、毛皮のためやペットにするための密猟が後を絶たないことも、数を減らしている原因と考えられています。
人間と動物が共生できる社会はなかなか難しいのでしょうか。悲しい現実です。
レッサーパンダってどんな動物?
レッサーパンダの姿やその名前は知っていますが、実際にはどのような動物なのでしょうか。知っているようで意外と知らない、レッサーパンダについて聞きました。
レッサーパンダは何を食べるの?
レッサーパンダは普段、園内ではどのような食事をしているのでしょうか?野生のレッサーパンダの食性と合わせて松丸さんにお話を聞きました。
本来レッサーパンダは食肉目の動物なので、野生では鳥の卵や小動物を食べることもあるようですが、主食は竹です。
園では柿やぶどうなどの果物も与えますが、なんといっても大好きなのはりんご。あと、竹もそれぞれ個体によって好みの竹があるようです。
園ではどのような食事をしているのでしょうか?
竹をメインに果物を与えています。あとはリーフイーター用のペレットですね。夏は食欲が落ちるので、竹の葉をミルサーで粉にして、すりおろしりんごと混ぜてペーストにしたものをあげたりします。
食欲が落ちても、大好きなりんごには飛びつくのだとか。寒い地域の動物だけに、暑さ対策は欠かせません。
パンダよりスカンクに近い!?
レッサーパンダという名前からすると、ジャイアントパンダに近い動物なのかと勘違いしてしまいそうですが、実はパンダよりもスカンクに近い動物なのだとか。
ジャイアントパンダはクマ科の動物ですが、レッサーパンダはクマではありません。食肉目ですがレッサーパンダ科の動物で、イタチやスカンクに近い動物になります。
肛門の近くと足の裏に、臭いを発する臭腺があるのもスカンクに近い生態ですね。
2本足で立ち上がるのはどうして?
以前から後ろ脚で立ち上がる姿のかわいさが話題になってきたレッサーパンダですが、どんなときに、どんな理由で立ち上がるのでしょうか?松丸さんに聞いてみました。
レッサーパンダは足の裏がぺったり地面につく足の構造になっています。この足の構造は人間の足に近く、立ち上がるのに向いています。また尻尾が大きいため、尻尾でバランスを取って、足で立つのを支えやすいようです。
普段園内ではどんなときに立ち上がるのでしょうか?
普通に立ち上がってる姿を見かけますが……。威嚇するときは立ち上がって手を広げたりしますね。かわいいので威嚇されている気はしませんが(笑)。
あとは欲しいものがあるときには立ち上がって、歩くこともあります。竹の葉を手繰り寄せたりしてるのを時々見かけます。
歩いたりもするんですね!ぜひ見てみたい姿です。
飼育スタッフに聞いた!レッサーパンダの意外な生態
2024年4月から、レッサーパンダの飼育担当をメインで行うことになった松丸さんですが、それまでにも何度もお休みの担当者の代わりに代番に入ることはあったのだとか。
その当時から今までに関わってきたレッサーパンダについて、驚いたことや意外だったことについて話してもらいました。
レッサーパンダには指が6本ある?
ジャイアントパンダにも第6の指があることが知られていますが、レッサーパンダにも同じように第6の指があるのだそうです。
個体差もありますし、ジャイアントパンダほど顕著ではないですが、第6の指はレッサーパンダにもあります。
この指のおかげでレッサーパンダも前足で竹をつかんで食べることができるんです。
こんなところにジャイアントパンダとレッサーパンダの共通点があるんですね!
レッサーパンダは下を向いて木を降りられる!
レッサーパンダは主に樹上で生活する動物であり、木の上で自由自在に動き回れるのだそうです。レッサーパンダが木の上で自由に動き回れるというエピソードについて話してもらいました。
レッサーパンダには6本目の指の骨があると話しましたが、それに加えてレッサーパンダには鋭いツメがあるんです。この鋭いツメと6本目の指のおかげで、下向きに木を降りられるんです。
ツメと6本目の指のおかげでしっかりと木をつかめるためだといわれてます。
え?頭を下にして木を降りられるということですか?
はい。そうです。
レッサーパンダは重力を無視した動きができるなんて!
知らなかったレッサーパンダの意外な一面でした。
レッサーパンダには盲腸がない?
レッサーパンダは竹を好んで食べると聞くと草食動物だと思ってしまいそうですが、レッサーパンダの体は草食動物の構造にはなっていないのだそうです。レッサーパンダの体について聞きました。
レッサーパンダはそもそも食肉目の動物なんです。草食動物ではありません。ですから体の作りも肉食動物の作りになっています。竹を食べている姿をみていると草食動物のように盲腸も発達しているように思いますが、盲腸はないんです。
レッサーパンダの体では、腸内細菌フローラが竹の消化を助けています。
この体の作りはジャイアントパンダと同じで、食肉目の動物でありながら竹を好んで食べる習性も同じです。しかしレッサーパンダはクマではなく、分類上はイタチやスカンクやアライグマの仲間。
第6の指といい、食性と体の作りといい、ジャイアントパンダとレッサーパンダには共通点が多いことがわかります。この共通点が双方に『パンダ』の名前がついている理由なのでしょうか。
レッサーパンダのココを見て!
レッサーパンダを毎日見ている松丸さんおすすめのレッサーパンダの見どころについてお話を聞きました。
木の上で毛繕いをしていたり、お昼寝している姿がとにかくかわいいんです。暑い時期は舎内に入っていることも多かったですが、これからの時期は枝と枝の間に上手に座って眠っている姿が観られると思います。
もっと寒くなってくると葉っぱの中に入ってしまうので、寒くなる前の時期がおすすめです。
木の上でお昼寝している時間帯だとやはりお昼前後がいいのでしょうか?
薄暮性の動物なので、朝晩が主な活動時間です。開園時間・閉園時間の辺りの時間帯が狙い目だと思います。
あと、ふさふさの尻尾もかわいいのでぜひ観ていただきたいですね。
レッサーパンダのエリアに姿が見えないと思ったら、少し上を見てみるとその姿が見られるかもしれません。枝の間に上手に丸くなって眠っているレッサーパンダのかわいい背中も愛嬌たっぷりです。
絶滅を防ぐために、私たちが考えるべきこと
そのかわいらしさから一躍人気動物になったレッサーパンダ。しかし実情は人間の勝手な行動によって生息地を奪われているという現状がありました。
今レッサーパンダを飼育する動物園同士では、繁殖のためにいろいろな工夫や取り組みがされています。
江戸川区自然動物園のサクユリも、都立大島公園動物園から、スタッフが大切に運んできて現在の公開に至ったという経緯があるそうです。
江戸川区自然動物園では2023年10月に、国内最高齢だったブナ(オス・当時23歳)が亡くなり、レッサーパンダが不在となっていましたが、2024年の2月からサクユリが公開されるようになりました。
動物園で大切に育てられているレッサーパンダを見に、今度のお休みは出かけてみませんか?
絶滅危惧種について知りたくなったら、こちらの記事をチェック!
◆施設情報
江戸川区自然動物園
所在地:東京都江戸川区北葛西3-2-1
入園料:無料
営業時間:10:00~16:30 ※土曜日・日曜日・祝休日は9時30分から、11月~2月は16:00まで
休園日:月曜日(祝休日の場合は翌日)・年末年始(12月29日~1月1日)※詳細は公式HPをご覧ください