- 日本に生息するヘビはおもに9種類
- 有毒ヘビは3種類で、咬まれると危険
- ヘビに遭遇しない方法や、遭遇時の対処法を学ぼう
私たちにとって身近なペットであり、ときには危険な野生生物でもあるヘビ。今回は、日本に生息しているヘビの種類や、有毒ヘビに遭遇しないためのポイントなどを紹介します。
毒を持っているヘビに遭遇してしまったときの対処法も解説していきますので、ヘビとの安全な共存のためにもぜひ参考にしてください。
人気のペットであり、身近な野生動物!ヘビの基本情報
ここでは、ヘビに関する基本情報を紹介します。ヘビは存在を広く知られている生き物ですが、生態については詳しくないという人も多いのではないでしょうか。ヘビの基本的な知識を学び、身近な生き物としての理解を深めていきましょう。
森林・砂漠・草原・川。どこにでも住む変温動物
「ヘビは山や草むらに住んでいる」というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、実はヘビは砂漠・川・海などを含む幅広い場所に生息する生き物です。環境に合わせて体温を変化させる変温動物で、気温が低い日は比較的大人しいことも特徴です。
ほぼすべての種類が動物食
ヘビは基本的に、ほぼすべての種類が動物食。生息環境によって主食は異なりますが、おもにネズミ・ウサギ・カエル・リス・鳥などの動物を食べて生活しています。実際にペットとして飼育する際も、マウスやヒヨコなどの動物が主流です。
【毒なし】日本に生息する安全なヘビ6選
ここでは、日本に生息するヘビのなかでも、毒のない安全なヘビ6種類を紹介します。無毒のヘビのなかには、民家の近くや道端など身近な場所で目にする種類も。安全なヘビの種類を見分けることで、より安心してヘビと共存しやすくなるでしょう。
アオダイショウ|家の近くでも見つかる身近なヘビ
- 生息地域:日本全域
アオダイショウは、日本全域に生息する身近なヘビの一種。昼行性で平地にも住んでおり、夜間は地面の穴や岩の隙間などで休むことも。とくに民家周辺や公園での目撃例が多く「人間と共存するヘビ」の代表格といえる。
シマヘビ|毒はないが気性は荒い!
- 生息地域:日本全域
シマヘビは、名前の通り「黄色い体に4本の黒いシマが入ったヘビ」。無毒だが気性が荒い個体が多く、危険を感じると尾を震わせながら地面を叩き威嚇。とくに農村を中心に目撃例が多く、河川敷や耕地でも目にする機会が多い種類。
ジムグリ|地中に潜るのが得意なインドア派
- 生息地域:日本全域
ジムグリは和名で「地潜」と呼ばれるヘビで、地中や石の下に潜る習性を持つことから名づけられた。赤みが強い体に黒い斑点とインパクトの強い見た目だが、毒はない。おもに地中で生活することから、モグラも主食の一つとなっている。
ヒバカリ|大人しくておっとりした性格
- 生息地域:北海道以外の日本全域
ヒバカリは、森林や水辺を中心に生活するヘビ。都市部では見かけることは稀だが、水田や湿地が多い地域では朝方・夕方に活発に動く。ヘビのなかでは大人しくおっとりした性格をしており、捕まえても咬もうとせずジッとしている傾向がある。
タカチホヘビ|地中性&夜行性の隠れ上手!
- 生息地域:一部地域を除く本州・四国・九州
タカチホヘビは、全長30~60cmの小柄なヘビ。地中性かつ夜行性のため、あまり人の目にはつかない。おもに森林に生息しており、昼間は落ち葉や倒木の下で休んでいる。主食は甲虫類の幼虫やミミズ。雨天時には昼間でも地上に現れやすくなる。
シロマダラ|なかなか見つからない幻のヘビ!
- 生息地域:日本全域
シロマダラは、なかなか発見できないことから幻のヘビとも呼ばれている種類。生息域自体は広いものの、夜行性かつ個体数が減少傾向。外敵に襲われると死んだフリをしたり毒ヘビに擬態したりなど、ユニークな性質を持っていることも特徴。
【毒あり】日本に生息する危険なヘビ3選
ここでは、日本に生息する有毒ヘビ3種類を紹介します。詳細な生息地域や見た目の特徴なども記載しますので、危険なヘビを見分ける情報としてぜひ活用してください。
ニホンマムシ|日本を代表する毒蛇
生息地域 | 北海道から九州 |
生息場所の特徴 |
岩陰・藪の中・山・渓流・森 藪の中などの地面で休んでいることに気づかずに踏んでしまって咬まれるなどの事故が多い。 |
毒の特徴 | 出血毒(神経毒も含まれる)。咬まれた場所から痛みと腫れが広がる。悪化すると死に至ることも。 |
咬まれてから毒の症状が出るまで | すぐに激しい痛みと腫れが出る。約1時間経過しても症状が出なければニホンマムシには咬まれていないと言える。 |
活動時間帯 | 夕方から夜間 |
見た目の特徴 | 三角形の頭・茶色い体に銭形模様(黒化した真っ黒の個体・模様のない個体もいるため注意)・首が細く体が太い |
ニホンマムシは日本を代表する毒蛇の一種です。とはいえ性格は大人しく、人間から攻撃しない限りは襲ってきません。日中は暗い場所で休んでおり、夜になると活発に行動します。都市部ではほぼ見かけませんが、キャンプや登山で薮に入る際はとくに注意が必要です。
ヤマカガシ|2種の毒を持つと言われる有毒ヘビ
生息地域 | 本州から九州 |
生息場所の特徴 | 渓流・田んぼ・河川敷などの水辺・自然の多い人里 藪などに潜んでいるが自分から咬んでくることはない。 |
毒の特徴 | 出血毒とヒキガエル由来の毒の2種類 |
咬まれてから毒の症状が出るまで | 咬まれると数時間~1日ほどで皮下出血などがあらわれる。痛みや腫れは少ない。頸部由来の毒は目に入ると失明の恐れも。 |
活動時間帯 | 日中(とくに午前中) |
見た目の特徴 | 赤黄黒の斑紋・ツヤの無いザラザラした鱗(注:見た目の地域差が大きいため、詳しくは所在地の情報を参照) |
ヤマカガシは、毒蛇であることが近年になってわかった大人しい有毒ヘビです。日本に生息する毒蛇である二ホンマムシとハブは、共に毒牙が口の前方にある前牙類ですが、ヤマカガシは毒牙が口の奥にある後牙類です。
後牙からは出血毒を出しますが、その他に頸部に餌のヒキガエル由来の毒を溜めて使うことができます。牙から毒を出す力はそれほど強くないため、一瞬咬まれただけでは毒液が注入されないこともあります。
ハブ類|有毒なうえに体長の長い大型種も!
生息地域 | 沖縄諸島や奄美諸島 |
生息場所の特徴 | 山・野原・畑・公園など、草や木のある場所全域 沖縄での被害は概ねが畑で、休んでいるハブに気づかずに農作業をしていて咬まれるケースが多い。 |
毒の特徴 | 出血毒。2000年以降死亡例はないが、重症例は未だに報告される |
咬まれてから毒の症状が出るまで | 咬まれた直後から激しい痛み、時間の経過と共に腫れと痛みは咬まれた場所の関節→腕や足全体へと広がる |
活動時間帯 | 夕方から夜(ただし咬症の事例は日中も多い) |
見た目の特徴 | 三角形の頭・黄や白の体に黒い網模様 |
ハブ類は、強い出血毒を持つ有毒ヘビです。全長は100~200cm、大きい個体だと250cm程度にもなる大型のヘビです。
生息域である沖縄県ではハブ咬症防止運動を呼びかけており、県民に積極的な情報提供をおこなうとともに、奄美大島では捕獲引き取りで褒賞金を受け取れる制度も導入されています。
【参考】
整形外科と災害外科(浦添市医師会)「ハブ咬傷による前腕コンパートメント症候群に対し緊急筋膜切開を施行した1例」
危険な有毒ヘビに遭遇しないためにできること
ここでは、危険な有毒ヘビに遭遇しないためにできることを紹介します。有毒ヘビのなかでは、生息域が人間と近しい種類も多い傾向に。安心して生活するために、ヘビに遭遇しやすい条件を事前に把握しておきましょう。
登山道や遊歩道から外れないようにする
ヘビの多くは、草地や水辺などの自然が多い場所に生息しています。とくに緑が多い場所を散策する際は、登山道や遊歩道から外れないように心がけましょう。獣道には無闇に立ち入らず、人間によって整備された道を歩くだけでもリスクを下げられます。
産卵期の8~10月はとくに注意!
多くのヘビは8~10月に産卵期を迎えます。産卵期はヘビの目撃情報が全国的に増えるため、普段以上に足元に注意を払いましょう。ただし産卵期や繁殖期はヘビの種類や地域によって異なるため、詳しくは所在地の情報を参考にしてください。
もしも遭遇してしまったら…無事に避けるためのポイント
ここでは、ヘビに遭遇してしまった際に無事に避けるためのポイントを紹介します。どれほど気をつけていても、危険なヘビに出会ってしまう可能性はゼロにできません。あらかじめ緊急時の行動を把握し、冷静な対応をとれるように備えましょう。
ヘビは臆病な生き物。近づかなければ襲われない
基本的に、ヘビは臆病な性格をしています。そもそも日本に生息するヘビにとって、人間は捕食対象ではありません。ヘビが人間を襲うおもな理由は「自分の身を守るため」です。そのためヘビに危険を感じさせなければ、ほとんどの状況で安全に避けられます。
「体長の3分の2」程度の距離を維持する
ヘビは体を伸ばして敵を攻撃しますが、攻撃可能な範囲は「体長の3分の2」程度です。有毒ヘビに出会った際は、ヘビの姿から全長を予想し、安全な範囲まで距離を取りましょう。多くの場合、1.5~2m程度離れていれば安全性が高まります。
もしヘビに咬まれたらどうする?
ヘビに咬まれてしまった場合、相手が有毒か無毒かを判断できないほどパニックになってしまっている場合もあるでしょう。
もし咬まれた場合は、できる限り早く病院に向かうことが大切。車が用意できない場合は救急車を利用するのも一つの手段です。同時に、できるだけ早く大量の水で傷口を洗浄しましょう。病院までに時間がかかりそうなら、その場で可能な限り洗うことが大切です。
救急車や病院でヘビに咬まれたことを伝えれば、咬まれた種類によっては血清を打つ処置もしてもらえます。
とくに旅行やキャンプなどで、慣れない自然エリアに行く際は要注意。目的地のヘビ出現情報や、緊急時の病院の情報などを調べてメモしておくことで、万が一の際も適切な行動・伝達につながります。
処置がおこなわれるまでは、血流を減少させるために、部位を心臓より低く保ちましょう。心臓に近い部分を過度にならない程度に圧迫し、専門医の指示に従ってください。また、口で毒を吸い出すのはNGです。危険な行為なのでやめましょう。
日本のヘビの種類は意外と少ない!特徴を覚えて見分けよう
今回は、日本に生息しているヘビの種類や、有毒ヘビと出会ったときの対処法などを紹介しました。
世界には約3,000種類ものヘビが生息していますが、日本に生息しているヘビは亜種を含めて約50種類のみ。人目につきやすいのは、紹介した9種類がほとんどです。この機会にヘビの特徴を覚え、野生のヘビを見かけても近寄らないようにしましょう。
ほとんどのヘビは人間が近寄らない限り、ヘビから攻撃してくることはほぼありません。蛇に噛まれる事故は、薮に入った人間が蛇に気づかずに踏んでしまって起きるケースが多いことを覚えておきましょう。
ヘビの模様も生息域などによって違い、一見しただけで毒蛇か毒のないヘビなのかを見分けるのは難しいため、近寄らないことが一番の安全対策になります。
ヘビといえば、来年2025年は巳年。以下の記事では、干支と動物の関係性について紹介しています。今回の記事とあわせて、ぜひ参考にしてください。