- 子どもが保護猫活動に関われる「フリースクールゆきレオ」
- アニマルセラピーの効果で学校に行けるようになる子どもも
- 子どもたちが主体となった猫カフェイベントを開催!
「猫がいるフリースクール」という、一風変わった施設があると話題になっています。フリースクールとは、何らかの理由で学校に行けなくなった子に学びの場を提供している施設。
大阪府・河内長野市にある「NPO法人フリースクールゆきレオ&保護猫施設 ゆきレオ保育園」は、不登校に悩む子どもや保護者の居場所を提供しています。
一般的なフリースクールとは異なり、なんと「子どもたちが保護猫活動」ができる場所なのです。保護猫のお世話から捕獲、猫カフェイベントや保護猫の譲渡会などさまざまな関わり方ができるフリースクールゆきレオ。
記事では、フリースクールゆきレオのユニークな取り組み、そしてフリースクールに通った子どもたちの変化についてお聞きしました。
◆取材・監修:「NPO法人フリースクールゆきレオ&保護猫施設 ゆきレオ保育園」
愛玩動物飼養管理士2級。ちば愛犬動物学園を卒業後、動物病院で2年間看護士に従事。長男(発達障害・自閉症・学習障害・小・中学校不登校)・娘(対人恐怖症・不登校)の2人の子どもの母。娘が理事長を務める「NPO法人フリースクールゆきレオ&保護猫施設 ゆきレオ保育園」のサポートをしている。不登校や心のケアが必要な子ども・若者が保護猫が一緒に過ごせるフリースクールを運営。
「フリースクールゆきレオ」の理事長。小学4年生で不登校を経験。ニュースをきっかけに保護猫活動に興味を持つ。
“フリースクール×保護猫活動”を行う「フリースクールゆきレオ」とは?
大阪府河内長野市にある「フリースクールゆきレオ」は、不登校や心のケアが必要な子どもや若者向けのフリースクールです。
近年、増加傾向にある児童の不登校。フリースクールゆきレオは、保護猫と過ごすことで子どもたちの「心の居場所」をつくっています。
そんなフリースクールゆきレオはどんな場所なのか、代表の福本亜弥さんに詳しくお聞きしました。
不登校児童の“心の拠り所になる”場所
「フリースクールゆきレオ」は保護猫施設でもある場所。
設立のきっかけは、福本さんの長女・凛さんが小学4年生のときに不登校になったことだったそう。学校にも行けずに、外にも出れないなかで保護猫活動に興味を持ったことで、保護猫活動を始めた福本さん一家。
家に閉じこもり、人が横を通るだけでも怖がっていた凛さんでしたが、保護猫活動のための譲渡会なら外に出られました。
「保護猫活動をしたい!」という気持ちや姿を見て、家族でも応援することに。まずは猫の保護活動に慣れるべく、家族みんなで近くの保護猫団体さんでボランティアをはじめたそうです。
そんな凛さんは、今やみずから積極的に保護猫活動に関わり、理事長も務めているというので驚きです。
当時の凛は家に閉じこもり、人が横を通るだけでも怖がっていました。でも、保護猫活動のためなら自分から譲渡会に行きたいというようになったのです。
「譲渡会にまた行きたい」と本人から聞いたときは驚きもありつつ、嬉しかったですね。
学校に行けず、家に引きこもりがちだった娘の「保護猫活動をしたい!」という気持ちを、家族でも応援しようーーそう考え、福本さん一家は近くの保護猫団体でボランティアを始めたそう。
そんな家族のサポートもあり凛さんは今、フリースクールゆきレオの理事長を務めています。
娘と息子は2人とも不登校を経験しています。「学校以外に子どもたちが過ごしやすい居場所をつくりたい」と思ったことで、2023年の12月から本格的にはじめました。
子どもの不登校は年々増えています。娘の凛さんの保護猫活動への熱意と、不登校の子どもたちの居場所づくり、どちらも叶えた施設が「フリースクールゆきレオ」です。
ボランティア団体での活動経験をもとに立ち上がった「フリースクールゆきレオ」
フリースクールゆきレオを設立する前は、ご自身でも保護猫団体でボランティアを経験していた福本さん。自身でフリースクールゆきレオを設立したきっかけは理由は何だったのでしょうか?
多くの保護団体では、ボランティアさんがお金を負担しないと回らない状態です。
そのとき、今後も活動を続けていくために譲渡費用をうまく活用した持続可能性のある団体を自分たちで作りたいと思いました。
資金的に苦しい状況にある保護猫団体のお話はよく聞きます。
現在18匹の猫を保護するフリースクールゆきレオ(2024年5月現在)。フリースクールに通う子どものご家族や保護者さんも、預かりボランティアとして保護活動のお手伝いをしているのだとか。
そんなフリースクールゆきレオは、赤字になることはないのでしょうか?
施設の改装工事をしたため赤字になっていますが、ご支援や支援物資などで活動が維持できています。
フリースクールに通うご家族のボランティアさんも猫砂やフード代、医療費などを負担しなくてもよい仕組みをつくっています。
ボランティアが負担しない仕組みがつくれているフリースクールゆきレオ。現在は、フリースクールに通う2〜3家族がボランティアをしているそうです。
なかには、人前に出るのが怖くてまだフリースクールには通えないけれど、猫の預かりボランティアはしてみたいという子どももいますよ。
フリースクールを通して、保護猫活動の輪が広がっているのですね。
「外に出られなくなった子どもたち」が集まる場所
フリースクールにはどのような悩みを持った子どもたちが集まっているのでしょうか?
共通しているのは、子どもが行きたい場所がなく、外に出ることを嫌がっている、学校に行けていないことですね。
「子どものきっかけになれば」と保護者の方がいろいろな場所に連れて行っても、本当に行きたいと思っていない場所に無理やり連れて行かれることで、余計に外に出れなくなる子も多いそう。
ゆきレオには“猫と過ごせる場所”と聞いて、自分から「それだったら行きたい!」という子たちが集まっています。
「人と接することに恐怖心があることで学校に行けていない子も多い」とも語る福本さん。そんな子どもたちのために「少人数制」をとっているのだそう。
経営的には受け入れ人数を増やす必要はあるものの、人が多いと行くのが嫌になる子もいます。
我が家の経験もふまえ、フリースクールゆきレオではMAXで4〜5人の少人数制をとっています。
子どもが通いたくなることを一番に考えた人数に設定されているのですね。
「子どもたちが保護猫活動を」フリースクールゆきレオでの活動とは
「保護猫×フリースクール」という、ユニークな活動をするフリースクールゆきレオ。なんと、子どもたちも「保護猫活動」に参加しているのです。
▼子どもたちの活動例
- 猫のトイレや施設の掃除
- 猫の頭数チェック
- レシートの整理
- 書類のラミネート
- 野良猫の捕獲
お世話だけでなく、捕獲も経験できるというフリースクールゆきレオ。
フリースクールゆきレオのInstagramには、子どもたちがつくった投稿もあります。
引用:@poniyan89
引用:@poniyan89
月に1回の“猫カフェ”をオープン!
フリースクールゆきレオでは、5月11日に猫カフェイベントが開催されました。なんと、発案者は子どもたちだったそう。
子どもたちが猫カフェイベントを企画する過程についてもうかがいました。
もともとは猫カフェを作る予定でした。発案者は子どもたちです。
ただ、必要な資格や施設の許可などを調べるなかで「猫カフェは難しい」という結論に。
子どもたちと話し合い、毎月第2土曜日だけ「猫カフェイベント」を開くことにしました。
引用:@poniyan89
イベント開催にあたって、みんなで近くにある猫カフェのスタッフさんに注意書きの内容や流れを聞きに行ったそう。
聞いた情報を参考にして、子どもたちはイラストを描いたり、保護猫1匹1匹の紹介をつくってくれたりと率先して動いてくれましたね。
子どもたちの行動力がすごいですね……!イベントの日は子どもたちはどのような形で関わるのでしょうか?
フリースクールゆきレオは自宅の一部を施設にしている関係で、6畳2部屋しかスペースがありません。大人数が入れないため、中学生以上の子どもが交代で1人ずつスタッフをしています。
猫カフェプロジェクトは、子どもたちの発案からはじまり、実際に猫カフェに調査にいったり、必要な資格を調べたりと地道な努力があって開催されました。
当日は、子ども自身が実際に店員さんのような形で、接客や来てくれた人への説明などで対応。
子どもの「やりたい」を叶えられるだけでなく、自身で考え、行動に移せる環境があるフリースクールゆきレオ。
保護猫たちのためにカレンダーをつくってお金にしようと考えています。そして、ゆくゆくは本格的な猫カフェもはじめたいです。
凛さんの次なる目標は、猫カフェ運営といいます。フリースクールゆきレオでは、ひと足早く社会を経験できる教育の場も提供しているのです。
保護猫×フリースクールをはじめさて、子どもたちに起きた変化
フリースクールゆきレオをはじめてから、子どもたちにはどんな変化がありましたか?
フリースクールをはじめてから4ヶ月が経ちましたが、所属している9人のうち学校に行けるようになった子が2人います。
中学3年生の女の子から「ゆきレオに通うようになって学校に行けるようになった」といわれたときは嬉しかったです。
フリースクールをはじめてすぐ、学校に行ける子どもや「猫に会いたい」と1人で電車で通えるようになった子もいるそう。
子どもたちに共通しているのは「保護猫に会いたい」「猫が好き」という気持ち。子どもにとって猫の存在が大きいことが、福本さんのお話からうかがえました。
「保護猫活動」が子どもたちに与えるのは“居場所”と“積極性”
「不登校や学校に行けないことで悩む方に対して、“学校以外の居場所”を知ってもらいたい」そう語る代表自身の経験をもとにはじまった「フリースクールゆきレオ」。
保護猫活動や猫たちのお世話をとおして、外に出るのが怖くなくなった子どもたちもいます。
今回の取材から、大人が思う以上に子どもにとって猫の存在は大きいということ、そして、子ども自身も好きなことのためなら驚くような行動力を発揮することがわかりました。
今回お話をうかがったフリースクールゆきレオでは、5月11日から毎週第2土曜日は猫カフェイベントを、第2日曜日には譲渡会を開催しています。
「子どもたちががんばる姿を応援したい」「猫たちとふれあってみたい」という人は、ぜひ足を運んでみてくださいね。
◆施設情報◆
所在地:大阪府河内長野市あかしあ台1-1-17
開校時間:毎週火・木・金曜日11:00〜15:00
料金:初回見学無料、入会金1万円(回数によって金額が変動)
※詳細や空き状況はX(Twitter)、Instagramをご覧ください
以下の記事では、保護猫を引き取った人の体験談を紹介しています。ぜひあわせてチェックしてみてください!