【獣医師が教える】犬の歯磨きトラブルと歯周病の対策法

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まとめ
  • 愛犬の歯磨きを怠ると、歯周病のリスクが高まる
  • 歯周病は愛犬の命にも影響を及ぼす可能性のある怖い病気
  • 最低でも3日に1度は歯磨きをする必要がある 
  • 犬の口の中はアルカリ性のため、むし歯はできにくいが歯周病になりやすい

愛犬の歯磨き、していますか?なんとなく必要だということは知っているものの、なかなか思うようにさせてくれない、できないという人も多いでしょう。

「犬の歯磨きって何のために必要なの?」という人もいるかもしれませんね。

今回はそんな愛犬家のために、犬にとっての歯磨きの必要性について、獣医師の川緑先生に解説してもらいました。また、川緑先生が教えてくれる『うまく歯磨きができないときの対処法』も必見です!

今日から毎日の習慣として、生活に取り入れてみてください。

◆取材・監修:株式会社ビルバックジャパン

川緑 圭吾 獣医師

獣医師。株式会社ビルバックジャパン マーケティング部所属。犬・猫診療を主とした動物病院勤務を経て、現職ではデンタルケア・犬猫寄生虫駆虫薬・サプリメント製品の学術部門を担当。

目次

犬の歯磨きは歯周病予防のために必須!

人は歯磨きをしないとどうなるのか、知らないという人はいないでしょう。では犬が歯磨きをしないとどうなるのでしょう?犬もむし歯になるのでしょうか。

結論からいうと、犬は人に比べるとむし歯になるリスクは低いのだそうです。一方で犬が歯磨きをしないと『歯周病』のリスクが上がります。

犬にとっての歯周病が、どのように犬の体に悪影響を及ぼすのか、川緑先生に解説してもらいました。

犬が歯磨きをしないとどうなる?

飼主が愛犬の歯を磨こうと思っていても、犬はなかなか歯磨きをさせてくれないこともあると思います。「いつかやろう」と思っているうちに、なんとなく歯磨きをしないことが日常になってしまっていませんか?

犬の歯磨きをサボっているとどうなるのか。川緑先生に話してもらいました。

歯磨きをしないでいると、だんだん歯に歯石や歯垢がついていきます。犬の場合は人間よりも歯石がつくのが早いんです。

3日放っておいたら歯石になり始めていると考えていいと思います。

歯石がつくとどんな状態になるのでしょうか?

歯石や歯垢がたまってくると、歯茎が腫れたり、出血したりといった症状が出て、歯周病になります。

歯周病になると、歯が抜けたり、歯周病菌が出す毒素が体に悪い影響をもたらします。重症化すると顎の骨が折れたり、口の中に穴が開いて顔が腫れてしまうこともあるんです。

歯周病は考えているよりも怖い病気なのだということがよくわかりました。歯磨きをしないだけでそんなリスクを抱えることになるのですね。

犬の歯周病ってどんな症状?

歯磨きで予防できる歯周病とは、どんな病気なのでしょうか。一般的にいわれる症状は以下のようになります。

  • 歯茎の腫れ
  • 歯茎からの出血
  • 口臭
  • 歯のぐらつき
  • 歯が抜ける
  • 口の中の痛みによる食欲低下
  • よだれ
  • くしゃみ
  • 鼻水
  • 顔の腫れ
  • あごの骨の骨折 など

この症状が進むと、全身疾患にもつながる可能性があるという、歯周病の症状について川緑先生に聞きました。

歯周病は、現在では1歳までの小型犬のおよそ9割がかかっているといわれるほど、一般的な病気です。しかし歯周病が進むと、骨が溶けて口の中に穴が空いたり、骨がもろくなってアゴを骨折したりします。

歯周病菌が出す毒素が全身に回ると、心臓や肝臓・腎臓などの臓器に悪影響を及ぼす可能性も示唆されています。

たかが歯周病とあなどっていると、健康寿命が短くなってしまう可能性のある怖い病気なんだということを川緑先生は教えてくれました。

歯磨きのメリットとは?

歯磨きをしないことへのリスクは理解できました。では、愛犬の歯を磨くことのメリットとはどんなものなのでしょうか。

一番わかりやすいのは、犬の口臭ですね。犬は口臭があるものだと思っている方も多いと思いますが、しっかり歯磨きができて健康なお口が維持できている犬は口臭がないんです。

あとは歯の健康を維持できている犬は、体の健康も維持しやすいってことですね。

歯周病になりやすい犬種ってある?

歯磨きをしないと歯周病になってしまうことがわかりました。では歯周病になりやすい犬種や条件はあるのでしょうか?

小型犬・超小型犬は歯周病になりやすいです。大型犬に比べて小型犬の場合は口の中が小さく、歯と歯の間に隙間があまりないため、歯垢や歯石がたまりやすい傾向があります。

歯列異常にもなりやすいため、小型犬はとくに歯周病に気をつけてほしいですね。

犬が歯磨きをイヤがったら?

「よし、歯磨きしよう!」と飼主が思ったところで、愛犬が喜んで歯を磨かせてくれるというのは幻想です。イヤがって逃げる犬がほとんどなのではないでしょうか?

そんなとき、どうすれば犬が歯を磨かせてくれるようになるのか、川緑先生に話してもらいました。

犬が歯磨きをイヤがる理由

そもそも、どうして犬は歯磨きを嫌がるのでしょうか?犬が歯磨きをイヤがる理由について聞きました。

歯周病が進行している場合、さわられること自体に痛みを感じているケースが考えられます。

そもそもマズル(犬の鼻と口の部分)付近をさわられることが嫌いな犬も少なくありません。口に手を入れられるのをイヤがる犬も多いです。

歯にふれられて痛がる場合は、歯の状態が悪いことが予想されます。愛犬が口にさわられて痛がっていると感じたら、放置せずに獣医師の診察を受けましょう。

歯磨きって動物病院でもお願いできる?

歯磨きをサボっていて「しまった!」と思った人も多いでしょう。放置すると顎の骨が溶けてしまうかもしれないと聞くと「獣医さんに頼んで歯を磨いてもらえないか?」と考える人もいると思います。

獣医師にお願いして歯を磨いてもらいたいと考えた場合、それは可能なのでしょうか?どのようにして獣医師が犬の歯を磨くのか、川緑先生に解説してもらいました。

動物病院でも歯石を取ることは可能です。

しかし、長年たまった歯石や歯垢を取る場合、犬はじっとして歯石を取らせてくれないので、全身麻酔をかけて歯をきれいにすることになります。これがスケーリングです。

これは基本的にどの犬種でも同じ対応です。歯周病が進むと治療の侵襲(しんしゅう※1)も大きくなるため、そうならないように日頃からできるだけ自宅でケアすることが大切です。

※1 侵襲とは:生体を傷つけること

全身麻酔の場合には、どんなことに注意が必要なのでしょうか?

現在では獣医療の発達によって安全に全身麻酔がかけられるようになっています。ですが、もともと持病があったりすると麻酔のリスクが上がる可能性もあります。愛犬に持病がある場合は主治医とよく相談して決めてください。

歯磨きの必要な頻度はどれくらい?

愛犬に歯磨きをする場合、頻度はどれくらいが望ましいのでしょうか。

毎日磨くのが望ましいですが、毎日は難しいという場合でも、週に2〜3回、3日に1回は歯磨きするのが理想です。それでも大変だと思いますが…。

犬の歯は3日放置すると歯石ができ始めます。人間はおよそ歯石ができるまで1ヶ月かかるといわれています。犬はそれに比べるとかなり早いと考えてください。

歯磨きのために必要なものは?

「今日から愛犬の歯を磨くぞ!」と決心したら、どんなものをそろえておけばいいのでしょうか。川緑先生に必要なものを教えてもらいました。

歯ブラシ・シートなど、グッズの特性

犬の歯磨きグッズには大きく分けて以下のようなものがあります。

  • 歯ブラシ
  • 歯磨きペースト
  • 液体デンタルケアグッズ
  • デンタルガム
  • 歯磨きシート など

これらの歯磨きグッズについて、説明してもらいました。

やはり一番効果的なのは、歯ブラシによるブラッシングです。ほかの物はどれも歯ブラシをイヤがる犬のための代用品といっていいでしょう。

デンタルガムや水に混ぜてなめさせるようなものも、今ではいろいろな種類があり、歯磨きできない犬や歯磨きはできるけれど毎日は難しい、といった場合には使った方がいいですね。

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飼主が犬の歯磨きをするときに気をつけること

飼主が歯磨きグッズを利用して愛犬の歯を磨いてあげるとしたら、どのようなことに気をつければいいのでしょうか?

犬が嫌がる場合は、まずはマズルをさわらせてくれるようになることから始めましょう。嫌がる犬に無理やり歯磨きをするのは絶対に止めてください。

犬は記憶力が優れた生き物なので、無理をすると嫌な思い出としていつまでも残ります。

おやつなど、犬が大好きなご褒美を用意して、さわらせてくれるまで辛抱強く待ちましょう。

スモールステップで少しずつ、歯磨きさせてくれるまでやり続けるということですね。

そうです。少しずつ、まずは『歯磨きをさせてくれたら少量のおやつをあげて大げさに褒める』など、ご褒美をあげながら進めることで、さわられてうれしい!という良い記憶が定着してきます。

歯ブラシを怖がる犬には、歯ブラシを見せて怖がらなかったらおやつをあげる、口に歯ブラシを入れさせてくれたらおやつをあげる、といった感じです。

最後は必ずご褒美をあげて「がんばったね!」とねぎらってあげてください。

スモールステップの参考としては、以下のように進めると良いそうです。

  • マズルをさわらせてくれる
  • 口を開けてくれる
  • 唇をめくらせてくれる
  • 歯をさわらせてくれる
  • 歯ブラシを怖がらなくなる
  • 歯ブラシを口に入れさせてくれる
  • 歯ブラシを歯に当てさせてくれる
  • 歯ブラシで歯を磨かせてくれる

これらのことができたらおやつをあげて褒めてあげる。歯磨きをイヤがる犬には、これを根気強く続けて、歯磨きをさせてもらえるようにしましょう。

子犬の頃から習慣にしておくと、楽に歯磨きに慣れてくれるそうです。

犬が自分で歯磨きができる『デンタルガム』を使ってもいい?

デンタルガムなど、歯磨き効果のあるおやつも販売されています。こういった歯磨き商品に効果はあるのでしょうか。

デンタルガムなら喜んで噛んでくれるという犬の場合はそれで歯磨きの代わりにしていいのか、川緑先生に聞きました。

最近のデンタルガムなどは性能が上がっているので、歯磨きと併用して使うのも全然アリだと思います。

コレが正解!犬の歯の磨き方

実際に愛犬に歯磨きをする際に、効率よく歯を磨く方法を川緑先生に教えてもらいました。愛犬が歯磨きをさせてくれるようになったら、できるだけ愛犬の負担を少なく、歯を磨いてあげましょう。

犬の口の中はアルカリ性!犬の歯のしくみについて知ろう

犬や猫の歯は、人の歯に比べると薄いという特徴があるのだそうです。犬の歯の仕組みについて、川緑先生に解説してもらいました。

人の歯のエナメル質は2.5mmですが、犬の歯のエナメル質は0.1〜1.0mmほどしかありません。人の歯に比べるとデリケートな歯だと考えてください。でも、犬の歯は人の歯よりもむし歯になりにくい。その理由は犬の口腔内の環境にあります。

犬の口腔内は、人の口腔内よりもアルカリ性が強のです。

アルカリ性が強いとどういう影響が出るのでしょうか?

むし歯を作るのは酸ですから、酸性が強い方がむし歯になりやすいんです。アルカリ性が強いということは、酸が中和されることになり、虫歯にはなりにくい。

その分アルカリ性が強いと、歯周病菌の繁殖には適しており、石灰化が進みやすくなります。そのため歯石ができやすいのです。

実際の歯の磨き方について詳しく解説

犬の歯に歯石ができやすい理由は口腔内の環境にあり、歯石を作らないためにこまめな歯磨きが必要だということがよくわかりました。ではどんな磨き方をするのが望ましいのでしょうか?

犬の歯磨きのポイントは以下のようになるそうです。

  • 犬も飼主も、楽しんで歯磨きをすることが重要
  • 歯磨きのタイミングは、犬の喜ぶイベントの前がおすすめ(散歩やご飯など)
  • 終わったら必ず褒めて、おやつをあげる(歯磨きをするといいことがあるという刷り込み)

歯周病予防の失敗は、そのほとんどが飼主が歯磨きを途中で止めてしまうことによって起きます。

定期的な通院や、あきらめずに根気強く続けていくことが、愛犬の健康を守ることにつながるのだということを忘れないでください。

実際の歯磨きのステップは以下にまとめました。

愛犬を健康にする歯磨きのステップ

  1. ブラッシングはやりやすい犬歯からおこなう
  2. 慣れてきたら歯全体をブラッシング
  3. 最初は短い時間で、慣れてきたら少しずつ時間を伸ばす
  4. 歯の内側もブラッシングする
  5. 歯間の狭いところにブラシを差し込むようにして歯垢をかき出す
  6. 歯の裏側は磨きにくいので丁寧におこなう

細かい歯磨きのポイント

  • ブラシは歯に対して45度の角度で当てる
  • 歯と歯茎の間の歯肉溝に毛先を入れるイメージで
  • 力を入れずにホウキで部屋のすみを優しく掃くように動かす
  • 毛先の細いブラシがおすすめ

すでに歯周病が進んでしまっている場合は

愛犬の歯茎を観察してみて、すでに充血していたり、歯周病の様子がみられる場合、どのように対処すればいいのでしょうか。

すでに歯周病が疑われる場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

歯周病は見た目ではなかなか重症度がわからず、検査してみたらかなり進行していた、というケースも少なくありません。

そして必要な治療が終わった後から歯磨きなどのケアを始めるのが良いと思います。

まずは愛犬の口腔内の状態を確認すること。心配な点が見つかったら、獣医師に相談する必要があることを覚えておきましょう。

正しい知識を身につけて、愛犬の健康を守ろう

犬の口腔内はアルカリ性が強く、歯石がつきやすい環境なのだということを川緑先生は教えてくれました。

人の口の中と、犬の口の中では環境が違い、犬はむし歯よりも歯周病が心配なのだということもわかりました。

歯磨きをイヤがる愛犬と向き合って毎日歯磨きをするのは大変な作業ではありますが、愛犬に長生きしてもらうためにも、ここは飼主ががんばるしかありません。

この記事を参考に、毎日の歯磨きを習慣にできるといいですね。

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