【獣医師が解説】亀の赤ちゃんを育てるには?ニホンイシガメやクサガメを元気に育てるコツ

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まとめ
  • 亀の赤ちゃんの飼育は室内がおすすめ 
  • 最低限必要なのは、飼育容器・餌・シェルター・水温計・ヒーターの5つ
  • 少し慣れたらバスキングランプと紫外線ランプを選ぼう
  • 毎日のお世話は水換え・餌やり・水温管理・日光浴 


古くからペットとして親しまれてきたニホンイシガメやクサガメ。これらの亀の赤ちゃんは「ゼニガメ」と呼ばれ、その名の通り500円玉程度のサイズで大変愛らしいものです。

今回は、仕事でもプライベートでもたくさんの亀の赤ちゃんを育ててきた、現役獣医師である筆者が、独自のノウハウも織り交ぜて、元気に育てるコツをお伝えします。

◆監修:獣医師プロフィール

ttm 医師

岩手大学で動物の病態診断学を学び、獣医師として7年の実績があり、動物園獣医師として活躍中。動物の病態に精通し、対応可能動物は多岐にわたる。

目次

亀の赤ちゃんの飼育環境は室内がおすすめ

亀の赤ちゃんを飼育する際はまず、飼育環境を検討しましょう。特別な理由がない限り、亀の赤ちゃんの飼育は室内がおすすめです。

室内飼育がおすすめの理由

屋外では亀の赤ちゃんが快適に暮らせる水温と気温を保つのが難しいです。屋外の亀は寒い季節には冬眠しますが、赤ちゃんにとって冬眠は命のリスクが大きいためおすすめできません。

また、室外だと様子を見ることのできる時間が限られます。体調が安定しづらい赤ちゃん亀は、室内のこまめに観察できる場所で飼育をスタートさせるのがベストです。

お迎え直後はできるだけ静かな環境で

お迎えから1週間程度は、亀の赤ちゃんはほとんどの時間をシェルターの中で過ごすでしょう。つい覗きたくなりますが、この時期のストレスは亀の赤ちゃんの健康に大きく影響します。

水換えや餌やりなどのお世話の時間以外は、遠くから静かに見守りましょう。環境に慣れてきたら、亀の赤ちゃんの方から徐々に出てきてくれるようになりますよ。

飼育に必要なものは?すぐ準備するべきものはコレ!

飼育書などを読むと、亀の飼育にはたくさんのものが必要に思えます。しかし、すべてを一度にそろえなくても大丈夫です。

「最低限準備するもの」「後から用意するとよいもの」「準備しなくてもよいもの」があります。ここでは、とくに準備しておきたいものを紹介します。

すぐに準備しなくてはならないものは5つ

まずは最低限必要なものとして、以下の5つをそろえましょう。

  • 飼育ケース
  • シェルター
  • 水温計
  • 水中ヒーターかパネルヒーター(真夏以外)

それぞれについて詳しく解説します。

1.飼育ケース|小さめからのスタートでOK

飼育書ではほとんどの場合、大人に成長したサイズを基準として広めの水槽をおすすめされます。しかし、3cm程度のサイズの亀の赤ちゃんであれば、底面が20cm×15cm程度で大丈夫です。

注意点は脱走防止のために深さをしっかり取り、蓋をすることです。

2.餌|市販の配合飼料を。購入元と同じものだと安心

餌として、市販の配合飼料の亀の赤ちゃん用と書かれたものを用意しましょう。ペットショップなどからお迎えする際は、ショップで与えていた餌をお店の人に聞いて、同じものを購入すると安心です。

3.シェルター|飼育開始と同時に用意を

ストレスの緩和のために、亀の赤ちゃんが身を隠すためのシェルターはお迎えと同時に用意しましょう。

シェルターは市販のものでも自作でも構いませんが、体全体がすっぽり入るサイズを選びます。

4.水温計|健康管理のため必ず設置

亀の赤ちゃんにとって水温は健康の要です。水温計はすぐに用意しましょう

水温計にはさまざまなタイプがありますが、100円ショップなどでも売っている吸盤で取り付けるような小さなもので大丈夫です。

5.ヒーター|真夏以外は水中ヒーターかパネルヒーターを用意

亀の赤ちゃんの場合、水温を26℃~28℃に保つことが大切です。お迎えする季節の多くは春か秋なので、ヒーターもすぐに用意しましょう。

水中に入れて水を直接温める水中ヒーターと、ケージの外側に敷いて水を温めるパネルヒーターがあります。どちらを選ぶかは飼育ケースと水深で変わります。

飼育に慣れてきたらランプ類の検討を

飼育書などに、必ず必要なものとして載っているランプ類。「バスキング?紫外線?」と初心者にとっては聞き慣れない言葉も出てきて何を買えばいいのか迷ってしまいますね。

バスキングランプ|温めるためのランプ

バスキングとは、陸場で体を温めることです。亀の肺は甲羅にぴったり沿うように背中側にあります。

そのためいくら水温を温かくしていても、空気が冷えていると肺が冷えてしまって体調を崩してしまいます肺を保温するためにも、亀は背中側から温める必要があります。

バスキングランプは、主に亀を背中側から温めるためのランプです。強さに応じて50~100ワット程度の商品が販売されています。

一方でバスキングランプは、それ自体がとても熱くなるためさわると火傷をしてしまうおそれも。小さなお子さんがいるご家庭などでは、バスキングランプを省略して「暖突(みどり商会)」という上部用ヒーターを利用するのもひとつの案です。

紫外線ランプ|成長と病気の予防に必要

甲羅の成長と殺菌のために紫外線は最重要です。特に亀の赤ちゃんの紫外線不足は、皮膚病・くる病・成長不良などさまざまな障害を引き起こします。紫外線は日光浴で太陽から得るのが一番ですが、紫外線ランプでもサポートしましょう。

紫外線のみ出るタイプのランプは熱が出ません。上でお伝えしたバスキングランプと併用する場合はランプを2つ設置することになります。

ランプを2つ設置するスペースがない場合や、配線がごちゃごちゃするのを避けたい場合、バスキングランプと紫外線ランプを兼ねた商品を選ぶと良いでしょう。

ろ過機、底砂利は不要

飼育書などによっては必要だと書かれていても、必ずしも必要でないものや、どちらかというと避けるべきものもあります。

例えば、ろ過機は糞がすぐにろ過されてしまい、状態の良い糞かどうかの確認ができなくなるため筆者はあまりおすすめしません。底砂利はカメが食べてしまうことが多いため、入れない方が無難です。

毎日のお世話の方法とポイントを解説

亀の赤ちゃんのお世話はシンプルで、水換え・餌やり・水温の管理・十分な日光浴の時間が大切です。

水換えは毎日行おう!冷たすぎる水道水に注意

亀の赤ちゃんの水換えは1日1回が目安です。水道水を直接使えますが、冷たすぎる水は負担になるため、少しお湯を混ぜて水温を28℃~30℃くらいにしましょう。

水深の目安は、亀の赤ちゃんが首を上げて簡単に顔が水の外に出る深さです。甲羅全体がぎりぎり水に入り切るくらいがこの深さが目安。水深は成長に合わせて徐々に深くしていきましょう。

水深に合わせて使用するヒーターの種類も決まります。水中ヒーターの方がヒーター効果が高いものの、ある程度の水深が必要です。

パネルヒーターはケースの外側から温めるため、水深が深すぎると温められないという欠点がありますが、管理は楽なので、水深が浅いうちはこちらでも良いでしょう。

餌やりは1日1回が目安。体重と糞の状態を確認しながら調整を

亀の赤ちゃんの餌は1日1回か2回、数分で食べきることができる量を目安にします。適正量かどうかは、主に体重と糞の状態で確認できます。

体重は1週間に一度程度測りましょう。亀の赤ちゃんの体重は10g以下からのスタートなので、小型のキッチンスケールがおすすめです。

餌が適正なら、良い糞をして、体重は少しずつ増加します。体重が増えない、増えすぎ、糞が緩すぎるなどの場合は給餌量を見直しましょう。

水温の管理は欠かさず行おう

亀の赤ちゃんは大人の亀よりも少し温かい環境を用意する必要があります水温の目安は26℃~28℃。25℃を下回ると、軟便になったり食べる量が減ったりします。

体調や気温との兼ね合いで、26℃~28℃の水温を保っても体が冷えていることもあります。水温計でのチェックと共に、亀の赤ちゃんの食欲と糞の状態を良く観察して、少し調子が悪そうなら水温を上げてみましょう。

場合によっては30℃程度を維持することが良いこともあります。

日光浴は最重要ポイント。脱走と熱中症に細心の注意を

上でお伝えしたランプ類は補助になりますが、太陽光にかなうものはありません。時間が許す限り日光浴の時間を作りましょう。

ただし、日光浴中は事故が起こりやすい時間です。特に多いのが脱走です。亀の赤ちゃんの体重は軽いため、少しでも爪がひっかかるとまるで壁をよじ登るように脱走してしまうことがあります。

暑い時期は熱中症も要注意です。日光浴中、亀の赤ちゃんが暑さを感じたら日陰に避難できるように、水槽の半分くらいが日陰になるなどの工夫をしましょう。

思わぬ事故の防止のため、日光浴中はできるだけ目を離さないことも大切です。

こんな時どうする?獣医師が疑問にお答え

亀の赤ちゃんの飼育には悩みがつきもの。ここでは筆者がよく相談される内容を紹介します。

餌を食べない!どうすればいい?

亀は神経質で、環境が変わるとしばらく餌を食べずにシェルターに隠れ続けます。数日間経てば、シェルター近くに流れてきた餌を首だけ出して食べ始めるので大きな心配は必要ありません。

それでも心配なら、10cm程度の小さめのタッパーに浅く水を張り、餌を多めに入れて人目につかない場所に置いてみましょう。目の前にたくさん餌が浮いている状態をつくると、反射的に餌をぱくりと口にします

はじめはすぐ吐き出してしまうかもしれません。しかし、繰り返しているうちに亀の赤ちゃんは餌の匂いと味を覚えて、すぐに餌を探せるようになります。

良い状態の糞がわからない…

他の動物と同じく、糞の状態は健康のバロメーターですが、亀の場合「良い糞がどんなものかわからない」と言われることが多いです。

良い亀の糞は、水の中でもすぐには形が崩れず、しっかり沈んでいる糞です。色は餌の色に似ていますが、少し濃いのが普通です。

糞をした直後に水中でばらばらになってしまうのは軟便気味です。水温が低すぎる、餌を与えすぎているなどの可能性が高いです。

脱皮?病気?皮膚の「もやもや」の正体

亀の赤ちゃんを飼育しはじめてすぐに、皮膚にもやもやがついていることに気づくかもしれません。水棲亀がかかりやすい病気に水カビ病」という皮膚病があるため、心配になることも多いでしょう。

もちろん水カビ病の可能性もありますが、亀はさかんに脱皮をする動物です。脱皮か病気かの見極めははじめのうちは難しいかもしれないので、一度動物病院で診てもらうと安心です。

亀の赤ちゃんとの生活は喜びがいっぱい!

お迎えしたばかりの亀の赤ちゃんはあまりに小さく、不安なことも多いでしょう。しかし、少しずつ警戒を解いて、飼主の顔を覚えて近寄ってくれるようになったりと嬉しいことがいっぱいです。

どんな動物の飼育にも100%の正解はありませんが、今回の記事もひとつの目安として、ぜひ亀の赤ちゃんの飼育に挑戦してみてください。

 

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