- 猫の発情期は女の子の猫だけにあり、男の子は女の子の発情期に誘発される
- 発情期は日照時間が14時間以上になると起こるため室内飼いの猫は発情周期が短くなりやすい
- 猫は交尾排卵のため、妊娠しやすい
- 避妊・去勢手術を受けると、生殖器に関わる病気が予防できる
猫の場合、犬よりも発情期が長かったり、周期が短かったりと、子どもが増えやすい傾向があるそうです。
そんな猫の発情期のメカニズムと、避妊・去勢手術の必要性について、獣医師の藤原先生に詳しく聞きました。
新しく猫のお迎えを考えている人や、愛猫に手術を受けさせるかどうか考えている人はぜひ参考にしてください。
◆取材・監修:獣医師プロフィール
猫の発情期は長くなっている?
猫は犬に比べると発情期が長かったり、回数が多かったりするという話を聞いたことはないでしょうか?
犬に比べると猫の方が数が増えやすいともよく言われます。
その理由について藤原先生に聞きました。
猫は日照時間によって発情を迎える長日繁殖動物です。
日照時間が長くなり、14時間を超えると発情が起こるようになります。
暖かくて食事が多い時期に子供を産むためです。
そのため、室内で暮らしている猫は、1日12時間以上照明がついている部屋で過ごすと1年中発情が来ることもありますし、年に3、4回発情がきたりします。
人の生活時間が猫に与える影響は大きいということですね。
猫の発情期の周期と行動
猫の発情期は女の子に来るもので、女の子の発情に男の子が誘発されるのが猫の発情のメカニズムなのだと藤原先生は話します。
女の子の猫の場合生まれて最初の発情は、生後6~10ヶ月ぐらいです。
子どもを妊娠するために発情期を迎えた女の子は、男の子に存在をアピールするために声や匂いをふりまく行動が始まります。
女の子には発情周期があって、発情前期・発情期・発情後期・発情休止期の4つを繰り返します。
【 発情周期と行動 】
発情周期 | 行 動 |
発情前期 |
尿の回数が増えたり、普段より活発になったり、甘えるようになったりする まだ交尾は受け付けない |
発情期 |
大きな声で鳴いたり、おしりを高く持ち上げる姿勢をする 交尾を受け付ける |
発情後期 |
排卵して、卵胞が退化する時期 交尾は受け付けない |
発情休止期 | 次の発情まで休憩期間 |
男の子は、生後6ヶ月ぐらいでマーキングなどが始まり、9~12ヶ月ぐらいになると交配が可能になります。
男の子に発情期はありませんが、女の子の猫の発情に誘発されて、大きな声で鳴いたり、尿スプレーしたり、他の猫と喧嘩したりするようになります。
猫は子どもが増えやすいといわれる理由
発情期が長くなっているということはわかりましたが、それ以外にも何か理由があるのでしょうか。
猫は、妊娠期間が2ヶ月、離乳が2ヶ月で終われば、その後また妊娠が可能になります。
日照時間が14時間以上あればまた発情します。
また、交尾排卵なので、タイミングがあえば、別の2頭の男の子の子どもをそれぞれ同時に妊娠することができ、平均して1回に4〜5匹の子どもを産みます。
年に4回発情期が来ると仮定した場合、年間に20匹近く子どもが生まれる可能性があるわけです。
交尾排卵とはどういうものでしょうか?
排卵には自然排卵と交尾排卵という2つのタイプがあります。
多くの動物は自然排卵で、交尾とは関係なく周期的に排卵が行われます(人間もこのタイプ)。猫の場合は交尾排卵で、交尾によって刺激を受け、排卵が促されるのです。
自然排卵に比べると、交尾のタイミングで排卵されるため、格段に受精する確率が高くなると考えられますね。
20匹の子どもが半年後に繁殖が可能になったと考えると……。あっという間に数が増えるというのも納得です。
発情期のトラブルと病気の予防のための避妊・去勢手術
実際に女の子に発情期が来ると、周囲の男の子の猫はそれに誘発されてさまざまなトラブルを引き起こすと先生は話してくれました。
ここでは発情に伴うトラブルや手術によって予防できることについて聞きました。
発情期に起こるトラブルとは
発情期の猫の間にはさまざまなトラブルが起こるのだと先生は話します。
実際にはどのようなトラブルが想定されるのでしょうか。
発情期になると男の子同士が喧嘩をして、怪我をしたり、咬傷による猫エイズや猫白血病などの感染症が心配されます。
また交配するときに男の子が女の子の首を噛むことで感染症がうつったりするので、発情がなくなれば、感染症などの病気の予防になります。
感染症の予防という観点からも手術には効果があるのですね。
それ以外にもメリットはあるのでしょうか。
避妊することで発情がなくなり、去勢することでメス猫から誘発されることがなくなります。
そのため大きな声で鳴くことがなくなり、ご近所迷惑になる心配も減るでしょう。
避妊・去勢手術をしないと、交配ができないことによるストレスが溜まり、飼主に攻撃的になることもあるので、手術を受けることでリスクを減らせることがあります。
猫の避妊手術とそのリスク
実際に手術をする場合、避妊手術とはどのような手術を行うのでしょうか。またその手術に伴うリスクはないのでしょうか。
避妊手術は卵巣の摘出や卵巣と子宮の摘出を行います。
リスクは、麻酔のリスク、肥満になるリスクがあります。
下部尿路症候群のリスクが高まるとも言われています。
下部尿路症候群とは、尿の中に結晶ができることで、泌尿器に一連の症状がおきることをいいます。
結晶が膀胱を傷つけたり、結晶が塊になることで結石になり、結石が尿道を塞ぐ尿道閉塞などの症状を引き起こすことがあります。
避妊手術と予防できる病気
女の子の場合、避妊手術を受けることによって、生殖器系の病気を予防することもできると先生はいいます。
どんな病気が予防できるのかを解説してもらいました。
前述した交尾によってうつる感染症の予防に加え、乳腺腫瘍の発生率の低下・卵巣・子宮の病気の予防ができます。
猫の去勢手術とそのリスク
男の子の場合は手術ではどのようなことが行われるのでしょうか。またそのリスクについて解説してもらいました。
去勢手術は睾丸の摘出を行います。
リスクは、麻酔のリスク、肥満になるリスクがあります。
下部尿路症候群のリスクが高まるとも言われています。
去勢手術で予防できる問題点
手術を受けることによって予防できる病気や問題にはどのようなことがあるのでしょうか。
精巣を摘出しますので、精巣腫瘍がなくなります。
去勢手術をマーキングを始める前に行うとマーキングを抑えることができます。
性的な衝動に対して起こるストレスを抑えたり、喧嘩・徘徊行動・スプレー行為の抑制が可能になります。
獣医師が推奨する手術の時期
猫にとっての避妊・去勢手術の必要性についてはよくわかりました。
では実際に手術を受ける場合、適した時期はあるのでしょうか。
避妊手術をするなら最初の発情が来る前に
国際猫医学会では、生後6ヶ月以内に避妊手術をすることを推奨しています。
女の子の場合、最初の発情が来る前が望ましいですね。
去勢手術をするなら6ヶ月以内が推奨される
国際猫医学会では、避妊手術と同じくらいの時期、生後6ヶ月くらいまでの手術を推奨しています。
スプレーや徘徊・喧嘩など、女の子の発情に誘発される前に手術を受けることが望ましいでしょう。
手術は病気を防ぎ、望まない妊娠も防いでくれる
現代社会では夜も明るい室内で生活する猫も多く、年に3回〜4回の発情期を迎える女の子の猫がいるのだということを藤原先生は教えてくれました。
犬に比べて猫は妊娠しやすく、自由に外に出ることのできる猫は、避妊・去勢の手術を受けていないと、飼主の知らないところで妊娠してしまう可能性が高いこともわかりました。
また、避妊・去勢の手術を受けることで、生殖器官の病気の予防になることも解説してもらいました。
メリット・デメリットをよく理解し、愛猫に手術を受けさせるかどうか判断する際の参考にしてください。
以下の記事では、犬の避妊去勢について獣医師の藤原先生に解説をしていただきました!犬を飼育している人はぜひ参考にしてください。