- 低温やけど
- ドライアイ
- 暖房製品のコードからの感電
- 使い捨てカイロの誤食
- 不凍液中毒
- ヒートショック
- 一部の犬種に増える椎間板ヘルニア
動物病院を受診する理由で、特に冬に増えるものには何があるのか、ふじわら動物病院の院長として数多くの犬を診てきた藤原先生に聞いてみました。
その豊富な経験を基にした予防法も一緒に話していただいたので、犬を飼っている人はぜひ参考にしてください。
◆取材・監修:獣医師プロフィール
動物病院に来る犬の受診理由で、特に冬に増えるものとは?
動物病院に来る犬の受診理由で、特に冬に増えるものがあるのだと、藤原先生は言います。そのうちのほとんどが、飼い主のちょっとした注意で防ぐことができるのだそうです。大事な愛犬につらい思いをさせないためにも、日々の生活の中に少し注意をはらって、愛犬を病気・事故・ケガから守りましょう。
冬に増える犬の病気とは?
冬は気温が下がります。それと共に生活に必要になってくる防寒用品が、犬を病気にしたり、事故の原因になってしまうのです。以前に比べて外飼いされている犬が減り、室内で過ごすことが増えたために、低体温症で病院を受診する犬はほとんどいないそうです。
その分増えたのが暖房器具によるケガや病気。以下のようなケガ・病気が冬に増えると藤原先生は言います。
- 低温やけど
- ドライアイ
- 不凍液中毒
- 暖房製品のコードからの感電
- 使い捨てカイロの誤食
- ヒートショック
- 一部の犬種に増える椎間板ヘルニア など
暖房器具の前に座って安心して眠る犬の姿に癒されている人も多いのでは?しかしその姿にも思わぬ落とし穴が。ずっと同じ場所に温風が当たっている事による低温やけどや、ホットカーペットによる低温やけどが増えるというのは納得の理由でしょう。
また温風にずっと当たっていることによって、犬のドライアイも増えるのだとか。目が充血していたり、緑色っぽい目やにが出ていたらドライアイの可能性が。目を痛がったり、顔を床にこすりつけるような仕草が増えたら、ドライアイを疑ってみてください。
一時期よりは減ったものの、まだ寒い地域では時々起こるのが不凍液中毒。散歩中に、部分的に凍っていない路面を犬が舐めたがるようなら、すぐ止めさせましょう。不凍液は甘いため、犬は好んで舐めてしまう傾向があるようです。急性腎不全などの重い症状を引き起こすケースもあるので、雪の多い時期の散歩には注意が必要です。
血管が細い小型犬だからこそ気をつけたい冬の病気・ケガ・事故
小型犬は体が小さいため、体に血液を循環させている血管そのものが細い犬が多いです。そのため寒くなると血管がより収縮し、血液の循環も悪くなりがちです。そうならないために、小型犬は寒い時期には服を着せたり、靴を履かせたりして防寒するのも1つの方法です。
また、寒いために体をぎゅっと丸くして眠る犬も多く、きつく体を丸めた状態で長時間を過ごすことで腰を痛める犬も出てきます。トイ・プードルなどに多く起きる現象で、長い時間丸くなって動かないような場合は体を動かすように促してあげましょう。プードルは気温に関係なく丸まって眠ることの多い犬種のため、長時間同じ体勢で眠っているような場合は注意してあげてください。
小型犬だけに限りませんが、部屋に戻ってからも服を着せたままでいるのはNGです。
人の見ていないところで服をかんで破いたりすると、誤飲・誤食の原因になり、思わぬ事故につながります。部屋の温度は低いままにして、服だけで体温を調整しようとするのは止めましょう。
使い捨てカイロは特に注意!大型犬に増える冬の病気・ケガ・事故
大型犬の冬に増える誤食に、使い捨てカイロがあります。犬の服に貼り付けたりして利用することもあるでしょうし、人が使っていたものをうっかり部屋に落としてしまうこともあるでしょう。
犬がそれをおもちゃに使ってバラバラにしてしまったり、大型犬の場合はそのまま丸呑みしてしまって、胃に詰まってしまうことも。胃に詰まってしまった場合、胃を切開して取り出すことになり、犬の体にかかる負担は計り知れません。
中身だけを少し誤食した場合は様子を見て、そのまま排出されれば問題はないでしょう。誤食した後に食欲がなくなったり、元気が無くなった場合はすぐに病院を受診しましょう。
特に注意が必要なパピー期・シニア期に増える冬の病気・ケガ・事故
部屋を温める場合、暖かい空気は上に上がる特性があるため、床に近いところに暖房器具を設置するケースが多いと思います。普段はしまってある暖房器具を設置した場合に気をつけたいのがコードです。
特に子犬の場合、コードをおもちゃの代わりにかじってしまうことがあります。しつけがきちんとできていないと成犬でもかじってしまうことがあり、冬になるとコードをかじったことによる感電が増えると藤原先生は言います。
感電は最悪の場合死んでしまうこともある危険な事故です。絶対に事故にならないように、細心の注意が必要です。
シニア期の犬が寒い時期に注意したいのは気温差によるヒートショックです。暖かい部屋から寒い外に出る場合はもちろん、寒い外から暖かい部屋に入る場合もヒートショックを起こすことがあります。シニア期に入った犬を連れて冬の散歩に行く場合は、散歩中や帰ってからの犬の様子に注意して観察しておきましょう。
シニア期の犬の場合低温やけどにも注意が必要です。動きが緩慢になったり、感覚が鈍くなることによって、ホットカーペットの上にずっと同じ姿勢で寝ていて低温やけどになることもあるそうです。シニア期の犬にホットカーペットを利用させる場合は注意が必要です。
特定の犬種に増える冬の椎間板ヘルニア
軟骨異栄養性犬種に分類される犬種は、遺伝的に成長に伴って椎間板が衝撃を吸収しにくくなります。そのため椎間板に負担がかかると、他の犬種に比べて2歳を過ぎた頃から椎間板ヘルニアになりやすい犬種と言われています。特に体が冷えて血流が悪くなると、椎間板ヘルニアを発症しやすくなります。下記にあげた犬種はお腹だけでなく、背中も冷やさないように注意しましょう
軟骨異栄養性犬種に分類される犬種
- ダックスフンド(スタンダード・ミニチュア・カニンヘン)
- コッカスパニエル
- ウェルシュコーギー
- ペキニーズ
- シーズー
- ビーグル
- フレンチ・ブルドッグ など
事故やケガにならない寒さ対策を心がけましょう
冬に寒さを感じるのは人も犬も同じです。人と同じように犬にも寒さ対策をしているつもりでも、犬には危険な場合があるということを藤原先生は教えてくれました。普段の生活にある思わぬ落とし穴や、犬の大きさや犬種に合わせた対策があるということもわかってきました。
以下の記事では、これらの病気・ケガ・事故の対策について、藤原先生の詳しい解説を紹介しています。ぜひそちらも参考にしてみてください。