リスなのにドッグ?実は頭脳派なオグロプレーリードックの不思議

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まとめ
  • ドッグという名前がついているのに、実はリスの仲間
  • プレーリードッグの巣穴はとても機能的にできている
  • メスの受精可能時間はとても短い
  • 鳴き声を変えて危険の種類を伝える頭脳派 

地面からひょこっと顔を出したり、すっと立ち上がって周囲を見回したり。ずんぐりとした体型もかわいいプレーリードッグ。かわいいその姿を、動物園やメディアで目にしたことのある人は多いでしょう。

その名前は『ドッグ』でもリスの仲間で、犬ではありません

今回は江戸川区自然動物園のプレーリードッグ担当飼育スタッフ武藤さんに、オグロプレーリードッグの生態についてお話を聞きました。

◆取材・監修:江戸川区自然動物園 オグロプレーリードッグ担当 飼育スタッフ

武藤 郁美(むとういくみ)さん

オグロプレーリードッグの担当をして4年。1年の産休育休を経て、オグロプレーリードッグの飼育を担当。毎日プレーリードッグのかわいい姿に癒されていると話す。毎年春になると、赤ちゃんプレーリードッグが顔を出すのではないかと一喜一憂して過ごすのだとか。

目次

草原の管理人『オグロプレーリードッグ』とは?

プレーリードッグはドッグと名前はついていますが、ジリスという地面で生活するリスの仲間です。主に北アメリカ大陸の平原に生息しており、地中に長いものでは30mにもなる大きな巣を作って、群れで生活しています。

巣の周辺の草を刈りそろえる習性があり、その習性が結果的に草原が荒れてしまうのを防ぐため、草原の管理人とも呼ばれています。

北米の牧場では害獣扱いされていた!?

プレーリードッグは、主に北米の平原や農場に多く生息していました。プレーリードッグの習性として、巣作りのために地面に多くの穴を開けるため、牧場の牛や馬が巣穴に足を取られて骨折したりケガをすることが多発したのだとか。

そのため害獣として駆除の対象になってしまった時期がありますが、現在では保護する動きも始まっており、一時期よりも個体数の減少は抑えられているようです。

オグロプレーリードッグって何を食べているの?

プレーリードッグには5つの種類がいますが、日本にいるのはほぼオグロプレーリードッグです。

江戸川区自然動物園にいるオグロプレーリードッグは、普段どんなものを食べているのでしょうか?武藤さんにお話を聞きました。

野生では生の青草や牧草、乾燥した牧草などを食べています。木の根っこや虫を食べることもありますね。

動物園では、乾燥させた牧草や生の青草とペレットをあげています。キャベツ・ニンジン・サツマイモ・コマツナなどの野菜類をあげることも。中でもサツマイモは人気がありますね。

プレーリードッグは草食の動物なのでしょうか?

そうですね。基本的には草食で、粗食で生きている動物です。

牧草などの草をメインで食べていますが、たまに虫なども食べます。動物園では虫の代わりに煮干しをあげています。

乾燥牧草は食事以外にも、巣穴に持っていって巣作りにも使うんですよ。

まるで広大な邸宅!?プレーリードッグの巣作り事情

野生下では、とても長い巣を作ることで知られるプレーリードッグ。その巣の中は使いやすく、機能的に作られているのだそうです。

プレーリードッグの巣作りや巣穴の造りについて、わかりやすく解説してもらいました。

オグロプレーリードッグの巣穴はとてもシステマチック

プレーリードッグの巣穴はとても長く、機能的。そんな巣の中の様子について武藤さんに話してもらいました。

プレーリードッグの巣穴は、ちゃんと用途別に部屋が分かれているんです。貯蔵庫・寝室・子ども部屋といった感じで、人の家のように中で枝分かれしています。

野生のものほどの広さはありませんが、園内でも1〜3mくらいはあるんですよ。

オスは巣作りでメスの気を引く

オグロプレーリードッグのオスは巣作りを手伝ってメスの気を引くことも。大家族が生活する広いプレーリードッグの巣穴はどうなっているのでしょうか。

プレーリードッグの巣穴には高低差がついています。低いところから空気を入れて、高いところから外に空気を出せるようにしてあるんです。

高いところは見張り台になっていて、周囲を見渡せるように作ってあります。

メスが出産をして巣穴にこもっているときはオスが見張りをして群れを守ります。

普段から見張りもオスがするのでしょうか?

普段の見張りはオスもメスもどちらもします。でも、メスが出産という大仕事をしているときは、オスが頑張って群れを守るんです。

ちゃんと空気の通り道まで考えられて作られているのは意外でした。よく考えてみれば当たり前ですよね。空気が入れ替わらなければ呼吸できなくなってしまいます。それができているからこそ、いくつも部屋を分けて広い巣穴を作れるのですね!

メスが出産しているときはオスが頑張って群れを守るというのも、大家族で生活するプレーリードッグの役割分担なのですね。

群れで協力するオグロプレーリードッグの子育て

プレーリードッグは群れで生活していることがわかりました。群れの中での子育てはどのようにして行われているのか、話してもらいました。

オグロプレーリードッグは一夫多妻の大家族

プレーリードッグは群れで生活していることが知られる動物です。プレーリードッグの群れはどのように構成されているのでしょうか。

プレーリードッグは「コテリー」と呼ばれる群れで生活しています。オス1匹にメスが数匹とその子どもたちでコテリーができます。

メスが主に巣を切り盛りして子どもたちを育てます。

タイミングが命!メスの受精可能な時間は数時間

プレーリードッグの繁殖はとても難しいのだと武藤さんは話します。その理由について説明してもらいました。

まず、プレーリードッグの繁殖には相性がとても重要なんです。相性のいい個体がコテリーにいることが大前提になります。

そしてプレーリードッグのメスは、発情している時間が非常に短いため、タイミングも大切です。

発情しているのは、数時間から長くても1日しかありません。

そんなに短いんですね!発情してるときのサインのようなものはあるのでしょうか?

んー、そこまではっきりとした兆候はないですが、ある1日だけ落ち着きがなくて「よく鳴いているなー」という日があって。たぶんその日が受精可能な日だったんだと思います。

出産は巣の中!だから赤ちゃんの人工哺育が難しい

オグロプレーリードッグは巣穴の中で出産するため、なかなか赤ちゃんの様子を見ることはできないのだとか。そのため、人工哺育もできないのだと武藤さんは話します。そんなオグロプレーリードッグの赤ちゃんの様子について聞きました。

プレーリードッグは巣穴の中で出産して、赤ちゃんは生後1ヶ月〜1ヶ月半くらいで巣穴から出てきます

そのため出産直後の様子はほとんどわからないというのが正直なところです。

カメラのついたケーブルなどを試したこともあったのですが、巣穴が広くて見られませんでした(笑)。

ということは、赤ちゃんが生まれたかどうかは巣穴から出てくるまでわからないんですか?

そうなんです!なので毎年4月の後半くらいはドキドキしながら様子を見ているんです。

今年は赤ちゃんが生まれたのですが、4月中には赤ちゃんが出てこなかったので「あー今年もダメだったかなー」と諦めかけていたら、5月10日に巣穴から赤ちゃんが出てきたんですよ!

今は展示場がとてもにぎわってます(笑)。

頭脳派で意思疎通も?!オグロプレーリードッグの意外な一面

プレーリードックのかわいい姿からは想像できないような意外な一面も武藤さんが話してくれました。

鳴き声で豊富な情報を仲間に伝えられる頭脳派

プレーリードッグの鳴き声が犬に似ていることから、その名前がつけられています。キャンキャンと聞こえる鳴き声は、声のトーンや鳴き方によって意味が変わるのだとか。

おっとりした見た目からは想像できないような、頭脳派の一面について聞きました。

動物園だと、上をカラスが飛んでいるときなどに鳴き声が聞こえることが多いです。危険を知らせるために鳴いています。

どんな敵が来たのか、人なのか鳥なのか、声を変えて知らせているようです。

危険の内容や敵のことを鳴き声で知らせているんですね。

見張り役は、鳴き声を変えて危険の度合いや相手などを群れの仲間に知らせています。鳴き声で瞬時に群れ全体に危険を周知させ、身を守れるようにするための行動ですね。

プレーリードッグにはちゃんとしたコミュニケーションが成立しているんですね!とても現実的で、賢い生存戦略に感動です。

かわいい顔をして気性は荒い!?

立ち上がって食べ物を両手に持って食べている姿が印象的なプレーリードッグですが、そのかわいらしい姿からは信じられないような一面もあるそうです。

群れはオスが1頭とメス数頭という構成ですが、そこに別のオスが入ってくると壮絶なケンカになります。命に関わるようなケンカになってしまうので、動物園では組み合わせには気をつけています。

特に繁殖期は気が立っていることが多くなるので、メス同士でも注意が必要です。

あのかわいい姿で壮絶なケンカというのが想像できません……。

繁殖期はオスとメスを分けて、相性を見ながら相性の良さそうな個体を一緒に過ごさせます。

先ほどもお話ししましたが、メスの受精可能時間が短いので、タイミングがとても重要です。

確かに!飼育担当スタッフの腕の見せ所ですね!

オグロプレーリードッグのここは絶対見逃せない!

4年の間プレーリードッグを近くで見ていた武藤さんだからこそ気づける、プレーリードッグのかわいい一面、見られるものならぜひ見てみたいですよね。

武藤さんおすすめのプレーリードッグのかわいい姿について話してもらいました。

雨上がりの様子を見ることがあったら、ぜひじっくり観察してほしいですね。

雨が降ると巣穴が崩れてしまうことが多いんです。雨が上がると、すぐにプレーリードッグは巣穴を修復するのですが、その様子がかわいいんですよ。

顔も前脚も泥だらけになって一生懸命巣穴を直している姿、ぜひ見てください。

泥だらけの姿、見てみたくなりました(笑)。

かわいいプレーリードッグの家族を見に行こう!

立ち上がって手に食べ物を持って食べる姿や、ハグしたり鼻をくっつけ合ったりする姿がとてもかわいいプレーリードッグ。

江戸川区自然動物園では、2024年の春には新しく7頭もの赤ちゃんが加わり、ますますにぎやかになりました。

じゃれあう姿や座り込む姿を見ているだけで、ほっこりした気持ちになれて癒されますよね。少しの時間でも、かわいい姿を見て癒されに、ぜひお出かけしてみてください。

 

江戸川自然動物園はレッサーパンダも有名!

以下の記事ではレッサーパンダの生態などについて紹介しています!

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◆施設情報

江戸川区の運営する動物園で、入園無料にもかかわらず62種類もの動物を飼育しており、檻のない展示場が多いのも特徴。プレーリードッグ・レッサーパンダ・ペンギンなどの動物を間近で観ることができるのが魅力の動物園です。『動物園のうらがわ探検』などのイベントの開催も精力的に行っています。公式HPではブログも公開中。動物愛あふれる飼育スタッフの綴る動物たちの日々の様子は必見です。
江戸川区自然動物園
所在地:東京都江戸川区北葛西3-2-1
入園料:無料
営業時間:10:00~16:30 ※土曜日・日曜日・祝休日は9時30分から、11月~2月は16:00まで
休園日:月曜日(祝休日の場合は翌日)・年末年始(12月29日~1月1日)※詳細は公式HPをご覧ください

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