- ワシントン条約は、絶滅のおそれがある野生動植物を保護するための条約
- 動植物は絶滅リスクごとに3つの種類に大別され、2年に1回の会議で更新される
- 日本や日本人にとって身近な多くの生き物も、ワシントン条約の対象になっている
地球では、今もさまざまな動植物が絶滅のリスクを抱えています。今回は、絶滅が危惧される動植物を守る条約「ワシントン条約」について解説していきます。ワシントン条約を学び、人間と環境の関わりについて理解を深めていきましょう。
参考:外務省「ワシントン条約」
ワシントン条約(CITES)とは?目的を解説
ここでは、ワシントン条約の目的や発効された経緯を紹介します。ワシントン条約は、絶滅のおそれがある野生動植物の国際取引に関する条約です。ワシントン条約が世界にもたらす影響を知り、社会と環境のつながりについて学んでいきましょう。
ワシントン条約の目的は、絶滅危惧種の保護
ワシントン条約(CITES:サイテス)の目的は、絶滅のリスクがある野生動植物の保護を図ることです。特定の野生動植物の国際取引を規制し、輸出国と輸入国が協力することで、動植物の絶滅を未然に防ぐための条約です。
2024年10月現在、ワシントン条約を締結している国は183ヶ国。日本も1980年から締結国に加盟しており、ワシントン条約の対象となっています。
ワシントン条約は「常設委員会」のほかに「動物委員会」と「植物委員会」が設置されており、各地域からの専門家によって構成されています。
ワシントン条約が発効された経緯
ワシントン条約は、1975年に発効されました。
1972年の国連人間環境会議で、「特定の野生動植物の輸出・輸入・輸送に関する条約案」がテーマにあげられたのが発端となっています。その後、アメリカ政府と国際自然保護連合が中心になり、ワシントン条約が作成されました。
ワシントン条約の締約は、2年に1回の会議で更新
ワシントン条約は、2年に1回の締結国会議にて内容が更新されています。参考までに最新(2024年10月現在)の会議では、象牙の国内市場や、既存の指定動植物における改正提案などがテーマとしてあげられました。次回の会議は2025年を予定しています。
ワシントン条約で決められる3種のカテゴリ
ワシントン条約では、野生動植物を「附属書I」「附属書II」「附属書III」の3種のカテゴリに分けています。絶滅のおそれの程度に応じて、分けられる附属書が異なる・変更されることが特徴です。ここでは、それぞれの附属書の概要について解説します。
附属書I:絶滅のおそれがあり、取引による影響が大きい種
附属書Iには、まさに現在絶滅のおそれがある種類が含まれます。商業取引は原則として禁止されていますが、学術的目的や繁殖事業など一部の目的による取引は可能です。ただし取引の際は、輸出国・輸入国それぞれの許可証が必要です。
附属書II:取引の規制次第では絶滅のおそれがある種
附属書IIには、取引を規制しなければ絶滅のおそれがある種が含まれます。絶滅における緊急性はないものの、効果的な取り締まりをおこなわなければ絶滅のリスクが高まる種が該当します。輸出国の許可を受ければ、商業取引が可能です。
附属書III:国ごとに規制をおこなう必要がある種
附属書IIIには、いずれかの締結国が「自国の管轄内にて捕獲・採取を防止または制限する必要」がある動物が含まれます。また取り締まりのために、ほかの締結国の協力が必要であると認められた種も該当します。
ワシントン条約に違反したらどうなる?
ワシントン条約に違反した際は、意図しない場合でも罰則を受けなければなりません。しかし具体的な罰則は、各締約国の取り決めによって決定されます。日本国内での取引では、以下の法律によって罰則が明記されています。
- 種の保存法
- 鳥獣保護法
- 動物愛護管理法
- 外来生物法
たとえば条約違反の輸入の場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金。種の捕獲の条件に従わなかった場合は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。
ワシントン条約で制限されている代表的な動物10種
ここでは、ワシントン条約で制限されている代表的な動物10種類を紹介します。なかには動物園やペットショップでよく見かける動物もいるため、驚く人も多いでしょう。ぜひこの機会に、身近な動物が抱える絶滅リスクについて学んでみましょう。
動物園のアイドル【ジャイアントパンダ】
ジャイアントパンダは、生息域の減少により保護活動が進められています。野生パンダの生息域は、過去の1%の土地しかないといわれており、おもな原因は高速道路や貯水池などの建設・開発です。
東京都では、中国と共同で生息地の保全活動をおこなっています。
野生種は減少の一途に【カメレオン】
カメレオンは、12の属すべてがワシントン条約に記載されている生き物です。ペットとしても人気のカメレオンですが、生息地の環境破壊によって野生種は減少傾向に。
根本的な原因の解決として、野生のカメレオンの住める森を増やす取り組みがおこなわれています。
色鮮やかな羽が美しい【インコ・オウム】
インコやオウムも、ワシントン条約の対象となる生き物です。世界に398種類もの数が存在しているインコ・オウムですが、394種というほぼすべての種類がワシントン条約の対象です。
さらにこのなかから、111種類が絶滅危惧種に分類されています。
水族館の人気者【ラッコ】
水族館の人気者であるラッコも、ワシントン条約により捕獲が制限されています。またラッコは絶滅危惧種にも分類されている動物です。
輸入にも厳格な制限があるため、「もうすぐ日本の水族館からラッコがいなくなってしまうのでは」と危惧されています。
森林伐採が生存数を減らし続ける【ゴリラ】
ゴリラは、附属書Iにあげられている絶滅危惧種です。森林破壊による生息域の減少や、密猟によって生息数が減少しています。
動物園で会いやすい動物という認識があるかもしれませんが、野生ではごく近い将来に絶滅の可能性が高いといわれています。
密猟に脅かされる種の存続【カバ】
カバは、密猟によって絶滅のおそれがある動物です。2022年におこなわれた締約国会議では、附属書IIから附属書Iへの移行も議題にあがりました。
とくに象牙の代用としてカバの牙を狙う密猟者の存在は、世界的な問題となっています。
ペットとしてもお馴染み【カワウソ】
2019年におこなわれた締約国会議で、カワウソの国際取引の禁止が可決されました。日本では一時期ペットとして注目されたコツメカワウソも、現在は販売できません。
ただし合法に入手したことを証明し、環境省に登録をおこなえば、取引が許可される場合もあります。
革や毛皮を狙われている【アザラシ】
アザラシの一部の種類は、ワシントン条約で輸出入が規制されています。とくにアザラシの良質な革・毛皮を狙った密猟は、重大な社会問題の一つです。
現在出回っている革製品は流通量が少なく、希少性が高いものとなっています。
海洋汚染がその命を縮めている【ウミガメ】
ウミガメは、附属書Iに含まれる絶滅危惧種です。もともとウミガメは産卵数に対して生存率が低い生き物であることに加え、漁業用の網や海洋汚染が原因による死亡報告があげられています。
ワシントン条約の代表的な動物【ゾウ】
ゾウは、ワシントン条約を代表する動物といえるでしょう。
記念すべき第1回締約国会議でも、すべてのアフリカゾウが附属書IIに指定されました。ゾウを絶滅に追い込んだ原因は、象牙目的の密猟です。現在の締約国会議に至っても、象牙の市場をめぐる提案や審議が続いています。
絶滅危惧の原因の多くは人間。共生のためにできることを考えよう
今回は、絶滅のおそれがある動植物たちを守る「ワシントン条約」について紹介しました。野生の動植物が絶滅する原因の多くは、人間によるものです。ワシントン条約の目的や対象生物を通して、今を生きる私たちにできることはないか考えてみましょう。
また以下の記事では、日本の絶滅危惧種について詳しく解説しています。ぜひ今回の記事と合わせてチェックしつつ、絶滅の危機にさらされている動物たちについて学んでみてください。
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