世界最高齢のウォンバットを飼育する秘訣とは?|五月山動物園インタビュー

記事をシェア

まとめ
  • 五月山動物園にはギネス記録になった34歳のウォンバットがいる
  • ウォンバットはオーストラリアの固有種で、日本の動物園には6頭しかいない
  • ウォンバットのお腹には赤ちゃんを入れる袋がある


ウォンバットという動物を知っていますか?オーストラリアの固有種で、まるまるとした体につぶらな瞳のかわいい動物です。大阪にある五月山動物園には2023年1月に34歳を迎え、2月にはギネス記録にも認定されたウォンバットがいます。今回は五月山動物園でウォンバットの飼育を担当する遠藤さんに、ウォンバットについて解説してもらいました。

◆取材・監修:飼育スタッフ

五月山動物園飼育スタッフ 遠藤 (えんどう)さん
2007年五月山動物園に入社。ウォンバット担当になり10年程。いつもマイペースなウォンバットたちに出来るだけ寄り添えるような飼育をしていけたらと心がけている。
目次

実は日本に6頭しかいない!珍獣ウォンバットとは?

ウォンバットは2024年9月現在、日本の動物園には4頭しかいない動物です。その4頭のうちの3頭が五月山動物園で飼育されています。

※2023年まで五月山動物園では4匹、茶臼山動物園で2匹(計6匹)のウォンバットが飼育されていました。2023年12月にコウ(享年7歳・五月山動物園)、モモコ(享年31歳・茶臼山動物園)が永眠。2024年現在は4頭となりました。

1990年にオーストラリアのタスマニア島から、3頭のウォンバットが五月山動物園にやってきました。1992年には国内初、世界でも2例目となる繁殖にも成功。2007年に2頭、2017年にはまた新たに3頭のウォンバットがオーストラリアから来日しています。

ウォンバットのエキスパートである五月山動物園だから知っている、ウォンバットの生態について遠藤さんに話してもらいました。

コウモリじゃないよ?有袋類のウォンバットの生態

ウォンバットの名称は、アボリジニの言葉で「平たい鼻」を指すのだそう。コアラに似た大きな平たい鼻を持つからウォンバットなのだそうです。そんなウォンバットはお腹に袋を持つ有袋類です。

実際のウォンバットとはどんな動物なのでしょうか?

野生化では事故などもあり、5〜6歳の寿命といわれていますが、飼育下だと平均すると20年くらい生きてくれます。

巣穴を掘って生活する動物の中では最大級の大きさです。長いものは9mくらいにもなる巣穴を掘って生活しています。
基本的に一夫一婦で、1回に1頭の赤ちゃんを産み、お腹の袋で育てます。


巣穴の中を自由に動くためにも、赤ちゃんはお腹の中にしまって移動するんですね!

ウォンバットの袋は後ろ向きについている!?

巣穴の中を移動する際、お腹の中に赤ちゃんをしまって移動するため、ウォンバットのお腹の袋には秘密があるそうです。

ウォンバットのお腹の袋はお尻の方に出入り口があります。

巣穴を掘る時には太い爪のある短い前足で土を掘って、スコップのような形の長い爪のある後ろ足でかき出すので、お尻の方に出入り口がある方が便利なんです。

土が赤ちゃんにかからないような工夫がされているんですね!

カンガルーは基本的に2本足で立つことが多いので、袋の入り口は上にあるほうが便利ですが、4本足で普段から歩くのであれば確かに後ろに入り口があるほうが便利そうですね。

四角いうんちをするって本当?

ウォンバットのうんちは不思議な形をしているそう。

遠藤さんにお話を聞いて見ると……。

飼育下だと水分を豊富に摂取できるせいでうんちもゆるめなんです。そのため四角い形にはならないですが、野生下ではうんちも固いので四角い形になるようです。

なるほど。

野生化では水の少ないところに生息しているので、うんちも固くなるんですね。

飼育下と野生下でそんな違いが出てくるというのも意外なお話でした。

まるまるっとかわいい外見だけど時速40kmで走れるらしい!?

ウォンバットの外見はまるまるでもふもふ。とても俊敏そうには見えないのですが、実は俊敏な一面があるのだそう。

遠藤さんにウォンバットのすばしっこさについて話してもらいました。

ウォンバットにはタスマニアデビルやキツネといった天敵がいます。

天敵から逃げるために早く走る必要があるんです。

野生下では時速40kmくらいでは走ると思います。飼育下でも捕まえようと思って追いかけても、なかなか捕まらないくらい動きの早い動物ですよ。

あのまるまるとしたウォンバットの全力疾走する姿は、ちょっと見てみたい気がしますね。

動物園でのんびり過ごす姿とのギャップもたまりません。

巣穴を掘る世界最大の動物!ウォンバット巣作りの秘密

ウォンバットの体重はおよそ15〜35kg。巣穴を掘って生活する世界最大級の動物なのだそうです。

長いもので9mにもなるという、この大きさの体が動ける広さの巣は、どんなふうに造られるのでしょうか。

ウォンバットの巣作りについて、遠藤さんに聞いてみました。

ウォンバットの巣作りには固いお尻が必須!?

もふもふした外見のウォンバットですが、実はお尻がとても固いのだとか。

この固いお尻が、巣の安全を守るために必要なのだそうです。

ウォンバットは巣に逃げ込むと、固いお尻でフタをするんです。

お尻でフタをされると、タスマニアデビルもキツネも、もう手を出すことはできません。

お尻には巣の強固な扉の意味があるんですね!

ということは、ウォンバットのお尻には毛は生えていないんでしょうか?

いえ。お尻にもちゃんと毛は生えてますよ(笑)

もふもふしたお尻が固いって……想像ができません……。

巣穴の前のうんちは表札がわり

ウォンバットの巣穴の前にはうんちが落ちていることが多いそうです。

巣穴の前に落ちているうんちには、ちゃんと意味があるのだと、遠藤さんが解説してくれました。

ウォンバットの巣穴1つにつき、1頭のウォンバットが住んでいます。

ウォンバットはとても嗅覚の優れた動物なので、うんちの匂いで誰が住んでいる巣穴なのかを識別します。

1つの巣穴に1頭だけが住んでいるんですね。

家族で一緒に住んだりはしないんですか?

ウォンバットは基本的に1頭ずつ生活する動物です。

赤ちゃんも8ヶ月まではお腹の袋で生活しますが、2歳になる頃には一人立ちして巣から離れていきます。

8ヶ月ってかなり長い時間お腹の袋にいるんですね?

そうですね。

生まれた時は500gくらいなのですが、8ヶ月くらいで3〜3.5kgになります。

8ヶ月になる頃には生まれた時の6〜7倍の大きさまで育っているので、袋に入っている姿はかな〜りパンパンな感じになります(笑)

赤ちゃんがいるってことも、巣穴の前のうんちでわかっちゃうのでしょうか。

表札がわりの四角いうんち。野生のウォンバットたちはうんちでお互いの存在を確認するんですね。

五月山動物園の世界最高齢34歳のウォンバット

ギネス記録になったワインくん

五月山動物園には3頭のウォンバットがいます(2024年9月現在)

世界最高齢でギネス記録にも登録されたワインくん34歳・18〜20kg。フクくん19歳・19〜21kg。ユキちゃん7歳・15〜16kgの3頭です。(コウくん[享年7歳]は、2023年12月に永眠しました。ご冥福をお祈りします。)

ウォンバットは夏に体重が減り、秋〜冬にかけて寒くなるとよく食べるようになって太るため、体重が変動するのだそうです。

ギネス記録になったワインくんについて、遠藤さんに話してもらいました。

長生きの秘訣は、大好きなユキちゃん!

ワインくんが愛して止まないというユキちゃん。

こうやって見ると、確かにちょっとコアラににていますよね。

34歳という記録的な年齢になったワインくんですが、飼育する際に特に気をつけていることはありますか?

いくつかあります。

暑い思いをできるだけさせないように、暑い時期は早めに部屋に入れたり、食事は1回の量を減らして回数を多くあげたりしています。

運動する時間も必要なので、無理のない範囲で運動させたり。

あとはユキちゃんのことが大好きなので、隣同士の居住区にして、フェンス越しに接してもらう時間を増やしたりしています(笑)

ウォンバットもかわいい女の子が近くにいると、元気になるんですね(笑)

ウォンバットのココがかわいい!

飼育スタッフだからこそ知っている、ウォンバットのかわいいポイントについて話してもらいました。

ウォンバットは1頭1頭それぞれに仕草や動きが違います。

フクくんは甘えん坊でわんぱくなところがあり、コウくんは臆病だったり、ユキちゃんは自由気ままな性格だったり。ワインくんは人にはかなり慣れていますし、目もよく見えていなかったり、後ろ脚が弱っていたりするので、動きが他の子たちと違うのですぐわかります。

安心して眠っているときにはへそ天(おへそが上を向くようなお腹を出した無防備な姿)で寝ていたりするんです。

仰向けでだらしなく寝ている姿は本当にかわいいので機会があったらぜひみてほしいですね

ウォンバットもへそ天で眠るんですねー!

かわいいこと間違いなし!の寝姿ですね。

ウォンバットのへそ天。コレは必見です!

もふもふでまるっとしたウォンバットに会いに行こう!

ウォンバットと聞いてもなかなかその姿を想像できない人も多い動物ですが、実はまるくてもふもふとした被毛を持つ、愛すべき動物であることがわかりました。

日本の動物園では6頭しか飼育されていないウォンバット。そのうちの4頭が飼育されていて、2023年2月には34歳でギネス記録に認定されたウォンバットもいるという五月山動物園。

「日本で2番目に小さい動物園」といわれる五月山動物園ですが、世界一のある動物園でもあり、地域に愛される動物園でもあります。

ギネス記録を持つ五月山動物園のウォンバット・ワインくんに、ぜひ会いにいってみてください!

◆施設情報

池田市が運営する動物園。「日本で2番目に小さい動物園」のキャッチコピー通り、敷地面積は4,500㎡ながら、34歳のウォンバット・ワインがギネス世界記録に登録され、一躍有名に。動物とのふれあいなどもでき、ケヅメリクガメやエミューなどの動物が展示されている。入園料無料ということもあり、地元からも観光客にも愛されている動物園。
五月山動物園
所在地:大阪府池田市綾羽2-5-33(五月山公園内)
料金:無料
営業時間:9:15~16:45(ふれあい広場やイベントなどが雨天など天候条件により休止することもあります)
休園日:火曜日(火曜日祝日の場合はその翌日)
 

以下の記事では伊豆シャボテン動物公園のカピバラを紹介しています!

【あわせて読む】

株式会社Tier - 株式会社Tierが動...
カピバラののんびりした外見に隠された“意外な一面”とは!?【飼育スタッフの内緒話】 - 株式会社Tier まとめ 大きい個体は60kgにもなるカピバラは、世界最大のネズミの仲間 カピバラは時速50kmで走れる お風呂 近年あちこちの動物園で人気のカピバラ。のんびりとしたイメージ...

関連記事

目次