- 約30年で猫の寿命は10年以上延びている
- 室内飼いの猫は外飼いの猫と比べると約2.5年長生き
- 猫の年齢に応じたケアが長生きの秘訣
猫は私たちの生活に喜びと癒しをもたらしてくれる愛らしい家族です。愛猫の寿命をできるだけ長く、健康的なものにしたいと願うのは飼主として当然の気持ちなのではないでしょうか。
本記事では、猫種や性別の違いによる猫の寿命に影響を及ぼす主な要因について解説します。
※猫の寿命は環境や個体差に左右されます。そのため、記事は一般論としてこれから猫のお迎えを考えている人は、ひとつの参考にしてみてください。
猫の寿命は延びている?
一般社団法人 ペットフード協会の実施する「全国犬猫飼育実態調査(令和3年)」によると、2016年は15.09歳だった猫の平均寿命ですが、 近年、医療技術の進歩や飼主の意識向上により、毎年徐々に猫の平均寿命が延びており2021年は15.66歳を記録しました。
猫の寿命は30年で10年延びた!?
東京農工大学の林谷秀樹先生の研究グループによると、1990年当時、猫の平均寿命は5.1歳とされていました。つまり約30年で猫の寿命は10年以上延びているのです。
飼い猫の平均寿命と野良猫の平均寿命
一般社団法人 ペットフード協会が実施した「全国犬猫飼育実態調査(令和3年)」によると外飼いの猫の平均寿命が13.75歳に対し、室内飼いの16.22歳と比べると約2.5年ほどの開きがあることが分かりました。
野良猫との喧嘩でケガをしてしまったり、感染症の感染、交通事故に巻き込まれる可能性など室内飼いの猫と比べると、外飼いの猫にはさまざまなリスクがあることが考えられます。愛猫に長生きしてもらいたいと思ったら、外飼いよりも完全室内飼いをおすすめします。
種類別の平均寿命とは
猫の種類別の平均寿命については、「猫種別の平均寿命(20202年度)」で猫の契約頭数上位10品種の平均寿命が比較されています。
<猫の品種別の平均寿命(契約頭数上位10品種を抜粋)>
1位:サイベリアン 15.7歳
2位:日本猫 15.2歳
3位:混血猫 14.9歳
3位:ラグドール 14.9歳
5位:アメリカン・カール 14.8歳
6位:ペルシャ(チンチラ) 14.3歳
7位:ベンガル 14.2歳
8位:ソマリ 14.1歳
9位:アビシニアン 14.0歳
10位:ロシアンブルー 13.9歳
参考:アニコム 「家庭どうぶつ白書」猫種別の平均寿命(2022 年度)
混血猫や日本猫の雑種猫は遺伝的多様性が高いため、一般的に寿命が長い傾向があると言われています。上記ランキングは、個々の猫の遺伝的要素や生活環境、健康状態によって寿命は異なるため、ひとつの参考にしてみてください。
性別で寿命に違いはある?
猫の寿命において、性別差はあまり大きな違いを示さないとされています。しかし、去勢・避妊手術を受けた猫は、寿命が延びる傾向があるのです。
特に、去勢されたオス猫は、精巣や前立腺の疾患のリスクが低くなり、避妊手術を受けたメス猫は、乳腺腫瘍や子宮疾患のリスクが低くなるため、寿命が延びる傾向があります。
つまり性別自体よりも、適切な手術や健康管理が猫の寿命に大きく影響すると考えられているのです。
猫の寿命を伸ばすために必要なこと
愛猫とは1日でも長く一緒にいたいですよね。そのために、愛猫の健康を維持し、長生きしてもらうためのポイントを紹介していきます。
ポイント1.交通事故や感染症のリスクを室内飼いで低減
猫が室外に出た際に被る交通事故や野良猫同士のケンカによるケガ、感染症など危険にさらされるリスクが高まります。屋内飼いにより、ストレス軽減や適切なケアが容易に行え、猫の健康維持に繋がります。
ポイント2.猫に適した栄養素が含まれた食事で健康を維持
人間と同様に猫も日々の食事は健康維持においてはとても重要です。チョコレート、ニンニク、タマネギなど、中毒や消化器系のトラブルを引き起こす食べ物があります。これらは絶対に与えてはいけません。
カロリーやタンパク質、ビタミン、ミネラルなどが適切なバランスで含まれた猫用フードを選ぶことで、栄養バランスを保ち、猫の健康をサポートしましょう。
ポイント3.充分な運動量を確保できる居住環境を整える
猫の寿命を伸ばすための居住環境では、適切な温度管理が大切です。一般的に、猫にとって快適な「室温」は21∼28℃と言われています。 寒さや暑さに配慮し、室内を適温に保ちましょう。
また、誤飲・誤食防止のため、危険なものは手の届かない場所に保管し、猫が触れないように注意してください。運動できる環境を整えることも重要で、キャットタワーやおもちゃを設置し、適切な運動量を確保し、肥満の予防はもちろん、遊びを通じて猫と一緒に楽しく運動しましょう。
ポイント4.日頃から猫の様子を観察し、もしもの時に相談できる病院を探す
病気や怪我の早期発見と治療が、猫の健康状態を維持するにあたってはとても大事になります。日頃から猫の様子を観察し、食欲や排泄、行動などに変化があれば速やかに獣医師に相談しましょう。
また、定期的な健康診断や予防接種も長生きの秘訣です。健康診断では潜在的な病気や健康リスクを早期に見つけることができ、予防接種は感染症に対する免疫力を高め、猫の健康を守る効果があります。
獣医師と定期的な健康診断やワクチン接種を行い、病気の早期発見・早期治療に努めましょう。
猫の年齢別にみる注意ポイント
事実、猫は人間よりも早く歳をとるものです。生後1ヵ月で、人間の1歳に相当します。その後、急激に成長した猫は1歳になるころには人間の20歳に相当するのです。
そのため、猫の年齢に応じたケアが、猫の健康維持に繋げるにはとても重要です。ここからは、年齢ごとに注意するべきポイントを見ていきましょう。
やんちゃなこともする子猫期(0〜6ヵ月)
子猫は免疫力が未発達です。そのため、成猫期の猫と比べて感染症にかかりやすいです。定期的なワクチン接種や健康診断をおすすめします。また、成長に必要な栄養を摂取できるよう、子猫用フードを選びましょう。
大人の猫へと移行する青年期(7ヵ月〜2歳)
成猫期への準備期間です。食事も子猫用のキャットフードをふやかすのを徐々にやめて、そのまま与えるようにしましょう。
また、7ヵ月〜2歳は繁殖期に入ることが多い時期。繁殖行動によるストレスや発情の問題を減らし、健康状態を維持するために避妊・去勢手術を検討しましょう。
人間の年齢にすると約30歳!?の成猫期(3〜6歳)
成猫の場合は歯の色も年齢を推測する手掛かりになります。年齢を重ねるにつれ、真っ白い歯が徐々に歯が黄ばんでいきます。
成猫は基本的に健康ですが、避妊・去勢手術や適切な食事と運動の維持が重要です。年に1回の健康診断を行い、予防接種を更新しましょう。
徐々に老化が始まる中年期(7〜10歳)
高齢になると「猫の宿命」とも言われる腎臓病を発症するリスクが高まります。定期的な健康診断の頻度を上げ、内臓機能や歯の健康をチェックしましょう。食事もシニア猫用の食事に切り替え適切な運動を行うことで肥満防止を意識できるとよいですね!
猫のシニア期に突入する前期高齢期(11〜14歳)
高齢になるにつれて肥満や病気にかかりやすく身体の衰えも見られます。また、エネルギー消費量が減少していくことから、これまでと同じフードを同じ量食べ続けると、肥満になってしまう可能性があるのです。高齢猫用のフードに切り替えるなど、細かなケアをしてあげましょう。
猫の平均寿命を超えていく後期高齢期(15歳以上)
免疫力が低下する高齢猫にとって、予防接種や寄生虫予防は引き続き重要です。また、健康診断を半年に1回程度行い、病気の早期発見・治療を心掛けましょう。
高齢猫は関節痛や運動機能の低下が見られます。段差のない床や滑りにくいマット、低いキャットタワーなど、安全で快適な居住環境を整えましょう。24時間相談できる獣医師と病院があると安心ですね。
「猫と共に生きる」ということを考える最初の一歩
猫の寿命は猫種や性別によって差がありますが、最も重要なのは愛猫の健康を維持するための日頃の愛のあるケアです。
しかし、猫は自分の病気を隠そうとする動物とも言われ、体調の異変に気づきづらいこともあるでしょう。だからこそ家族である飼主が毎日なでたり、抱っこするなどのふれあいが1番の早期発見する可能性を高めます。病気の早期発見・治療は、愛猫の寿命を延ばす近道であり、愛猫との時間をより長く、幸せに過ごすためのポイントとも言えます。
すでに飼われている人も、これからお迎えを検討している人も、猫の寿命という観点から経済的なことも考慮して「猫と生きる」「猫を迎える」という意味を考えるきっかけになれば嬉しいです。
猫の腎臓病治療薬についてもまとめているのでぜひチェックしてみてください。