実は身近な生き物?ニホンスッポンの特徴や生態を解説

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まとめ
  • ニホンスッポンは本州から九州にかけての池や川に生息している
  • 基本的に憶病な生き物だが、噛む力の強い顎で噛みつくこともある
  • 食用に養殖が盛んで、ペットとしても流通している

皆さんは『スッポン』と聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか?高級食材、噛みつかれると離さない凶暴なカメ、そんなイメージが強いかもしれません。実はスッポンの中でも『ニホンスッポン』と呼ばれる種類は、日本各地の川や池などに生息しており、私たちの生活に意外と近い存在なのです。

ニホンスッポンは、ほかのカメとはまた違った独特な特徴をもっています。この記事では、そんなニホンスッポンの基本情報から生態・野外での観察方法まで解説していきます。

目次

寿命・生息環境・餌などニホンスッポンの基本情報

ニホンスッポンの寿命・生息環境・餌など基本情報を紹介します。まずはニホンスッポンがどんな生き物なのかを見ていきましょう。

ニホンスッポンは淡水性のカメ

ニホンスッポン(学名:Pelodiscus japonicus)は、日本に生息している淡水性のカメで、スッポン科に属します。主に本州・四国・九州の河川や湖沼に広く分布しています。北海道では一部で移入種として見られることもありますが、沖縄では確認されていません。

流れの穏やかな場所を好み、泥底や砂地に潜って生活しています。特に夏場は、岸辺の岩陰や水草の影に隠れてじっとしていることが多いです。時折水面から顔を出して、呼吸をしている姿がみられます。

ニホンスッポンの大きさや寿命は?

ニホンスッポンの成体は、甲長でおおよそ30cmに成長します。メスのほうが大型化しやすく、稀に40cmを超える個体もいます。一方、オスはやや小柄で、尾が長くなるのが特徴です。

寿命は自然下で15〜20年程度ですが、飼育下では適切な環境と管理がなされていれば25〜30年生きることもあります。中には100年以上生きる個体もいるという説もあるほどです。いずれにしても長寿であるため、飼う際は長期的な視点で計画を立てることが大切です。

肉食性の強い雑食

ニホンスッポンは肉食性が強く、小魚・ザリガニ・エビ・昆虫類・カエルなど、さまざまな生き物を好んで捕食します。一方で水草や藻なども食べることがあり、雑食性の一面も持っています。

飼育下では、カメ専用の人工飼料や冷凍赤虫・小魚・甲殻類などをバランスよく与えることが大切です。成長期には特に動物性たんぱく質をしっかり摂らせると、健康な甲羅に成長します。

食用に養殖されている

スッポンといえば高級料理としても知られています。ニホンスッポンは古くから日本各地で養殖されており、食用としての需要も高いです。滋養強壮や美容によいとされ、スッポン鍋やスープなどに利用されています。

養殖された一部は、ペットショップにも出回り、野生個体と比べて人慣れしている傾向にあります。飼育する場合は、野生の個体を捕まえるのではなく、養殖個体を購入しましょう。

ニホンスッポンの特徴や生態

ニホンスッポンの特徴や生態を紹介します。ほかのカメとの違う、ニホンスッポンならではの特徴をみていきましょう。

臆病な生き物だけど噛む力は強い

ニホンスッポンは非常に臆病で、物音や人影にすぐに反応し、泥の中や水底に素早く隠れます。野外で観察する際には静かに行動することがポイントです。

一方で、追いつめられると強力な顎で噛みついてくることがあります。とくに口先が鋭く、噛まれると出血を伴うこともあるため、素手で扱うのは避け、網やグローブを活用しましょう。

スッポンには「スッポンに嚙みつかれたら雷が鳴るまで離さない」という言い伝えがあります。実際にはずっと噛み続けることはありませんが、それほど強い力で噛みつくのです。ニホンスッポンにとっては、自分を守るための行動であり、むやみに攻撃するわけではありません。

甲羅が柔らかく、歯がない

一般的なカメと違い、ニホンスッポンの甲羅は骨と皮膚が合わさったような構造で、柔らかく弾力があります。表面も滑らかで、流線形で水の抵抗を受けにくくなっています。水中での泳ぎを効率的にするために進化した特徴です。

口には歯はありませんが、顎の力が強く餌をかみ砕いたり、鋭く切り裂いたりすることができます。口の上には突き出た鼻があります。くちばしを伸ばし、鼻先だけを水面にだすことで、陸上の外敵に気づかれずに呼吸できるのです。

ニホンスッポンの生活サイクル

ニホンスッポンは昼行性の生き物ですが、警戒心が強く早朝や夕方の方が活動的です。特に夏場は陽射しを避けて朝晩に動き、昼間は水中の陰で休んでいることが多く見られます。

冬になると水温の低下とともに冬眠に入り、泥の中でじっと春を待ちます。冬眠から明けると繁殖期です。交尾が成功すると、水辺に掘った穴に、15~20個の卵を産みます。

ニホンスッポンを野外観察や飼育してみよう

自宅近くの川や用水路を探してみよう

ニホンスッポンは小川・用水路・ため池などで観察できます。意外にも都市部の水辺でもみられることが少なくありません。

観察の際は、遠くからスッポンの姿を見つけられるかがポイントです。非常に憶病なので、近づきすぎるとすぐに隠れてしまいます。遠目から陽の当たる石や護岸コンクリートを探すと、日光浴している個体が見つかるかもしれません。もし見つけても、むやみに近づかず、そーっと見守りましょう。

ニホンスッポンはどこで入手できる?値段は?

ニホンスッポンはペットショップ、爬虫類専門店で入手できます。養殖された個体が流通しているので、ベビーサイズであれば1,000~2,000円、成長した個体であれば3,000〜5,000円が相場です。希少なアルビノ個体はさらに高額になります。

ニホンスッポンは東京都や福井県などでは絶滅危惧種、準絶滅危惧種に指定されています。そのほかの地域では採集しても問題ありませんが、養殖個体が流通しているので養殖個体を購入するようにしましょう。

飼育環境を整えよう

ニホンスッポンの飼育にはある程度の設備が必要です。60cm以上の広さがある水槽を用意し、ろ過機・ヒーター・バスキングライト・紫外線ライトなどを用意しましょう。

水温は20〜25℃を保ち、バスキングライトで甲羅干しできるようにしておくことが大切です。隠れ家になるようなシェルターや水草を導入すると、臆病な性格のスッポンも安心して過ごせるでしょう。餌やりは1日1回〜2日に1回程度で十分です。カメ用の人工餌料・乾燥エビ・冷凍赤虫が与えやすいです。

飼育の際の注意点

ニホンスッポンは複数で飼育すると、ケンカをして噛みつき合います。もともと顎の力が強いので、大きなケガを負う可能性が高いです。よほど大きな水槽でない限り、必ず単独で飼育するようにしてください。

ニホンスッポンは長寿な生き物で、中には100年以上生きる個体もいると言われています。「大きくなりすぎた」「飼育に飽きた」といった理由で、池や川に放流するのは絶対に止めてください。飼育をする前に、最後まで飼育できるのか、最終的に大きなスペースを用意できるのかなど、十分に考えた上で飼育を始めましょう。

ニホンスッポンの魅力に迫ろう

ニホンスッポンはその見た目や『噛みつく』というイメージから、怖がられたり敬遠されたりすることもあります。実際には臆病で慎重な性格の持ち主であり、水辺の生態系にとって大切な役割を果たしている生き物です。

一見地味な存在に見えるかもしれませんが、知れば知るほど奥深い魅力を秘めたニホンスッポン。この機会にぜひ、野外での観察や飼育をしてみてはどうでしょうか。改めてニホンスッポンの魅力に気が付くはずです。

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のべじ

のべじ

元水族館職員の生き物好きライター。ダイビングガイド、農家などの経験を活かし生き物・自然・家庭菜園・料理など、さまざまな分野でライティングしています。

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