身近な魚の代表、鯉とはどんな魚?代表的な種類も紹介

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まとめ
  • 鯉は奈良時代から親しまれてきた、人とかかわりの深い魚
  • 一部の個体を除いて、実は鯉は外来魚で問題にもなっている
  • 近年は海外でニシキゴイが高く評価され、非常に人気がある

鯉(コイ)は、川や池で見かけることの多い身近な魚です。古くから日本文化に深く根ざしてきた存在で、観賞用としてはもちろん、釣りのターゲット、食用としても利用されてきました。美しく改良された錦鯉は海外でも高い評価を受けるなど、鯉の魅力は実に多彩です。

今回は、そんな鯉の基本的な特徴から、歴史的背景・代表的な種類まで分かりやすく紹介します。鯉に興味を持っている人はもちろん、少しでも生き物に興味がある人はぜひ参考にしてください。

目次

生息地や食性など鯉の基本情報

鯉の生息地や食性などの基本情報を紹介します。身近な存在でありながら、意外と知らない事実も多いのではないでしょうか。

鯉はどんな魚?生息地や生息環境は?

鯉はコイ科に属する淡水魚で、世界中の温帯地域に広く分布しています。もともとは東アジアを中心に生息していたと考えられています。人の手によって世界各地に移入され、現在ではヨーロッパや北米でも見られるようになりました。

日本では古来より生息している鯉(ノゴイ)と、外来の鯉(ヤマトゴイ)が生息しています。ノゴイは生息地が限られ数も少なく、存在自体もあまり知られていません。2種類には遺伝的にわずかな違いがあるだけで、池や川でよく見かけ、一般的に『鯉』と呼んでいる魚はヤマトゴイを指すことがほとんどです。

自然下では、川の中流域・湖・池・沼などのゆるやかな水流を好みます。水温の変化や水質の悪化にも比較的強く、都市部の公園やため池などでも元気に暮らせるほど順応性の高い魚です。

どれくらい大きくなる?寿命は?

鯉の大きさは環境や種類によって差がありますが、一般的には60cm前後まで成長します。なかには1mを超えるような大型個体も存在し、長寿な魚としても知られています。

寿命は、飼育下で適切な環境を保てば、20年以上になることも多いです。中には50年以上生きたという記録もあり、飼育者にとってはまさに『家族の一員』として長く付き合える魚といえるでしょう。

鯉は雑食性でいろいろなものを食べる

鯉は雑食性の魚で、水草・昆虫・ミミズ・小型の甲殻類・魚の卵など、幅広い食物を摂取します。飼育下では配合飼料に簡単に慣れ、パンくずなども好んで食べます。

鯉は身体が大きく、食べる量も多いです。水底生物など水をきれいにする生き物や、水草を多く食べることで水質悪化に影響を及ぼすともいわれ、問題となっています。実際『世界の侵略的外来種ワースト100』に入っているほどです。

鯉は胃がない無胃魚

鯉は胃を持たない『無胃魚(むいぎょ)』です。食べ物は口から入るとそのまま腸に送られて消化されるため、少量ずつ頻繁に食事を摂る習性があります。

この特徴は飼育時にも関係し、一度に大量の餌を与えるよりも、こまめに与える方が体調を維持しやすくなります。また、胃がないことで消化スピードが速く、排泄物も多くなるため、水質管理が重要です。

鯉の歴史と文化

orange koi fish

鯉はかなり古くから親しまれてきた魚であり、私たちの生活に深く関わっています。鯉の歴史や文化について理解していきましょう。

奈良時代から食されてきた魚

鯉は奈良時代にはすでに食用として利用されていました。古代の文献『日本書紀』『万葉集』にも鯉に関する記述があり、昔から人々の生活に深く関わってきたことが分かります。高級食材として、将軍への贈り物として扱われていた時代もあるようです。

特に内陸部では貴重なたんぱく源として重宝されていました。冬のたんぱく源確保のために、江戸時代には養殖が始まったとされています。祝いの席では鯛の代わりとして用いられたり、地域ごとの郷土料理にも多く取り入れられたりしてきました。

古くから観賞魚として人気の魚

平安時代には貴族たちが庭園に池を造り、そこに鯉を放して楽しんでいたといわれています。これが観賞魚としての鯉の始まりと考えられています。

その後、江戸時代には『ニシキゴイ』と呼ばれる突然変異の色変わり個体が人気を集め、品種改良が盛んに行われるようになりました。

近年は海外の人から注目を浴びる魚

ニシキゴイは海外では『スイミングジュエリー(泳ぐ宝石)』とも呼ばれ、ヨーロッパ・アメリカ・アジア諸国で非常に高く評価されています。海外では1匹数百万円以上で取引される個体もあり、高額なニシキゴイは億の値がくことも。日本の伝統的な観賞魚として高い人気を誇ります。

欧米では池のある庭が人気で、そこでニシキゴイを飼育する人が多いです。アジア諸国でニシキゴイは『縁起の良い魚』『成功の象徴』として扱われることが多く、富裕層や企業の池などで多く見かけます。

釣りの対象魚としても人気

鯉は釣りの対象としても非常に人気のある魚です。国内では『ぶっこみ釣り』や『吸い込み仕掛け』『浮き釣り』といったさまざまな釣法で楽しめます。ため池や小川など身近な環境でも釣れるので、子どもから大人まで楽しめる魚といえるでしょう。

自然下で育った鯉はパワーがあり、釣りあげる際のやり取りは非常にスリリングです。また中には1mを超える個体もいるので、大型個体だけを狙う釣り人も少なくありません。

鯉にはどんな種類がいる?

鯉と一口にいっても、実は複数の種類が含まれています。鯉の種類にはどんなものがいるのか紹介します。

ノゴイ(マゴイ)

ノゴイ(野鯉)は日本に古くから生息する在来種の鯉で、別名『マゴイ』とも呼ばれています。体色は黒褐色で、光沢のない地味な色合いです。外来の鯉(ヤマトゴイ)と比べて体高が低く、丸太のような体型が特徴です。

現在では外来の鯉との交雑が進み、純粋なノゴイは少なくなっています。琵琶湖や霞ケ浦などごく一部の水域にしか残存していないと考えられています。

ヤマトゴイ

ヤマトゴイは、もともとユーラシア大陸から日本へ移入された外来系統の鯉のことです。鯉の養殖が盛んな、奈良県の大和郡山市が名前の由来とされています。ノゴイと比べて体高が高いのが特徴です。

現在日本各地の池や川で見かけるものや、飼育されている鯉のほとんどはこのヤマトゴイと考えられます。鯉は日本人と深く関わりがある魚ですが、現在関わっている鯉は実は外来魚なのです。

ニシキゴイ

Karpa koi

ニシキゴイは、移入種であるヤマトゴイをもとに、日本国内で改良を重ねて生み出された観賞用の鯉です。江戸時代末期から明治時代にかけて、新潟県の山古志村を中心に選別交配が行われ、赤・白・オレンジなどさまざまな体色や模様を持つ個体が誕生しました。

本来は食用だった鯉の突然変異に目を付けた養殖家たちの努力により、ニシキゴイという美しい観賞魚としてのジャンルが確立されたのです。現在では『泳ぐ宝石』や『スイミングジュエリー』と称され、国内外で高い人気を誇っています。

紅白・昭和三色・大正三色・浅黄・金銀鱗など、その品種のバリエーションは多彩で、世界各国で品評会も開催されています。ニシキゴイは単なる観賞魚にとどまらず、日本が誇る芸術的な魚として文化的価値も高く評価されているのです。

ドイツゴイ

ドイツゴイは19世紀にドイツで品種改良された鯉で、体表のウロコがほとんどないか、ごく一部にだけ大きな鱗があるのが特徴です。もともとは鱗がないことで調理しやすいようにと考え、改良されたものです。

日本には明治時代末期から大正時代にかけて輸入されましたが、食用としては広まりませんでした。ウロコの少なさから体表が滑らかに見えるため、錦鯉の美しさを際立たせる品種として重宝されています。

鯉の魅力に迫ろう

orange and white fish in water

鯉は身近な魚ですが、古くから人との関わりを深め、文化・芸術・趣味の分野にまで広がった特別な存在です。お祝いの席での鯉料理、美しさを追求できる錦鯉の世界、釣りでの手応えある勝負など多くの魅力にあふれています。

『身近だけど奥深い魚』それが鯉の最大の魅力ではないでしょうか。この記事をきっかけに、今までとは違った視点で鯉を見てみてください。

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のべじ

のべじ

元水族館職員の生き物好きライター。ダイビングガイド、農家などの経験を活かし生き物・自然・家庭菜園・料理など、さまざまな分野でライティングしています。

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