最強のハンター!カマキリの卵から成虫までの成長・生態・体色の秘密

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まとめ
  • 卵から成虫まで一年で完結するライフサイクル
  • 複眼と偽瞳孔で高精度に獲物を狙える
  • 緑型・褐色型など同種でも異なる体色が存在

草むらや公園で見かけるカマキリは、鋭い鎌の前脚で獲物を仕留める迫力ある昆虫です。1年で卵から成虫へと成長し、産卵して生涯を終えるという、短い一生のなかで繰り広げられる濃密な成長過程を持つカマキリ。

緑型や褐色型といった体色の違いや、数回の脱皮を経て姿を変える成長の工夫、繁殖期の驚くべき行動など、驚きのポイントが満載です。身近にいながら奥深い、カマキリの世界を一緒にのぞいてみましょう。

目次

鋭い鎌を持つ肉食昆虫カマキリ!

草むらで見かけるカマキリは、鋭い鎌のような前脚で獲物をとらえる迫力あるハンターです。

しかし、その一生をたどると、秋に卵を産み、冬は卵鞘で過ごし、春に孵化して夏に成虫となり、秋には命を終えるという、短い生涯のなかで繰り広げられる一連の成長過程があります。

さらに、複眼や偽瞳孔を使った巧みな狩り、緑や褐色に分かれる体色の多様性、繁殖期の驚くべき行動など、観察するほどに奥深い生態が見えてきます。身近な自然のなかで出会える昆虫だからこそ、その生態を知ることで観察の楽しみは一層広がるでしょう。

獲物を逃さない鎌と俊敏な動き

カマキリの最大の特徴は、獲物を捕らえるために進化した鎌状の前脚です。トゲの並んだ前脚で瞬時に獲物を挟み込み、逃さず固定します。

その動きは非常に素早く、昆虫界でもトップクラスのハンターといえる存在です。また、カマキリは首を左右に大きく回せるため、周囲の状況を広く確認できます。草むらや枝に潜み、獲物が近づいた瞬間に一気に飛びかかる『待ち伏せ型』の捕食スタイルも見どころです。

日本で見られるカマキリたち

日本にはいくつかのカマキリが生息しており、地域や環境によって見られる種類に違いがあります。代表的な3種をまとめました。

種類特徴生息地
オオカマキリ国内最大種
緑色型・褐色型の両方が存在
林縁の草地などに生息
チョウセンカマキリやや小型
全国に広く分布
畑・公園・河原など、開けた場所でよく見られる 
ハラビロカマキリ体幅が広い
緑色型が多い
林縁や樹上で見られる

同じ『カマキリ』でも種類ごとに大きさ・体型・暮らす場所が異なります観察するときは、体の形やサイズ・生息場所の違いに注目すると、種類の見分けがしやすくなり、自然観察がさらに楽しくなります。

春に孵化して成虫になるカマキリの一生

カマキリの一生はおよそ1年。秋に産み付けられた卵鞘(らんしょう)で冬を越し、春に小さな幼虫が一斉に誕生します。卵鞘の役割と飼育のポイント、そして孵化から成虫までの成長過程を見ていきましょう。

卵鞘(らんしょう)の役割と観察できる場所

秋、カマキリのメスは草の茎や木の枝に卵鞘を産み付けます。発泡スチロールのような外殻に包まれ、なかには数百個の卵が収まっており、寒さや捕食者から卵を守る役割を担っています。

冬の間はこの状態で静かに過ごし、春になると一斉に幼虫が孵化します。卵鞘を観察するなら、公園・畑・庭先の低木などが見つけやすい場所です。飼育したい場合は、必ず観察ケースに入れて直射日光を避け、乾燥しすぎないように管理しましょう。

孵化後はショウジョウバエなど小さなエサが欠かせないため、事前の準備も大切です。

春の孵化から秋の産卵までのライフサイクル

春になると卵鞘から小さな幼虫が次々と姿を現します。カマキリは『不完全変態』の昆虫で、生まれたときから大人とほぼ同じ姿をしており、数回の脱皮を繰り返して成長します。

脱皮は体を枝などにぶら下げながら行い、脱ぎ捨てた皮が残ることも観察ポイントのひとつ。夏には立派な成虫となり、秋には交尾や産卵を行い寿命を迎えます。

よくある失敗談として「子どもが卵鞘を机の引き出しにしまい忘れ、春に数百匹のカマキリが一斉に孵化!」という、なんとも衝撃的なエピソードも。飼育する場合は必ずケースで管理することが重要です。

繁殖期に見られるカマキリの『共食い』

秋になるとカマキリは繁殖期を迎え、オスとメスの交尾が始まります。このとき、メスが交尾中あるいは交尾後にオスを捕食してしまうことがあり『性的共食い』と呼ばれています。

メスにとっては産卵のための栄養補給につながり、卵の生存率を高める効果があるともいわれています。一方のオスは食べられないよう、後ろから素早く交尾を試みたり、警戒しながら接近したりと工夫を凝らします。

それでも多くのオスが命を落とすこともあり、繁殖のために命をかける姿は、自然界の厳しさを象徴しているといえるでしょう。

カマキリは寄生されたハリガネムシに操られて水に飛び込む!?

カマキリに寄生するハリガネムシという寄生虫がいます。ハリガネムシはカマキリのお腹の中で成長し、繁殖のためにカマキリを操り、水中に誘導すると考えられています。

ハリガネムシは水中にカマキリが入ると体外に脱出し、水に落ちたカマキリが魚などの餌になることで、生態系の循環を円滑にする役割を担っているのだとか。

まれに道路やガラスの上にカマキリが出てくるのは、ハリガネムシに操られたカマキリが、水面と誤認してしまうからともいわれています。

獲物を見極めるカマキリの複眼と偽瞳孔のしくみ

三角形の頭に大きな眼を持つカマキリ。その丸く突き出た眼は、バッタなどのわずかな動きも敏感に捉え、狩りの成功率を高めています。一見するとただの黒い眼に見えますが、実は非常に複雑な構造を持っています。

複眼と広範囲を捉える視野のひみつ

カマキリの眼の表面をよく見ると、小さな模様がびっしりと並んでいるのが分かります。電子顕微鏡で観察すると、その一つひとつは直径およそ0.05mmほどの六角形をした『個眼(こがん)』と呼ばれるもの。

カマキリの大きな眼は数万個の個眼が集まってできており、これを『複眼』と呼びます。それぞれの個眼が一部分の光を受け取り、全体として広い視野を確保できる仕組みです。

この構造によって、カマキリは前方だけでなく周囲の動きも同時に把握し、さらに立体的に獲物との距離を測定することを可能としています。

黒い点のように見える偽瞳孔

カマキリの複眼を正面から見ると、黒い点が浮かんで見えることがあります。これは『偽瞳孔』と呼ばれる現象で、複眼の一部が光を吸収して黒く見えることによって生じます。

観察者の位置によって黒い点の場所が変わるため、まるで常にこちらを見ているように感じられるのです。また、カマキリは獲物との距離を測る際、頭を左右に揺らす独特の動きを見せます。

偽瞳孔とあわせて、この行動もまた捕食の精度を高めるための工夫だと考えられています。

カマキリの体色は同じ種類でも個体によって違う

同じ種のカマキリでも、緑色の個体と褐色の個体が存在します。体色は環境に適応する保護色としての役割を持ち、また成長過程や脱皮の回数によって変化することもあります。

ここでは、個体差としての体色と、成長段階での変化について見ていきましょう。

緑色型と褐色型が存在する

カマキリの体色には、鮮やかな緑色のものと褐色のものが存在します。

これは『同じ種のなかでも緑型と褐色型の両方がいる』ことを意味し、環境に合わせて目立ちにくくなる保護色の役割を果たしています。たとえば緑の個体は葉の上で目立たず、褐色の個体は枯れ草や土に溶け込みやすいのです。

繁殖期には体色の出方に傾向が見られることもあり、遺伝的要因と環境要因の両方が関与していると考えられています。

成長過程と脱皮による色の変化

カマキリは幼虫から成虫になるまでに6〜7回の脱皮を繰り返します。この過程で体色が変わる場合があり、とくに幼虫期には緑から褐色へ変化することも。

ただし逆に、褐色から緑色に戻る現象は限られた条件下でしか起こりません。そして最終脱皮(終齢)を迎えると体色は固定され、それ以降は変わらなくなります。つまり自由自在に色を変える』のではなく『脱皮や成長の段階で体色が決まっていく』のです。

また、脱いだ皮(脱皮殻)は自然のなかではそのまま土に帰ることが多く、生態系の一部として無理なく循環します。自然な環境下では、取り除く必要はありませんが、飼育ケースに脱皮殻が残っていると、幼虫の動きを妨げたり、次の脱皮に支障をきたすことがあるので注意しましょう。

カマキリの生態を知れば自然観察がもっと楽しくなる

カマキリは、春に卵鞘から孵化し、数回の脱皮を経て夏に成虫となり、秋には交尾と産卵を行って一生を終えるという、はっきりとした成長サイクルを持つ昆虫です。

その過程で見られる脱皮の様子や、メスがオスを食べてしまう繁殖期の行動は、自然界ならではの厳しさも感じさせます。卵鞘を持ち帰って飼育すれば、孵化から成長までを身近に体感できます。

観察すればするほど新しい発見に出会える昆虫です。カマキリの生態を知ることで、身近な自然観察がぐっと奥深いものとなり、子どもから大人まで楽しめる学びの場になるでしょう。

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ゆかりーぬ

ゆかりーぬ

レオパとニシアフを飼っている爬虫類好きライター。実家ではチワワ2匹と生活していた。
動物や神社仏閣などニッチなジャンルの記事執筆から、インタビューや飲食店取材も行う。好奇心くすぐる記事をお届けします。

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