- ペットの冬眠は基本的にNG。目覚めず死んでしまうことも
- ペットが冬眠しようとしているサインを知っておこう
- 冬眠対策には『室温の維持』と『適切な食事量』が重要

◆執筆・監修:獣医師プロフィール
監修者
ttm 医師
岩手大学で動物の病態診断学を学び、獣医師として7年の実績があり、動物園獣医師として活躍中。動物の病態に精通し、対応可能動物は多岐にわたる。
一部の生き物たちは、冬眠によって越冬します。寒く食料も乏しい冬を、長い眠りによってやり過ごすことで、生存確率を上げようとします。
人間の飼育環境下にあるペットも、環境次第では冬眠してしまうことを知っていますか?しかしペットの冬眠はリスクが高く、一般的な飼育では推奨されていません。
今回は、ペットの冬眠を防止するべき理由や、防ぐためのポイントを紹介します。冬眠の危険性を学び、ペットが過ごしやすい環境を整えていきましょう。
生き物はなぜ冬眠をするの?基本を解説!

そもそも、なぜ生き物たちの一部は冬眠をするのでしょうか?ペットの冬眠について解説する前に、冬眠の基本的な知識を学んでいきましょう。
冬眠の理由や背景を知ることで、ペットの冬眠の必要性を考える力も身につきます。
食料の調達が困難だから
生き物が冬眠する大きな理由としてあげられるのが、食糧不足です。
たとえばクマは、冬眠する動物の代表格ですよね。クマは本来『草食に偏った雑食性』の食性で、山菜や果実・木の実などを主食とします。
しかし冬は植物が枯れたり雪に覆われたりして、食べ物が激減します。そのため実りが豊かな時期に『ドカ食い』をして体に栄養を蓄え、冬眠の省エネモードで春を待つわけです。
同じ理由でシマリスなども冬眠をしますが、シマリスは『餌を大量に巣に貯蔵する』タイプの冬眠スタイル。ドカ食いはせず、冬眠中もたまに起きて溜めた木の実を食べています。
このように食糧不足という理由でも、動物によって冬眠スタイルは異なるのです。
寒さへの対処が困難だから
生き物が冬眠する理由には、寒さへの対処が困難であることもあげられます。
とくに小動物は、体の大きな動物よりも体温調節が苦手な傾向に。たとえ恒温動物であっても、生命維持のために冬眠することがあります。
この場合の冬眠は、外気温と体温の差をできるだけなくすことが目的です。代謝を下げることで、呼吸数や心拍数、体温を低下させ、体温を外気温に合わせることで体力消耗を防ぎます。
冬眠は単純な『春を待つ手段』ではなく『命を守る行動』に他ならないのです。
ペットを安易に冬眠させるのが危険な理由

野生動物にとっては、重要な生存戦略である冬眠。しかし飼育下のペットの場合は、冬眠は避けるべきという考えが一般的です。
ここでは、ペットを安易に冬眠させてはいけない理由を紹介します。冬眠の危険性を踏まえ、適切な飼育環境につなげていきましょう。
寿命が短くなる可能性がある
ペットを冬眠させると、寿命が短くなる可能性があります。
冬眠中は代謝が落ちて、呼吸数・心拍数・体温のすべてが下がります。この状態は、いわば『仮死状態』。省エネ状態と呼べば耳障りが良いですが、実際は体に大きな負担がかかっている状態です。
野生動物でさえ、好き好んで冬眠をしているわけではありません。餌や寒さなどの懸念がなければ、通常通りの生活を送れますし、そのほうが生命のリスクを軽減できます(実際に冬眠明けの動物の多くは、体力低下や空腹でフラフラな状態です)。
体への負担が高い冬眠では、ペットが眠りから目覚めずに死んでしまうこともあるのです。
餓死する可能性がある
冬眠したペットの死因の一つが、餓死です。
野生生物の冬眠では、クマならドカ食い、シマリスなら貯蔵のように『冬眠のためのそれぞれの餓死対策』をおこないます。
しかし飼育環境下では、通常通りの給餌量の状態で突然冬眠に入ってしまいます。冬眠に必要なエネルギーを確保しないまま仮死状態になってしまうため、野生動物の冬眠よりも餓死の危険性が高まるのです。
冬眠で省エネ中の動物でも、生きている限り一定のエネルギーは必要になります。眠りの最中にエネルギー切れを起こしてしまうと、そのまま目覚めることはありません。
飼育環境に要注意!冬眠の危険性があるペット

ここでは、比較的飼育者が多い生き物のなかで『冬眠の危険性があるペット』を紹介します。迂闊な冬眠を防止するためにも、生き物ごとの特徴について把握しておきましょう。
シマリス|リス類で唯一冬眠する種
実は、リス類で冬眠する種はシマリスのみ。シマリスの冬眠では餌を巣に集めるため、普段の食事量は変わりません。
冬眠中のシマリスは、体温を下げて生命維持のエネルギー消費量を抑えますが、冬眠には日照量の減少や温度の低下などの周辺情報が複雑に関わります。飼育下では、これらの条件がそろわず、単なる『低体温症』になるため大変危険です。
ハムスター|冬眠が命の危機に直結
野生のハムスターの一部は生存戦略として冬眠をしますが、ペットのハムスターの冬眠は『疑似冬眠』。いわば低体温症と同じであり、命の危険がある状態です。
すぐに死んでしまうわけではありませんが、発見次第体を湯たんぽなどでゆっくり温めたうえで、動物病院の受診が求められます。

カメ(水棲種のカメ)|変温動物は温度変化に要注意
変温動物であるカメは、外気温が下がると体温を保てなくなります。日本など寒冷期のある地域の水棲種のカメは、飼育環境の温度低下によって、自然と冬眠するリスクがある生き物です。
冬眠場所は生活空間によりさまざまで、落ち葉の下や穴の中などで眠りにつきます。水中で冬眠する際は、時々浮上して呼吸をします。
カエル|10℃以下で冬眠のリスクアップ
カメと同じく変温動物のカエルも、気温の低下に合わせて体の機能が下がります。
とくに日本のカエルは、気温が10℃以下になると冬眠する傾向に。哺乳類と同様に失敗すると命を落とす危険があるため、室温の維持が求められます。
ヘビ|中途半端な温度は苦しみも増す
ヘビが冬眠する室温は、おもに5~10℃程度。活動量が減り、人目につかない場所にじっと潜んで冬眠します。
ヘビにとって、生活や消化に適した室温は23~28℃程度です。これが15℃程度しかないと『冬眠も消化もできず、ただ体力を消耗していくだけ』という苦しい状態に。
ヘビを含むすべての生き物の飼育では『冬眠しない温度』ではなく『適温』で飼育することが重要です。

要注意!ペットの「冬眠サイン」

ここでは、ペットが冬眠を始めようとしているサインを紹介します。
ペットの冬眠は予防が何より肝心!日頃から適切な飼育はもちろん、寒い季節にペットの行動に違和感を抱いたら、早めの対策につなげていきましょう。
じっとしている時間が長くなった
ペットがじっとしている時間が増えたら、冬眠の兆候かもしれません。
冬眠ではエネルギーを節約するために活動量が低下するため、普段よりも元気がなく、反応が鈍くなる傾向にあります。呼吸数や心拍数の低下なども要確認です。
頬や巣穴に餌を溜め込んでいる
一部の動物は、冬眠前に食べ物を貯蔵する習性を持ちます。
普段よりも明らかに食事量が増えたり、頬や巣穴に餌を溜め込んでいたりする場合は、冬眠のサインと考えましょう。とくに普段食への関心が低い個体の食事量増加は、わかりやすい兆候です。
ペットの冬眠を防止するポイント

ここでは、ペットの冬眠を防止するポイントについて紹介します。
ペットの飼育に慣れていない人は、普段通りの飼育をしているだけでも意図せず冬眠させてしまう場合があります。ペットの特性を把握したうえで、健やかな飼育環境を維持していきましょう。
動物にあった適切な温度環境を維持する
ペットの冬眠を防止するためには、生き物ごとに適した室温を維持することが大切です。
たとえばハムスターにとっての適温は20~25℃。これは夏でも冬でも変わりません。ハムスターは適温を10℃下回ると、冬眠のリスクが上がるといわれています。
ケージの置き場所によっては、人間の体感以上に温度が下がっていることも。電化製品はもちろんペットヒーターなども活用しながら、冬眠の必要ない室温をキープしてください。
日頃から、十分な栄養と水分を補給する
本来、冬眠の最大の要因は『食糧難』です。
ペット飼育でも、日頃から十分な栄養と水分を補給することで冬眠のリスクを防げます。成長段階に合わせて適量を与えられるように、体重・体調管理への意識を高めましょう。
餌のパッケージには適量が記載されていますが、同じ種類でも個体によってベストな量は異なるものです。不安であれば動物病院で測定してもらいつつ、給餌量の指導を受けると良いでしょう。
ペットに冬眠は危険!適切な環境づくりを心がけよう

今回は、ペットを冬眠させる危険性や、冬眠を防ぐための環境づくりについて紹介しました。
生き物を飼育している専門機関や施設では、学問や研究を目的とし、意図的に冬眠を取り入れる場合があります。しかしその場合も、必要な給餌量や環境などを把握したうえで、計画的におこなうことが一般的です。
専門機関による冬眠は、一般人の『アクシデントとしての冬眠』とは目的も性質も異なります。ペットの冬眠は体力や寿命が削られるリスクが高く、基本的には不必要です。
愛玩用のペットを、命を落とす危険まで冒しながら冬眠させる必要はありません。万が一冬眠してしまったときはもちろん、ペットに冬眠の兆候が見えたときも、楽観視せずに動物病院を受診しましょう。




