- 南極は、南極大陸と南極海という異なる環境に分けられる
- 南極海には哺乳類が豊富に生息している
- 南極で生きる動物たちは、厚い皮下脂肪・優れた潜水能力・群れでの協力行動など、それぞれが生き抜くための特別な能力を身につけている

地球上で最も過酷な環境といわれる南極。雪と氷に覆われた白銀の世界には、本当に哺乳類は生息していないのでしょうか?
この記事では、南極大陸に哺乳類がいない理由や南極で暮らす魅力的な動物たちを図鑑のように紹介します。
日本の反対側にある南極と南極に生息する動物について学びを深めてみましょう。
南極大陸には哺乳類がいないの?

南極と聞くと一つの地域として捉えがちですが、実は南極大陸と南極海という異なる環境に分けられます。南極大陸とは、厚い氷床に覆われている陸地部分のことを指します。一方、南極海とは、南極大陸を囲む海域のことです。
南極はどんなところなのでしょうか?
陸地は過酷な環境のため哺乳類がいない
南極大陸に哺乳類が生息できない理由は、その極限的な環境条件にあります。南極大陸の年間平均気温は、−50℃以下。まさに極寒の世界です。このような環境下では、体温を維持するだけでも膨大なエネルギーが必要となります。
さらに深刻な問題は食料不足です。陸上には植物がほとんど育たず、わずかにコケなどが見られる程度です。植物が育たないということは、草食動物が生きられず、結果として肉食動物も生息できないため、食物連鎖が成立しない環境なのです。
氷床の厚さは平均2000m以上、最も厚いところは4800mにもなり、陸地の97%が厚い氷床に覆われています。こうした過酷な環境と食料不足のため、哺乳類が南極大陸で生存することを不可能にしているのです。
南極海には哺乳類が豊富に生息
南極の陸上とは対照的に、南極海にはクジラやアザラシなどの海性哺乳類が生息しています。南極海が哺乳類の生息を可能にしている最大の理由は、豊富な食糧源です。海中には多くのプランクトンやオキアミが生息しており、これらが海洋生態系の基盤になっています。
南極海の海水温は0℃前後と非常に冷たいものの、−50℃以下にもなる陸上の気温と比べるとはるかに温暖な環境といえます。海水は氷点下でも凍結しにくい性質があるため、海性哺乳類たちは海中でも活動することができるのです。
南極にナンキョククマはいない
北極には、ホッキョクグマという大型の陸上哺乳類が生息していますが、南極にナンキョクグマは存在していません。単に名前の問題ではなく、南極と北極の根本的な環境の違いによるものです。
北極圏は、ユーラシア大陸や北米大陸と地続きになっています。そのため、ホッキョクキツネやトナカイなどの陸上哺乳類が生息し、鳥類も飛来しているため、食物連鎖が成立しているのです。
その一方、南極大陸はどの大陸からも離れており、孤立しています。陸上には植物がほとんど育たず、陸上哺乳類は生息できないため、食物連鎖が成立しません。
北極と南極は、どちらも極地という共通点はありますが、地理的状況や環境は大きく異なることを理解しておきましょう。
南極に生息する動物一覧

南極には、その過酷な環境に適応できた特別な動物たちが存在しています。主な動物をグループ分けすると、アザラシ・ペンギン・クジラがあげられます。
ここからは、南極で暮らす個性的な動物をグループに分けて紹介します。
南極の海性哺乳類|アザラシ

南極海を中心に複数の種が生息するアザラシ類。アザラシは海性哺乳類であり、優れた潜水能力を持ち、魚やオキアミ・イカなどを捕食します。
南極のアザラシたちは、それぞれ異なる特徴や生息域を持ち、南極海の豊かな生態系の一部を形成しています。
最も南に生息する【ウェッデルアザラシ】

ウェッデルアザラシは、南極大陸沿岸に生息し、すべてのアザラシ類で最南端に生息するアザラシとして知られています。
体長は、オスが約2.9m、メスが約3.3m。水深約600mまで潜ることができ、最大約45分間もの潜水が可能です。
ゾウのような鼻の【ミナミゾウアザラシ】

ゾウアザラシには、キタゾウアザラシとミナミゾウアザラシの2種が存在します。ミナミゾウアザラシのオスの体長は、最大6mにもなり、アザラシ界で最大、さらには鰭脚類の中で最も巨大な海獣です。
その名前の由来は、成熟したオスがもつゾウの鼻のような大きな鼻です。繁殖期にはこの鼻をふくらませ、大きな音を出して他のオスを威嚇したり、メスを引きつけたりします。
南極の鳥類|ペンギン

ペンギンは南極を代表する鳥類です。飛ぶことはできませんが、水中では時速数10kmで泳ぐことができます。
陸上でよちよちと歩く姿が愛らしく、南極のシンボル的存在です。南極には数種類のペンギンが生息し、それぞれ独自の特徴を持っています。
ペンギン界最大【コウテイペンギン】

コウテイペンギンは、体長約100cm〜130cm、体重約20〜45kgにもなる、ペンギン界で最大の種類です。別名『エンペラーペンギン』とも呼ばれています。
南極大陸の沿岸部と定着氷上で繁殖を行い、極寒の冬に繁殖をする特異な生態をもっています。群れで身を寄せ合い、厳しい寒さに耐えながら子育てをする姿は感動的です。
求愛は小石で【アデリーペンギン】

アデリーペンギンは、体長約60〜70cm、体重は約5kgほどの中型のペンギンです。目のまわりの白いリング状の模様が特徴です。
繁殖期にはオスが小石を集めて巣を作り、小石をメスにプレゼントして求愛をするという興味深い行動が見られます。好奇心旺盛な性格で、人間に近づいてくることもあります。
最高速度は時速35km!【ジェンツーペンギン】

ジェンツーペンギンは、体長約75〜90cm、体重約5〜8.5kg。コウテイペンギン、キングペンギンに次いで3番目に大きなペンギンです。
ペンギンの中で最も速く泳ぐことができ、最高速度は時速35kmにも達します。両目をつなぐ帯状の白い模様と、オレンジ色のくちばしと足が特徴的です。
あごひげのような模様の【ヒゲペンギン】

ヒゲペンギンは、体長約70〜75cm、体重は約3〜5kg。顎の下に細く黒い線状の羽毛があり、ヒゲのように見えることからこの名前がつけられました。
岩場や急斜面でも巧みに移動し、コロニーを形成して繁殖します。鳴き声も特徴的で、甲高い声で仲間とコミュニケーションをとっています。
南極の大型海性哺乳類|クジラ

南極海には、夏季になると多くのクジラが回遊してきます。南極海の豊富なオキアミを求めて、長い距離を移動してくるのです。
クジラは地球上最大の動物グループであり、南極海はその重要なエサ場となっています。
英名はコブ状の背中【ザトウクジラ】

ザトウクジラは、体長最大19m、体重は最大48tにも達します。その英名『Humpback Whale(コブ状の背中)』は、頭部と背びれにコブ状の隆起があることに由来しています。
体長の3分の1にもなる非常に長い胸びれをもつことも特徴のひとつです。夏季には南極海でエサを食べ、冬季には温暖な海域に移動し繁殖します。
夏季には北上【ミンククジラ】

ミンククジラは、体長約8〜10m、体重は最大9tにもなります。鼻先が細く尖っているのが特徴です。流線型の体と背びれの後方に特徴的な灰色の模様を持っています。
南極海では夏季にエサを食べ、冬季には温暖な海域に北上していきます。素早く泳ぐことができ、時には船に近づいてくることもあります。
世界最大の哺乳動物【シロナガスクジラ】

シロナガスクジラは、体長約25m〜30m以上、体重は約100t〜200tにもなる、地球最大の動物です。心臓だけで約180kg、舌だけでも約2.7tの重さがあります。
かつては乱獲により個体数が激減しましたが、現在は保護されています。その巨大な体と優雅な泳ぎは、海の王者と呼ぶのにふさわしい存在です。
南極に生息する危険な生物3種

南極の生態系には、食物連鎖の上位に位置する捕食者も存在します。これらの動物は、南極で生きるために高い狩猟能力を持ち、時には人間にとっても危険な存在になることがあります。
南極を訪れる際は、動物の生態を理解し、適切な距離を保つことが大切です。
ペンギンやアザラシを襲う【ヒョウアザラシ】

ヒョウアザラシは、体長約2.4m〜3.5m、体重は約200〜600kgに達する大型のアザラシです。その名前は、体に見られるヒョウのような斑点模様に由来します。南極に生息する獰猛な捕食者です。
ペンギンやアザラシの幼獣、さらには他のアザラシの成獣も捕食する肉食種です。人間に対しても威嚇行動をとることがあり、実際に攻撃された事例も報告されています。
ペンギンの卵やヒナを盗む【ナンキョクオオトウゾクカモメ】

ナンキョクオオトウゾクカモメは、体長約50〜60cm、翼を広げると約140cmにもなる大型の海鳥です。その名前に『盗賊』とあるように、ペンギンのコロニーを襲撃し、卵や雛を盗んで食べる習性があります。
また、他の海鳥がとらえた魚を空中で奪い取る『クレプトパラシティズム(盗み寄生)』という行動も行います。ナワバリ意識が非常に強く、巣に近づく人間に対しても威嚇行為をすることがあるそうです。
海洋系食物連鎖の頂点【シャチ】

シャチは、体長約6〜8m、体重は約3〜6tにもなる大型の海性哺乳類です。白黒の特徴的な体表をもち、その美しい外見とは裏腹に、海洋生態系の頂点捕食者として君臨しています。
非常に高い知能をもち、群れで協調的に狩りを行います。南極海では、アザラシやペンギン、さらにはクジラの幼獣までもが捕食対象です。その強力な捕食能力から、海で恐れられる動物のひとつとされています。
南極で暮らす動物たちに想いを馳せてみよう

動物たちは何千年、何万年という時間をかけて南極の環境に適応し、独自の進化を遂げてきました。厚い皮下脂肪・優れた潜水能力・群れでの協力行動など、それぞれが生き抜くための特別な能力を身につけています。
南極の過酷な環境で暮らす動物たちの姿は、生命力の強さと適応力の素晴らしさを私たちに教えてくれます。南極の動物たちに想いを馳せることで、日本の反対側で暮らす生き物について学びを深めるきっかけにしてみませんか?




