- 7月14日はチンパンジーの保護と理解を深める『チンパンジーの日』
- チンパンジーは道具を使い共感も示す、驚くほど知能が高い動物
- 個体数は激減しており、私たちのこれからの行動が絶滅を防ぐ鍵となる

人間と約98.7%のDNAを共有するチンパンジーは、私たちに最も近い『いとこ』とも言える存在です。
『チンパンジーの日』は、絶滅危惧種であるチンパンジーへの理解と保護を目的として設けられた記念日です。しかし、彼らのことを本当に知っている人は多くありません。今回は、この記念日に合わせて、チンパンジーの知られざる魅力を紹介します!
7月14日はチンパンジーの日(World Chimpanzee Day)!

7月14日は『チンパンジーの日(World Chimpanzee Day)』。
この記念日は、チンパンジーの生態研究に生涯を捧げた世界的な霊長類学者ジェーン・グドール博士の功績をたたえ、1960年に彼が初めてタンザニアのゴンベ渓流国立公園を訪れた日をもとに制定されました。
目的は、チンパンジーという種の保護、そして私たち人間とのつながりを見つめ直すこと。
この日は、単なる動物愛護の記念日ではありません。チンパンジーを通して『人間とは何か』を問い直すきっかけにもなるのです。
チンパンジーってどんな動物?

チンパンジーは、アフリカの熱帯雨林やサバンナに生息しており、野生チンパンジーの正確な個体数は把握されていませんが、約30万頭が残っているとされています。
平均寿命はあまり正確なデータがないというのが実情です。野生下で40〜50歳まで生きるという説や、28歳程度という説など、諸説あります。飼育下では2019年に亡くなった神戸市立王子動物園のジョニーの推定69歳が、国内の最高齢記録とされていますが、日本国内の平均寿命は28.3歳です。
この平均寿命に大きな誤差が生まれるのには理由があり、チンパンジーの赤ちゃんが1歳までに死亡する乳幼児死亡率が21%と、高いことがあげられます。1歳以上まで生き延びたチンパンジーの平均寿命は34.6歳と、40歳に近い数字になるようです。
チンパンジーを知るうえで特徴的なのは、彼らが持つ高い知能と複雑な社会構造です。群れで生活し、個体間の関係は非常に緻密です。まさに『社会』を形成しているといえます。
道具を使う?チンパンジーの知能は想像以上

あなたはチンパンジーが道具を作って使うことを知っていますか?
たとえば、彼らは木の枝を加工してシロアリを捕ったり、葉をコップのように丸めて水をすくったりします。さらに、石を使って固いナッツを割るなど、目的に応じて異なる道具を使い分ける能力があるのです。
このような行動は『文化的行動』とも呼ばれ、地域や群れによって道具の使い方に差が見られる点も非常に興味深いポイントです。
チンパンジーは『共感』もできる?

チンパンジーは単なる知能の高さだけでなく、感情を共有する力=共感力も持っているということが研究でも示されています。
たとえば、仲間がけがをすると近くに寄り添い、なだめたり毛づくろいをしたりする行動が観察されていたり、群れの中で喧嘩が起きた場合、仲裁に入る個体もいるほど。
これらは、チンパンジーがヒトと最も近縁な動物であり、共感能力の進化を研究する上で重要なモデルであることを示します。
チンパンジーの共感行動は、必ずしもヒトの共感と同等とは限りませんが、その基盤となる能力を理解する上で重要な手がかりとなると言えるのではないでしょうか。
絶滅の危機にある『人間のいとこ』
しかし、そんな魅力あふれるチンパンジーたちは、現在絶滅の危機に瀕しています。
原因は、密猟やペット取引・森林伐採による生息地の喪失・人間由来の感染症など多岐にわたります。そこでIUCN(国際自然保護連合)では、チンパンジーを『絶滅危惧種(EN)』としてレッドリストに掲載しています。
レッドリストとは、絶滅危惧種の中でも特に高い絶滅リスクを持つカテゴリーとされています。なぜなら、100年前に推定100万〜200万頭がアフリカに生息していたチンパンジーですが、現在はアフリカ大陸全体で約30万頭まで減少しているからです。
この現状を変えるために、さまざまな国際団体が保護活動を続けています。現地での森林保全や、地域住民への教育、違法取引の監視など、多くの取り組みが世界中で行われています。

チンパンジーに会える動物園3選
ここでは、チンパンジーに会える動物園を全国から3つ紹介します!
旭山動物園【北海道旭川市】
旭山動物園では、11頭のチンパンジーを飼育しています。夏期開園中は基本、屋内と屋外を1日交代で展示しているようです。
よこはま動物園ズーラシア【神奈川県横浜市】
よこはま動物園ズーラシアでは、2009年3月、熊本の施設から7頭のチンパンジーが来園して以来、現在では10頭のチンパンジーが生活をしています。
東山動植物園【愛知県名古屋市】
東山動植物園では2025年5月25日(日)にチンパンジーのカズミが出産し、チンパンジーの赤ちゃんが誕生しました。東山動植物園での出産は2021年4月28日以来2度目の出産とのこと。
公開時期が決定するまでは、赤ちゃんの撮影等を行うことはできませんので注意してください。
人間とチンパンジーの未来は?
私たちは、チンパンジーと遺伝子のほとんどを共有する『兄弟種』です。彼らの行動や感情、社会構造を知ることは、人間自身を理解する手がかりにもなります。
『人間らしさとは何か』を考えるとき、チンパンジーという鏡を通して見えるものは、きっと少なくありません。
チンパンジーの日は、彼らの知性や感情の豊かさ、そして危機的な現状を思い出す日です。同時に、私たち人間が他の生き物とどう関わるべきかを見つめ直す日でもあります。
7月14日、この記念日に少しだけ立ち止まり『人間のいとこ』たちの未来について考えてみませんか?