- センザンコウは、アフリカやアジアに生息する哺乳類
- 「世界一密猟されている動物」といわれている
- センザンコウの日を通して、動物との共生について考えてみよう

『センザンコウ』という生き物を知っていますか?
アルマジロのような硬いウロコに、つぶらな瞳。まるで木彫りの彫刻のような姿を持つセンザンコウは、絶滅が危惧される動物の1種です。
来たる2月第2土曜日は、そんなセンザンコウにちなんだ記念日。今回は『センザンコウの日』について紹介します。
2月第3土曜日はセンザンコウの日!意味や由来は?

まずは、毎年2月第3土曜日に制定されている『センザンコウの日』の意味を紹介します。
センザンコウは、現存する個体数がとても少ない動物です。本記事で「センザンコウの存在を初めて知った」という人も多いのではないでしょうか。
センザンコウの日を通して、その生態や歴史を学んでいきましょう。
2012年に『センザンコウの保護』を訴えるために制定
センザンコウは、レッドリストで絶滅危惧種に指定されている動物の1種です。
野生動物保護活動家として知られるRhishja Cota氏は、2012年2月第3土曜日を『世界センザンコウの日(世界鱗甲目の日)』に制定しました。
センザンコウの日は、その名の通りセンザンコウの保護を訴えるための記念日。今もなお密猟されるセンザンコウの保護と保全を呼びかけることで、生物多様性の維持を目指します。
密猟や密輸によって、今は絶滅の危機に…
センザンコウは、以下の8種類が現存しています。
- インドセンザンコウ
- ミミセンザンコウ
- パラワンセンザンコウ
- マレーセンザンコウ
- キノボリセンザンコウ
- オオセンザンコウ
- サバンナセンザンコウ
- オナガセンザンコウ
しかし現在は、上記の8種類すべてが絶滅の危機にあります。
センザンコウは1995年時点で、すでにワシントン条約の『附属書II(所業取引が規制される生物)』に指定されていました。
しかし2000年代に入っても密輸が摘発されており、現在も密猟が懸念され続けています。その経緯から、センザンコウは『世界一密猟されている動物』ともいわれているのです。
センザンコウとはどんな動物?

ここでは、センザンコウの基本的な生態や、絶滅危惧種に至るまでの背景について、さらに詳しく紹介していきます。
ときに『恐竜』とも『彫刻」』とも『松ぼっくり』とも形容される、独特な姿を持つセンザンコウ。その生態的な特性と、人間とのかかわりについて学んでいきましょう。
全身にウロコを持つ、珍しい『鱗甲目(りんこうもく)』
センザンコウは、硬いウロコで覆われている『鱗甲目(りんこうもく)』の哺乳類です。現存する鱗甲目はセンザンコウのみ。外敵に襲われると、アルマジロのように体を丸めて身を守ります。
ウロコの成分は、私たちの髪の毛や爪と同じ『ケラチン(たんぱく質)』。ちなみにウマの蹄やサイの角も同じ成分でできています。
センザンコウのウロコは、多い場合で1,000枚以上も存在しており、重さもかなりのもの。センザンコウの体重の約2割は、ウロコの重みなんですよ。
主食はアリ類!体も『アリの捕食』に特化
センザンコウの主食はアリやシロアリです。体もアリの捕食に特化しており、アリの巣に差し込みやすい細長い口先や舌を持ちます。とくに舌の長さは特徴的で、体長を超える個体も少なくありません。
さらに食事の際に咀嚼をする必要がないため、歯がないこともセンザンコウの特徴。もちろん、咀嚼に必要な筋肉もありません。アリは、胃に飲み込んだ石ですりつぶして消化します。
天敵はライオン・トラ・ヒョウ。高い防御力で耐え忍ぶ!

センザンコウの天敵は、ライオンやトラ・ヒョウなどの肉食動物です。センザンコウは鋭い爪を持ちますが、これらの獰猛な天敵には到底敵いません。
そこで役立つのが硬いウロコ。ボールのように丸まったセンザンコウのウロコは、ライオンの牙でも噛み砕けません。
また丸まった状態から尻尾だけを振り回し抵抗することも。ウロコの硬さは動物の皮膚を切り裂けるほどであり、さらに尻尾の付け根からはスカンク顔負けの臭い液体が出てくるため、天敵は諦めて去っていくのです。
夜行性の単独生活。地下から樹上まで幅広く生息
センザンコウは、アジアとアフリカ大陸に生息しています。森林やサバンナなどを棲み処としますが、種類によって暮らし方は異なります。
たとえばオナガセンザンコウやキノボリセンザンコウは木の上に、そのほかの種は地下に掘った巣穴や岩の隙間などに生息。どの種も基本的には夜行性で、群れは作らず単独で暮らしています。
また見た目の印象とは裏腹に、実はセンザンコウは泳ぐこともできるんです。木の上・土の下、そして水場と、必要に応じて環境に適応できる柔軟性を持ちます。
肉・ウロコ・革…すべてが密猟の対象に

センザンコウが密猟されてしまう理由はさまざま。おもに肉は食用、ウロコは薬や魔除け、革は独特な模様を活かした革製品などに利用されます。
センザンコウの密猟が解決されない背景には『土着の文化』が関連しています。
たとえばアフリカの一部では、昔からセンザンコウが猟師の標的となっていました。密売目的ではなく、私たちが牛や豚を食べるように『一般的な食材』としてセンザンコウを狩ってきた歴史があります。
今まで自然とされてきた文化を突然廃止することは難しいもの。自給自足を営む人々にとって、センザンコウ狩りの否定は文化の否定と同義になってしまいます。
さらにアジアの一部では、長らくセンザンコウのウロコが『伝統的な医薬の原材料』として利用されてきました。ウロコの治癒効果に、科学的な根拠はありません。しかし捕獲や加工が文化の一つになってしまっていることは事実です。
薬や魔除けとしての加工は信仰ともつながっている部分があり、現在も解決は困難な状態が続いています。
日本でセンザンコウが見られる場所は『上野動物園』のみ!

絶滅危惧種であるセンザンコウですが、実は日本でも見られます。日本でセンザンコウを見学できる施設は、東京の『上野動物園(正式名称:恩賜上野動物園)』のみです。
上野動物園の『夜の森』のゾーンでは、ミミセンザンコウを1頭飼育しています。ただし2025年11月時点では、展示を一時お休み中です。来訪の際は、公式サイトで展示再開日を確認しましょう。
| 所在地 | 東京都台東区上野公園9-83 |
| アクセス | JR「上野駅」公園口より徒歩5分 |
| 料金 | 一般:600円 65歳以上:300円 中学生:200円 都内在住・在学の中学生:無料 小学6年生までの子ども:無料 |
| 営業時間 | 9:30~17:00 |
| 休園日 | 月曜日・年末年始(12月29日~翌年1月1日) |
| 駐車場 | なし |
| 見られるセンザンコウの種類 | ミミセンザンコウ |
現在の絶滅対策の進捗は?

難航するセンザンコウの保護ですが、絶望的な状況というわけではありません。
まず2016年には、センザンコウの国際的な商業取引を禁止する提案が合意されています。闇取引の活発化という懸念はあるものの、違法取引への対策強化は現在も進んでいます。
2020年には、長らくセンザンコウを薬の素材として用いてきた中国が、センザンコウのウロコを『伝統薬の承認リスト』から除外しました。
この対策を通じ、環境保護団体は『センザンコウを用いた伝統薬は代用できる』というメッセージを発信しています。
さらに中国の『蘇州センザンコウロボット株式会社』では、生体保護のために『センザンコウ保護公益事業』を策定。集まった金額は、密猟の監視や研究の強化などに使われます。
このように、現状では数々の国や企業が、センザンコウの保護を推進している状態です。センザンコウの個体数の回復を願いながら、今後の社会の動向に注目していきましょう。
センザンコウの生態を通じて、動物とのかかわりを考えてみよう

アリクイのような食性、アルマジロのような防御力、スカンクのような悪臭攻撃。センザンコウは、さまざまな生き物の特徴を組合せたような個性的な動物です。
しかし現在、ウロコや肉などを狙ったセンザンコウの密猟が後を絶ちません。センザンコウはすでに人間の文化と深い関わりを持っており、密猟の完全な阻止が難しいことから、国際的にも大きな課題となっています。
2月の『センザンコウの日』を機に、野生動物と人間との関わりについてぜひ考えてみましょう。一人ひとりが動物との共生への意識を高めることで、環境問題の解決も少しずつ前進していくことを、忘れないようにしたいですね。




