- 日本に生息しているキツネはおもに2種類
- 農作物被害やエキノコックス症など、害をもたらす動物でもある
- キツネをペットとして飼育するのは非常に困難。お迎えは慎重に

絵本や童謡、デザインやキャラクターのモチーフとしても親しまれるキツネ。野性的な見た目にはファンも多いですが、農作物への被害やエキノコックスなど、獣害に関連する話題も尽きない動物です。
今回は、キツネの特徴や種類の紹介、ペットとして飼育できるのかを解説していきます。ぜひこの機会にキツネについて学び、野生動物との付き合い方について考えてみましょう。
キツネってどんな動物?生態の特徴を紹介

ここでは、キツネに関する基本的な特徴を紹介します。
人によってはごく身近な野生動物でありながら、住む環境によっては動物園でしか会う機会のないキツネ。生態の特徴をあらためて学びながら、キツネへの理解を深めていきましょう。
キツネの寿命は10年程度。野生下では短命に
キツネは、適切な環境で飼育すれば10年程度生きる動物です。しかし野生下で寿命まで生きることはほぼありません。
ほとんどの場合は、狩猟や事故、病気などにより、2~3年程度で死んでしまいます。創作物では『九尾の狐』のように長寿なイメージがあるキツネですが、実際には短命な生き物なのです。
肉食に近い雑食性。虫からウサギまで捕食対象
キツネの食性は、肉食に近い雑食性です。草や昆虫、ウサギや齧歯類などの小動物まで、さまざまなものを食べられます。多くの野生下では、昆虫・小動物・果実などを食べて生きています。
小動物のなかでも、ネズミはキツネの主食です。餌が少ない場合は、人間の生活圏に侵入し、残飯や家畜のニワトリを食べることもあります。
家畜や農作物の被害が多く、害獣として対策が必要なことも
キツネは一部地域において、さまざまな獣害をもたらしています。たとえば農作物被害や家畜の捕食、寄生虫『エキノコックス』による感染症などが代表的です。
キツネは鳥獣保護法によって保護の対象となっている動物であり、原則として駆除はできません。そのためキツネの獣害に対しては、電気柵や箱型の罠などの対策が講じられています。
キツネは人間にとって『土地や資産に対して明確な害をもたらすが、駆除できない動物』の一種。人と野生動物の共生について、深く考えるきっかけを与える存在ともいえます。
キツネを象徴する人獣共通感染症『エキノコックス症』とは

エキノコックス症は、キツネから人間に感染する『人獣共通感染症』の一つです。
寄生虫であるエキノコックスは、中間宿主として野ネズミに寄生します。寄生された野ネズミを捕食することによって、キツネが感染。
そのキツネの糞を触ったり、糞に汚染された川の水や山菜を口にしたりすることで、人間の体内に卵が侵入し、エキノコックス症に感染します。
エキノコックス症はおもに肝臓の病気です。進行すると疲労感や黄疸、発熱などの症状が現れ、放置することで命にかかわる重篤な症状が現れるケースもあります。
薬物による治療が可能ですが、根治のためには手術による病巣の切除しかありません。重症化を防ぐためには、早期発見・治療が重要になります。
キツネの鳴き声は「コンコン」じゃない?

キツネの鳴き声といえば「コンコン」をイメージする人も多いでしょう。しかし実際の鳴き声は「ギャー!」「ギャンギャン!」と、まるで人間の叫び声のような声なんです。
知らずに山中で鳴き声を聞くと「どこかで誰か襲われているの?!」と思ってしまうかもしれません。時折聞こえる「オン!オーン!」という声は、かろうじて「犬っぽい」ともいえます。
キツネの鳴き声には、仲間に危険を伝えたり、自分の縄張りをアピールしたりなど、さまざまな役割があります。
日本に生息するキツネは2種類!
日本に生息しているキツネは『キタキツネ』と『ホンドギヅネ』の2種類です。ここでは、それぞれのキツネの特徴を解説していきます。
キタキツネもホンドギツネも『アカギツネ』と呼ばれる種類の亜種です。そのためよく似た特徴を持ちますが、調べてみると微妙な違いがあります。
北海道だけに生息するキタキツネ

キタキツネは、北海道のみに生息しているキツネです。耳の裏と四肢の足首が黒いのが特徴で、土手に穴を掘って巣穴を作り生活しています。ネズミや鳥類だけではなく、エゾリスやエゾシマリスも食べるのは、北海道ならではの食性ですよね。
日本屈指の豪雪地帯である北海道で生息するキタキツネは、雪が解け気温が上がる4~6月の間に子どもを生みます。そして冷えが厳しくなり始める晩秋には、親が子どもを縄張りから追い出し、あまりにも早い子別れをするのです。
北海道以外の日本国内に生息するホンドギヅネ

ホンドギヅネは、日本国内の北海道以外の地域に生息するキツネです。キタキツネよりも全体的にやや小さく、四肢や足首にも黒い模様はありません。おもに森林に生息しており、狩りのときは各々が決まったルートを通りながら獲物を探します。
巣穴は、日当たりの良い林や草原に巣穴を作る傾向にあります。キタキツネが作る穴には、通気用や非常用など多数の役割がありますが、ホンドギツネの穴はほぼ子育てのみの役割です。巣穴は親子で代々引き継がれ、年々拡張していきます。
キツネはペットとして飼育できる?飼育時の注意点

ここでは「キツネをペットとして飼育できるのか?」や、飼育する際の注意点などを紹介します。
前提として、キツネはペットとしては非常に難易度が高い動物です。飼育が難しい理由を学び、キツネへの知識をさらに深めていきましょう。

鳥獣保護法により『野生の捕獲』は禁止。ショップでの購入はできる!
前項でもふれたように、野生のキツネは鳥獣保護法により捕獲が禁止されています。病気やケガをしたキツネを見つけても、まずは手をふれずにそっとしておくことが推奨されています。
理由は、キツネも食物連鎖の一部だからです。自然に亡くなったキツネをほかの動物が食べることで、本来の生態系が守られます。もちろん接触によるエキノコックス症のリスクも関連しています。
迷ったときは、地域を管轄する野生鳥獣担当部署に連絡しましょう。感染リスクを踏まえ、自ら手をふれないように努めてください。死んでいるキツネを見つけた際も同様に、市役所や管轄部署に連絡しましょう。
連絡の結果『傷病鳥獣』の判断をされた際は、保護の対象になる可能性があります。ただしキツネは多くの自治体において、有害捕獲の対象鳥獣に含まれる傾向にあります。そのためケガをしていても保護対象にならない可能性にも留意しましょう。
キツネをペットとして迎える際は、ペットショップでの購入が基本になります。
イヌ科の動物ではあるが、犬のように懐くことは稀
キツネはイヌ科の動物ではありますが、基本的に単独行動をする生き物です。そのため社会性に乏しく、犬のように懐くことは稀だとされています。
芸を覚えることも、一緒に散歩を楽しむことも難しいでしょう。多少なりとも心を開いてくれる可能性はあるものの、上下関係を教えたり指示を聞かせたりなどはできません。
トイレを覚えない・かじり癖・掘り癖…キツネの飼育は非常に困難
キツネは基本的にトイレを覚えず、あちこちの好きな場所で排泄します。上下関係を築けないため、しつけることは困難です。また習性により、かじり癖や掘り癖も激しく、一般家庭で飼育するのは難しいといえるでしょう。
キツネの飼育で課題となるのが、大きな鳴き声です。騒音が一切問題にならないような広い環境や、徹底した防音設備を導入した環境でなければ、すぐに近所迷惑になってしまいます。
『キツネの代わりにフェネック』は慎重になるべき

キツネによく似た動物で、昨今注目を集めているのが『フェネック』です。しかし、フェネックは決して『飼いやすくなったキツネ』ではありません。
フェネックもキツネと同じように、トイレを覚えない個体が多い傾向に(基本は『できない』と思ったほうが良いでしょう)。鳴き声も大きく、受診に対応している動物病院も少ないのが現状です。
犬やフェレットのような感覚でフェネックを飼育すると「こんなはずじゃなかった……」と思ってしまうでしょう。
キツネが難しいならフェネック、と安易に考えてはいけません。お迎えの際は飼育方法や環境をしっかり調べ、フェネックの性質を深く理解したうえで、慎重に検討しましょう。
キツネの飼育は困難。慎重に考えつつ、諦めるのも愛護の形

今回は、キツネの種類や特徴、キツネの飼育の難しさについて紹介しました。
キツネはペットとしての情報が少なく、実際の飼育も困難な動物です。少なくともペット飼育初心者~中級者のお迎えは、決しておすすめできません。
ペットとしてお迎えせずとも、動物園や牧場などでキツネの姿を楽しむことは可能です。「飼うのが難しそうだから諦める」も、キツネへの愛の形。ぜひこの機会に、施設や動画などでキツネを愛でつつ、人間とキツネの共生についても考えていきましょう。