- ゾウの赤ちゃんの人工哺育を支えたエレファントミルク
- 『犬にはヤギミルクなら安心!』は幻想だった?
- 成犬・成猫の健康にもミルクは有益

1917年の創業から乳製品を作り続けている森永乳業の知見を受け継いだ、森乳サンワールド。そこには100年を超えて培われた、母乳の力を徹底して研究してきた技術力と知識が蓄えられています。
赤ちゃんを育てる『ミルク』。人間の赤ちゃんを育てる粉ミルクを知らない人はいないと思います。では、動物を育てるための『ミルク』はどうでしょう?
今回は動物のためのミルクを開発し続ける『森乳サンワールド』さんに、動物のミルク開発にまつわるエピソードと、愛犬・愛猫に飲ませたいミルクの開発についてお話を聞きました。
その技術力を背景に作られた、パンダを育てるために使われるパンダミルクや、国内で初めてのゾウの人工哺育成功を支えたエレファントミルクなど、その技術力に支えられた動物の成長の物語は驚きの連続でした。
◆取材・監修:森乳サンワールド
取材先・監修

森乳サンワールド 営業部
ペットが大好きなメンバーが東京・大阪を拠点に全国の動物園・水族館向けに商品を販売中。
動物の赤ちゃんのためのミルク

多くの人が飲んだ経験があるであろう牛乳や粉ミルク。大人になっても、慣れ親しんだ味とパッケージはすぐにも思い出せることでしょう。
人のためのミルクを追求して100年を超える企業が、人以外の動物のためのミルクを、その知見を総動員して作ったら「こんなことができるようになった!」というエピソードをお話ししてもらいました。
双子の赤ちゃんパンダの命を繋いだパンダミルク
絶滅の危機に瀕しているパンダ。1頭でも多くのパンダを育てたい!その思いから開発されたパンダミルクには、パンダに携わる多くの人の願いが込められていたそうです。

双子のパンダが生まれた場合に、2頭の赤ちゃんを両方とも育てるために、パンダミルクの開発が進められました。
パンダは双子を産んだ場合、どちらか一方しか育てない習性があります。それを両方とも育てるためには、母乳の代わりになるミルクが必要でした。
2021年3月に上野動物園で生まれた双子のパンダ『シャオシャオ』と『レイレイ』が記憶に新しいですが、和歌山のアドベンチャーワールドでは5組の双子のパンダが育てられました。
双子パンダの成長には、森乳サンワールドの製品も一役買ったのだそうです。
ゾウ人工哺育を支えたエレファントミルク
ゾウの人工哺育は非常に難しいことで知られています。少しでもゾウの人工哺育の役に立ちたいという思いから、開発に取り組んだのがゾウの赤ちゃん用のミルクでした。
その開発には徹底的な調査と分析が必要だったのだとか。



人工哺育の場合、骨折で亡くなる赤ちゃんが多いそうです。その原因解明のために、ゾウの母乳の秘密を探り、徹底的に分析を行いました。
その結果、ゾウの母乳にはグルコサミンが大量に含まれていることを発見しました。この発見をベースに試行錯誤を重ね、できるだけゾウの母乳に近い成分のミルクの開発に成功したのです。
こうして開発されたエレファントミルクを飲んで育ったゾウの中には、現在繁殖適齢期となっているゾウもいるそうです。日本初となる、日本生まれのゾウ同士の繁殖に挑戦しているとか。日本生まれのゾウから生まれた赤ちゃんの誕生が、今から楽しみですね。
犬や猫の赤ちゃんのために開発されたミルク
森乳サンワールドでは、パンダ、ゾウ、クマ以外にもアシカ・アザラシなどの海獣の赤ちゃん用のミルクも開発しています。
このような高い開発技術を持つ森乳サンワールドの技術を活かして、一般的な家庭にいる犬や猫の赤ちゃんのミルクも開発しているのだそうです。



例えばパンダの母乳には炭水化物が少なく、クマの母乳は高タンパクで高脂肪です。犬は雑食ですが猫は完全に肉食のため、猫は犬よりも高いタンパク質が必要です。
こういった母乳の成分の違いを調べて、より母乳に近いミルクを開発しました。
犬や猫の赤ちゃんのために必要な成分はそれぞれ違うのですね。
成犬・成猫のためのミルクに応用された技術


動物のためのミルクの開発は、動物園にいる動物の赤ちゃんのためだけにされているのではないと、森乳サンワールドさんは話します。
成犬・成猫になっても、ミルクは大切な栄養源。上手に利用することで、たくさんのメリットがあるのだそうです。
とはいえ、成犬・成猫が飲めるミルクの開発には、解決するべき問題もあったのだとか。その中には常識と思われていたことが覆るようなお話も!
犬に牛乳を飲ませるとお腹を壊してしまう!?


犬に牛乳を飲ませるとお腹を壊すと思っていませんか?たしかにお腹を壊す犬もいるのですが、それはどうして起こるのでしょうか?
漠然と乳糖のせいでお腹を壊すイメージがありますが、乳糖は犬の母乳にも入っているのだそうです。ではなぜ、犬は牛乳を飲むとお腹を壊すのか、お話を聞きました。



赤ちゃんのときには乳糖を分解する酵素が充分に体の中で作られます。でも大きくなると母乳は飲まなくなりますよね。
そうやって乳糖を摂る機会が減っていくと、だんだん体の中の分解酵素が作られなくなるため、大人になるにしたがって乳糖を分解しにくい体になると考えられています。



それは人間も犬も同じということでしょうか?



その通りです。
人間も犬も、ずっと乳糖を摂る習慣が続いていれば、乳糖を摂取したせいでお腹を壊すことは少なくなると思われます。
犬や猫も普段は飲まない牛乳を大人になってから急に飲むために、お腹を壊してしまうのではないでしょうか。
人間も牛乳を飲んでもお腹を壊さない人がいたり、お腹を壊してしまう人がいるのと同じように、犬や猫にもお腹を壊してしまう場合と壊さない場合があるのはそういう理由なのですね。
「ヤギミルクなら犬も安心」は幻想だった!?
愛犬・愛猫家にとっては「牛乳は犬に飲ませるとお腹を壊すから、犬に飲ませるのはヤギミルク」は常識。そんなふうに思っている人は多いと思います。
実はここにも落とし穴があるのだと森乳サンワールドさんは話します。



ヤギはウシ科ヤギ属の動物なので、犬や猫の母乳とは栄養成分が異なり、どちらかといえば牛の母乳に近い母乳を出します。



犬や猫は乳糖が分解できないので、牛乳は乳糖が多く、お腹を壊してしまうけれど、ヤギ乳は乳糖が少ないのでお腹を壊さないのだと思っていましたが……。



乳糖の量はウシもヤギも大差ないんですよ。データによってはヤギのミルクの方が牛のミルクよりも多いとされています(※1)
乳糖はとかく悪者扱いされますが、カルシウムの吸収をよくしたり、腸の健康に必要なビフィズス菌のエサになるため、必要な成分なんです。
ですから犬や猫用ミルクを作る際にも、乳糖をゼロにしてしまうのではなく、必要な量をあえて配合するようにしています。
森乳サンワールドの犬用・猫用ミルクは、牛乳を原料としていますが、乳糖の量を犬・猫それぞれの母乳に合わせて調整しています。
また成犬・成猫・シニア犬・シニア猫向けミルクは、乳糖を分解する力が減ってしまうことを考慮して、乳糖の量を母乳よりも少なめに調整してあるのだそうです。
ヤギミルクは牛乳に比べて、脂肪球(※2)が小さいから消化吸収が良いとされていますが、森乳サンワールドのミルクは均質化(ホモジナイズ)という処理を行うことで脂肪球を微細化し、吸収を良くする工夫をしてあるのだとか。
さらにヤギミルクの特長としてミネラルが多いことがあげられますが、過剰なミネラルはかえって健康を阻害することがあるそうです。森乳サンワールドのミルクはミネラルバランスも犬や猫の母乳に合わせて調整されているので安心です。
乳糖やミネラルの量が調整され、脂肪球が小さく乳糖やミネラルの量を調整することで、お腹に優しく赤ちゃんに限らず生涯ずっと飲み続けられるミルクとして作られています。
食欲がない時や、病気などで栄養が必要なとき、とても心強い味方になってくれるペット用ミルクです。
※1:参考「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
※2:薄い膜に包まれ、小さな粒になって分散している脂肪の粒のこと
成犬・成猫やシニア犬にも必要な栄養素が取れるミルク


ミルクは栄養価が高く、病気のとき・食欲のないとき・高齢になって食が進まなくなったときなどに手軽に栄養を摂るのに適しています。森乳サンワールドでは、日常的に使える成犬用・成猫用のミルクの開発も手掛けているそうです。



犬と猫では必要な栄養素が違います。
猫の方がより高たんぱくが必要で、体内で十分に生成できないタウリンを配合する必要があります。
それぞれ動物の食性に合わせて開発しました。そしてライフステージに合わせて、たんぱく質や乳糖、ミネラルを調整しています。
- 2ヶ月からシニア犬まで使えるミルク プレミアムドッグメンテナンスミルク
- 成猫・シニア猫用キャットミルク キャットメンテナンスシニアミルク
このほかたくさんの犬用・猫用の商品がラインナップされています。
森乳サンワールドのミルクに出会えるペットイベント


どんなミルクなのか、試してみたい!という人は、ペットイベントに参加することで、森乳サンワールドのミルクが試飲できるのだそうです。
現在参加の決まっているイベントは以下になります。
イベントでは、ミルクの試飲のほか、実際にミルクを与えるための給与器具・小動物用のミルクなど、さまざまな商品の紹介を受けられます。
子犬・子猫だけじゃない!ミルクは動物みんなの栄養食


森乳サンワールドは、森永乳業グループの知見を活かし、ペットの健康を第一に考えた商品を提供してくれていることがわかりました。
ラクトフェリン・ミルクオリゴ糖といった牛乳由来の成分や、菌体開発技術を活かしたシールド乳酸菌・動物用ビフィズス生菌は、大事な犬や猫の健康を支えてくれることでしょう。
施設情報


森乳サンワールド 営業部
50年以上の歴史を持つ森永乳業のペットフード部門。「ペットは家族の一員」をスローガンに、森永乳業の持つ100年を超える乳に関する知見や、菌体開発技術を活かした製品開発を行う日本のペットフードのパイオニア。動物園からの依頼に応え、数々の展示動物の赤ちゃん用ミルクの開発も手掛けている。