- カエルウオは浅瀬の岩場に暮らす小型魚で、カエルのような顔が特徴
- 種類によっては陸上でも活動でき、オスは卵を守って献身的な子育てをする
- 磯の潮だまりで観察でき、環境を整えれば自宅飼育も可能

潮だまりや岩場のすき間をのぞくと、ひょこっとこちらを見返してくる小さな魚がいます。丸みのある頭と大きな目を持ち、どこかカエルを思わせる姿から『カエルウオ』と呼ばれる魚です。見た目のかわいらしさだけでなく、実はとても個性的な生態をしています。
カエルウオはイソギンポ科に属する魚の総称で、世界中の浅い海に分布しています。水族館や磯遊びで見かける機会もありますが、その暮らしぶりまで詳しく知る人は多くありません。この記事では、カエルウオの基本的な特徴や生態、仲間たちの違いについて順に紹介していきます。
カエルウオはどんな生き物?生息環境や大きさも紹介

カエルウオは、浅い海の岩場やサンゴ礁に暮らす小型魚です。ここではまず、大きさや見た目、生息している場所や食性など、基本的な情報を紹介します。
カエルウオとは?大きさや見た目の特徴
カエルウオは、イソギンポ科に分類される魚の仲間です。体長は種類にもよりますが5〜12cm、どちらかと言えば小型の魚です。頭が大きく、体は短くずんぐりしており、その体型がカエルを連想させることから『カエルウオ』と呼ばれるようになりました。
目は体のわりに大きく、顔の正面についているため、人と目が合うような印象を受けます。大きな目で周囲を見渡す姿が表情豊かに見え、ダイバーやアクアリストから人気があります。体色は種類によって褐色系の地味なものもいれば、派手な斑点や模様を持つものなどさまざまです。
カエルウオの生息地や生息環境
カエルウオは、世界各地の暖かい海に広く分布しています。日本では本州以南の沿岸部で多く見られ、特に岩場やサンゴ礁のある浅瀬に生息します。
カエルウオの好む環境の代表が『タイドプール』です。タイドプールとは、干潮時に海岸の岩場にできる水たまりのことで『潮だまり』とも呼ばれます。満潮時には海とつながっていますが、潮が引くと取り残されたような形になり、水温や塩分濃度が変化しやすい環境です。
カエルウオはそうした過酷な環境でも生きることができるのです。ただ、潮だまりは外敵の侵入が制限されるため、カエルウオにとって比較的安全な場所ともいえるでしょう。
カエルウオは何を食べる?天敵はいるの?
カエルウオの主食は、岩の表面に生えた藻類です。小さな口で岩肌をこすりながら、藻類をかじり取って食べます。種類によっては小型の甲殻類やプランクトンを食べることもありますが、基本的には植物食性の強い魚です。
藻類を食べる習性は、カエルウオの生活スタイルと深く結びついています。岩場に定着して生活するため、移動しながら効率よく餌を得られる藻類が主な栄養源となっているのです。
天敵としては、より大型の魚や海鳥があげられます。浅瀬に生息しているため、鳥に狙われることもあり、岩の隙間に素早く逃げ込むことで身を守ります。
カエルウオならではの特徴とは?

岩場で目立たず暮らすカエルウオですが、行動を観察すると意外な特徴が見えてきます。ここでは、カエルウオならではの行動面の特徴を3つ解説します。
縄張り意識が強い性格
カエルウオは、縄張り意識が非常に強い魚です。特に自分が拠点としている岩穴やくぼみには強い執着を示します。近くに他の魚が入り込むと、威嚇したり、時には体当たりして追い払います。ただし、弱るまで傷つけ合うことは少なく、一方がその場を離れて終わることがほとんどです。
この強い縄張り意識は、寝床となる巣穴と、餌となる藻類を確保するためです。餌となる藻類は流れ着くものではないので、縄張り内に確保するのがとても重要です。
水中と陸上を行き来する種類もいる?
カエルウオの仲間には、水中だけでなく陸上でも活動できる種類がいます。代表的なのがタマカエルウオで、干潮時に岩場が露出すると、湿った岩の上を這って移動することもできます。
陸上での活動を可能にしているのは、特殊な呼吸能力です。皮膚や口の粘膜から酸素を取り込むことができるため、体が湿っていれば短時間なら陸上でも生きられます。この能力により、潮が引いた後も岩場に留まることが可能です。
ただし、完全に陸上生活ができるわけではありません。体が乾燥すると呼吸ができなくなるため、水たまりや湿った場所を選んで移動します。
オスは孵化するまで卵を守る
カエルウオの繁殖行動も特徴的です。多くのカエルウオは産卵期になるとオスは岩の割れ目や貝殻の内側など、安全な場所に巣を作ります。そしてメスを誘い込んで産卵させた後、孵化するまでの間、オスが単独で卵を守り続けるのです。
卵の保護は非常に献身的で、オスは巣から離れることなく卵に新鮮な水を送り続けます。胸びれを使って水流を起こし、卵に酸素を供給するのです。
卵は種類や水温にもよりますが、1〜2週間ほどで孵化します。稚魚が泳ぎ出すまで、オスは巣を守り抜きます。
個性豊かなカエルウオの仲間5選

カエルウオの仲間は、種類によって体色や生態が大きく異なります。ここでは、日本の海で見られる代表的なカエルウオの仲間を5種類紹介します。
陸上でも呼吸できる【タマカエルウオ】

タマカエルウオは、カエルウオの仲間の中でも特に陸上活動能力が高い種類です。体長は7〜10cm程度で、丸みを帯びた頭と大きな目が特徴的な外見をしています。
最大の特徴は、干潮時に岩の上を這って移動できることでしょう。皮膚呼吸が可能なため、体が湿っていれば数時間は陸上で過ごせます。岩場を飛び跳ねるように移動する姿は、まさにカエルそのものです。
鮮やかな体色が美しい【ナベカ】

ナベカは、体全体が黄色っぽく、黒い帯模様が入る種類です。その派手な体色から熱帯魚と思われがちですが、本州全域に生息します。
岩礁域に広く分布しており、潮だまりはもちろん、防波堤の水面ギリギリの場所を探すと良く見つかります。カキ殻やフジツボ殻を好み、中で産卵・卵保護もします。
遊泳性が高い【ニジギンポ】

ニジギンポは、カエルウオの仲間としては珍しく遊泳性が高い種類です。体長は5〜8cmで、細長い体型をしています。名前の通り、体には虹色に輝く美しい縦縞模様があるのが特徴です。
他のカエルウオが岩にへばりついて生活するのに対し、中層を泳ぐ姿がよく見られます。流れ藻(表層を漂う海藻の切れ端)や海藻の陰に隠れ、小動物を食べるなど、多くのカエルウオとは少し違った習性を持ちます。
2色の体色が特徴的【フタイロカエルウオ】

フタイロカエルウオは、名前の通り体が2色に分かれて見えるのが特徴です。体長は6〜10cmで、身体の前半が黒褐色、後半がオレンジ色と独特の模様をもっています。普段は巣穴から頭だけを出しているので、カモフラージュになっていると考えられています。
沖縄などのサンゴ礁の浅瀬に生息し、その体色からダイバーやアクアリストから人気が高いです。
とぼけたような顔が可愛い【モンツキカエルウオ】

モンツキカエルウオは、その名の通り体に紋(模様)がある種類です。体長は5〜8cmと小型で、丸い顔と大きな目が愛嬌たっぷりの外見をしています。体には斑点が散らばり、この模様が名前の由来となっています。
巣穴から顔だけだしキョロキョロと周囲をうかがう様子は、大きな目と口が相まって非常に表情が豊かに見えます。サンゴ礁の浅瀬に生息し、ダイビングでも観察しやすくとても人気が高いです。
カエルウオを観察したい!どうすれば観察できる?

カエルウオは、実は身近な場所で観察できる魚です。特別な装備や技術がなくても、海で出会うことができます。ここでは、カエルウオを観察するための方法や、自宅での飼育についても紹介します。
まずは水族館へ行こう!
カエルウオを初めて観察するなら、水族館がおすすめです。多くの水族館では、カエルウオの仲間が飼育されています。水槽越しであれば、じっくりと顔の表情や動きを観察できるでしょう。
水族館の利点は、安全で快適な環境で観察できることです。天候や潮の心配をする必要がなく、解説パネルも充実しているため、生態について学びながら観察できます。複数の種類が展示されていれば、それぞれの違いを比較するのも楽しいでしょう。
2025年12月現在、展示されている水族館を紹介します。
- 鴨川シーワールド(タマカエルウオ・カエルウオ)
- 葛西臨海水族園(タマカエルウオ・カエルウオ)
- アクアマリンふくしま(カエルウオ)
- 鳥羽水族館(カエルウオ)
- すみだ水族館(ヤセタマカエルウオ)
展示内容が変更されることもあるので、確実に観察したい場合は事前に問合せるとよいでしょう。
潮だまりで観察できる
自然の中でカエルウオを観察したいなら、潮だまりを訪れてみてください。観察のタイミングは、大潮の干潮時がおすすめです。潮が大きく引くことで、普段は水中にある岩場が露出し、潮だまりも多く残ります。この潮だまりの中や、湿った岩の隙間を注意深く見ていくと、カエルウオが見つかるでしょう。
観察する際は、生き物と環境への配慮を忘れないでください。岩をひっくり返したら必ず元に戻し、生き物を触る場合は濡れた手で優しく扱いましょう。滑りやすい岩場では転倒の危険があり、潮の満ち引きを確認せずに遠くまで行くと帰れなくなることもあるため、海での観察の際には注意が必要です。
環境を整えれば自宅で飼育もできる
カエルウオは、適切な環境を用意すれば自宅での飼育も可能です。水槽にフィルター・ヒーターと一般的な海水魚を飼育する設備があれば大丈夫です。もともと過酷な環境に生息する種類が多いので、丈夫で飼育しやすいでしょう。ただし、陸上にもあがるタマカエルウオなどは環境の再現が難しいです。
カエルウオの仲間は藻類を餌にするものが多いですが、水槽では植物食性の海水魚用の人工餌料を与えましょう。ほとんどの個体がスムーズに食べてくれるはずです。岩を組み上げて、隠れられる場所を複数作ってあげるとカエルウオも落ち着いて生活できます。
カエルウオの魅力にふれてみよう!

カエルウオは、カエルのような愛嬌ある顔つき、縄張りを守る勇敢な姿、そして献身的に卵を守るオスの姿など、知れば知るほど魅力的な生き物です。
中には陸上でも活動できる種類がいることや、岩場で繰り広げられる縄張り争いなど、その生態は驚きに満ちています。普段は目立たない存在かもしれませんが、じっくり観察すれば、豊かな表情や行動を見せてくれるでしょう。
水族館や磯で出会ったときには、ぜひその独特な顔つきや行動をじっくりと観察してみてください。身近な海にも、こうした個性豊かな生き物が暮らしています。カエルウオとの出会いをきっかけに、海の生態系への興味も深まるかもしれません。





