- 赤トンボとはアカネ属のトンボの総称!
- 一般的にオスが赤くなることが多い
- 赤色にはメスへのアピールや紫外線対策の意味がある

夏や秋になると、川沿いや田んぼの周りを飛び回る赤トンボを見たことがある人も多いでしょう。赤トンボは童謡にも用いられており、日本の風物詩として古くから親しまれています。
しかし、ひと口に『赤トンボ』といっても、実はたくさんの種類があることを知っていますか?この記事では赤トンボの種類や赤色の理由などを解説します。身近な赤トンボの生態を詳しく見ていきましょう。
『赤トンボ』はアカネ属のトンボのこと!

秋の風物詩として親しまれる『赤トンボ』。一般的に、アキアカネに代表されるアカネ属のトンボを指します。成熟したオスの体が赤く色づくことから、そう呼ばれるようになりました。
しかし、体が赤いトンボはアカネ属だけではありません。後述するショウジョウトンボのように、アカネ属以外で体が赤くなる種類もいます。そのため、種類に関係なく体が赤いトンボを総称して『赤トンボ』と呼ぶこともあるようです。
【アカネ属】赤トンボの種類
日本の赤トンボの代表格である『アカネ属』。成熟したオスのお腹が赤く染まるのが大きな特徴です。ここでは、アカネ属に該当するトンボの種類と、それぞれの特徴を詳しく解説します。
赤トンボの代表格『アキアカネ』

日本で特に知られている赤トンボの種類です。体長は約4cmで、田んぼや公園などで群れをなして飛んでいる姿を、目にしたことがある人も多いでしょう。成熟したオスの腹部が鮮やかな赤色をしています。
初夏に水田や池などで羽化し、その後暑さを避けるために、標高の高い山地へ移動して夏を過ごします。そして、気温が下がり始める秋になると産卵のために、再び平地へ戻ってくるのが特徴です。
日本一の美しさ『ミヤマアカネ』

綺麗な小川や湿地の周辺に生息している、体長3〜4cmほどのトンボです。オスは成熟すると腹部が真っ赤になります。翅(はね)の縁にある『縁紋(えんもん)』と呼ばれる部分が赤く染まり、翅の広い範囲に茶色の帯模様が入るのが特徴です。
きれいな姿をしていることから『日本一美しい赤トンボ』と称されることも。数が急激に減っていることで、絶滅危惧種に指定している地域もあります。
眉のような模様が特徴『マユタテアカネ』

顔の正面にある黒い斑紋が、眉毛のように見えることからその名がつきました。体長は3cmほどの細身なトンボです。成熟するとオスだけでなく、メスの体も赤くなることがあります。
主に池や湿地、水田などの水辺がある環境に生息しており、羽化した場所の近くで夏を過ごすことが多いです。基本的に翅は透明ですが、メスのなかには先だけが茶色になる個体もいます。
翅の先が黒い『コノシメトンボ』

体長は約4cmで、見た目はアキアカネに似ていますが、翅の先端が黒褐色になっているのが特徴です。この黒い模様が和服の熨斗目(のしめ)に似ていることから、その名がつきました。
オスは全身鮮やかな赤色になります。7月ごろから見られますが暑さに強くないため、主に日陰や涼しい場所で生息していることが多いです。
国内の赤トンボで最小『ヒメアカネ』

体長が3cmほどしかなく、日本に生息するアカネ属では最も小さい種類です。成熟したオスは顔が白くなり、腹部が赤く染まります。オスメスともに、胸に『ハ』の字状の斑紋があるのが特徴です。
主に抽水植物が茂る池・沼・湿地などに生息しています。小さな赤いトンボが水辺の草むらにいたら、ヒメアカネの可能性が高いでしょう。
【アカネ属以外】赤トンボの種類
アカネ属以外にも体が赤くなるトンボがいます。ここでは、アカネ属ではないけれど『赤トンボ』として親しまれている3種類を紹介します。
鮮やかな赤色が特徴『ショウジョウトンボ』

燃えるような鮮やかな赤色が特徴的なトンボです。伝説上の生き物『猩猩(しょうじょう)』 の色に似ていることから、この名前がつけられました。体長は4〜5cmほどあり、アキアカネなどほかの赤トンボよりもひと回り大きいです。
北海道から沖縄まで広く生息しており、4月から10月くらいまで長く見られます。全身が鮮やかな赤色をしたトンボが水辺で縄張りを張っていたら、ショウジョウトンボかもしれません。
初夏から初秋にかけて見られる『ウスバキトンボ』

体長4.5〜5cmほどのトンボで、初夏から初秋にかけて多く見られます。翅の幅が広く、体色は黄褐色をしているのが特徴です。体は赤くなりませんが、秋に群れで飛ぶ様子から広く赤トンボの仲間として親しまれています。
8月のお盆シーズンに増えることから『盆トンボ』『精霊とんぼ』と呼ばれることも。群れで飛んでいることが多いため、お盆の時期に空を見上げてたくさんのトンボが飛んでいたら、ウスバキトンボの可能性が高いでしょう。
日本一小さい『ハッチョウトンボ』

体長が2cmほどしかないため『日本一小さいトンボ』といわれています。成熟したオスは鮮やかな赤色になり、メスは茶褐色のしま模様になるのが特徴です。
日当たりの良い、きれいな水辺がある湿地や湿原に生息しており、地域によっては絶滅危惧種に指定されています。生息環境が非常に限られているため、見つけた際は環境を荒らさないよう、そっと観察しましょう。
なぜ赤くなるの?赤トンボの色の理由

成熟し体が赤く染まったオスが主に赤トンボと呼ばれていますが、そもそもなぜオスだけが赤くなるのでしょうか。以下で、赤トンボの色の秘密を解説します。
メスに見つけてもらうため
赤トンボのオスは羽化した当初は黄色ですが、成熟するとともに赤色になります。赤く目立つ体色になるのは、メスに見つけてもらうためです。
メスはこの目立つ色を頼りにオスを把握し、交尾相手として認識します。つまり、この赤色はオスにとっての勝負服といえるでしょう。
紫外線から体を守るため
トンボの赤色は、太陽からふりそそぐ強い紫外線から体を守る役目もあるといわれています。
赤トンボの色の正体は『オモクローム色素』という物質です。産業技術総合研究所の研究によると、この色素には紫外線を吸収し、体を守る働きがあることがわかっています。
特に真夏に開けた水辺で活動する赤トンボは、紫外線対策の必要性が高まります。赤くなることで、過酷な太陽光から自らの体を守っている可能性もあるのです。
赤トンボを見かけたら種類や色を観察してみよう

日本の秋を象徴する赤トンボ。一般的にアキアカネなどの『アカネ属』を指しますが、ショウジョウトンボのように、アカネ属以外の赤色が特徴的な種類を含むこともあります。
トンボの赤色にはメスへのアピールや紫外線対策など、生き抜くために重要な役割があります。赤トンボを見かけた際は、その種類や色の理由に思いをはせてみてはどうでしょうか。