- マナティは海牛目に属する大型の水生哺乳類で、古くから人魚のモデルといわれてきた
- 世界には3種類のマナティがおり、尾びれの形や生息地でジュゴンと見分けられる
- 日本では鳥羽水族館や美ら海水族館など4つの施設でマナティに会うことができる

大きな体をゆったりと動かしながら泳ぐマナティ。丸みを帯びた体とつぶらな瞳が特徴的で、そののんびりとした動きに癒される人も多いのではないでしょうか。
マナティは古くから『人魚のモデル』といわれてきた生き物です。海を航海していた船乗りたちが、水面に浮かぶマナティを遠くから見て人魚と見間違えたという説があります。現代ではその愛らしさから水族館の人気者となっており、日本国内でも会える施設がいくつか存在しています。
この記事では、マナティの基本的な生態から、よく似た生き物であるジュゴンとの違い、そして日本で会える水族館までを詳しく紹介していきます。
マナティはどんな生き物?生息地や大きさも紹介

マナティは暖かい水域に暮らす大型の水生哺乳類です。ゾウに近い仲間とされており、草食性で穏やかな性格を持っています。まずはマナティの基本的な特徴や生息環境について見ていきましょう。
マナティとは?大きさや見た目など
マナティは海牛目(かいぎゅうもく)マナティ科に分類される哺乳類です。世界にはアメリカマナティ・アマゾンマナティ・アフリカマナティの3種が存在します。
体の大きさは種によって差がありますが、一般的には体長3〜4m・体重は400〜600kgです。大きな個体では体重が1,000kgを超えることもあり、水生哺乳類の中でもかなりの大型といえるでしょう。
体型は丸みを帯びた樽のような形をしており、灰色がかった褐色の皮膚をしています。前脚はヒレのように変化しており、これを使って水中を移動したり、餌を口元に運んだりします。尾びれは丸いしゃもじのような形をしており、この形状がジュゴンとの見分けポイントです。
マナティの生息地や生息環境
マナティは温かい水域を好み、水温が20℃以上の環境で暮らしています。熱帯や亜熱帯の河川・沿岸域・湖沼などが主な生息地です。
アメリカマナティはフロリダ半島周辺やカリブ海沿岸に多く分布しており、冬になると温かい水が湧き出る泉に集まる習性があります。アマゾンマナティはその名の通りアマゾン川流域に生息し、完全な淡水域で暮らしている唯一のマナティです。アフリカマナティは西アフリカの河川や沿岸に分布しています。
水深の浅い場所を好み、普段は水深1〜3m程度のところでゆっくりと過ごしていることが多いです。呼吸のために定期的に水面に上がる必要があり、5〜10分程度に一度は顔を出す姿が観察されています。
マナティの食性は?天敵はいるの?
マナティは完全な草食性で、水草や海草・藻類などを主な餌としています。大きな体を維持するために1日に体重の約10%もの植物を食べる必要があり、1日の大半を食事に費やしているのが特徴です。食事の方法もユニークで、前脚を器用に使って水草を口元に運びながら食べることもあります。
成体のマナティには、実質的な天敵はほとんどいません。大きな体と、人間以外に脅威となる捕食者がいない環境で暮らしているためです。ただし、子どものマナティはワニやサメに襲われることがあります。そして現在、マナティにとっての最大の脅威は、船のスクリューによる衝突事故や生息地の破壊といった人間活動によるものとなっています。
のんびり癒し系?マナティの知られざる生態や魅力

マナティには、基本的な生態以外にもさまざまな興味深い特徴があります。人魚伝説との関わりや、よく似た生き物であるジュゴンとの違いなど、知れば知るほど魅力的な生き物です。ここでは、マナティの知られざる一面を紹介していきましょう。
人魚のモデルになったって本当?
マナティは古くから『人魚のモデルになった生き物』といわれてきました。この説が生まれた背景には、大航海時代の船乗りたちの目撃談があります。
長い航海で疲れた船乗りたちが、水面に浮かぶマナティを遠くから見たとき、人魚と見間違えたというのが通説です。マナティは前脚で子どもを抱えながら授乳することがあり、その姿が人間の女性に見えたのかもしれません。
ただし、実際に近くで見るマナティは、人魚のイメージとはかなり異なる姿をしています。丸々とした体型につぶらな瞳という愛嬌のある見た目で、美しい人魚というよりは癒し系のキャラクターといった印象でしょう。それでも、マナティが人魚伝説の元になった可能性は十分にあり、ロマンを感じさせる話として今も語り継がれています。
ジュゴンとの違いは?
マナティとよく比較される生き物に『ジュゴン』がいます。どちらも海牛目に属する大型の水生哺乳類で、見た目もよく似ているため混同されやすいのです。
最もわかりやすい違いは、尾びれの形でしょう。マナティの尾びれは丸いしゃもじのような形をしているのに対し、ジュゴンの尾びれはイルカのように三角形で二股に分かれています。この違いを知っていれば、見分けるのは難しくありません。
生息地にも違いがあります。マナティは大西洋側の熱帯・亜熱帯域に分布しているのに対し、ジュゴンはインド洋から太平洋西部にかけての海域に暮らしています。日本では沖縄周辺にジュゴンが生息していますが、マナティは見られません。
のんびり穏やか?マナティの性格と行動
マナティは非常に穏やかな性格で、攻撃性がほとんどない生き物として知られています。水中をゆっくりと移動しながら、1日の大半を食事と休息に費やしています。
泳ぐ速度は通常時速5〜8km程度で、海の生き物としてはかなりゆっくりといえるでしょう。危険を感じたときでも時速25km程度まで加速するのが限界で、逃げる能力は高くありません。その代わり、天敵がほとんどいない環境で暮らしているため、のんびりとした動きでも生存に支障はないのです。
社会性も持っており、複数のマナティが集まって過ごすこともあります。特に冬場は温かい水が湧き出る場所に多くの個体が集まり、群れを形成する姿が観察されています。好奇心が旺盛な一面もあり、ダイバーに近づいてくることもあるほど人懐っこい性格です。
マナティの仲間3種

マナティは世界に3種類が存在しており、それぞれ異なる地域で暮らしています。生息環境によって体の特徴や生態にも違いがあり、同じマナティでも種によって個性があるのです。ここでは、3種類のマナティについて詳しく紹介していきましょう。
フロリダ周辺に生息する 【アメリカマナティ】

アメリカマナティは、3種の中で最もよく知られているマナティです。主にアメリカのフロリダ半島周辺からカリブ海沿岸、メキシコ湾岸にかけて分布しています。体長は3〜4m・体重は400〜600kgほどで、マナティの中では大型で、灰色がかった体色です。
冬になると水温が下がる地域では、温水が湧き出る泉や発電所の排水口付近に集まる習性があります。フロリダ州では野生のアメリカマナティを観察できるツアーも人気で、保護活動も積極的に行われています。
アマゾン川に暮らす 【アマゾンマナティ】

アマゾンマナティは、南米のアマゾン川流域に生息する種類です。3種の中で唯一、完全な淡水域で暮らしています。
体の大きさは3種の中で最も小さく、体長は2.5〜3m・体重は300〜500kgです。体色はアメリカマナティより黒っぽく、腹部に白やピンクの斑点があるのが特徴です。
アマゾン川の水位は季節によって大きく変動するため、アマゾンマナティは雨季と乾季で生息場所を移動しながら暮らしています。乾季には深い水域に集まり、絶食に近い状態で過ごすこともあります。生息地へのアクセスが難しいことから、野生の個体を観察する機会は非常に少ないです。
アフリカの川や沿岸に生息する 【アフリカマナティ】

アフリカマナティは、西アフリカの河川や沿岸域に生息しています。セネガルからアンゴラにかけての広い範囲に分布しており、河川・湖・沿岸域などさまざまな環境で暮らしています。
体の大きさはアメリカマナティとほぼ同程度で、体長3〜4m・体重は400〜500kgほどです。外見もアメリカマナティによく似ていますが、やや目が小さく、鼻先が丸みを帯びているという違いがあります。
3種の中で最も研究が進んでいない種類で、生態に不明な点が多いです。地域によっては食用として捕獲されてきた背景もあり、生息数の減少が懸念されているのが現状です。保護活動の強化が求められている種といえるでしょう。
マナティに会える日本の水族館4選

マナティは日本国内のいくつかの水族館で飼育されており、実際にその姿を見ることができます。大きな体をゆったりと動かしながら泳ぐ様子は、見ているだけで癒されるでしょう。ここでは、日本でマナティに会える4つの施設を紹介していきます。
【三重県】鳥羽水族館
鳥羽水族館は、日本で最も多くの種類を飼育している水族館として知られています。館内の『ジャングルワールド』ゾーンでは、日本で唯一のアフリカマナティが観察できます。大きな水槽の中で餌を食べたり、のんびりと漂ったりする様子は、まさに癒しの光景といえるでしょう。
鳥羽水族館では、ジュゴンも展示されており、2種類を比較できる貴重な施設です。
| 所在地 | 三重県鳥羽市鳥羽3‑3‑6 |
| アクセス | JR・近鉄鳥羽駅より徒歩約10分 |
| 営業時間 | 9:30~17:00(GW・夏季は9:00~17:30) |
| 休館日 | 無休 |
| 入場料金 | 高校生以上:2,800円 小・中学生:1,600円 幼児:800円 |
| 駐車場 | 約500台 |
【沖縄県】美ら海水族館
沖縄美ら海水族館は、世界最大級の水槽『黒潮の海』で有名な施設です。ジンベエザメやマンタの展示で知られていますが、アメリカマナティも飼育されており、その姿を見ることができます。
マナティは『マナティー館』という専用の施設で展示されています。水族館本館とは別の場所にあり、入館料は無料で、誰でも気軽にマナティを観察できるのが魅力です。国内で唯一繁殖に成功しており、今後も赤ちゃんマナティを観察できるかもしれません。
| 所在地 | 沖縄県国頭郡本部町石川424 |
| アクセス | 那覇空港より高速道路で約2時間 |
| 営業時間 | 通常期:8:30~18:30(入館17:30まで) 繁忙期・GW・7月下旬~8月は20:00または21:00まで延長あり |
| 休館日 | なし(台風等による臨時休館除く) |
| 入場料金 | 大人:2,180円 高校生:1,440円 小・中学生:710円 |
| 駐車場 | 約1,900台 |

【静岡県】熱川バナナワニ園
熱川バナナワニ園は、温泉熱を利用してワニや熱帯植物を飼育展示しているユニークな施設です。名前の通りワニとバナナがメインですが、実はマナティも飼育されており、日本では貴重な展示施設です。
こちらで飼育されているのはアマゾンマナティで、日本ではバナナワニ園でしか見られません。他では見られない種類なので、マナティ好きの方にはぜひ訪れてほしい場所です。
| 所在地 | 静岡県賀茂郡東伊豆町奈良本1253-10 |
| アクセス | 伊豆急行線「伊豆熱川駅」より徒歩 1 分 |
| 営業時間 | 9:00〜17:00 |
| 休館日 | 無休 |
| 入場料金 | おとな:2,000円 こども(4歳~小学生):1,000円 |
| 駐車場 | 150台 |
【香川県】新屋島水族館
新屋島水族館は、香川県高松市の屋島山上にある水族館です。標高約300mの山の上にあるという珍しい立地で、瀬戸内海を見渡せるロケーションも魅力のひとつです。こちらではアメリカマナティが飼育されています。
なお、新屋島水族館は2026年1月現在リニューアル工事中となっています。残念ながら今は訪れることができませんが、2027年春に展示が再開されるのが楽しみです。
| 所在地 | 香川県高松市屋島東町1785-1 |
| アクセス | JR高徳線「屋島駅」より車で10分 |
| 営業時間 | リニューアル工事中 |
| 休館日 | リニューアル工事中 |
| 入場料金 | リニューアル工事中 |
| 駐車場 | リニューアル工事中 |
人魚のモデル マナティに会いに行こう!

マナティは、丸みを帯びた体とつぶらな瞳が愛らしい、大型の水生哺乳類です。古くから人魚のモデルといわれてきた生き物ですが、実際に見るとその穏やかでのんびりとした姿に癒される人が多いでしょう。
世界には3種類のマナティが存在しており、アメリカマナティ・アマゾンマナティ・アフリカマナティがそれぞれ異なる地域で暮らしています。日本国内では、鳥羽水族館・美ら海水族館・熱川バナナワニ園・新屋島水族館の4施設でマナティに会うことができます。大きな体をゆったりと動かしながら泳ぐ姿や、前脚を使って餌を食べる様子は、水槽の前で何時間でも眺めていたくなる魅力があるはずです。
この記事を読んでマナティに興味を持った人は、ぜひ実際に水族館へ足を運んでみてください。人魚のモデルとなった愛らしい生き物に、きっと心を奪われることでしょう。




