- カルガモ親子が引越しする理由は、餌が豊富な場所を探すため
- 引越し中は危険がいっぱい!到着時のヒナの数は半分以下になっていることも
- 人間は手を出さないのが基本。ケガや迷子の場合は専門施設に連絡を

5月の風物詩といえば、何を連想しますか?
子どもの日、鯉のぼり、運動会やゴールデンウィーク……。さまざまなイメージが広がりますが、忘れてはいけないのが『カルガモ親子の引越し』です!
今回は、5月に多くみられるカルガモ親子の引越しについて紹介します。引越しの理由や見つけたときの対処法などを解説していきますので、ぜひ参考にしてください!
知っているようで知らない『カルガモ』ってどんな鳥?

カルガモとは体重は1kg前後で、春から夏まで日本で繁殖をおこない、水辺で生活するカモの仲間です。北部に住むカルガモ以外は渡りをおこなわないため、1年中日本で生活します。子育ての時期にはヒナを連れた引越し風景に癒された人も多いことでしょう。
鳥なのに実は夜行性!?
カモは夜行性の傾向が強く、カルガモもエサを取ったり引越ししたり、主に夜、活発に活動をおこなう水鳥です。とはいえ、ニュースなどでも見かけるように、昼に引越しをおこなうケースもあるため、あまり夜行性のイメージはないですよね。
都市部では夜間も照明が明るいため、夜間に飛ぶ姿も確認されています。
カルガモの数は年々減っている
一部ではカルガモによるイネの食害も確認されており、害鳥とみなされることも。また狩猟鳥としても人気があり、エサの減少と相まって、年々その数を減らしていることが報告されています。
近年アヒルとの交雑も増えており、遺伝子汚染の心配も。外見に関してはカルガモの方が遺伝特性が強く出る傾向にあるため、見た目はカルガモ・性格はアヒル、というような個体がおり、人を怖がらないカルガモがいるのはそのためではないかという分析もあります。
カルガモ親子が引越しをする理由

ここでは、カルガモ親子が引越しをする理由を紹介します。
草むらやアスファルト、ときには階段や排水溝など危ない場所を潜り抜け、必死に歩くカルガモ親子。
なぜカルガモたちは、命を危険に晒しながらも引越しをおこなうのでしょうか?可愛くもミステリアスな秘密に迫ってみましょう!
カルガモは、産卵する場所と生活する場所が違うから
カルガモ親子が引越しをする理由は、産卵する場所と生活する場所が違うからです。
カルガモは、4月頃に繁殖期を迎えます。卵は外敵に狙われやすいため、安全度の高い水辺の草むらや竹やぶなどに巣を作り産卵します。
そして5月頃にヒナが孵るのですが『産卵に適した場所』が『餌が多い場所』とは限りません。そのためカルガモは、ヒナと安心して生活できる地を目指して引越しを開始します。
ヒナが餌を確保できる場所に連れて行く必要があるから
カルガモの主食は、小魚や水草・昆虫などです。産卵に適した場所には餌が少ないため、十分に食べ物が見つけられる水田・湿地・干潟などをヒナとともに目指します。
カルガモにとって理想の定住先は『ヒナが簡単に餌を見つけられる場所』です。そのため引越し先の餌が不十分だった場合は、再び新天地を目指して引越しを再開します。
天敵から身を隠せる場所で過ごす必要があるから
カルガモの産卵地は餌が少ないだけではなく、天敵が多い危険な場所でもあります。
カルガモの天敵は、カラス・ヘビ・猫・イタチなどが代表的です。また場所によっては、ライギョのような水生生物にも襲われてしまう可能性があります。
成鳥のカルガモはもちろん、小さく無力なヒナは天敵に襲われたらひとたまりもありません。カルガモの引越しは、『天敵が少ない場所=命を守れる場所』への旅でもあるのです。
カルガモ親子の引越しには危険がいっぱい…

ここでは、カルガモ親子の引越しにおける危険を紹介します。
一見するとほのぼのとして見えるカルガモの引越し。しかし当事者であるカルガモにとっては、まさに命を賭けた一大イベントなのです。
カラスや猫などの天敵に狙われる
カルガモの引越しにおける最たる危険が、移動中の天敵の襲来です。おもにカラスや猫などの天敵に襲われ、命を落としてしまうヒナは少なくありません。
しかし「かわいそう」と思ってしまうのは人間のエゴといえるでしょう。なぜならカラスや猫もカルガモと同様に、厳しい環境で自活をするためにヒナを捕食する必要があるからです。
段差が登れない
小さな崖や階段など、ヒナが段差が登れずに引越しが滞ってしまうこともあります。
親カルガモが簡単に登れる階段でも、ヒナにとってはまるで壁。親カルガモは周囲の安全を見守りながら、ヒナたちをしっかりと導こうと奮闘します。
車や自転車などの事故
自然に生きるカルガモの世界には、当然ながら道路交通法は存在してません。車や自転車などが通る道を横断しようとした結果、悲しいことに事故に遭ってしまうケースもあります。
カルガモは、孵化から飛べるようになるまでには約2ヶ月の月日が必要です。引越し中のヒナはまだ飛べず、車の接近に対応することも困難です。
排水溝や穴に落ちてしまう
カルガモ親子の引越しでは、ヒナが排水溝や穴に落ちてしまうこともあります。
一度排水溝に落ちたヒナは自分で上がれず、水に流されたり飢えたりなどの理由で死んでしまいます。親カルガモとしても、多くのヒナたちを守るためには、1匹のヒナの命に執着することはありません。
さまざまな危険を乗り越えた結果、引越し先に到着する頃のヒナの数は、出発時の半分以下になっていることもあるのです。
カルガモ親子の引越しが見られる時期・場所

ここでは、カルガモ親子の引越しが見られる時期やエリアを紹介します。
SNSやテレビなどでも、毎年話題になるカルガモの引越し。今年の春は、自分の目でも発見できそうな場所を探してみましょう!
カルガモ親子の引越しが見られる時期は「5月頃」
カルガモの親子の引越しが見られる時期は、毎年5月頃です。とはいえ厳密に決まっているわけではなく、早いと4月の下旬頃から見られる場合もあります。
6月頃にも見られる可能性があり、過去には7月上旬に観測が報告された例もあります。あくまで「ピークは5月~6月上旬」と覚えておきましょう。
カルガモ親子の引越しを見られる場所は「池や川の間のエリア」
カルガモ親子の引越しは、産卵地から水田・池などのエリア間でおこなわれます。
引越しは最短の場合は数十m程度ですが、長いと2~3kmの距離を移動することも!300m程度であれば一般的な引越しの範囲内であるため、歩いて行ける範囲でぜひチェックしてみてくださいね。
カルガモ親子の引越しを手助けしてもいい?見つけたときの対処法

ここでは、引越し中のカルガモ親子に出会ったときの対処法を紹介します。
一生懸命歩くカルガモ親子を見ていると、つい手助けしたくなるシーンもありますよね!
手助けをするべきケースとしないほうがいいケースを見定め、正しい対処法を学んでいきましょう。
不用意な手助けは避ける
カルガモ親子の引越しを見つけたときは、基本的には「手を出さない」が正解です。
カルガモ親子の引越しは、人間のためのショーではありません。生態の特性や生存本能に沿った、「自然界の節理になぞらえた行為」なのです。
人間がカルガモ親子に手を出すことは、ありのままの節理に反する行為になってしまいます。手助けしたい気持ちをグッと堪えて、優しく見守ってあげてくださいね。
車や自転車などを誘導するのはOK
とはいえ、すべてのシーンで手助けを我慢する必要はありません。
たとえばカルガモ親子が道路を渡っているときは、轢かれないように車や自転車を誘導してあげるとよいでしょう。
なぜなら車や自動車などの人工物は、本来自然界には存在しない道具だからです。人工物によって轢かれてしまうことは、ある意味で自然の節理に反する出来事といえます。
カルガモには直接手を出さないように気をつけながら、安全に渡れるようにサポートしてあげてください。
鳥獣保護センターや動物愛護センターに連絡する
住宅街や駐車場など、明らかにおかしな場所で迷子になっているカルガモ親子を見つけたら、鳥獣保護センターや動物愛護センターに連絡しましょう。
カルガモは野生鳥獣の一種です。感染症の観点からも、むやみに触ったり保護したりしないように鳥獣保護法で定められています。
不安なシーンでも自分では触らずに、地域ごとの然るべき施設に伝えましょう。カルガモがケガをしている場合も同様です。
参考:こうほく動物病院「カルガモ(野生鳥獣の保護について)」
カルガモ親子の引越しを、遠くから見守ろう!

今回は、カルガモ親子が引越しをする理由や、引越しを見つけたときの対処法を紹介しました。
思わずスマホで撮影したくなってしまうほど、微笑ましい光景で楽しませてくれるカルガモ親子の引越し。しかしその実情は、安息の地を目指す『命がけの移住』であることがわかりました。
カルガモ親子の引越しを見つけた際は、どうか心の中で精一杯のエールを送りましょう!