- オオカミウオは強靭なアゴと歯で貝や甲殻類を砕くハンター
- 見た目はこわいが臆病で、オスは卵を守るなど繊細な一面もある
- 数は少ないが、水族館やダイビングで出会えることもある

北の冷たい海に、まるで怪獣のような顔をした魚が暮らしています。それが『オオカミウオ』です。鋭い歯と強力なアゴを持つ見た目から『海のオオカミ』と呼ばれることもありますが、その生態は意外にも繊細です。
この記事では、そんなオオカミウオの特徴や生息環境、知られざる生態について詳しく紹介します。水族館で見かけたことがある人も、これを読めばより深くその魅力を感じられるでしょう。
オオカミウオとは?基本情報と特徴を紹介

オオカミウオは、独特の見た目と力強さからとても印象に残る魚です。名前の通り、オオカミのように鋭い歯と太いアゴを持ち、岩場や海底にすむ貝や甲殻類を食べています。ここでは、そんなオオカミウオの基本的な特徴・生息環境などを詳しく見ていきましょう。
オオカミウオはどんな魚?名前の由来や分類
オオカミウオは、北の冷たい海に暮らすスズキ目ゲンゲ亜目の魚です。同じグループにはギンポやゲンゲなどが含まれ、その見た目の印象に反してギンポの仲間にあたります。体は細長く、ややぬめりのある皮膚をもち、岩の隙間に体を寄せて生活するのが特徴です。
英語では『Wolf Fish(ウルフフィッシュ)』と呼ばれます。大きな口と鋭い歯が並ぶ姿がオオカミを思わせることから、日本でも『オオカミウオ』と名づけられました。名前や見た目は恐ろしいですが、実際はギンポの仲間であり、この魚の独特な魅力が感じられます。
体の特徴と見た目のインパクト
オオカミウオは平均1m前後、最大で1.5mを超える個体もいる大型魚です。筋肉質の体と大きな頭そして太くて頑丈な歯が特徴です。前歯は犬歯のように鋭く、奥歯は臼のように丸く、貝やカニの甲羅を砕くために発達しています。
体型はギンポの仲間らしく、細長い体型です。体色は灰色や青みがかった褐色で、縞模様が入ることもあります。細長い体型でありながら頭が大きく、鋭い歯があることで、怖い印象を抱きやすいのでしょう。
生息地や生息環境は?
オオカミウオは冷たい海を好み、普段は水深50〜100mほどの岩場や岩礁域に隣接した砂地に生息しています。繁殖期になると浅瀬に移動し、ダイビングでも見られることもあります。日本では北海道や東北地方の太平洋側で多く、さらに北のオホーツク海やベーリング海、アラスカなども生息域です。
特に貝や甲殻類が多い場所を好み、海底の岩陰や岩穴をすみかとします。秋の産卵期になると巣穴からあまり移動しなくなり、ダイバーに観察されることも多いです。
オオカミウオの驚くべき生態

オオカミウオはその見た目から想像できない意外な生態を持つ魚です。強靭なアゴと歯で硬い貝を砕く一方で、性格はおだやかで繊細。ここでは、そんなオオカミウオのユニークな生態を詳しく紹介します。
強力なアゴと歯で貝や甲殻類を砕く!
オオカミウオの最大の特徴は、その名前の由来にもなった強力なアゴと歯です。上下のあごには犬歯のような鋭い歯が並び、奥歯には臼のような歯がびっしりと生えています。これにより、カニやウニ・貝類の硬い殻を力強く噛み砕くことができます。
ただし、獲物を襲って食べるための顎と歯ではないため、必要以上に獲物を追いかけ回すことはありません。あくまで硬い殻や体を持つ生き物を、しっかりと噛み砕いて食べるためのものです。
見かけによらず臆病な性格
鋭い歯と力強い顎を持つ一方で、オオカミウオは臆病な性格の魚です。基本的には巣穴に隠れるように生活しています。
水族館でも巣穴に隠れがちで、水槽に手を入れても攻撃してくることはありません。むしろ巣穴の奥に隠れてしまうことも多いです。神経質な一面もあり、水槽内での繁殖例はとても少ないです。
繁殖期のオスは卵を守るイクメン魚!?
繁殖期になると、普段はおとなしいオスが一変します。メスが巣の中で産卵した後、オスは孵化するまで外敵から守り続けるのです。その期間は数ヶ月に及ぶこともあり、まさにイクメン魚といえるでしょう。
卵を守るときは、オスは身体で卵塊に巻き付くようにして守り、ときおりヒレを動かして水を循環させる行動も見られます。ほかのオオカミウオや別の魚が近づくと、必死に威嚇して追い払うことも多いです。
孵化した稚魚はしばらく、沖合の表層を漂って生活していると推察されます。成長とともに沿岸域に戻り、親と同じ生活を送るようになります。
低温でも動ける特殊な体の仕組み
オオカミウオは、氷点下に近い水温でも生きられる特別な身体を持っています。体内に『不凍たんぱく質』があり、これが凍ろうとする血液や体液にくっつくことで、凍るのを防いでいるのです。また、筋肉内の酵素も低温に適応しており、エネルギーの消費を抑えながら動けます。
体全体で、北の海で生き続けるための工夫が見て取れます。まさに、環境に合わせて進化を遂げた生きた証といえるでしょう。
オオカミウオを観察するには?

オオカミウオに興味を持ったのであれば、ぜひ直接観察してみましょう。冷たい海に生息するので、観察できる機会は少ないですが、水族館での展示やダイビングで観察してみてください。
展示している水族館もある
オオカミウオは北海道や東北の水族館を中心に展示されているところがあります。水槽でのオオカミウオは、自然と同じく、岩の隙間に隠れていることが多いです。水槽をじっくりと探して見つけるのも楽しいでしょう。
観察の際は、間近でその表情や口の中を見てみてください。水槽越しで、かつ大人しい魚と分かっていても、その迫力はかなりのものです。
2025年11月現在、展示されている水族館を紹介します。
展示内容が変更されることもあるので、確実に観察したい場合は事前に問合せるとよいでしょう。
ダイビングで出会えることはある?
オオカミウオは、地域・季節によってはダイビングでも遭遇できます。北海道の積丹半島や知床半島では比較的よく見られます。時期は浅瀬にやってくる秋から冬にかけてが観察しやすいです。
タイミングが良ければ実際に卵を保護している個体も見れるかもしれません。卵保護中の個体は攻撃的な面もありますし、必死に守っているので、そっと観察しましょう。
いずれにしても、巣穴から出ることがあまりないオオカミウオは、出会えればじっくりと観察できます。水槽越しでは分からない、オオカミウオの仕草や質感などを感じてみてください。
オオカミウオの生態に迫ろう

岩陰に身を潜め、硬い貝や甲殻類を砕く強靭なアゴを持つオオカミウオ。その見た目は恐ろしさを感じさせますが、実際は穏やかで、どちらかといえば臆病な性格をしています。冷たい海に生きるための体の仕組みや、卵を守る行動など、見た目とのギャップに満ちた魚といえるでしょう。
もし機会があれば、水族館やダイビングでじっくり観察してみてください。そのたくましさと繊細さを併せ持つ姿こそ、オオカミウオの魅力です。




