- 2回刺されると危険なのは、アレルギー反応『アナフィラキシー』によるもの
- 刺されないために予防策を講じることが重要
- スズメバチの習性を知り、登山や草むらでの不意な接触に注意する

夏のキャンプやハイキング、庭仕事の最中に「ブーン」と低く唸る羽音が聞こえたら要注意。日本の夏から秋にかけては、スズメバチの活動が最も活発になる季節です。
特に「スズメバチに2回刺されると危ない」と言われていることを知っていますか?
今回はその理由を理解し、正しく対処するために、スズメバチの生態と、刺された際のリスク、そして予防策について詳しく解説します。
なぜ『2回刺されると危ない』のか?アナフィラキシーの仕組み

まず「2回刺されると危ない」と言われる最大の理由は『アナフィラキシー』という重篤なアレルギー反応が起こるリスクがあるからです。
1回目にスズメバチに刺されたとき、多くの人は患部が腫れたり痛みが出たりする程度で済むことが多いです。しかしその時、体内ではハチの毒に対して免疫が『記憶』する働きを始めています。これが『感作(かんさ)』と呼ばれる状態です。
そして2回目以降に同じ種類の毒にさらされると、免疫システムが過剰に反応し、全身に激しいアレルギー反応が引き起こされることがあります。これが『アナフィラキシー』です。
アナフィラキシーの主な症状は以下の通りです。
- 呼吸困難
- 全身のじんましん
- めまい・意識障害
- 血圧の急激な低下
- 嘔吐や下痢 など
参考:急激に症状が悪化する「アナフィラキシー」に注意 - 宜野湾市
特に過去にスズメバチに刺された経験がある人は、2回目の刺傷によるアナフィラキシーのリスクが高まるため注意が必要です。
スズメバチってどんな虫?知られざる生態を知ろう

では、そもそもスズメバチとはどんな昆虫なのでしょうか。
人間を刺すことのあるハチは日本にいくつかの種類が確認されています。その中でも、スズメバチは攻撃性と毒性の強さから、特に注意が必要な存在です。
スズメバチの代表的な種類
日本に生息するスズメバチの中でも人との接触が多く、刺傷被害のリスクが高い代表的な種類を紹介します。
攻撃性も毒性もトップクラス【オオスズメバチ】

体長は3cmを超える日本最大のスズメバチで、攻撃性・毒性ともにトップクラス。特に秋の繁殖期には巣を守る警戒心が強まり、一度刺激すると複数匹が集団で攻撃してくることもあります。
『スズメバチ=木の上に巣を作る』とイメージする人も多いかもしれませんが、オオスズメバチは地中に巣を作ることが多い種です。古い動物の巣穴や木の根元、斜面の土の中などに潜んでいることが多く、山道の脇や、手入れされていない藪の中などに多く見られます。
人の生活に近い場所に生息【キイロスズメバチ】

都市部にも多く生息し、攻撃性の高い種類と言われています。
軒下や木の枝、屋根裏、換気口など人の生活圏に巣を作ることが多いため、最も人との接触が多いスズメバチとも言えます。巣は球状で、最大で直径50cmにもなることがあります。
特に秋になると巣の個体数が数百匹規模に膨らむため、蜂の密度も高く危険度が増します。
地中にある巣に近づくと集団で襲ってくる【クロスズメバチ】

体長は小さめで、大人の小指ほどです。そのため、刺されても痛みは比較的弱めですが、巣を守るためには容赦なく攻撃してきます。
クロスズメバチもオオスズメバチと同様に、地中に巣を作ることが多いと言われています。小さな巣でも中には数十〜百匹のハチが潜んでおり、不用意に近づくと一斉に襲われるリスクがあるため注意が必要です。
草むらでの作業中や、家庭菜園でしゃがんだ際に突然刺されることがあるため、草の多いところでしゃがむ際には注意しましょう。
刺されないためには『何に』気をつければいい?
スズメバチは、8〜10月は巣の規模が最大になり、警戒心も高くなるため注意が必要です。
これからの時期、刺されないためには『接近させない』『刺激しない』『巣に近づかない』という三原則が大切です。以下のポイントを押さえて、予防に努めましょう。
1. 黒い服を避ける
スズメバチは、天敵のクマなどの色に反応して攻撃してくる習性があります。そのため、『黒』は彼らにとって『敵の色』なのです。
そのため、なるべく白やベージュなど明るい色の服を着用しましょう。また、日本人の場合は黒髪が多いため、野外活動時には黒髪を隠す帽子の着用も有効です。
2. 強い香りを避ける
スズメバチは匂いにも敏感です。特に果実系やフローラル系などの甘い香りに引き寄せられることが知られています。
香水・柔軟剤・制汗スプレー・整髪料などの使用は控えるのが安全です。また、大量の汗や体臭にも反応するため、汗をかいたらこまめにタオルで拭く・着替えることも意識しましょう。
3. 飲み物・食べ物に注意
野外で飲食する際、缶やペットボトルの飲み口にスズメバチが入り込んでいることがあるため、飲みかけの飲み物を飲む前には必ず中を確認しましょう。
加えて、甘い飲み物や果物はできるだけ密閉し、飲食後はゴミを放置せず早めに片付けるのが鉄則です。
4. 巣に近づかない
木の根元・軒下・植え込み・木の穴など、思いがけない場所に巣を作っていることがあります。直径数センチのまだできたばかりの巣であっても油断してはいけません。
もし巣を見つけたら、決して自分で駆除せず、市区町村や専門業者に連絡しましょう。攻撃された場合、複数匹で襲ってくる可能性があり非常に危険です。
5. もし接近されても、手で払ったり逃げ回らない
スズメバチは、まず威嚇行動として人の周りを飛び回ったり、カチカチという顎の音を鳴らる習性があります。これを無視したり、手で振り払ったりすると、攻撃に移ってきます。
そのため、スズメバチに見つかった場合は、姿勢を低くして、ゆっくりと後ずさりするように静かに離れましょう。
落ち着いて行動することが、最大の防御になります。手を振り回したり大声を出すことで、スズメバチも危険を感じて攻撃的になるのです。
もし刺されたらどうする?

どれだけ注意していても、運悪く刺されてしまうことは誰にでもありえます。その時は、慌てず、迅速かつ適切な処置を行い、被害を最小限に抑えましょう。
1. すぐにその場を離れる
まずは、その場からできるだけ速やかに数十メートル以上離れましょう。
スズメバチは一度刺すと仲間に「攻撃対象がいる」ことを知らせるフェロモンを放ちます。そのため、1匹に刺されたあとも、他のハチが集まってくる可能性があります。
2. 傷口を流水でよく洗う
刺された場所に毒が残っている場合があるため、流水でよく洗い流すことが大切です。
3. 冷やす
腫れや痛みを抑えるため、保冷剤や冷たいタオルで刺された部位を冷やしましょう。
特に顔・首・手の甲など、皮膚が薄い部分は腫れが強くなるため、早めの冷却が有効です。
4. アナフィラキシー症状が出たら即救急車を
アナフィラキシーの症状が現れた場合、すぐに救急車(119番)を呼びましょう。
症状は刺されてから5分〜30分で急激に進行することがあります。少しでもおかしいと感じたら、自己判断せず救急要請を行ってください。
5. 病院へ行く
軽度でも医師の判断を仰ぐのがベストです。たとえ軽症で済んだように見えても、念のため医師に相談することをおすすめします。
特に『アレルギー体質の人』『過去にハチに刺されたことがある人』は、病院での診察を受けておくことで、より安心できるでしょう。
命を守るために『知って避ける』が一番の対策

スズメバチは確かに危険な存在ですが、無闇に恐れる必要はありません。彼らは基本的に自ら攻撃してくることはなく、巣や自分の身に危険が迫ったときに防衛本能から行動するだけです。
「2回刺されると危ない」とされる理由を正しく理解し、日常生活やアウトドアでの行動を少し工夫するだけで、スズメバチとの不幸な遭遇を避けることは十分に可能です。
夏の自然を楽しむためにも、『知ること』が自分と大切な人の命を守る第一歩になるのです。